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経営学

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「製品開発」

 イントロダクション

 1980年代に入り、日本企業の競争力に関する研究が活発化するに伴って、研究対象として大きく取り上げられるようになったトピックのひとつがイノベーション、特に日本企業の製品開発・製品イノベーションを対象とした分析です。そして新製品開発が企業の競争優位に大きく影響を与えている現在、「いかに速く新製品を開発していくか」「いかに効率よく新製品を開発するか」という問題が非常に重要視されており、経営学におけるイノベーション研究もこの問題設定に関して自動車産業を中心として様々な分析が試みられています。

 ?藤本(1998)にも示されていますが、80年代は、アメリカの自動車メーカーは販売開始62ヶ月前から新製品の開発を行うのに対して、日本の自動車メーカーは販売開始43ヶ月前から製品開発を始めています。しかし90年代に入ると日本経済の停滞に伴う新製品開発の停滞とアメリカ企業の製品開発面における急速なキャッチアップによって、日米ともに販売開始51ヶ月前から開発を始めるという状況に変わっています。

 このように80年代は、アメリカの企業と比較して日本の自動車メーカーは製品開発がかなり柔軟かつスピーディーに行われていました。これはアメリカ企業と異なり、日本の自動車メーカーが製品コンセプトと先行開発をほぼ同時に始めたり、製品の詳細設計や試作、実験を行う製品エンジニアリングと設備や工具の設計や製作を行う工程エンジニアリングを時期をあけることなく同時平行的に展開していたことがその原因です。

 ?同時並行的に作業を進めていくこと、いわばオーバーラップが可能となるのは、組織内でのコミュニケーションが密に行われており、技術者間で未確定の情報を交換し合ってそれを処理するような能力があることが原因として挙げられています。言い換えると、部門間コンフリクトが発生している組織ではこのようなオーバーラップは単に開発パフォーマンスを低下させてしまうだけです。アメリカ企業と比べて日本企業には技術者間の相互信頼関係や協調的・柔軟な態度・目標の共有化が進んでいるため、オーバーラップ型開発が成功すると解釈されています。

 

 

部品の共通化・モジュール化


 生産におけるもうひとつの変化の潮流は、部品の共通化およびモジュール化です。製品の競争力を決めるひとつのそして大きな要因は価格であり、低価格で品質のいい製品を作るためには、品質を維持しつつ他社よりも如何にコストを削減するかにかかってきます。

 日本経済新聞2002年2月8日付夕刊の一面に、「部品資材費 日産が15%削減」という記事が出ていました。それによると2000年度からのリバイバルプランで部品・資材購入費の20%を削減してきたが、さらにコスト競争力を高めるために、現在よりも15%購買費を減らし、現在の生産台数が変わらないとすると、これは総額4000億円のコスト削減につながるとのことです。

 このように自動車メーカーは部品メーカーや資材メーカーから部品などを購入しているためその購買費は多額に上ります。部品のコスト削減は重要な経営課題であり、そのために現在進められている方策のひとつが部品の共通化です。外見は異なる自動車でありながら、使われている部品は各車共通ということになると、生産される部品のロットは非常に大きくなり量産効果が発揮されます。また部品を生産するための金型の設計や生産コストを削減することも可能です。自動車の設計においても、新たに部品の設計をする必要がなくなるので設計コストも低く抑えることが可能となります。つまり部品の共通化を推し進めると部品を生産するコストが低下し、結果的に自動車の生産コストを削減することができます。採算が取れる生産台数も低く抑えることができ、少量の台数しか売れなくても利益を出すことができます。これは消費者のニーズが多様化して同じ自動車を大量に生産しても売れないという状況の中では非常に有利な立場に立つことができます。ある車では部品の共通化率が40%というものもあります。ただし部品を共通化することによって自動車の個性がなくなるという問題点が新たに発生するかもしれません。

 もうひとつのコスト削減策は部品のモジュール化です。モジュール化とは、たとえば機能的の相互依存関係にある部品同士をひとまとめにして、より大きな物理的単位にするなど、複数の部品を物理的に一体化することです。これによって自動車メーカーは完成車の組み立てラインを短くすることができると同時に、組み立て部品点数が少なくなり、生産効率が上がります。またエンジン本体や車体構造などに開発を注力することによって開発期間を短縮することができたり、部品の在庫管理や搬入・搬出作業が少なくなって管理コストを削減することもできるようになります。たとえばブリヂストン・曙ブレーキ・カヤバ工業の3社は車の足回りに関してサスペンションモジュールを開発しています。

 日本経済新聞2002年1月29日付け朝刊の「競争力の研究」にモジュール化についての解説が行われています。それによると、モジュール化のさきがけはアメリカIBMが1964年にはじめた試みだとされています。モジュール部品を作り、共有する機種間で互換を可能にすることによって、それまでの一品生産とは異なる生産方式をはじめたということです。

 部品のモジュール化はコスト構造のブラックボックス化を招く可能性もありますから、自動車組み立てメーカーと部品サプライヤー企業との取引関係に何らかの影響を及ぼす可能性もあります。化学合成によるモジュール部品の場合は、どのような材料がどのような比率で配合されているかわからなくなってしまいますから、特にコスト構造はわからなくなります。従来は自動車メーカー側が部品のコスト構造などを把握していたため、部品メーカーに対してコストダウンの要求をシビアに(しかし無理のない範囲で)要求したり、共同でコスト削減を行ったりしていました。しかし、モジュール化が進むことによって、欧米では単なる部品メーカーが直接的に自動車組み立てメーカーに部品を納入する取引形態は徐々になくなりつつあり、ビステオンなどのいわゆるティア1メーカーを通してしか部品メーカーは自動車メーカーと取引できなくなっています。そのため部品メーカーのコントロールは自動車組み立てメーカーではなく、ティア1メーカーに移り、日本企業の取引慣行にも何らかの変化が発生する可能性は十分に考えられます。

 大量の部品を正確に組み立て最終製品に仕上げていくことは非常に難しい技術が要求されますが、少数のモジュール部品をつなぎ合わせていくだけであれば、組み立てという作業の付加価値は非常に低いものになり、人件費の安い国に生産工程が移転することも十分にありえるでしょう。いずれにしても、モジュール化によって下請けや調達のあり方、国際分業のあり方など、いわゆる分業の仕組みは何らかの影響を受けると思われます。

セル方式


 最近、新たな生産方式が急速に広がっています。東南アジアや中国の人件費の安さによって、日本国内の工場は相対的に高コスト体質になっています。そのため向上が国内から海外に向けてどんどんと流出しており、国内の空洞化も再び問題になりつつあるようです。このような低賃金国の生産性に対抗して人件費の高い国内でも高い生産性を達成するために考え出されたひとつの生産方法がセル方式です。たとえば「セル方式」というキーワードで検索すると以下のようなサイトが引っかかります。 ? 「ビデオ1台を作るのに20時間かけたころは組み立ては付加価値だった。それが今は20分に凝縮。価値は組み立ての外縁に広がった」――消費不況の中でビデオ関連機器を中心に売り上げを伸ばすソニーの生産子会社、ソニー幸田(愛知県幸田町)から全生産スペース約2万2300平方メートルの半分がこつ然と消えた。 (中略) まず92年にビデオカメラのカムコーダーを製造するコンベヤーラインを全廃。少人数の作業者で構成しながら、それぞれのグループがラインとして完結するワークセル生産方式に切り替えた。この時点で建屋全体の84%を占有した生産スペースが59%に減少した。 間締めの根幹は最も価値を生まない構内物流の排除。このプロセスを省けば個々のワークセルは「1人生産」へと自己矮小(わいしょう)化していく。現在、主力のカムコーダーは25-30人のチームが、メカデッキと回路基板の総合組み立て、自動調整、検査、こん包の5つの工程を分担、1セルが1日500台のペースで製品を作る。1平方メートルあたりの仕事量を「コンベヤー生産を100」として比べると、セル導入時の95年は134,それが今年8月には378と飛躍的に進化した。1セルあたりのスペースはコンベヤーの3分の1以下に減った。設備を固定したコンベヤーラインに比べ、天井に取り付けた金網に工具をぶら下げただけの「ブドウ棚」ラインは自らの姿を刻々と変える十分なフレキシビリティーを備えていた。 (略) http://www.nikkei.co.jp/topic/tokushu2/eimi009727.html ? 生産現場の革新もしました。ベルトコンベヤー方式から、1人の従業員が多工程を受け持つセル方式に切り替えた結果、全世界でベルトコンベヤーを1万6000メートル強廃却。余剰スペースが38万平方メートルできました。そのスペースを完成品の倉庫として使うことで、外部倉庫も34から17に減らせた。セル方式では、当初6人で1つの完成品をつくっていましたが、作業員の習熟につれて4人でできる謔、になった。生産性が3割以上上がったのです。またセル方式では製品切り替えに要する時間がわずかですむため、生産調整が容易になりました。こうした改革の結果、工場の運転資金は約3分の1に減りました。 http://economist.mainichi.co.jp/e-kabu/cmp/0227.html ?

 このように、セル方式とは、少人数のチームもしくは一人で最初から最後まで部品を組み立てて製品に仕上げていく生産方法です。ベルトコンベアをやめて、担当作業が完結するようにひとつのセル(細胞)を形成しているように見えることから名づけられたのでしょう。これによって作業者の生産する製品に対するある種の責任感を醸成したり、建屋面積を削減することができます。また一人の人が組立作業を完結して行うことによって作業者の習熟による生産性の上昇、仕掛品在庫の削減などによるコストダウンが可能になります。生産の請負で有名なソレクトロンも、その競争力の源泉のひとつとしてこのセル生産方式が影響しているようです。

トヨタ生産システム


 このフォードシステムの対極に位置するものが多品種少量生産を目指したトヨタシステムです。トヨタは今でこそ日本の優良企業の筆頭に上げられますが、一時期、過剰在庫に苦しみ、存続の危機に陥ったこともあります。この問題を解決するために、トヨタ自動車の大野耐一はスーパーマーケットにヒントを得て、後工程が引き取る量だけ前工程は生産するというコンセプトを考え出しました。そうすると作りすぎることによって無駄が発生することもありません。少量の生産にも耐えられます。

 トヨタ生産システムの目標は過剰人員、過剰設備、過剰在庫の3つの無駄を排除することにあります。特にヒトの無駄は重要です。工程に必要以上に人がたくさんいると、各人が仕事をすることによって作りすぎてしまうのです。すると後工程に余分な在庫が発生し、そのための倉庫を建築したり、在庫管理を一層厳密に行わなければならなくなります。企業にとっては人が多いことは人件費の問題だけでなく、トータルでコストアップの要因になるわけです。とにかく、トヨタ生産システムにおいては、無駄の中心は「多すぎるヒト」にあり、過剰人員を削減することが重要な要因のひとつなのです。

 しかし無駄がなければ突発的な状況に対応できません。言い換えると無駄があることによって変動を吸収することができるわけですが、限りなく人員を削減すると生産数量の変動に対応できなくなります。トヨタはこの問題に対応するために、需要量をできるだけ早く正確に知り、さらにあまり生産量の変動のない状況を作る必要が出てきました。そこでいくつかの工夫を開発しました。

 そのひとつがオーダーエントリーシステムです。これは販売店における顧客の注文をすぐに工場に送る仕組みです。また車種が違っても同じ生産ラインを使って生産できる混流生産の仕組みも構築しました。ひとつのラインでいろいろな車種を生産するというのはそれほど簡単なことではありません。車種によって車体の形状は異なりますから、たとえば異なる車種を生産するためにはプレスの型を変えなければなりません。トヨタは混流生産を可能にするために、金型やプレスの変更時間=段取り替え時間の短縮、U字型生産ラインにすることによる多能工の育成などさまざまな工夫を行うことによって、生産の平準化を達成し、需要変動に対応できるようにしました。

 またトラブル対処の方法も編み出しました。最小の在庫で生産ラインを稼働させていると、不良品が続けて作り出されることを防止する手段が必要になります。そこで、各工程でのトラブルの発生が一目でわかるようにラインストップ表示板が工場の天井からつり下げられました。作業の遅れを調整するために助けを呼ぶ場合は黄色、機械の異常を直すためラインをストップする必要が生じた場合は赤色が転倒するようになっています。
このような工夫の結果、多くの車種をロットが小さくても効率よく生産することができるようになりました。フォードシステムの少品種大量生産ではなく、多品種少量生産が可能になったわけです。消費者のニーズが多様化している状況において、きわめて迅速に細かなニーズに対応することができますから、欧米の企業がまねをしようとするのも当然です。

 

フォードシステム


 生産システムとしてまず第一にとりあげられるのはフォードシステムです。フォードシステムは「(少品種)大量生産」を基本コンセプトとし、「標準化」と「移動組立ライン」という大きく二つの要因がこの生産システムを支えています。

 先進国において自動車は今でこそ多くの人が保有していますが、20世紀初頭はまだまだ「高嶺の花」で、ある特定の社会階層の人だけが保有するぜいたく品でした。このような状況に対してフォード社を設立したヘンリー・フォードは、何とかして一般大衆、特に農村の人も自動車に乗れるようにしたいと考えていました。価格を引き下げるためには大量生産方式によるコストダウンが必要です。そのため、ヘンリー・フォードは大量の製品を迅速に効率よく生産できるように、標準化と移動組み立てラインという方法を編み出したのです。

 フォードシステムでは製品・部品・工程などさまざまな分野で標準化が行われました。まず製品は黒のT型フォード一車種のみです。1906年にN型フォード、1908年にN型の後継車種としてT型フォードを発売しましたが、1909年になるとT形フォードのみに車種を限定しました。そのためさまざまな部品を作る必要性はなくなりました。このように部品を標準化することによって、一度に大量のロットの部品が作られますから、部品のコストが下がります。生産現場の労働者の学習によって歩留まりが高くなるなど生産効率も上昇し、さらにコストダウンが可能となります。また工程が標準化されることによって、生産業務に精通していない非熟練工でもすぐに働くことができるようになります。

 もうひとつの要因である移動組立ラインは大量生産方式がはじまって4年後の1913年に導入されました。移動組み立てラインが導入される以前は、静止している自動車の回りを労働者が動いて組み立てていく方式がとられていました。しかし労働者が静止したままで未完成の自動車がライン上を動くことによって時間が節約されると考えたのです。D・ハルバースタムの「覇者の驕り」によると、以前は1台の生産に13時間かかっていましたが、巻揚機でシャーシを引っ張るようにして組み立てライン上を動かしていくことによって5時間50分に短縮され、さらに自動ベルトコンベヤを導入すると1台を1時間半で組み立てることができるようになりました。

 このような生産技術の革新に伴うフォード社の価格の推移を見てみましょう。1907年のN型の価格は600ドルだったのに対して、1908年のT型の価格は850ドル、1909年は950ドルでしたから、発売当初T型は決して安いものではありませんでした。これはトランスミッションやエンジンなどに関して新しい技術を導入していたことが原因です。しかし1909年にT型のみに生産車種を限定してフォードは価格の引き下げに本格的な努力を始めます。1910年780ドル、1912年600ドル、ベルトコンベヤを導入した移動組み立てライン方式を始めた1913年は550ドル、そして1916年には360ドルにまで価格が低下していきます。このような大量生産を可能になせる生産システムを構築することによって、コストを最小限に抑えて価格を低下させ、自動車の大衆化を実現させたわけです。

 ただし、フォードシステムには大きな欠点があったことも事実です。第一に極度の分業と標準化は単調な作業を反復して行うことを労働者に要求します。これは労働の非人間化という問題を引き起こすことになりました。ちなみにチャップリンの「モダンタイムス」はテーラーやフォード生産システムを揶揄したものです。人間が働く場として場としては決して恵まれた環境ではなかったわけです。その結果、労働に対するモティベーションが低下、それによる生産性の低下を招くことになりました。

 第二に、黒のT型フォードの1車種しか生産していなかったため、消費者に飽きられることになります。生産活動の活発化によって人々の生活が裕福になると、消費者のニーズは多様化していきます。すると最初は自動車を持つことそのものに対して満足感を得ていた消費者は次第に他の人とは異なる自動車、差別化された自動車をほしがるようになってきたわけです。しかしフォードはT型に固執しました。それに対してフォードの競争相手であるGMはフルライン戦略を採用し、多くの種類を市場に供給していきました。その結果、消費者はフォードからGMにスイッチしてしまい、フォードの競争力は急速に低下していったのです。量産効果によるコストダウンを極限まで追及していったために、消費者のニーズに応えることができなくなったのです。


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