ZOOLOG@pipu

獣医学科の大学生ぴぷによる、ZOO(動物園)を主題としたBLOGです。日々のことや動物園に関することを思いつくまま書き連ねます。

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Face book の「Zoo enrichment」のページに、「Mixed exhibits」というアルバムがあります。
世界中のいろいろなところの動物園での、さまざまな動物種における混合展示の写真を掲載しています。

2011年12月25日現在で、47枚の写真がアップされていますが、どれもなかなか興味深いものばかりです。
例えば、とある動物の上に同居する別の動物(大抵サル類)がクマにまたがる金太郎よろしく乗っかっていたり、異なる2種が仲良く過ごしていたり、あるいはほどほどな緊張感を呈していたり、種同士で微妙な距離感を保っていたり、まったくお互いに気にもかけない存在であったり・・・というように、さまざまなケースが紹介されています。
世界中で見られるような混合の組み合わせもあれば、なかなか珍しい同居であったりもしています。

とにかくそこに毎度アップされる写真に感銘を受け、触発されたので、「混合展示」なるカテゴリを設けてしまいました。
まず最初の今回は、混合展示の基礎について論じてみたいと思います。


◆そもそも混合展示とは何か?

『新・飼育ハンドブック 動物園編4』(日本動物園水族館協会)では、
「目,科,種の異なる複数の動物種を同じエリアで展示することである」 と、定義しています。
説明するまでもないかもしれませんが、「同じエリア」というのは、英語で言うところの「enclosure」(いい和訳がないのだけれど、「囲い」「檻」など、すなわち原則的に動物が越えることのできない障壁で囲まれた空間=普段動物が生活する場所)のことで、一つのenclosureの中で分類学的に異なる2種以上の動物を飼育・展示することです。
その反対の語は「単一種展示」で、一つのenclosure内で一種のみ飼育します。いわゆるふつうの飼い方、と言っていいでしょう。


◆混合展示で飼育される動物にはどういうものがあるか?

『動物園学』(文永堂)では、
「野生で同じ地域を生息地とする種で,(願わくば)捕食関係にないものの中から,相対的に適切なものが選ばれる.」
というように述べています。
しかし、もう少し補足をすると、実態としては必ずしも同じ地域とは限らず、「同じような生活環境」であったり、場合によってはもともとの生息地も環境も異なる場合もあります。詳細は後述します。
適切であると思われる飼育動物の、種同士、個体同士の相性を慎重に評価し、必要であれば見合いや馴致などの期間をおいて、同居することが可能となります。
以上のプロセスを経て混合できる動物であれば、どんなものでも混合展示で飼育できると言えるでしょう。


◆なぜ混合展示は実施されるのか?その利点や注意すべき点は?

▼混合展示による利点の大きなものとして、特に生態展示などの場合、野生の環境をイメージしやすいということがあります。来園者に対する、教育的効果としての利点です。
誰もがイメージするアフリカのサバンナ、シマウマやアンテロープの群れが草を食み、その傍をキリンの家族が闊歩している光景を、混合展示では再現することができます。例を挙げ出せばきりがないですが、同じ生息地での共生関係、あるいは空間的な棲み分けの様子などは、教育的効果が非常に高いものだと考えられます。
「同じような生活環境」の場合もあると先述しましたが、例えば、水辺の環境ということで世界のあらゆる地域から集めた水鳥の混合などはイメージしやすいかもしれません。水族館の場合でも、「熱帯の淡水」ということで、世界の熱帯河川に棲む大型淡水魚(アマゾンのピラルクーとか東南アジアの大型ナマズのカイヤンとか)が同じ水槽に暮らしているのをしばしば見かけます。これらのような場合、まったく違う場所・分類群の動物でも住む環境によって似たような形態を持っていることや、あるいは多種との棲み分けのため独自の方法でそれぞれその環境に適応していることの比較ができるという利点があります。ただし、それらが野生でも本当に同じ地域に生息しているわけではないということは、慎重に、伝える努力をせねばなりません。

動物園(飼育管理者)の立場からの利点として大きなものに、「省スペース」が挙げられると思います。
単一種展示では、それぞれの種の要求する生活空間を用意せねばなりませんが、似たような環境を要求するものであれば同じにすることもでき、より広い空間を与えることもできます。これは、場所の管理の手間や費用などの節約に直結します。
ややネガティブな言い方をすると、「喧嘩しない」ものであれば、一箇所に押し込むことができるわけです。実態として、生態展示等でない場合の、生息地域を同じくしない動物の混合展示は、これが動機であることも少なくないと想像しています。
管理者にとっての利点もある一方で、混合することによって生じる、注意が必要な点もあります。
種が異なればそれぞれの栄養要求も異なるため、まったく違うものを主食としているような場合を除き、餌の与え方の管理が難しくなります。食物が原因での争いを生じさせる可能性もあります。
生物学的に種が近いものであれば、要求する環境や食物が似ることもありますが、あまりに近すぎると種間・亜種間での交雑個体を生む原因ともなります。(交雑についての議論は別の機会に)
それから、健康管理の問題もあります。闘争による怪我などは、個体間の相性や同居する時期(例えば、攻撃的になる繁殖期は避ける、など)を検討することで避けられたとしても、感染症が交差する可能性なども考慮しなければなりません。ある種の動物にとっては常在する微生物が、同居するもう一種には致命的な病原体となり得る場合などです。

飼育される動物にとっても、同じ空間に他種の動物がいる、ということは少なからずプラスになる(と考えられている)部分があります。
例えば、野生環境で共生関係にあるもの同士であれば、その行動を飼育下でも再現できるかもしれません。また、共生と言えるほど濃密な関係がなくとも、他種の存在は退屈になりがちな日常に適度な緊張感や刺激を与える可能性があります。
本来群れで暮らす動物で、何らかの事情で単独で飼育せねばならないとき、群れの生活という社会性を充たすための手段としても混合展示が用いられる場合もあります。似たような社会構造を持つ動物同士を、個体間の相性を鑑みながら同居させることで、それらの生活の質の向上につなげようとの意図です。野生での生息地も環境も異なる動物を混合飼育する理由としては、このような場合もあります。国内の例でも、ラクダ(中央アジアの砂漠)とアカシカ(ユーラシア全域の森林・平原など)や、キリン(アフリカ草原)とラマ(南米高地)など特に大型草食獣での例が顕著でしょうか。
これは混合展示に限ったことではないですが、四六時中、他者と生活することはあまり気の休まるものでないかもしれません。ひとりで過ごしたい時間に利用できるプライベートな空間や、弱い立場になってしまいがちな種には逃げ隠れできる場所などが与えられていれば、動物にとっても快適な混合展示となるでしょう。空間の広さ・容積・複雑さが解決する話かもしれません。

経験則的に、混合展示はある程度は動物のためになっていると考えられています。ただし、刺激や緊張感はストレスと紙一重の存在でもあります。
混合展示が本当に動物の福祉につながっているのか、環境エンリッチメントの手法として用いていいのか、残念ながら、客観的に調べられた研究成果は少ないようです。
今後の課題として、混合するすべての動物の立場からの、科学的な評価・研究が望まれるところです。


混合展示の概略はこのくらいにして、次からは「Mixed exhibits」よろしく、国内のさまざまな混合展示の例を示しながら、ケーススタディしていくことにしましょう。
わたしの写真の腕や、撮影できるタイミングの問題もありますので、もっといい例もあるかもしれませんし、既にどこかに掲載した写真も含まれます。その点はご容赦くださいね。
気力とネタの続く限り、継続して投稿していきます。お楽しみに。

(冒頭の写真は、高知県立のいち動物公園のサバンナ展示場。アミメキリン、グラントシマウマ、セーブルアンテロープ、写ってませんが当時はアフリカハゲコウも一緒に暮らしていました。国内で最も綺麗だと思う放飼場の一つです)

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冒頭の写真は外国の動物園かと思いました!

緑が素敵!秋に行けば紅葉かな?
地面にも草が生えているのが良いですね!

2011/12/25(日) 午後 9:10 [ さんぴん ]

日本の動物園の放飼場は、概して狭いのでなかなか緑が育ち難いですが、密度やバランスなどを考えれば何とかなるということを、のいちや、あと豊橋などでも証明されていますね。
のいちは特に、背後の山林を借景にしたり、人工物があまり目立たないような植栽の工夫もあるので、とても綺麗です。ここまでやれれば、生態展示もじゅうぶん来園者に感動を伝えられるものだと思います。

2011/12/25(日) 午後 9:24 ぴぷ

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お勉強させていただきました!

「Zoo enrichment」のページみましたが、ほんとに個体間の相性さえあえばどんな動物同士でもできてしまうものなのですね!
きっとその個体間の相性を見極めるのが難しいのでしょうけども。
「混合展示」の場合「単一種展示」よりもいろいろなリスクが高まりますが、それと同時にぴぷさんが指摘するように教育的効果も高まるので、ぜひぜひいろんな園館でいろんな混合展示取り組んでもらいたいです。

2011/12/25(日) 午後 9:46 [ ワカテ ]

海外、いろいろやってて面白いよね。特に、食肉目がからむやつと、霊長類同士のやつ。
ライオンとミーアキャット、オオカミとヒグマ、など、話には聞くけど、日本の狭い放飼場では難しいのかな・・・ゴリラとマンガベイのやつも面白いし、ゲラダとハイラックスもいいね。
ただ、日本にもなかったわけではないよね。多摩でツキノワグマとキツネ・タヌキとか。
それからモンキーのパタス平原、トムソンガゼルとの混合とかどこかまた復活させてくれると嬉しいんだけど。
今後またいろいろと面白い混合展示が出てくることを期待しましょう。

2011/12/25(日) 午後 10:59 ぴぷ


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