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「私のために、私に喜んでもらおうとして買ってくれたのに、私は破いてしまったの…。ごめんなさい…じいの気持ちも考えずに…」
一番引っかかっていた、一番謝りたかったことを謝ると、他にもたくさん伝えたい事があるのに気づく。
「いつも迷惑ばかりかけて、悪戯ばかりして、困らせていてばかりで…ごめんなさい、私、一度もじいに謝ったことなかった…いつも悪いことしてるの解ってたのに、一度も謝らなかった、ずっと甘えたままだった」
徐々に声は大きくなり、涙はどんどん零れ落ちる。
涙を拭う。私の手を握るじいの手から、徐々に力が抜けていくのを感じる。
「待って…じい!まだたくさん云いたい事があるの!」
一緒に過ごした時間があまりにも長く、伝えたい事がたくさんありすぎて、何も云えなくなる。だけど一番伝えたいことは解っていた。
「じい、ありがとう」
これも、一度もいえなかった言葉、そして最も云いたかった言葉だった。
「色々、ありがとう。楽しかったよ、じいがいてくれて幸せだった…。大好きだよ」
その瞬間、じいは私を見て、そして笑顔を見せてくれた。私の手を握っていた手からはもう、完全に力は抜けていた。
最後の最後まで、じいは私を待っていてくれたように思う。
じいは私が、多くの人のように結局最後まで伝えられなくて後悔しないように、私の帰り、言葉をずっと待っててくれた。そしてじいの最後の笑顔が、最後に本当に聞きたかった言葉は、「ごめんなさい」ではなく、私の本当に云いたかった、「ありがとう」だったことを教えてくれた。
じいの葬儀が終わり、私は学院へ戻るための汽車に乗る。その前に、見送りにきた父と母に今まで何度も云ってきた、伝え忘れていた言葉を贈った。想いを伝えきれず、伝え忘れて後悔しないよう。
黒子「これ『もう一度会えたら伝えたい』っていう歌詞の歌が元ネタよね」
黒船「ええ、でも別に伝えられなくて後悔したって歌でもないんですが、どうせなら最後に伝えられてスッキリしたほうがいいかと」
黒子「まあそれでも、そこそこ歌詞に忠実に出来たね」
黒船「かなり無理やりな部分もありましたが…。まあ、今回は珍しく不幸な人も可哀想な人もでませんでしたね」
黒子「そうね、可哀想といえば、セバスチャンの昔の扱われ方くらいで、最後は笑顔で死ねたもの」
黒船「……セバスチャンの扱われ方で可哀想なのってありましたっけ…?」
黒子「………」
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