【土竜探偵事務所】「レナスの狗49」
新宿歌舞伎町、異世界と言われる町。そこは昼と夜の顔が全く違う町。六本木、渋谷
など若者の集う町は数多くあるが、夜の新宿歌舞伎町は一種違う「異世界」が、多数
存在する町だ。
「・・ん・・」
ゆっくりと目を開ける碓井・・・ボンヤリとヒビの入ったコンクリートの天井を
仰ぐ・・・
「あ・・れ?・・ここ先生の・・・」
ゆっくりと身体を起こす碓井の横に桜もいた。
「!さっ桜さんっ」
驚き真っ赤になる碓井。美女と並べられて寝かされてれば驚きもする。
碓井の声に桜が眉を動かす。
「・・・」
ゆっくりと瞼を開く桜。心配そうにのぞき込む碓井を確認した。
「未来ちゃん・・・」
「・・・なんで桜さんが私の横で寝てるんです?」
・・・桜も???な状態で碓井が質問。お互い訳も分からず太郎のベットで寝ていた
のだから仕方なし。碓井は高天原から太郎が連れ帰ってくれたんだと理解したが、殆ど
悪霊(ハヤセ)に身体を則られ記憶があやふやな桜は辺りをキョロキョロと見渡す。。。
「あ・・・桜さん、ここ先生の寝室です」
「・・・・」
キョトンとしている桜。。。。。碓井が無言で頷くと・・・
「えええええええええっ!!!!!!!!!!」
近所に轟く桜の歓喜な悲鳴。。。に隣の部屋で髪を切っていた太郎達が驚いて飛び
込んできた。。。。。素早い条件反射・・・
「あっ・・・」
碓井が太郎の髪の色と長さに気づく。その表情に太郎が青ざめる。。。
「あ・・・う・・碓井さん・・こ・・これは・・・その・・」
髪切り用のマントで顔から頭までをゆっくり隠す太郎。。。を肩で隠す鴇と
加納・・・・
「いや〜良かったね碓井さんっ無事生還でき・・」
無理なフォローをする加納の肩を押しやり太郎に近づく碓井。コソコソと鴇の後ろに
隠れる。
「ちょっとっ先生っ」
怒る碓井。
「は・・はいっ」
マントに頭をすっぽり隠し直立する太郎。(これも条件反射・・・)
マントからこぼれ落ちる髪の毛・・・・
「太郎先生!髪が金髪〜〜〜!!」
声を出したのは桜だった。むちゃくちゃ大喜びでベットから飛び出す。さっきまで
悪霊に取り憑かれ眠っていた女性とは思えない。
マントを碓井にひんむかれる太郎。これから切ろうとした矢先の桜の悲鳴だった為、
そのままの長さだ。天使の絵画にでも出てきそうな金糸銀糸の床までの長さの髪に碓井
唖然。桜大興奮・・・
「・・・何ですか?その髪・・・」
引きつり青ざめる碓井・・・
「こ・・・これはですね・・・」
必死に言葉を探す太郎。だが碓井を誤魔化して納得させる言葉が見つからない。
すると鴇が太郎の前に出る。
「先生はどんな姿でも先生ですよ」
真面目な表情をする鴇に一瞬躊躇する碓井だが・・
(グイッ)
鴇の胸ぐらを掴む。
「意味不明な説明はやめて下さいっいつもいつもそうやって誤魔化してっ鴇さんも
加納さんもっ・・・」
どちらかと言えば可愛い系の顔の碓井だから睨んでも怖くも何ともないのだがそれ
でも突っかかってくる碓井に戸惑う鴇たち・・・
「私だってこの探偵事務所で・・・バイトでも働いてるんですよ・・・もういい加減
隠すのやめて下さい・・・」
真剣に太郎を見つめる碓井。
「う・・・碓井さん・・」
たじろぐ太郎・・・の背後から桜が抱きつく・・・
「さっ桜さんっっ」
真っ赤になる太郎。桜がこれでもかと言うぐらい強く太郎に抱きつく。
「太郎ちゃんは太郎ちゃんよ〜!何者でもいいじゃないっ」
抱きつきながら碓井に向かって喋る。
「金髪ロン毛の太郎ちゃんも素敵よね〜っねぇそのまま切らないでっ」
桜が太郎に囁く・・・
「離れて下さいっっっ」
退かそうとする太郎だが、何故か力が入らない様子・・・に鴇が気づいて桜を退かす。
「んもーーっ何すんのよー鴇さんっ」
桜を担ぎ太郎から引き離す。
「先生は疲れてるんですから、休ませてあげて下さい」
鴇が碓井を見ながら言った。まるでこれ以上聞くなと言わんばかりに・・・
「・・・・分かりました・・・結局のけ者なんですね・・・」
いつもの雰囲気ならここで折れるハズの碓井が噛みついた・・・・
「碓井さん・・・」
鴇が桜を加納に渡し碓井に近寄ろうとした。太郎も心配そうに碓井を見る。
「今日限り辞めさせてもらいますっ」
「えっ」
「えーーーっ」
一同驚く
「未来ちゃん・・・何言い出すのよーーっこんなに時給のいいバ・・」
桜が碓井を宥めようと近づく・・・が
碓井はそのまま飛び出した。(勿論、部屋にあった自分の荷物を持って)
「ちょっっ碓井さんっ」
腕を掴んだ加納は睨む碓井に恐れをなして掴んだ手を離した・・・
「ちょっと加納ちゃんっ何してんのよっ追っかけなさいよっ」
桜が加納を叱咤する。その声に鴇も反応し追いかける。加納が後に続く。
部屋には桜と太郎が残った。太郎をジッと見つめて大きなため息をして桜は事務所に
戻って自分のバックや上着を持ってきた。
「・・・未来ちゃんの衝動的な辞めます発言でそこまで落ち込むかなぁ・・」
太郎はショックで動けないでいたようだった。そのあまりな落ち込みように桜も
薄々は気づいていた事を認めざるを得なかった・・・
「太郎ちゃんが一目惚れしたんでしょっだったら一緒に追いかけなさいよっ」
桜の大きな声で我に返る太郎・・・
「さ・・桜さん・・・」
「私がどんなに頑張っても太郎ちゃんは見向きもしてくれなかった・・・そんな
表情や・・・私に見せたことのない表情を未来ちゃんには見せてたんでしょ?加納
ちゃんや鴇さんから聞いて凄く悔しかった・・・」
桜が俯いて・・・しばらくの沈黙・・・の後の太郎の一言。
「僕が・・・一目惚れ?」
「はぁ?」
太郎のボケ発言に驚く桜。
「・・・碓井さんに・・・一目惚れ・・・そっかぁ・・この変な気持ちが恋
なのか・・・」
新しい発見をしたような明るい表情の太郎。・・・太郎は恋とはどんなモノか分
かってなかったようだ。歌舞伎町ナンバーワンの桜の思い人は恋もしたことがない
奥手の人間だったのだ。
「・・・まいったなぁ・・・」
そう呟いて太郎の部屋を出ようとする桜・・・思い続けてれば振り向いてくれる
だろうと思っていた。ライバルが増えても負けないと思っていても、想った相手が
好きになってしまった相手では・・・流石の桜も白旗をあげざるを得ない・・・・
「桜さん・・・御免・・その・・・君の気持ちを・・」
「・・・」
沈黙する桜・・・一呼吸大きく深呼吸をして振り返り太郎を見る。
「私はいいからっさっさと追いかけなさいよっ」
「はっはいっっ」
慌てて追いかける太郎。髪の色も長さもそのままで(髪切り用マントも付けたまま)
パモアドが大騒ぎが通り過ぎたと判断し、部屋に入ってきた。
「ンモォー・・・」
桜の髪をモグモグしながら・・・桜を慰める。
「何よパモアド・・・私は・・・平気よ」
パモアドに向かって話す桜。瞳からは光るモノが流れ落ちる。
「へ・・・平気だから・・・ちょっと待ってて・・・」
そう言って、パモアドの太い首に手を回しながら座り込む・・・
いつもは桜を見ると大興奮のパモアドが・・・静かに桜が顔を上げるのを待って
いた・・・。本当に桜が好きなのだ・・・
つづく
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