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誰が経営者の行動をチェックするのか
「経営者の行動を如何にしてチェックするのか」という問題に関しては様々な制度が設定されています。一つは株主総会です。たとえば取締役の選任については株主総会での議決事項ですから、株主が現経営陣および取締役に関して不満がある場合には選任しないという権利を行使すればいいわけです。ただし、現実には株主総会はほとんど機能していません。多くの株主は株主総会に無関心であること、株主総会の案内状が来ても、多くの人はそのままにしているか委任状を出す程度です。また配当や株価などに関心がある株主ばかりではなく外国人の株主が増えている現状では、株主総会において実際に株主が議決権を行使するということはほとんどまれであり、実質的な経営意思決定の場として機能しているとは言いがたい状況です。 ?
第二に社外取締役による経営のチェックが上げられます。アメリカでは社外取締役の役割が大きく取り上げられることもあります。たとえば1992年に当時GMの会長だったボブ・ステンペルが社外取締役によって解任されるという事件が起こっています。またアメリカでは取締役会において社外取締役のほうが人数が多いという状況も見られます。日本でも最近多くの企業で導入されるようになりました。たとえばソニーが社外取締役として、中谷巌氏(当時一橋大学教授)を招聘したことは大きくマスコミにも取り上げられました。社外取締役は、普段から当該企業の経営に携わっているわけではないことから、企業経営者と社外取締役との間にいわゆる情報の非対称性が存在するため期待するほど機能しないのではないか、また、取締役に課されている無限・連帯責任を社外取締役に負わせることによって、社外取締役を本来必要とする企業で社外取締役になる人がいなくなってしまうのではないか、さらには社外取締役制度を各企業が導入すると、社外取締役を十分確保することが難しくなる、などの問題点が指摘されています。他方、社外取締役が異質な意見を言うことによって、取締役会の場がこれまでとは違った状況になる可能性はありえます。日本においては社外取締役の制度が浸透し始めたばかりであり、その評価については時間をおく必要があるでしょう。
第三に、監査役の権利を拡大してチェック機能をうまく果たすようにするという議論も可能でしょう。しかし監査役が社長によって任命されるという構造のもとでは、監査役が反対意見を堂々と述べるという状況は生まれにくいものです。また重要な意思決定は少数のトップマネジメントによって行われるという状況が改善されない限り、監査役がその意思決定の内容を知ったときにはすでにチェックするには遅すぎるという状況も考えられます。社内監査役と会計監査人との連携を図り、監査による経営のチェックを有効に行うことも考えられますが、アメリカのエンロンやワールドコムにも見られるように、会計監査人による経営のチェックは機能しない場合もあります。 ?
このように考えると、いずれも何らかの問題を抱えているようです。ただし企業も様々な改革を行いつつあります。その一つが株主総会の活性化です。たとえば、株主総会への出席と議決権行使に対する株主の関心を惹きつけるために、具体的には、「株主総会の招集通知を読みやすいスタイルにする」「企業の考え方や財務内容の分析を丁寧に書き込んだ資料を添付する」「他社と開催日をずらす」「工場見学や自社製品の体験コーナーを設定する」など、様々な工夫を凝らしています。また、株主総会の定足数の見直し、総会決議事項の見直し、基準日制度の見直し、など制度的側面の変更を行うことによって、株主総会は、役員の選任など株主の最も基本的な権利の行使とディスクロージャーの場として、実態に見合った法的役割を明確化することができるという主張もされています。将来的にはITを活用して株主総会を行うことができるような制度改正も考えられます。
経営者のチェックメカニズムの議論に関しては、取締役会や監査役にチェックを任せるのではなく全社レベルで従業員が経営陣の意思決定をチェックするシステムを作り出すべきである、という議論もあります。企業活動の最大の利害関係者は長期にわたってコミットをしている従業員です。その従業員が経営陣に対するチェック機能を果たす仕組みを作れば、企業の長期的な存続のためにいったいどうすればいいのか、という点から経営陣の行動がチェックされるのではないかと言う考え方です。
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