|
調整メカニズム
分業には調整が不可欠です。調整なしには分業のメリットを享受することはできません。ピン生産の例で言いますと、10に分割した工程において、各人の仕事の量や質、タイミングを合わせることなどをしなければ、仕事の速い人はどんどん仕事を片付けるでしょうが、仕事の遅い人がいるとそこで滞留してしまいます。もしかしたら、相互に自立的に調整を行うために10人くらいの集団を調整することはそれほど難しくはないかもしれませんが、何万人もの従業員からなる大企業の場合だと、そう簡単な話ではありません。相互に作業状況を確かめ合うことができない時は作業間の調整は不可欠です。たとえば200人くらいの調整はリーダー(企業ならば社長)によって可能かもしれません。しかしさらに集団の規模が大きくなると、ひとりのリーダーですべての調整を行うことは難しくなります。このような大きな集団を調整するためには、その大きな集団をいくつかのより小さな集団に分割し、その小集団にサブリーダーをつけることによって全体的な調整が行われるようになります。サブリーダーは自分が担当する小集団の中の仕事を調整しながらその状況を上のリーダーに報告し、その報告を受けたリーダーは各小集団の状況を把握し、各サブリーダーに指示を発して全体の活動を調整していきます。この状況がある程度長期にわたって続くと権限という調整メカニズムに基づく企業組織が生まれることになります。
経済社会全体という、もう少し大きな視点で見ると、また違った調整メカニズムが存在することがわかります。人や企業が一つの作業に特化して様々なものを作ったとしても、他人の作ったものと交換できなければ何の役にも立ちません。社会レベルでの分業は交換という(社会的な)調整があって初めて意味をなします。たとえば自動車の生産を考えてみましょう。自動車に必要な部品は市場が小規模で需要量が少ないときには、企業内部の生産で十分対応できるかもしれません。しかし市場の拡大に伴い、部品の生産を専門にする企業(部品メーカー)が出てきて、企業間での分業形態(このような分業形態を社会的分業と呼ばれることもあります)が進展することになります。部品メーカーは自動車メーカーと交換を行うことによって、その生業を成立させています。部品メーカーがどのくらいの量の部品を生産するのか、などの調整は基本的に価格を見て行われます。作りすぎると価格が下がるので、生産量を絞るでしょうし、需要が多くて価格が高い場合には、より多くの製品を販売することができるので生産量を増やしていきます。このように、社会的分業は価格のシグナルを通じで分業の調整が行われます。これはいわゆる市場と呼ばれるものです。
|