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最近読んで、とても感銘を受けた本です。
著:ヤン・マーテル
訳:唐沢則幸
竹書房
ISBN 4-8124-1533-0
2002年度のブッカー章も受賞したというこの作品・・・
普段から文学に疎いわたしなのですが、翻訳に加担させていただいた「ZOO animals」という英語本(現在訳本出版に向けて進行中!)の中で、推薦図書としてこの本が紹介されていたので、ならば読んでみよう、と思い買ってみたのでした。
Amazonの「商品の説明」は以下のとおりで、
1977年7月2日。インドのマドラスからカナダのモントリオールへと出航した日本の貨物船ツシマ丸は太平洋上で嵐に巻き込まれ、あえなく沈没した。たった一艘しかない救命ボートに乗り助かったのは、動物たちを連れカナダへ移住する途中だったインドの動物園経営者の息子パイ・パテル16歳。ほかには後脚を骨折したシマウマ、オランウータン、ハイエナ、そしてこの世で最も美しく危険な獣―ベンガルトラのリチャード・パーカーが一緒だった。広大な海洋にぽつりと浮かぶ命の舟。残されたのはわずかな非常食と水。こうして1人と4頭の凄絶なサバイバル漂流が始まった…。生き残るのは誰か?そして待つ衝撃のラストシーン!!文学史上類を見ない出色の冒険小説。
とあるように、メインは、主人公パイと、ベンガルトラのリチャード・パーカーの冒険物語なんですが、肝心の冒険が始まるのは本の真ん中半分くらいからで、それまでの半分はひたすら、主人公パイの生涯や
彼のお父さんが経営する動物園を通じてのパイの動物や動物園に対する見方というようなことが、ただひたすら、つらつらと続いています。
でも、実はなかなかその前半部分が非常に面白い。
パイを通した、著者の「動物園観」みたいなものが、とても思慮深くて、一読の価値は充分にあります。
勿論、ブッカー賞を取っているくらいだから、特に後半の冒険部分で、単に読み物として読む価値もあります。
著者は恐らく、特に動物園と関わって生きてきた人ではないようだけれど、でも動物園の本質をよく理解しているように思えます。
いろいろ紹介したいところはあるのですが、数々の名場面の中から、いちばん、オー良くぞ言ってくれた、と思った一箇所だけ、ご紹介したいと思います。
〜それでも、逃げようとする動物はいた。不釣り合いな檻や囲いに入れられた動物がそうだ。どんな動物でもそれにふさわしい棲息条件がある。囲いや檻に日が当たりすぎたり、湿りすぎていたり、なにもなさすぎたり、止まり木が高すぎたり、(中略)、ころげまわるのに十分な泥がなかったり、まだまだほかにもあるが、そうすると動物たちは心安らかでいられなくなる。こういう基本的な条件がかなえられるかどうかに比べたら、野生の環境を模した設備を作るかどうかは大きな問題ではない。囲いの中は動物にとって最適なものでなければならない――別のいい方をすれば、動物の適応力の範囲内でなければならないのだ。劣悪な環境の動物園などくそくらえだ! おかげでまともな動物園まで評判が悪くなってしまう。〜
「野生動物」を飼育することの基本中の基本は、ここにあるような気がします。そしてこれは、環境エンリッチメントとも通じてくることで、エンリッチメントは特殊な技として別くくりにされるものではなく、ごく基礎的な飼育技術のなかに本質的に含まれているべきものだということをとても明快にあらわしているように思います。
「行動展示」か「生態展示」かどうかとか、見た目に華やかとか、そういうことはそこで暮らす動物たちにはあまり関係のないことで、限られた行動圏であるその囲いの中がどれほどふさわしく、快適か、ということをわたしたちはもっともっと考え、評価しないといけないのです。
それ以外にも、野生動物に対する考え方とか、動物との接触の仕方とか、動物園とそれを取り巻く社会との関係とか、動物の行動学とか、オペラント条件付けの実践例とか、ほんとにこれはフィクションの小説なのっていうくらいに、リアルで、教唆に富んだ動物園に関する記述がなされています。
訳者の方は動物の専門家ではないので・・・しかたないけれど・・・
動物の名前の和訳などがぶっ飛んでいる(「獅子尾マカーク」とか「ミドリウミガメ」とか・・・)のはご愛嬌。
とにかく、オススメします。
おまけ
リチャード・パーカー、ではないけれど、東武動物公園のベンガルトラ、ロッキーとメープル。
先週の東武は実はなんと2年半ぶりくらいの訪問で、この子たちに会うのは初めて。
東武の猫エリア、話には聞いていたけど、以前よりメンツがグッと減ったのはちょっと寂しかった。
でもそれ以上に、トラとライオンのための豪邸が、非常に面白かった。今度紹介します。
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動物園・水族館
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このブログのテーマに則り、動物園話題で。
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英国・ペイントン動物園のラクダ舎(ちょうど1年前だなぁ) コドモのフタコブラクダ〜可愛い〜 海から程近い、小高い山の上にある動物園なので、いかにも英国風なペイントンの街並みの向こうに海を望むことができます。 ですが、森林の中に作られた園なので、広大な園内でも海が見えるのは唯一、このラクダ舎の背景だけ。 大島公園のラクダ舎からの眺めはこんな感じ キーパーさんとスキンシップを取る、フタコブラクダのランテンちゃん。 ここは島なので、すぐ下に、太平洋!って勢いです。 ラクダは海を見て何を感じるのだろうか・・・ フタコブラクダはヒトと出会わなければ、アジアの内陸の砂漠で、海とはまったく無縁の生活をしていたかもしれない。 しかし、遠い昔に家畜化され、ヒトの友達となったので、もし「動物園」というものがこの世になかったとしても、ラクダは海を見たでしょう。 海とラクダという取り合わせは、必然なのか? ラクダの向こうに海を眺める、のは、なんだか哲学的な気分になります。
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GW中はほとんど家に引きこもり・・・いやいや、倹約の生活をしていましたが、 明日は超早起きをして・・・! 念願の、あの島の動物園に行きます! あ〜青い風、切って〜走れ、あの島〜へ〜♪ なかなかチャンスがなく、一人で行くにも敷居が高かったのですが、 幸運にも動物園ファンのおじさま・お姉さまがたと一緒にプチツアーにて。 あの動物にも会えるかな・・・! 八丈島じゃないよ! てなわけで、そろそろご飯食べて、寝ます。
お休みなさい〜 |
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今年ものこの季節がやってまいりました!!
エンリッチメント大賞2010!!
NPO法人 市民ZOOネットワーク の主催により、今年で早9回目を迎えます。
今年のキャッチコピーは、
「いやし系? いやされたいのは私たちも同じです」
昨年の大賞を受賞した、長崎バイオパークのカピバラをモデルにさせていただきました。
(長崎バイオパークより、ポスター写真の協力をいただきました)
お近くの(というか近くじゃなくても全然構いませんが)動物園・水族館の、あるいはそこの職員の方の、
スバラシイ取り組みを、どんどんご推薦ください!
自薦他薦問いません。動物たちのための取り組みならば、どんなことでも構いません。
ここ数年、動物園はずいぶん世間から注目され、見直されてきました。
でもまだまだ、抱える問題はたくさん・・・
増えただの減っただの入園者数でしか価値をはかれなかったり、何かにつけ行動展示だとこじつけてみたり、
何の影響でしょうかここしばらくの近づきたい・触りたい・餌をあげたい欲求に迎合するような動物飼育・・・
お上が変われば動物園の理念も計画も即座に頓挫するなぞのシステム・・・
飼われている動物たちがあおりを食うような事態にもなりかねません。
そういう問題を解決するための手段の一つとして、「エンリッチメント」があるかもしれません。
それから、その「エンリッチメント」を通じて、来園者と動物園とのつながりがより強固な・よい関係になっていくかもしれません。
みんなで「エンリッチメント」について、考えてみませんか?
ご応募、お待ちしてます!
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