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会計監査の『期待ギャップ』をどう埋めていくか
ある上場企業が倒産したと仮定しましょう。倒産直前の会計監査で出ていた「適正意見」を信じて株式を購入した投資家は「『適正意見=問題なし』という監査人の"お墨付き"を信じて購入したのに、その株式が紙くず同然になった」と憤りを感じるのではないでしょうか?
監査では求められなかった「経営上の不正行為発見」
これまでの会計監査では、会社の不正行為を見つけることまでは求めてはいなかった
従来の会計監査では、監査人に会社の不正行為を発見することを義務づけていません。あくまでも「会社の内部統制が機能している」を前提に、会社が作成する財務諸表に誤りがないかどうかチェックすることに重点を置いていました。ただ、一般的には会計監査の過程で、粉飾決算や経営者の着服行為などの不正行為を発見することを期待する向きがあることも事実です。このように投資家が会計監査人に抱く期待と、現実の監査機能の違いは「期待ギャップ」と言われます。
この「期待ギャップ」を解消するために、抜き打ち調査などで不正経営を予防・発見できるように、監査の質を高め投資家の財務諸表への信頼を確保しようという動きが注目されています。日本経済新聞2005年5月31日付夕刊の「会計監査 不正発見に重点」の記事によれば、日本公認会計士協会は、不正予防・発見のため監査手続きの世界標準である国際監査基準(ISA)に沿った新しい国内基準の策定作業を進めています。完成のメドは2006年度末です。
「会社法」では監査法人も株主訴訟の対象に
公認会計士協会は、監査の質の向上、財務諸表の信頼度向上を目的として、会計士および監査法人に対する調査活動、いわゆる監査の「品質管理レビュー」(品質管理レビューに関しては、http://www.fsa.go.jp/cpaaob/shinsakensa/jittai/01.pdfを参照)を行ってきました。改正公認会計士法では、その調査に法的な根拠が示されました。法的な根拠を得る以前に協会が行っていた品質管理レビューは、公認会計士という"業界内"における自主点検の域を出ませんでした。しかも、独立した第三者機関によるレビューではないため、いわば"なれ合い的"な運用だった側面も否定できません。自主規制的な従来の品質管理レビューに対して、公認会計士協会から独立した行政などの検査などを求めるという提言もなされています。
公認会計士、監査法人の所轄官庁である金融庁は会計監査の点検改善を要求する書(http://www.fsa.go.jp/cpaaob/shinsakensa/houshin/20050616.pdf)を公表しています。また、民間団体である「会計制度監視機構(http://www.aob-jimu.jp/)」も公認会計士・監査法人による監査の品質管理・向上のため環境を整備する必要性について提言しています。
来年の成立が目指されている「会社法」では、会計監査人が株主代表訴訟の対象となります。別の言い方をすれば、会計監査が客観的に検証されるようになるわけです。監査に寄せる一般社会の期待と、実際に提供される監査の間の「期待ギャップ」が縮小する方向に向かうきっかけになればと思います。
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