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父は家庭を省みず、仕事のことしか考えず、母は母親としてよりも女として見飾る事しか考えていなかった。
もちろん、家族のため仕事にかまける父を理解していたし、父のため、いつまでもキレイであろうとする母の努力も理解していた。
それなのに私はじいのことを理解する努力すらしていなかった。どんなにじいが私のことを理解し、理解しようと勤めたかもわかっていながら。
だから、どうしても謝りたかった。いままで、謝ることを恐れてずっと胸に秘めていたけど、墓前に謝ったところで、じいに伝わるはずもない。このままじゃ思い出に慰められること以外できなくなる。それどころか、じいの優しい思い出は、その優しさとは裏腹に苦痛の思い出になってしまう。
汽車は目的地に着き、私は家路へと急ぐ。
帰郷の手紙はもう着いただろうか。
家に着くと、皆の驚く顔が見えた。どうやらまだ手紙は着いていないようだった。
「どうしたんだ、学校は?」
二年ぶりに出会う娘に父は問う。私は何度も読み返した父からの手紙を取り出し、それを父に見せた。
父は私の心情を察したのか、優しく私の手をとり、セバスチャンの部屋にともに向かう。部屋では横たわるじいの傍らで、眼を腫らした母が座っていた。
こんな二人だから私は理解しようと思えたのだろう。少なくとも、私の両親は彼を大切に思っていた。
私は母に席を譲ってもらい、じいの顔を覗き込む。
家を出る前は元気だったじいが、今はやつれ、精気もない。わずかながらゼーゼーと、やっと息をし、私に眼を向けると、笑顔をつくろうと、努力していた。だけど、まだ生きている。まだ間に合う。
私がじいの手を握ると、父と母はそっと部屋から出て行く。今までは、忙しく流れる時の中、ずっと色んな言葉を失ってきた。タイミングを逃して云えなくて、そして気恥ずかしさと、無意味な恐怖から云えなくて、ずっと後悔していたはずの言葉を云わなければならない。ならないはずなのに、涙を零さないよう努力すればするほど、私はまた人形のように、言葉を失う。
私は焦り、じいの手を強く握り、懸命に言葉を出そうとする。
「おかえりなさい」
口を動かすだけで精一杯のじいから、微かだが、確かに聞こえてきた。
「じい、ただいま」
一旦言葉が出ると、もうどんなに努力をしても涙は止まらなかった。
「じい、憶えてる?誕生日に買ってくれたスカーフのこと…ずっと、謝りたかったんだよ」
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おおっ!感動の瞬間・・・・気持ち痛いほど分かります^^
2008/10/2(木) 午後 1:45 [ 世妃愛 ]
ぅわ〜ん!!!。
慈愛と忠誠心・・・。
なんて、ひたむきで・・・、
温かいのでしょう・・・。:゜(。ノω\。)゜・。
2008/10/3(金) 午前 5:45 [ *Yuki* ]