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【土竜探偵事務所】
「お人形20」
新宿歌舞伎町、異世界と言われる町。そこは昼と夜の顔が全く違う町。六本木、渋谷など若者の集う
町は数多くあるが、夜の新宿歌舞伎町は一種違う「異世界」が、多数存在する町だ。
ファン家の幹部は国際手配になっていたため、CIAの管轄となりそれ以外は香港警察に身柄を拘束された。《人形》を作成していたパンドールは脅迫されての犯行が認められ情状酌量され、香港警察に身柄が渡った。むろん刑務所行きは決定での事であるが・・・しかし浅井洋子はケネディ空港で逮捕時抵抗し射殺されてしまった・・・と、そんな動きがあったと、宇津野が太郎の事務所に来て報告してくれた。何とか日曜の夜に帰国出来たのだ。碓井は今日はお休みだ・・・が
「せ・・・先生・・」
碓井が仕事帰りに事務所に立ち寄った。事件の経過が気になって、会社でもずっとうわのそらだった
そうだ。
「そうですか・・・それで、何年入るんですか?」
「裁判がまだですから・・・荷担していた年数からすれば、浅井洋子さんが生きていれば無期懲役でしたでしょうし・・1年2年で出れる事はありませんね」
「・・・そうですよね・・・」
落ち込む碓井。仕方のない事なのだ。落ち込む碓井をパモアドが慰める。
「それで、返済の方は?」
太郎が聞く。碓井は昨日の夜、タオ家の成功報酬全額を碓井に渡したのだ。
実質、タオ家当主を助けたのは碓井だと言い、今日中に完済してきなさいと言っ
たのだった。
「はい・・・粘られましたけど、カードも返却してきました。有り難うございます」
立ち上がり御礼を言う。
「碓井さんが頑張ったから手に出来たお金です、これからも頑張れば高級
マンション生活も夢じゃなくなりますよ!」
「・・・あの・・・」
「?どうしました?」
きちんと座り直した碓井。太郎の目を見ないで話す。
「が・・・外国って・・・殺人犯でも・・・その莫大な・・・保釈金を払えば・・・釈放してもらえるって聞いたんですけど・・・」
「・・・碓井さん?」
「だから・・・その・・・私無給でいいです・・・無給で、幽霊関係も頑張りますから、パンドール
さんを・・・」
碓井なりに悩んで悩んで出した答えだ。許されない犯行。被害者家族からすれば、非人道的な人間に
見えるだろうパンドールを・・・それでも悩んで・・そしてここに来たのだ。大きくため息を付く太郎。碓井の行動が分かってたようだが・・・
「・・・碓井さん・・・香港はね、殺人事件に関しては日本より厳しい国なんですよ。組織からの圧力があっての犯行だからと情状酌量されても、釈放はありえないんです。本来ならすぐに死刑が確定して
しまうんですから」
「・・・・」
涙ぐむ碓井。慌てる太郎。
「だ・・・駄目ですよっ泣くなんて反則です反則っそれにね僕が1億2億用意したって、そんなので
香港警察は動きませんっその聞いた国ってのは中東かどこかの国でしょ!」
焦りながらも横に向く太郎。無理だろうと碓井にも分かっていたのだ、けれど太郎の不思議な力と全て解明されていないだろう人脈に望みを掛けていたのだ・・・
「変な事・・・お願いして・・・すいませんでした」
ゆる〜りと立ち上がり、扉へ向かう碓井。・・・・・気まずい雰囲気が事務所内に漂う。。。。
「・・・・した・・・」
小さい太郎の声に気づき振り向く碓井。
「分かりましたっ」
太郎が立ち上がり黒電話を持つ。
「?」
「確実にパンドールさんを助けられる人物がいます。」
「ほっ本当ですか?」
すごく言いたくない顔をして黒電話を碓井に突き出す。
「その代わり、自分で『後始末』がつけられないと思ったらやめて下さい」
「?え?」
「タオ・ヘルシャンですっ彼しか香港警察を動かせません」
「・・・ヘルシャンが・・・」
香港を影から牛耳っているタオ家次期当主。警察でも逆らえない絶対的な権力を持つ人物だ・・・・
恐らく碓井がオネダリすれば動いてくれるであろうが・・・・
「・・・お嫁・・・さん」
考えうろたえる碓井。まぁ当然ヘルシャンもこの事に関しては、ただでは動かないだろう・・・
「よく考えて電話して下さい」
黒電話を渡す太郎の眉間が又痙攣している。
「そ・・・そんな・・・だって、こんな大変な事頼めば・・・ヘルシャンの希望を聞かないわけに
いかなくなっちゃいます〜〜〜っ」
「超玉の輿ですから、嬉しい限りでしょ?」
・・・・と棒読みの太郎。かなりご立腹である・・・・が
《ジーコージーコー》・・・貰った電話番号に電話している碓井。
「!」
即決に驚く太郎。
「いいんですか?本当にお嫁に行くことになるかもしれないんですよっ」
「でも、ヘルシャンしかいないんでしょ?仕方ないじゃないですかっ」
アセアセとうろたえながらもパンドールを救う方を取った碓井。・・・太郎が受話器を取る。
「!先生?」
「英語分からないんでしょう?ヘルシャンにつながるまでは僕が話しますよ」
「あ・・有難うございますぅ!!」
桜が散り始めた4月中旬、富士の裾野の孤児院にリコが元気に走り回っていた。お人形に戻った
エリィを抱えて。
「リコちゃん」
「何ですかシスター?」
孤児院のシスターがリコを呼び止める。
「リコちゃんのパパが、お迎えに来てくれましたよ」
終わり
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