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最近は、暖かくなってきましたね。みかんやりんごの旬な季節も終わり春が近づいているようです。そろそろ炬燵を卒業する季節かもしれませんね。 この週末、ソフトバンク、ボーダフォン買収交渉というニュースに驚きました。ソフトバンクは、携帯事業新規参入のため、周波数帯を獲得しようと裁判まで起こし新たな周波数をもぎ取り新規参入の準備をしているはずでした。そのソフトバンクが既存移動通信事業者のボーダフォンの日本法人を1.5-2兆円で買収するかもしれないというニュース、大変驚きました。しかし、世界の携帯市場を考えると、世界には成長率などで日本市場より魅力的な携帯市場はたくさんあること、日本市場にはボーダフォンに脅威となるようなグローバルプレーヤーがいないことや、ボーダフォングローバルは、数兆円の特別損益計上を予定していたことなどがあり、日本法人を売却は自然な流れかもしれませんね。 しかし、携帯市場の規模は10兆円といわれていますが、1,5-2兆円という買収額は大きいですね。ライブドアの買収で騒がれたフジテレビの時価総額は、約8,000億円(一株@270,000円)を考えても大きいと思います。携帯事業は、確かにネットワーク構築などに数千億円規模の設備投資を必要しお金のかかる事業です。しかし、日本の携帯市場の加入者数は、9,000万人を超え、飽和に近づいているといわれています。そのため、私は、ニュースを聞いた時、そのような日本市場に位置するボーダフォンの日本携帯事業を、1.5-2兆円で買収する価値があるのか?他にお金の使い道があるのではないか?と疑問を持ってしまいました。 そこで、少し調べてみました。 −時価総額的評価 まず、株価の時価総額的観点からボーダフォンの日本携帯事業を評価してみます。 ボーダフォン株のデータは、 発行済株式数:5,427,946株 (ボーダフォングローバルが5,303,288株保有) 上場廃止前の1年間の株価水準:200,000-300,000円 上場廃止日の株価:249,000円 となっています。このデータから、上場廃止日の株価を基に、ボーダフォングローバルが持つ株の時価総額は 250,000円 x 5,303,288株 = 約1.32兆円 となります。1.5-2兆円の買収額は、時価総額と比べ2,000-7,000億円のプレミアム、株価水準としては、280,000−380,000円に相当します。株価の時価総額の観点からは、買収額は、妥当な額なのかもしれません。 −利益率的評価 本来は、キャッシュフローからの評価が一番よいと思いますが、PDCや3G事業に必要な設備投資の情報が不足しているので、単純に純利益から評価してみます。 会社説明会の資料によると、ボーダフォン株式会社の経常利益は 経常利益:1,530億円 です。1,5-2兆円での買収額(PER)は、 PER水準: 10-13.3倍 となります。この利益率を維持できると仮定できれば、1.5-2兆円の買収額はそれ程高くないことがわかります。しかし、他の事業者と比べボーダフォンの事業がうまくいっていないことや、日本の携帯市場では、加入者一人当たりの売り上げ(ARPU)の減少、モバイルナンバーポータビリティー、新規参入などが控えているため、利益率の不確定要素がたくさんあるとおもいます。 −新規参入コストと買収費用を比較 新規参入により、独自にネットワークを構築した場合と比較すると1.5-2兆円の買収額は、どう評価できるのでしょうか? ボーダフォン株式会社の加入者は、2005年末時点で、約1,500万人 です。によるとボーダフォンの新規顧客獲得費用は、38,300円となっています。ブランド力により、新規顧客獲得費用は差があると思いますが、一般に3-4万円の費用が掛かるようです。この費用を基に1,500万人の顧客獲得費用を単純に計算すると 顧客獲得費用:38,300円x1,500万人=5,745億円 となります。イーアクセスは、 ネットワーク構築費用:3000億円の設備投資(500万人) を仮定しています。 新規事業者は、サービスの開始までに1年以上、事業がうまくいった場合でも1,500万人の顧客獲得には数年掛かると思います。買収により時間が買えることを考慮して、その時間の機会費用も考えないといけません。例えば、機会費用をボーダフォンの経常利益を基に計算してみると、 1年の機会費用:1,530億円 2年の機会費用:3,060億円 3年の機会費用:4,590億円 となります。うまくいっても2年以上はかかることが予想されます。 そこで、少し乱暴に、人的資本などを無視し、以下のように新規参入コストと買収費用と定義して、それぞれのコストを乱暴に比較してみます。 新規参入コスト(ネットワーク構築費用(1,500万人)+顧客獲得費用+機会費用) 機会費用が2年の場合:約1.25兆円+ネットワーク構築費用(+1,000万人) 機会費用が3年の場合:約1.4兆円+ネットワーク構築費用(+1,000万人) 買収費用:1.5−2兆円 買収は、買収費用が新規参入コストより小さくなれば(買収費用<新規参入)となれば成功といえます。1,000万人分のネットワーク構築費用がどの位の投資が必要なのか知りたいところですね。しかし、買収の場合、新規参入と比べ、 +顧客獲得のリスクが減少 +既存の事業者を買収することで、競争者が一人減ること、 +ある程度のシェア(16.7%)と利益率の確保 などがあります。シェアが10%増える毎にROIが5%増えると、一般的に言われています。新規参入により顧客が獲得できないリスクと共に0からスタートするより、16.7%のマーケットシェアからはじめる方が断然有利だと思います。 これらのことを考慮すると、新規参入と比べ1兆円中盤での買収は、それ程高くなさそうです。 結論としては、買収後もうまく事業を継続させることが出来れば、1.5-2兆円というボーダフォンの携帯事業の買収額は、それ程割高でもないようです。しかし、他にもっと魅力的な事業が世の中にあると私は思います。また、新規参入のリスクに挑戦するのも経営手腕の見せ所で、個人的には面白いと思います。 みなさんがソフトバンクの経営者なら、買いますか? もっと多くの多角的情報を基に、ボーダフォンの企業価値評価をするのは楽しそうですね。
参考文献: 企業企業評価 トーマス 企業価値評価―バリュエーション 価値創造の理論と実践 マッキンゼーコーポレートファイナンスグループ |
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はじめまして!履歴から来ました。こんな買収話が進んでいたんですか?初めて知りました。それにしてもよく調べられてますね〜すごいです!!
2006/3/8(水) 午後 6:56 [ snugsky ]
あんたはえらい!の履歴からきました。ソフトバンクの評価はかねがね関心がありました。緻密な分析に敬意を表します。今後も期待しています。
2006/3/9(木) 午前 11:46 [ has**cs ]
本文、参考になりました。ところで、昔から、孫正義さんがすごい人であり、その周囲にもそれなりの人材がいると思っていましたので、今回のM&Aについては別に驚きませんでしたが、さすがだなぁ、とは思いました。
2006/3/11(土) 午前 10:59 [ inu**atsuo ]
snugskyさん、ご訪問・コメントありがとうございます。ボーダフォンの買収話は、移動通信業界には大変大きなニュースです。投資ファンドの買収話も出てきているので、ますます面白くなってきたと思います。
2006/3/12(日) 午後 1:10 [ phi*o_*phy ]
えっちゅうさん、ご訪問・コメントありがとうございます。私も、一般投資家動向を表す株として、ソフトバンク株に注文しています。これからもよろしくお願いします。
2006/3/12(日) 午後 1:14 [ phi*o_*phy ]
乾さん、コメントありがとうございます。ソフトバンクによる既存移動通信事業社の買収話は前々からありましたが、私はすごく驚きました。ソフトバンクは、買収をあきらめ新規参入のために着々と準備をしているものだと思っていました。
2006/3/12(日) 午後 1:17 [ phi*o_*phy ]
文章の内容に感嘆するばかりです。 中年の私には、とても書くことができません。 よく勉強されているようですね。 私の息子たちに見習せたいです。また訪問させて頂きます。
2006/3/18(土) 午後 9:01 [ doi3751 ]
携帯事業だけで考えるとリスクも大きいけど、ソフトバンクの事業全体で考えるとネットや野球と絡めると高い買い物ではないように感じますね。
2006/3/21(火) 午後 11:35
どいちゃん、コメントありがとうございます。今考えると、いろいろな事に感じたり考えたりする時間があったので書けたのだと思います。
2006/6/11(日) 午前 0:58 [ phi*o_*phy ]
まー君、コメントありがとうございます。現在の加入者と収益を維持できれば、私も高い買い物ではないと思います。ただ、金利上昇とお金をいつまで返せるかが懸念点ですね。
2006/6/11(日) 午前 1:04 [ phi*o_*phy ]