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小説の締切って大変ですねぇ〜〜プロの方達の凄さが分かる!

【土竜探偵事務所】「レナスの狗」

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【土竜探偵事務所】「レナスの狗51」

    
 新宿歌舞伎町、異世界と言われる町。そこは昼と夜の顔が全く違う町。六本木、渋谷
など若者の集う町は数多くあるが、夜の新宿歌舞伎町は一種違う「異世界」が、多数
存在する町だ。


 「クゥーン・・・」
 碓井の周りをヨロヨロとしながら回る・・・・

 「ど・・・うして?・・・神界に帰ったんじゃぁ・・・」
 太郎を見る碓井。太郎も少し驚いているから、太郎も碓井と同じ気持ちなの
だろう・・・・

 「・・・先生?・・・レナスと話せるんですか?」

 碓井が太郎に問いかける。

 「いえ・・・何も・・・前と同じで・・・何も」
 そう言うとマントが脱げそうになりながら、レナスの前に膝を折る太郎。
 「!!」
 その姿に碓井が真っ赤になりながら見つめる。道行く人も足を止める。
天使が犬と会話をしているような、宗教画のようなのだ。金糸銀糸の長い髪がレナスに
被るようでレナスも神々しく見える(神だからか?)

 「先生っ目立ちますってっ」
 加納が慌ててマントをかけ直す。太郎はそのままレナスを凝視・・・・

 「自らに新たな試練を課したのですね・・・・」

 太郎の静かな問いにレナスがゆっくりだが頭を垂れた・・・

 「うっ嘘っだって・・・レナス・・・100年だよ?章人に会う為に又・・・
100年も・・・」
 事情をレナスから聞いている碓井はびっくりだ。又同じ試練を受けるなんて・・・
いや自ら課すなんて・・・

 「・・・そうですか・・・それじゃあこれからは又『レナスの看板犬』ですね」

 微笑む太郎。レナスのビー玉のような瞳が太郎を見据える。
 「先生・・・」
 「今回はレナスが決めたことのようですから、僕達は見守るしか出来ないでしょう?」

 「そ・・・そうですけど・・・」
 歯がゆい気持ちでレナスを見る。愛くるしいビー玉の目はジッと碓井を見る。もう
あの神話の中の神様ではない・・・普通の犬のレナス・・・

 「・・・こう考えればいいんじゃないんですか?レナスの事情を知る我々が、
100年後の人にレナスの想いを記しておけば、記してあのペンダントを100年後に
レナスに触れさせてあげるように!」
 「あ・・・」

 戦後間もない・・・レナスの事情を知る人のいないあの時とは違う・・・全てを
知っている人がいる・・・全てを知らなかった智親が、それでも2人を思って護符を
守り続けて、今ここで智親の『バトン』を碓井らが受け取った・・・

 「そう考えれば、これは試練ではなく『楽しみ』になりますよ!」
 笑顔でレナスを見つめる太郎・・・碓井も自然と笑顔になる。

 「フフ・・・桜さん大喜びですね!」

 レナスの思わぬ登場に辞める騒動はどこかに消えた。碓井は加納の舎弟の車で家路に
着く為、乗車する。


 「・・・あの加納くんの舎弟・・・碓井さんのファンらしいですよ・・・」
 「えっっ!!」
 鴇の一言に顔面蒼白になる太郎。その一言を加納も聞いていた。
 「ハハハッだからって碓井さんに手は出さないっ・・・・え・・」
 太郎達の元に戻る加納と交代で一目散に車の方に走り出す太郎。

 「・・・先生の想い人に手出すやつなんか歌舞伎町にいやしないのに・・・」
 「加納くんも出しませんからね・・・」
 シレッと話す鴇・・・・

 「あれ?・・・バレてた?」
 頭をかきながら視線を泳がせる加納。
 「歌舞伎町ナンバーワンホストの行動にしてはぎこちなかったですから」
 「・・・ちぇっ・・・鴇さんには敵いませんよ」

 ヘコたれない加納はやはり元ナンバーワンホストである。(死人だけどね)
 「・・・でも、これからが大変ですよ。先生の過去を調べていくんですから・・・
下手な心霊事件の依頼の方が何倍も楽な事でしょう・・・」
 「ああ・・・」
 真剣な2人の会話にレナスの表情も何故か真剣になっている。

 「碓井さんのあの性格では・・自分もやると言い出すでしょうし・・・まぁあの
霊能力は使えますから助かりますが・・・そうなると彼女も守らないと・・・」
 「だな・・」
 

 「先生っ」
 太郎が信号待ちで止まっていた車に追いついた。髪は加納に借りたゴムで束ねて
いるが、その目立つ金髪で思いっきり人目を引く。


 「タ・・・タクシーで・・・帰って下さい・・・」
 鴇から預かった2万円を窓から碓井に渡す。
 「へ?タクシー?」
 今車で送ってもらってる最中に何言い出すの?な表情の碓井。・・・に戸惑う
太郎・・・が一言。

 「そいつは碓井さんに変な事するかもしれませんからっ」
 「えっ?」
 「しませんしませんしませんっっっ」
 顔面蒼白になる加納の舎弟。
 「そんなの分からないでしょうっ家に着いた途端に襲い掛かる算段でもっ」
 
 バカッ
 
 太郎をグー殴りする碓井。

 にビックリする太郎。

 「変な事考えないで下さいっっ」
 そう言うと車から降りて太郎から2万円をふんだくる。
 「タクシーで帰ればいいんでしょっ」
 「碓井さん・・・」
 頭を手で撫でている間抜けな太郎を見つめてため息の碓井・・・

 「ごめんなさい・・・先生がこう言うんでタクシーで帰りますね」
 「は・・はい・・・分かりました・・・」
 舎弟はそのまま車を走らせた・・・

 「碓井さん・・・その、ほら歌舞伎町の人間て危ないのが・・・その・・・多い
から・・・だから・・」

 睨む碓井。
 「危ないのは先生達で慣れてますっ」
 ドキューン・・・的を射抜かれた太郎・・・その通りだが、危険の分類が違う気も
する。

 「ちゃんとタクシーで帰りますから、先生は鴇さん達に髪切ってもらって下さい」
 少し微笑む碓井はそのまま駅前ロータリーに向かった。

 (先生・・・いつの間にか苗字で呼ぶのに戻っちゃったみたい・・・まぁいいか)
 ちょっぴり乙女な考えをしながら碓井はタクシーへと乗り込む・・・・

 かなりの大騒動が繰り広げられた歌舞伎町は、もういつもの賑わいを取り戻していた。


  そしてレナスはいつもの所定の場所、『骨董屋レナス』の前に・・・

                               完

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【土竜探偵事務所】「レナスの狗50」

    
 新宿歌舞伎町、異世界と言われる町。そこは昼と夜の顔が全く違う町。六本木、渋谷
など若者の集う町は数多くあるが、夜の新宿歌舞伎町は一種違う「異世界」が、多数存在する町だ。

賑わいと喧騒が交差する歌舞伎町の中、碓井はひたすら無言で駅へと歩く。ホストや
ホステスが碓井に挨拶するも返事のないまま・・・・

 「まっ待ってっっ碓井さん」
 加納が碓井の腕を掴む。振り払おうとするも加納の力に押されもう片方も掴まれる。

 「離して下さいっ」
 碓井の大声に呼び込みのホストらが視線を移す。ただでさえ歌舞伎町の顔である
加納と一緒にいるせいで通りの中央でのやり取りに人だかりも出来る。もう一人の顔、
鴇も遅れてやってきた。

 「碓井さん・・・一旦戻りましょう・・・」

 鴇が碓井を誘導するも
 「もういいですっ終電だし帰ります」

 鴇の手を振り払い駅へと向かう碓井を加納が慌てて捕まえる。
 「ストップッストップッ家には車で若いのに送らせるからっ待って」
 「腕掴むのやめてくださいっ」
 「だって今帰ったら二度とここに来なくなるんでしょ?」
 「当たり前ですっ辞めるって言ったんですからっ」
 加納が大きな壁となり碓井の行く手を阻む。必死な加納。

 「碓井さん・・・先生の事、我々も上手く説明出来ないんですよ・・・」

 鴇が静かに口を開く・・・鋭い眼光の鴇が、更に眼光をするどくしながら話す。
(無論、碓井に怖がられてしまう為、視線を外して)

 「先生自身が自分の事を分かってないんですから・・・」
 「え?・・・」
 一瞬言葉を無くして、加納に視線を移す・・・加納が静かに頷く・・・鴇が続ける。 

 「我々も・・・先生の強力な霊能力に不気味な怖さを持ってました・・・第一死者を
蘇らせる事自体、聞いたことも無い・・・それでも、桜さん含め歌舞伎町で先生を良く
知る人はあえて核心を先生に聞いたことが無かった・・・」

 「・・・そ・・・そうなの?」
 やはり加納を見ると頷いていた。
 「聞けないよう・・・先生が無意識に《そう》仕向けていたんでしょう・・・そして
いつの間にか、先生が『何者』なのか誰も聞けなくなったんです・・・」

 しばしの沈黙を加納が破る・・・
 「鴇さんがさっき聞いたんだよ・・・その核心を・・・」
 今度は鴇に視線を向ける碓井・・・その碓井に鴇が続ける。
 「・・・先生は泣きながら自分でも自分が何者か分からないと・・・そう言って
ました・・・」
 「だから俺達は先生の素性を調べる協力をする事にしたんだ・・・」

 「ですが、高天原にまで行ってしまう先生の素性を調べていけば、今まで以上の
恐ろしい怪事件に巻き込まれるも必死・・・だから碓井さんを巻き込みたく
なかった・・・話せなかったんです・・・あの場には桜さんもいましたし」 

 「そ・・・そんなの・・・ちゃんと言ってくれれば・・・」
 自分の短気さに気恥ずかしくなる碓井・・・
 
 「人形事件で、碓井さんが怖いものが嫌いでもちゃんと乗り越えてくれたから・・・
話して協力を仰ごうとも思いました・・・碓井さんの霊能力は強いから我々も心
強いと・・・ですがそれでもまだ幽霊が苦手で、女性だし・・・そんな事を考えて
いたら・・・躊躇してしまったんです・・・」

 大騒動にならなさそうだと判断した人だかりが散り始めた頃、太郎到着。

 「せ・・・先生?」
 加納が引きつる・・・・鴇も無言・・・碓井も口を開けたまま太郎を凝視。

 髪の毛を隠そうとマントに包まって顔だけだしていたのだ。顔も目深に被った
マントのせいで殆ど見えない・・・ギャラリーもこのマント男が太郎だとは
分からない、どこの異常患者だ?みたいな目つきをしている。加納も鴇も、先程の
太郎と一緒にいなければ分からない見事(?)な変装だ。

 「う・・・碓井さん・・・あの・・・」
 ビクビクな太郎。碓井の怒りの度合いが分からないので、怯えた子供状態だ。

 「先生、もう碓井さんは怒ってませんよ」
 鴇がフォローを入れる。加納も頷く。それでもオドオドと碓井を見る。

 「・・・・」
 ため息を付いて碓井が口を開く・・・
 「辞めませんよ・・・バイト」

 「ほっ本当っっ?」
 少し明るい表情になる太郎。

 「でもここ毎日仕事してるから、3日程お休みはもらいます。一応OLですから」

 「・・・3日休んだら・・・来てくれる?」
 確認をする太郎。

 「大丈夫ですよ、ちゃんと出勤しますから・・・」

 「本当に本当?ちゃんと来てくれる???」

 「・・・・」
 シツコイと言わんばかりの碓井の視線に加納が気づき太郎を促す。
 
 「先生っ碓井さんも先生と同じで疲れてんですから、3日後には出勤してくれるん
ですから、ねっ帰りましょ!」

 「う・・うん・・そうだね・・」
 加納が太郎の腰に手を当て、事務所に戻るように促す。

 「あっ今日のバイト代・・・昨日の分も合わせないと・・・」
 「先生、私が渡しておきますから・・・」
 鴇がズボンのポケットから財布を取り出す・・・何とも奇天烈な行動・・・

 「3日後でいいですから、こんなセンター街のど真ん中でバイト代渡さないで
下さいっ」

 (3人同時に)「はいっ」

 いつもの碓井の笑顔がそこにはない。先程の事で、笑顔を作る余裕は流石の碓井にも
ないと言う事だが・・・恐持ての人間らにも一目置かれるセンター街の顔の面々が、
たかだか一バイトに過ぎない霊能力がある程度の碓井に戦々恐々している・・・そんな
光景が、碓井の気持ちを和らげてはいる。

 「・・・・!!」

 3人の後ろに、見覚えのあるシルエットを見つける。

 「レッ・・・レナスッ!!!」
 碓井の叫び声に3人も振り返る。
 そこに老犬のあのレナスがいた。
                                 つづく

【土竜探偵事務所】「レナスの狗49」

    
 新宿歌舞伎町、異世界と言われる町。そこは昼と夜の顔が全く違う町。六本木、渋谷
など若者の集う町は数多くあるが、夜の新宿歌舞伎町は一種違う「異世界」が、多数
存在する町だ。

 「・・ん・・」
 ゆっくりと目を開ける碓井・・・ボンヤリとヒビの入ったコンクリートの天井を
仰ぐ・・・

 「あ・・れ?・・ここ先生の・・・」
 ゆっくりと身体を起こす碓井の横に桜もいた。


 「!さっ桜さんっ」
 驚き真っ赤になる碓井。美女と並べられて寝かされてれば驚きもする。

 碓井の声に桜が眉を動かす。
 「・・・」
 ゆっくりと瞼を開く桜。心配そうにのぞき込む碓井を確認した。

 「未来ちゃん・・・」
 「・・・なんで桜さんが私の横で寝てるんです?」
 ・・・桜も???な状態で碓井が質問。お互い訳も分からず太郎のベットで寝ていた
のだから仕方なし。碓井は高天原から太郎が連れ帰ってくれたんだと理解したが、殆ど
悪霊(ハヤセ)に身体を則られ記憶があやふやな桜は辺りをキョロキョロと見渡す。。。

 「あ・・・桜さん、ここ先生の寝室です」
 「・・・・」

 キョトンとしている桜。。。。。碓井が無言で頷くと・・・

 「えええええええええっ!!!!!!!!!!」
 近所に轟く桜の歓喜な悲鳴。。。に隣の部屋で髪を切っていた太郎達が驚いて飛び
込んできた。。。。。素早い条件反射・・・

 「あっ・・・」
 碓井が太郎の髪の色と長さに気づく。その表情に太郎が青ざめる。。。

 「あ・・・う・・碓井さん・・こ・・これは・・・その・・」
 髪切り用のマントで顔から頭までをゆっくり隠す太郎。。。を肩で隠す鴇と
加納・・・・

 「いや〜良かったね碓井さんっ無事生還でき・・」
 無理なフォローをする加納の肩を押しやり太郎に近づく碓井。コソコソと鴇の後ろに
隠れる。
 「ちょっとっ先生っ」

 怒る碓井。

 「は・・はいっ」
 マントに頭をすっぽり隠し直立する太郎。(これも条件反射・・・)

 マントからこぼれ落ちる髪の毛・・・・

 「太郎先生!髪が金髪〜〜〜!!」

 声を出したのは桜だった。むちゃくちゃ大喜びでベットから飛び出す。さっきまで
悪霊に取り憑かれ眠っていた女性とは思えない。

 マントを碓井にひんむかれる太郎。これから切ろうとした矢先の桜の悲鳴だった為、
そのままの長さだ。天使の絵画にでも出てきそうな金糸銀糸の床までの長さの髪に碓井
唖然。桜大興奮・・・

 「・・・何ですか?その髪・・・」
 引きつり青ざめる碓井・・・

 「こ・・・これはですね・・・」
 必死に言葉を探す太郎。だが碓井を誤魔化して納得させる言葉が見つからない。
すると鴇が太郎の前に出る。
 「先生はどんな姿でも先生ですよ」

 真面目な表情をする鴇に一瞬躊躇する碓井だが・・
 (グイッ)
 鴇の胸ぐらを掴む。
 「意味不明な説明はやめて下さいっいつもいつもそうやって誤魔化してっ鴇さんも
加納さんもっ・・・」
 どちらかと言えば可愛い系の顔の碓井だから睨んでも怖くも何ともないのだがそれ
でも突っかかってくる碓井に戸惑う鴇たち・・・

 「私だってこの探偵事務所で・・・バイトでも働いてるんですよ・・・もういい加減
隠すのやめて下さい・・・」 

 真剣に太郎を見つめる碓井。

 「う・・・碓井さん・・」
 たじろぐ太郎・・・の背後から桜が抱きつく・・・

 「さっ桜さんっっ」
 真っ赤になる太郎。桜がこれでもかと言うぐらい強く太郎に抱きつく。
 「太郎ちゃんは太郎ちゃんよ〜!何者でもいいじゃないっ」
 抱きつきながら碓井に向かって喋る。
 「金髪ロン毛の太郎ちゃんも素敵よね〜っねぇそのまま切らないでっ」
 桜が太郎に囁く・・・
 「離れて下さいっっっ」
 退かそうとする太郎だが、何故か力が入らない様子・・・に鴇が気づいて桜を退かす。

 「んもーーっ何すんのよー鴇さんっ」
 桜を担ぎ太郎から引き離す。

 「先生は疲れてるんですから、休ませてあげて下さい」
 鴇が碓井を見ながら言った。まるでこれ以上聞くなと言わんばかりに・・・


 「・・・・分かりました・・・結局のけ者なんですね・・・」
 いつもの雰囲気ならここで折れるハズの碓井が噛みついた・・・・

 「碓井さん・・・」
 鴇が桜を加納に渡し碓井に近寄ろうとした。太郎も心配そうに碓井を見る。


 「今日限り辞めさせてもらいますっ」
 「えっ」
 「えーーーっ」
 一同驚く

 「未来ちゃん・・・何言い出すのよーーっこんなに時給のいいバ・・」
 桜が碓井を宥めようと近づく・・・が

 碓井はそのまま飛び出した。(勿論、部屋にあった自分の荷物を持って)

 「ちょっっ碓井さんっ」
 腕を掴んだ加納は睨む碓井に恐れをなして掴んだ手を離した・・・

 「ちょっと加納ちゃんっ何してんのよっ追っかけなさいよっ」
 桜が加納を叱咤する。その声に鴇も反応し追いかける。加納が後に続く。
部屋には桜と太郎が残った。太郎をジッと見つめて大きなため息をして桜は事務所に
戻って自分のバックや上着を持ってきた。
 「・・・未来ちゃんの衝動的な辞めます発言でそこまで落ち込むかなぁ・・」
 太郎はショックで動けないでいたようだった。そのあまりな落ち込みように桜も
薄々は気づいていた事を認めざるを得なかった・・・

 「太郎ちゃんが一目惚れしたんでしょっだったら一緒に追いかけなさいよっ」
 桜の大きな声で我に返る太郎・・・
 「さ・・桜さん・・・」
 「私がどんなに頑張っても太郎ちゃんは見向きもしてくれなかった・・・そんな
表情や・・・私に見せたことのない表情を未来ちゃんには見せてたんでしょ?加納
ちゃんや鴇さんから聞いて凄く悔しかった・・・」
 桜が俯いて・・・しばらくの沈黙・・・の後の太郎の一言。
 「僕が・・・一目惚れ?」
 「はぁ?」
 太郎のボケ発言に驚く桜。
 「・・・碓井さんに・・・一目惚れ・・・そっかぁ・・この変な気持ちが恋
なのか・・・」
 新しい発見をしたような明るい表情の太郎。・・・太郎は恋とはどんなモノか分
かってなかったようだ。歌舞伎町ナンバーワンの桜の思い人は恋もしたことがない
奥手の人間だったのだ。

 「・・・まいったなぁ・・・」
 そう呟いて太郎の部屋を出ようとする桜・・・思い続けてれば振り向いてくれる
だろうと思っていた。ライバルが増えても負けないと思っていても、想った相手が
好きになってしまった相手では・・・流石の桜も白旗をあげざるを得ない・・・・

 「桜さん・・・御免・・その・・・君の気持ちを・・」
 「・・・」
 沈黙する桜・・・一呼吸大きく深呼吸をして振り返り太郎を見る。
 「私はいいからっさっさと追いかけなさいよっ」
 「はっはいっっ」
 慌てて追いかける太郎。髪の色も長さもそのままで(髪切り用マントも付けたまま)


 パモアドが大騒ぎが通り過ぎたと判断し、部屋に入ってきた。
 「ンモォー・・・」

 桜の髪をモグモグしながら・・・桜を慰める。
 「何よパモアド・・・私は・・・平気よ」
 パモアドに向かって話す桜。瞳からは光るモノが流れ落ちる。
 「へ・・・平気だから・・・ちょっと待ってて・・・」
 そう言って、パモアドの太い首に手を回しながら座り込む・・・

 いつもは桜を見ると大興奮のパモアドが・・・静かに桜が顔を上げるのを待って
いた・・・。本当に桜が好きなのだ・・・
                                  つづく

【土竜探偵事務所】「レナスの狗48」

    
 新宿歌舞伎町、異世界と言われる町。そこは昼と夜の顔が全く違う町。六本木、渋谷など若者の
集う町は数多くあるが、夜の新宿歌舞伎町は一種違う「異世界」が、多数存在する町だ。



 『このままだと朝まで泣き続けるのか?』
 流石にそれは不味いだろう・・・アクアの社長も来ているのだし・・・と鴇が考え、太郎の前に
座る・・・

 「先生・・・とにかく泣かないで下さい・・・そ・・その碓井さんが目を覚ましますよ・・」
 
 「!」
 その言葉に驚き涙が止まる・・・・

 『・・・泣き止んだ・・・』
 泣くのがピタっと止まることに驚く鴇・・・碓井効果は絶大だ・・・

 「先生の正体・・・もう聞きませんから・・・」
 立ち上がる鴇。太郎の手を取り立つ事を促す。
 
 「・・・これからは・・・その・・・私と加納くんも・・・一緒に先生の記憶喪失の部分の捜査に
協力しますから・・・」

 「鴇さん・・・」
 「ただ・・・先生の霊能力の凄さに・・・皆怯えてるのも事実なんです・・・その事だけは理解して
下さい、それと先生の正体が何かって事が分かっても先生の傍を離れはしませんから・・・」

 少し緩んだ表情になった太郎・・・鴇に促され、髪を切ったり染めたりする時間もなかったので
フード付きバスローブに髪の毛を入れサングラスをかけてアクアの社長の所へ赴く・・・目を覚まさぬ
碓井はパモアドに任せて・・・

桜の安否を太郎の口から確認するとアクアの社長はそのまま帰宅。桜を少し大きめの太郎のベットに
碓井と並べて寝かした・・・


 「目覚ましたら桜さん大喜びじゃないですか!先生の寝室に入れたから!」
 何故かテンション上がりまくりの加納が話す。鴇はパモアドを給湯室へと移していた。オンボロ
ソファに太郎が座り込む・・・

 「先生、それじゃあ切りますか!」

 「え?」

 「え、じゃないですよっ髪の毛そのままにしとけないじゃないですかっ碓井さん見たら
卒倒しますよ、それ」

 3人になったので太郎はバスローブのフードをとっていた。加納はその髪の色を見て何故か
テンションがミョーにあがっていたのだ・・・

 「・・・それもそうですね・・・」

 自分の髪を鷲づかみしながら答える・・・力尽きた表情の太郎を他所に加納は引き出しからハサミを
だした・・・が鴇がそれを止めた。

 「事務用ハサミで髪を切っては髪が痛みますよ」
 「・・・うーーん・・・コンビニに髪切り用のハサミ売ってないですよ・・・この時間じゃ店開いて
ないし・・・」

 「加納さんの後輩とか持ってるんじゃないんですか?」
 「ああ・・・そうですね、美容師やってるヤツいたな・・・一通り借りてくるか・・・そんじゃあ
ひとっ走り借りてきます!」

 携帯電話をポケットにしまい込み、足早に事務所を出ようとする。

 「加納さん、ついでに黒髪用の染め粉買ってきて下さい」
 「!染め粉って言うなよ・・・ブリーチだろ?・・・買ってきますよ!」

 何年前の人間だっと突っ込み入れたくなる鴇の言動にコケながらも外に出て行く加納。

 「・・・染めなきゃ不味いんですよね・・」
 太郎は鷲づかみのままその髪色を確認する。

 「ロシア人にでもなります?」
 「・・・彫が深ければ、そうしたいんですけどね・・・」
 パイプ椅子に腰掛ける鴇と2人、肩を落として話を続ける。
 「先生・・・その髪の毛は・・・と言うか、その姿が先生の本当の姿なんですか?」
 「・・・なんというか・・・・・・自分でも良く分からないんです・・・この姿が本当の自分
なのかも、何分記憶がないんで・・」

 ため息交じりの太郎は鷲づかみしていた手をそのまま目の前に持ってきて手のひらを見つめながら
ゆっくりと話す・・・

 「記憶喪失がネックですね・・・」
 「ええ・・・自分が本当に『人間』なのかも分からないんですから・・・」
 太郎から核心部分を話され、無言になる鴇・・・太郎の今までの凄まじき霊能力(それ以外の能力
含む)は『人間』じゃない、別の生き物なら説明はつくのだ。だが、目の色が真っ赤な事以外では
カッターで指を切れば真っ赤な血は出るし、寝ない日が続くと目の下にクマが出来て辛そうな顔に
なるし砂糖は甘い、塩はショッパイと言う味覚も普通なのだ。(ここまで言うと失礼だろ)
 考え込んでいる鴇を他所に太郎が話を続ける。

 「あ、多分この髪も切れば切ったで普通のゴミに出せないと思います」
 「え?」

 「昔から髪は『神』の語源から来てると言いますから、恐らく私の髪の毛は普通の処理じゃ
不味いかと・・・」

 「霊能力が髪に宿ると?」
 「そんな所ですね、今までも切った事ないですから分からないんですが今回高天原に行っちゃい
ましたからね・・・それでこんな姿になれば、警戒しといた方がいいでしょう」
 「先生が髪を切る所は確かに見た事はありませんね・・・前は髪の毛焼けちゃいましたからね、
仕事の時に」
 「ええ、3年前でしたっけ?放火で被害にあった子供の霊に見事に燃やされましたからね」
 笑顔で話す太郎・・・ある意味怖い会話だが、焼けちゃった直前の太郎の姿を見てみたい
気もする・・・


 「んモォ・・・・」
 パモアドが隣から扉を開けて出てきた。ノブを開ける猫などいるが、恐らくノブを開けて普通に
出てくる牛は世界広しと言えどパモアドくらいだろう・・・
 「!」
 その行動に驚く太郎・・・

 「ああ、それ先生が高天原に行った直後から出来るようになったみたいです・・・どうも桜さんを
そこに寝かしてたのが不味かったみたいで・・・」

 「・・・何だかんだでパモアドは桜さんが一番好きみたいですね・・」
 「ンモ?」
 自分の話をされているのが良く分かるパモアドは振り向き太郎の頭の上に顔を乗せる(太郎に
ここまでのことをするのはパモアド位だろう)
 「ち・・ちょっとパモアドッ君の頭は重いんですっ退いて下さいっ」
 牛とコントする太郎は、髪の色以外は普段と変わらない表情だ。鴇はその姿を見て安堵する・・・

 「先生・・・寝室鍵かけないと、パモアド干草欲しさに毎回開けて入ると思いますよ」
 「・・・確かに・・・」
 そういいながらパモアドを見つめる2人。・・・を他所にパモアドは事務所向こうの桜の寝ている
方を悲しそうに見つめる・・・・

 「・・・事務所の扉の方は鍵かかってるって分かってるんですかね?」
 「みたいだね・・・加納くんも律儀に鍵掛けなくてもいいのに・・・」
 鍵が掛かってる事が分かったようで悲しい表情になるパモアド・・・は確かに動物と会話出来る
能力が無くても、何を考えているか分かってしまう。


 「それじゃあ先生私は自室に戻ります。加納くんが来たら電話下さい、髪を切る手伝いに来ますから」

 「明日の準備ですか?」
 鴇は一応歌舞伎町でも売れっ子占い師なのだ。それなりの準備をしないといけないらしい。

 「ええ、霊能力に磨きをかけないと。先生の足手まといになりたくないんで」
 「そんな事・・・鴇さんの霊能力の凄さは分かってますよっこれ以上能力あげなくても良いじゃ
ないですか」
 微笑む太郎。
 「それでも磨きをかけておけば、いざと言う時役に立つでしょう・・・」

 静かにドアを開ける。。。が、
 「パモアドッ」
 開いたドアの向こうの桜が寝ている扉まで突進をしようとするパモアドを食い止める太郎。
鴇も素早くドアを閉める。ヤレヤレシリアスに去っていく場面を・・・
                          つづく

【土竜探偵事務所】「レナスの狗47」

    
 新宿歌舞伎町、異世界と言われる町。そこは昼と夜の顔が全く違う町。六本木、渋谷
など若者の集う町は数多くあるが、夜の新宿歌舞伎町は一種違う「異世界」が、多数
存在する町だ。



 まもなく丑三つ時を迎える太郎の事務所には桜と加納がいた。勿論桜はまだ目を
覚ましていないが・・・


 コンコン・・・
 ノックをしながら鴇がアクアの社長を連れてきた。

 「桜っ」
 ソファで眠っている桜の所に駆け寄る。静かで穏やかな呼吸の桜を確認しホッと胸を
撫で下ろす・・・

 「もう大丈夫ですよ社長。後は体力が回復したら自然と目を覚まします」
 加納が社長に話しかける。鴇もその言葉に頷く。

 「それで・・・悪霊とやらは本当にもう大丈夫なのか?太郎先生が見あたら
ないが・・・」

 「先生は悪霊を完全に撲滅させに行きましたよ、戻ってくれば任務完了です」
 微笑む加納。だが太郎の口から【悪霊退治】したと言う言葉を聞かないと不安で
仕方ない社長・・・


 カツーン・・・カツン・・・

 廊下の遠くの方で音がした。



 その音に反応したパモアドが奥から出てきた。
 「戻ってきた見たいですね」
 鴇が扉を開ける。

 碓井をお姫様抱っこしている太郎がそこにいた・・・が


 「!”!」
 驚く鴇・・・とっさにアクアの社長に見せないように太郎の影になりそのまま扉を
閉めた・・・


 不思議がるアクアの社長・・・に加納が機転を利かし話す。
 「う〜〜ん多分相当汚れてたんでしょう・・・何せ悪霊と対峙してきたんですから、
鴇さんがきっと隣の部屋で着替えを手伝ってるんでしょう」



 「先生・・・」
 隣の太郎の寝室の扉を開け2人を誘導する


 「ことのほか疲れましたよ・・・高天原は・・・」
 ベットに碓井を寝かす太郎・・・の髪が床の上に広がる・・・・銀髪と金髪が交じり
合うような色合いで蛍光灯の光にキラキラと反射する・・・

 「・・・でも未来が体力も消耗せずにいられたのは・・・レナスのおかげですね」

 「先生・・・あなたは一体・・・何者なんですか?」

 振り向く太郎。真っ赤な瞳に金糸銀糸の床につくほどに伸びた髪・・・・
 「高天原までいくとどうも調子が悪くなるんですよ・・・」
 「ち・・・調子が悪くなるとかの問題じゃないでしょうっその出で立ちはっ」
 畏怖しながらも食ってかかる鴇。鴇の中で《今》太郎の正体を聞かなければと言う
本能が口を割らせた。

 「・・・この姿・・・未来は怖がると思いますか?」
 「へ?・・」
 真剣に太郎に質問した鴇が扱ける。目を覚ましていない碓井が怖がるとかの問題じゃ
なくて・・・・

 「やっぱり加納くん位の長さの黒髪が女の子受けするんですよね・・・」
 俯き自分の髪の毛をうっとうしそうに持つ。

 「・・・・先生・・・髪の長さはこの際どうでもいいんです・・・」
 丁寧な突っ込みをする鴇はそのまま話を続ける。
 「神様の領域だか異次元だか知りませんが・・・人間がこの世界から消えて・・・
また戻れるなんて聞いた事なりませんよ・・・」

 「鴇さんも冥界から式神を連れてきたりするじゃないですか」

 「人間の話をしてるんですっ」
 怖い形相の鴇。碓井が目覚めていたら間違いなく泣き出しそうな表情だ。
 「・・・先生の力は多少理解しています・・・私を拾い上げてくれた人だし、尊敬も
しています・・・だからこそ教えて欲しいんです・・・先生の正体を」
 ついに鴇が確信をついた・・・高天原ではレナスら神々も知りたがったであろう・・・
加納も恐らく桜も・・・

 「・・・・」

 途端に口を噤む太郎・・・そのまま碓井を見つめる。

 「先生・・・他の人は分かりませんが、私も加納くんも先生の正体を知ったからと
言って離れたりはしませんっましてや加納くんは死者なんだし・・・」

 「・・・・」

 「う・・・碓井さんには言いませんから・・・」
 碓井をジッと見つめる太郎の心を悟ったか碓井に言う事はしないと言った・・・途端、
太郎が振り返り話始めた・・・・が

 「分からないんです・・・」
 「え?」

 「自分が誰なのか・・・・分からないんです・・・・」
 「そ・・・それはどういう事ですか?」
 不思議そうに聞く鴇・・・心の準備が出来ていたから、《分からない》発言に拍子
抜けした。

 「・・・10年前・・・気づくと、センター街の入り口にいたんです・・・それから
このビルに住みついて・・・それ以前の記憶がないんです・・・」

 自分の記憶を確かめるように話す太郎・・・
 「記憶がない・・・でも、色々な知識を教えてくれてたじゃないですか」
 「そうですね・・・知識は記憶から消えていなかったんです・・・この能力も・・・
全て消えていなかった・・・ただ自分が何者か・・・それだけが分からなかった」

 自分の手のひらを見つめ、自分の正体が分からない・・・静かな苛立ちをみせた。
 「先生・・・」
 「この紅玉・・・持ち物はこれだけでした・・・これを握りしめていただけで・・・」

 もう片方の手に握られていた紅玉。ルビーのよう・・・いやもっと深くて、血の色の
様にも見える・・・
 「レナスのご主人にずっと預かってもらってたのは・・・そばにおいて置くと思い
出せないんじゃないかと思って・・・それで預かってもらってたんです・・・ですが
傍になくても自分のことが思い出せない・・・預けていた事を忘れかけていた今、
久しぶりに手にとってみても・・・思い出せない・・・」

 コーーーン・・・・




 太郎の手から紅玉が落ちる・・・プラスティックのような軽い音がした。
鴇がそれを持ち太郎にかえそう・・・
 「!重いっ!」
 床に落ちたときの乾いた軽いものが堕ちたような音に反してズッシリと重い紅玉・・・ルビー・・・宝石でもこんな重さのハズがない・・・

 「何だ・・・この珠は・・・」
 背筋を凍らせる鴇・・・の目の前に水滴が落ちる・・・

 「?!・・・」
 視線を上に移すと、太郎が泣いていた・・・真っ赤な瞳の外側の白目まで真っ赤に
腫らし・・・子供のように泣く太郎・・・
 
 太郎が泣く・・・・一度も弱みを見せた事のない太郎が泣いている・・・
 驚きで言葉を失いそれを見つめるだけの鴇・・・・

 拭うことなく泣き続ける太郎。力尽き床にへたりこみながら泣き続ける・・・泣き
止むのを待つだけの鴇・・・



                           つづく

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