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しばらくブログを休んでいましたが、ちゃんと聴き比べはやっていたのです。挑戦するなら今しかないと考え、オペラを集中的に聴いていました。
最初の1年目はワーグナーばかり聴き続け、自分に一番しっくりくるオペラはワーグナー以外にないと悟りました。そんなわけで、復帰第一弾は、ワーグナーの全オペラ中、最も演奏時間が短い「さまよえるオランダ人」です。
リヒャルト・ワーグナー 歌劇「さまよえるオランダ人」
①
クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
(1991年の録音)
オランダ人:ロバート・ヘイル
ゼンタ:ヒルデガルト・ベーレンス
エリック:ヨーゼフ・プロチュカ
ダーラント:クルト・リドル
舵取り:ウヴェ・ハイルマン
マリー:イリス・フェルミリオン
最初はこのドホナーニ盤だったのですが、自分の中にまだ理想の演奏というものが無くて、「きちんとした演奏」いうこと以外、なんの感慨も湧かなかったです。ごめんなさい。でも、ドホナーニって(ファンの人には申し訳ないけれど)そういう演奏が多いような気がします。立派で品格があって、でもなぜか惹かれない……。
②
ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮
バイロイト祝祭管弦楽団
バイロイト祝祭合唱団(合唱指揮:ヴィルヘルム・ピッツ)
(1961年のライヴ録音)
オランダ人:フランツ・クラス
ゼンタ:アニヤ・シリヤ
ダーラント:ヨーゼフ・グラインドル
エリック:フリッツ・ウール
マリー:レス・フィッシャー
舵取り:ゲオルク・パスクダ
完成度はドホナーニ盤に軍配を上げますが、この演奏のほうが惹かれるものがあります。この盤での聴きどころのひとつであるアニヤ・シリアの可憐なゼンタは痛々しいほどの熱唱であるけれど、最後はちょっとつらそうな感じ。ライヴ収録ならではの感興豊かな臨場感のある演奏と思いました。良かったです。
それにしても、第3ビルトのノルウェーの水夫たちvsオランダ船の水夫たちの合唱合戦には血沸き肉躍るものを感じますね。
Ho ! He ! Je ! Ha !
Hisst die Segel auf ! Anker fest !
Steuermann, her !
③
ジュゼッペ・シノーポリ指揮
ベルリン・ドイツ・オペラ管&合唱団
(1991年の録音)
オランダ人:ベルント・ヴァイクル
ダーラント:ハンス・ゾーティン
ゼンタ:シェリル・スチューダー
エリック:プラシド・ドミンゴ
この盤は賛否があるようなのですが、まぁまぁ良かったです。歌手ではヴァイクルのオランダ人が私の好みですが、スチューダーのゼンタは、うーん、ちょっと無理っぽい感じがしました。合唱は迫力があったけれど、少々粗っぽいかも。
④
ジェームズ・レヴァイン指揮
メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団
(1994年の録音)
オランダ人:ジェームズ・モリス
ダーラント:ヤン・ヘンデリック・ローターリンク
ゼンタ:デボラ・ヴォイト
エリック:ベン・ヘップナー
マリー:ビルギッタ・スヴェンデン
舵取り:ポール・グローヴズ
この演奏はお薦めです。①〜③は少々迫力不足で物足りなかったですから、こういう演奏が聴きたかったんです。ゴージャスでカロリーが高いです。歌手ではデボラ・ヴォイトのゼンタ、ジェームズ・モリスのオランダ人が特に素晴らしいと思いました。なお、レヴァイン/METによるワーグナー序曲・前奏曲集(DG1994年)は、かつての私の愛聴盤でした。
⑤
ゲオルク・ショルティ指揮
シカゴ交響楽団&合唱団(合唱指揮:マーガレット・ヒリス)
(1976年の録音)
オランダ人:ノーマン・ベイリー
ゼンタ:ジャニス・マーティン
エリック:ルネ・コロ
ダーラント:マルッティ・タルヴェラ
マリー:アイソラ・ジョーンズ
舵取り:ヴェルナー・クレン
とにかくシカゴ響のパワフルなサウンドに圧倒されっぱなしでした。レヴァイン盤もよかったけれど、総合的にはショルティ盤のほうが上かな。タルヴェラのダーラント、そしてなんといってもルネ・コロのエリックが立派! このオペラをしっかり堪能することができました。なお、ショルティ指揮の廉価ボックスがDECCAより販売されていますが、読み込みエラーが出るCDが多いので注意してくださいね。
⑥
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団(合唱指揮」ヴァルター・ハーゲン=グロル)
(1981〜1983年の録音)
オランダ人:ジョゼ・ヴァン・ダム
ゼンタ:ドゥニヤ・ヴェイソヴィチ
ダーラント:クルト・モル
エリック:ペーター・ホフマン
舵取り:トマス・モーザー
マリー:カヤ・ボリス
ベルリン・フィルがすごいです。炸裂するティンパニ、金管の咆哮、艶っぽい木管、シルクのような弦楽合奏。カラヤンの語り口の巧さにもすっかり惹き込まれてしまいました。この上なく劇的な表現ですが、歌手や合唱がオーケストラの一部になってしまっていることに不満を感じる人がいるかも。でも、これ以上の「さまよえるオランダ人」は聴けないような気がします。
⑦
カール・ベーム指揮
バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団
(1971年のライヴ録音)
オランダ人:トマス・スチュアート
ゼンタ:グィネス・ジョーンズ
ダーラント:カール・リッダーブッシュ
エリック:ヘルミン・エッサー
合唱を含む声楽陣は概ね優秀で、白熱的な演奏に圧倒されました。この演奏を決定盤にあげる人がいるのも頷けます。ただ、なんと言ったらいいんでしょう、なにか違うような気もするんです。それがなにか、うまく表現できたらいいのだけれど。ジャケットに帆船が描かれていないのもよろしくありません。
⑧
フランツ・コンヴィチュニー指揮
シュターツカペレ・ベルリン
ベルリン国立歌劇場合唱団
(1960年の録音)
オランダ人:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
ゼンタ:マリアンネ・シェヒ
ダーラント:ゴットロープ・フリック
エリック:ルドルフ・ショック
マリー:ジークリンデ・ヴァーグナー
舵取り:フリッツ・ヴンダーリヒ
これは素晴らしかったです。演奏全体に意欲と覇気が感じられ、音楽に惹きこまれます。ディースカウのオランダ人は、やっぱり巧いです。シェヒのゼンタはちょっと弱いかな。1960年とは思えない鮮明な録音で、「オランダ人」を聴きたいと思ったとき、真っ先に手が伸びるCDとなるでしょう。
⑨
クレンペラー指揮
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
BBC合唱団(合唱指揮:ピーター・ゲルホーン)
(1968年の録音)
オランダ人:テオ・アダム
ゼンタ:アニア・シリヤ
ダーラント:マルッティ・タルヴェラ
エリック:エルンスト・コツーブ
マリー:アンネリーゼ・ブルマイスター
舵取り:ゲルハルト・ウンガー
なぜかこの演奏については感想メモが残っていません。きっと言語に絶する素晴らしさだったのでしょう。「さまよえるオランダ人」というとクレンペラー盤を思い起こすほどだったのですが、だからといって改めて聴くには重そうな演奏です。
⑩
ヨーゼフ・カイルベルト指揮
バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団(合唱指揮:ヴィルヘルム・ピッツ)
(1955年なのにステレオ録音!)
オランダ人:ヘルマン・ウーデ
ダーラント:ルートヴィヒ・ヴェーバー
ゼンタ:アストリッド・ヴァルナイ
エリック:ルドルフ・ルスティヒ
マリー:エリーザベト・シェルテル
舵取り:ヨーゼフ・トラクセル
JHさん提供の音源。素直に一言「良かった」です。ゼンタのヴァルナイが迫力あり過ぎてイメージが狂っちゃいましたが(笑)
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お久しぶりです

このオペラは以前に序曲だけ演奏したことがあり、そのとき全曲盤を(近所の図書館から借りて)一度だけ聴いてみましたが、いったい誰の演奏だったのか?そもそもどんな話だったのか?もはや分かりません
仮に序曲だけでも10も聴き比べるなんてたいへんな苦行なのに、それがオペラ全曲盤ですから、もう偉業としか言いようがありません、間違いない
[ Loree ]
2017/5/21(日) 午後 9:23
おかえりなさい(涙)
「さまよえるオランダ人」→鮮烈な題名だけは知っています。が「ダッタン人の踊り」のように曲と名前が結びつきません。
ではまた。
[ nemo2 ]
2017/5/21(日) 午後 9:28
おはようございます
ブログは時代遅れと仰っていたので更新はないものと思っていましたよ
それに玉子さん、しばらく更新がなかったので心配しておりました。
何はともあれブログの再開を喜んでいます
2017/5/22(月) 午前 5:18
おはようございます。
再開は再会でもあります。嬉しく存じます。
また優れた御紹介記事を拝見できるのが、楽しみです。
『さまよえるオランダ人』は短かくて良いですね。それでも、これだけ聴かれるのは、大変なことです。拙宅には、カラヤンのLP盤だけがありまして、聴くのは数年に一度くらいです。
[ キュスティーヌ ]
2017/5/22(月) 午前 6:33
おはようございます。
ご復帰おめでとうございます。
僕はCDレコードの習慣がなく、最近は配信される新しい動画ばかりだけれど、上記オランダ人はだいたい聴いています。
好みはカイルベルトかショルティですが、カイルベルト盤にはライヴ特有のノイズがあって、あれがたまらなく好きです。
ベームの何か違う感覚は共感です。
この人たぶんパルジファルやっていなくて、フルトヴェングラーも似たようなあれだけれど、ワーグナー指揮者は必ずパルジファルまで行くとすれば、初期のオランダ人でもダンディズムみたいな品格を求めたくなってしまう。
気のせいかもしれませんが。
関係ありませんが、木曜にホリガー聴いてきます。
[ JH ]
2017/5/22(月) 午前 10:25
再開の折には、記者会見(飲み会)、前夜祭(飲み会)、カウントダウン(飲み会)くらいのセレモニーを考えておりましたのに、何ともあっさり復帰されました。待ちかねたぞよ。
それにしましても、同じ楽曲をこんなにたくさん聴き比べることができるなんて、僕には信じられない!
2017/5/22(月) 午前 10:56
ツイッターでも承知しておりましいたが、オペラにはまっていらっしゃるようで、頭が下がります。ほんとエライなあ‥。
2017/5/22(月) 午前 11:21
Loree様
10セットでも「オランダ人」は2枚組だからCD20枚で済みます。「パルジファル」は4枚組なのでCD40枚、「ニーベルングの指環」はCD140枚に達します。毎日毎日ワーグナーばかり聴いて中毒のようになってしまいました。昨日は「オランダ人」を聴きながら記事を書きましたが、懐かしかったですよ。ストーリーが頭に入っているので対訳を見なくてもだいじょうぶです。早くこの境地に至ってくださいな。
2017/5/22(月) 午後 9:27
nemo2様
おかえりなさいと言ってくれる場所、帰る場所があるということはなんて幸せなのでしょう(涙)
さまよえる「オランダ人」だからよいのでしょうね。これが「ドイツ人」だったり「フランス人」だったりすると、ただの迷子のように思えてしまうから不思議です。
2017/5/22(月) 午後 9:28
パスピエ様
ブログを更新していないのに、今でも一日300人前後の人が訪問してくださるし、パスピエさんのように再開を喜んでくださる方もいらっしゃる。これは自分にとって大きな財産ではないかと今さらのように思った次第です。でも、記事がうまく書けないんです。リハビリが必要です〜。
2017/5/22(月) 午後 9:28
リラ様
ブログは更新していなくても、一日に一回は新着をチェックして皆様の記事を拝読しております。最近ではリラさんの薔薇の写真に癒されました。それにしても4年近くも更新しなかったなんて自分のことながら信じられません。そして皆様が暖かく迎えてくださって、こんなに嬉しいことはありません。
2017/5/22(月) 午後 9:30
JH様
ワーグナーの音楽には(それほど悪い意味ではない)「毒」のようなものがあると思うのですが、ベーム盤にはあまりそれが感じられず、物足りなさを覚えてしまうのかもしれません。クラシック音楽を聴き始めた頃、迷ったらベーム盤を買っていましたが、必ずしもベームが最上ではないということに気がついて失望したという経験のせいかもです。今回クレンペラー盤はノーコメントになってしまいましたが、「ワルキューレ」第1幕と第3幕の録音は素晴らしいと思っています。
2017/5/22(月) 午後 9:30
ぐらごるみさ様
私のことを無二の親友のように思ってくれるGM(仮称)という知人がいるのですが、彼はストラヴィンスキーの「春の祭典」全録音について記事を書くという無謀な行いをしています。彼を飲み会に誘って、世の中にはもっと楽しいことがたくさんあるということを教えてやっていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。
2017/5/22(月) 午後 9:31
ponta様
美しいものを手に入れるためには努力が必要だというようなことを私の恩師がおっしゃっていました。初めて聴くオペラはしんどい面もありますが、聴き終えれば良いお友達になれます(例外あり)。是非是非挑戦なさってみてください。
2017/5/22(月) 午後 9:31
カラヤンは本当に壮絶ですよね。でもこれは好きな演奏です。しかしこれではワーグナーの究極テーマである(献身的な女性による魂の救済)は無いかと…W。と、言いますか、お久しぶりです。復帰おめでとう?ございます!
[ アルトゥーロ ]
2017/6/2(金) 午後 1:05
アルトゥーロ様 ご無沙汰しております。
コメントをいただいていろいろ考え込んでしまいました。根がまじめなもので(笑)
ワーグナーの終生のテーマは何だったのだろう、とか、カラヤンはなぜ「タンホイザー」を録音しなかったのか、とか、この記事はクレンペラー盤をきちんと聴き直してから書くべきであった、とか、「ローエングリン」の次の「トリスタンとイゾルデ」は気が重いなぁ、とか。
2017/6/2(金) 午後 8:34
ショルティ版は、上野の東京文化会館音楽資料室を訪れた際、全曲盤LPを一気聴きしたのを覚えています。
この作品は1幕から全幕が切れ目無く演奏されるのが特徴となっていますが、これは交響曲ではベートーヴェンの「運命」や「田園」等の後半の楽章、協奏曲ではメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲等の全楽章が繋がっている事から
「それと同じ事をオペラにも生かせないだろうか?」
とワーグナーが考えたとも思え、更にその発展型が「ラインの黄金」になるのかもしれません。
[ 笑太郎 ]
2018/12/1(土) 午後 4:41
「さまよえるオランダ人」や「ラインの黄金」が1幕形式で上演されるのは、単純にワーグナーのオペラの中でも演奏時間が短いせいでは? 全1幕でも場面はころころ変わりますし、幕で和分けてもおかしくないような気がします。「運命」や「田園」は全楽章切れ目なく演奏されているわけではないので、それを応用したとは考え難いのでは?
2018/12/2(日) 午後 7:42
これは、素人考えで失礼いたしました(^-^;。ふと、思ってしまったので・・・・。
[ 笑太郎 ]
2018/12/2(日) 午後 8:51
笑太郎さん
ワーグナーはバイロイト祝祭劇場の定礎式にベートーヴェンの第九を演奏した人ですから、その影響は大かな?と一瞬考えましたが、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲はあり得ないと思いました。でも、斬新な発想でした。
2018/12/2(日) 午後 10:53