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前回Pilot Pureの記事を載せたが、最近主流になっている、トレッドに違ったコンパウンド2種類を使っているタイヤについて再度「おさらい」をしたい。
というのも、この手のタイヤについて、間違った知識が堂々と蔓延しているからなのである。信じられないことに、大手タイヤショップや雑誌などでもいまだに勘違いしていることを言っているのがみられるのには驚かせられる。
まず、タイヤが生み出すグリップ力の原理を理解しなければならない。
第一に、基本的にこの手のタイヤについては、ライフが長い、耐摩耗性を重視したコンパウンドと、いわゆるグリップがいいコンパウンドを違う部位に使用しているのだが、これは「コンパウンドが硬いもの、柔らかいもの」を使用しているのではないのである。
タイヤが生み出すグリップ力はそんな単純なものではないのだ。タイヤは硬度で絶対的なグリップが決まるのではなく、ゴム特性が持つヒステレシスロスによる部分が大きいという点を理解しなければならない。相対的にハイグリップタイヤが硬度が低く、ツーリングタイヤが硬度が高くなる傾向になるのは事実ではあるが、まず硬度ありきではないのだ。
大体タイヤ硬度は数字では50とか55というように表すのだが、この数字が大きくなると硬いゴムとなり、少なくなると柔らかいゴムということになるのだが、この手のタイヤではせいぜいゴム硬度の違いは「あっても3程度」なのが実際のところ。耐摩耗にしても、10%程度良い程度というレベルである。体感上、ライディングしてもその柔らかさを感じることはまずあり得ない。
ちなみに、我々テストライダーはタイヤ硬度については2違うと感知できるが、柔らかさを感知するのではなく、あくまでもグリップ力の差異を感知するのである。
一般ライダーでは4違ってもその差異を感知できるのは難しいと思う。恐らく8以上違わないと違いはわからないと思う。
第二に、ブリヂストンでは3LC(旧SACT構造)と言ったり、ミシュランでは2CTなんて呼んでいるこのタイヤだが、トレッド部分を製造するときにexcluderという押し出し機に装着されている複数の口金を使用している(通常のタイヤは単一)のだが、隣り合うゴムの特性が違い過ぎると接着がうまくいかないところがある。よって隣り合わせになるコンパウンドは必然的に同じような特性のものになってしまうのである。
つまり、上記の理由により、使われている複数のコンパウンドは、大してグリップ力の差は見られないというのが実際のところなのだ。見られないといより、ゴム特性のため無理なのである。
だから、雑誌のインプレなんかで、「バンクさせると、ショルダーのコンパウンドの柔らかさを感じる」なんて言っているのは全くわかってないインチキライダー。柔らかいのではなく、グリップがほんのわずか(本当にわずか)上がっているだけなのである。
トレッドコンパウンド自体の実際の柔らかさが感じられるのは、3とかいう数字ではなく、もっと大きく違わないと無理。
ただ、「違い」はあるには間違いなく、タイヤのライフも実際10%程度向上する。10000km走れるタイヤなら、11000km走れるということになる。
実際の耐摩耗性はこのように大したことないのだが、ライフ以上に大切なのは心理的要素ではなかろうか。誰だってバンクさせたときのグリップは欲しい。僅かであってもちゃんとショルダー部分はグリップは増しているので、安心は安心である。
技術的には面白くも何ともないのでエンジニアはやりたくないタイヤではあるのだが、営業サイドからの要望が大変強いのでどのメーカーも力を入れているといわけなのである。センターとショルダーのコンパウンドを分けたタイヤは実際良く売れるらしい。
2年ぐらい前までブリヂストンが持っていた特許が失効したため、一気に世界中のメーカーが作り始めたという経緯があるのだけど、そのブリジストンは間髪を入れずに更に細かいトレッド配分(3種類)のタイヤ市場にを投入。元祖の意地を見せた。こちらも特許を取ってあるので、他社はまた15年ほどは同様のタイヤが作れないといことになる(笑)
私はこの手のタイヤは賛成の立場かな。10%でもライフが伸びるのはいいことだし、プロファイルの変化を少しでも抑えられるからだ。
センター部分にPilot Road 2のコンパウンドを使用し、ショルダー部分にPilot Oneのコンパウンドを使うのは技術的に難しいのだけど、今後の製品展開に期待したいと思っている (^_^)
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