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ある国のある都市の駅で、彼女は少ない荷物だけを持ち、車内に入った。名門女学院に通う彼女は学院から遠く離れた、田舎町の裕福な家庭に生まれ育ち、現在は学院寮に住んでいた。彼女は約二年ぶりに実家の町に一時帰郷する。
二日前の夜、寮に実家から一通の手紙が届いた。実家から離れ、彼女は多くの人を見てきた。その中で、取り返しのつかない後悔に泣く人も見た。そんな人たちを慰めながら、全く意識せず、自分とは無関係な不幸だと信じていた彼女は、初めて、そういう後悔をしなくてすむよう、間に合うよう神に祈る。
彼女は実家から届いた、何度も繰り返し読んだ手紙をポケットから取り出し、再度目を通す。
手紙の中には、セバスチャンが、以前から病んでいた胸の病気が悪化し、倒れ、危篤状態に陥ったと書かれていた。
恐らく間に合わないだろうとは思いながらも、一縷の希望にかけ、急いで帰郷の手続きをとり、今やっと駅に着き、汽車に乗ったところだ。
「…じい…」
生まれた頃より、ずっと世話をしてくれたじいに、どうしても謝りたい事があった。彼は憶えてもいないかもしれないが、彼女にはずっと心の奥底で、引っかかっていたこと。
町の洋服店でみかけた、やや薄めのピンクの、きっと私の服に合う、可愛いスカーフをずっと欲しがってた。じいはそれを知って、私の誕生日にスカーフを買ってくれた。けど、色違いで私は
「じいの馬鹿、こんなのいらない!」
と、その場で破いてしまった。
何時もの事だった。何時も我侭ばかり言って、それが当たり前だと思っていた。どんなヒドイことを言っても、じいは笑顔で受け入れてくれた。あの時も、笑顔で
「じいの配慮が足りませんでした。申し訳ございません、お嬢様」
と許してくれた。ただ、直前に、悲しそうな眼を一瞬だけ見せて。
その眼がずっと忘れられず、心に引っかかっていた。きっと、その眼を見なければ、何時もの事として、何時もの日常としての思い出にしかならなかったかもしれない、傲慢な私の記憶にずっと残っていた。
思えば、じいには甘えてばかりいた。父も母も、一瞥するなり興味も持たなかった、私の初めて作った―甘いほうが美味しいと、塩も入れずに砂糖を大量に入れた―料理を美味しそうに食べて、笑顔で「お嬢様が作ったものですから、美味しくないはずがない」と言ってくれた。
寂しくて泣いている時には常に傍にいてくれた。
風邪を引けば寝ずに看病してくれた。
疲れたらおぶってくれた。
学校で褒められたら、誰よりも喜んでくれた。
私が物を壊しても、代わりに謝ってくれた。
悪戯して、じいの所為にしても受け入れてくれた。
父に叱られた後は決まって焼きたてのパイを持ってきてくれた。
気が付けば、何時もお茶を用意してくれて、机や暖炉や、ベッド以外の場所で寝ていて、起きたらベッドの上だったことなんて普通だった。
それでも、私はじいに何も云わなかった…。それが当たり前だったから。
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あっ、ごめんなさい・・・こっからでしたか^^
2008/10/2(木) 午後 1:42 [ 世妃愛 ]
なんと、今回は、お嬢様と じぃ、ですか!(◎_◎)
2008/10/3(金) 午前 5:43 [ *Yuki* ]
本当は母と娘にしたかったんですが、ちょっと大人向けのシーンを入れようと思ったので…。
色々あってカットしましたが…。
2008/10/3(金) 午前 11:18 [ perryblackship ]