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「螺旋世界」
一日の仕事を終えて
渋谷のスクランブル交差点を
渡っていると
すれ違う人のかたちに
切り取られた
喜・怒・哀・楽
世界 という言葉で
描かれるすべてが
彼方の星の出来事に思える
忙しさの果て
今日もこの空間を横切りつつ
僕は ほんとうはどこに
向かっているのだろう
いずれ ひとりで
遊民
それとも難民に
砂の楼閣に重なる
フラジャイルの東京で
孤独が
遺伝子レベルで
転写されつづけ
日々は 螺旋階段に
そして
眩暈を覚えながら
階段を下り
自分が迷宮入りする前
一瞬のなかに
ひとりだけの永遠を
抱え込む
*詩と思想2014年7月号投稿欄佳作
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「フラジャイル」全30首2012
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「フラジャイル (全30首)」
*印は、短歌研究2012年9月号新人賞最終候補掲載作品(10首)
ごめんなさい生まれた訳を耳にして瞼を閉じるキリンのように
フラスコの中でそうっと息をする今日も世界の匂いはしない*
草を食む七十年の果ての場にたたずむ象のような街並み
くぼみまで溜まった鎖骨の砂を噛むモノクロームの深まるたびに
「純粋」の辞書から消える音を聞きあなたときっと買い物に行く
月曜の理不尽の色混ぜ合わせ瞼にのせる阿修羅のシャドー
町はずれ路面電車の停車場で囁かれている哀しみの色
儀式というシーツをめくりまだ残るふたりの跡をぼんやり燃やす*
東京のカラスの街から帰り着く部屋には醒めた人の空蝉*
ゆっくりと自殺していく細胞を流しつづける血脈に棲む
取り返しつかない日々に満たされた能率手帳にしるしをひとつ*
忘れるほど思い出させる人の名をネットワークの冷たいまごころ
人の持つ弱さの分だけ詩に帰すレイモンド・カーヴァー今はなく*
ひたすらにサンセベリアを抱いて寝る明日をはじくイオンの結界
セロファンのようにめくれたこの都市の端から皴が寄せられてゆく*
情報は妄想を呼びニコ動のパラノイア語るモノ・モノローグ
つま弾いた旋律途方に暮れながらネオンテトラのあいだを泳ぐ
降りしきる雨まで避けていかぬよう傘をください傘をください
からくりの人形のように黙々と言の葉置いて帰ってゆく人*
行間の賑わいよそにソネットを綴り続ける並行世界で*
エヴァンスの月光は今語り部の音をあやつりネットを閉じる
幸せをキスするものと仮定する虚数のままの脆い計算
偽りの時浴び続けダナエーの命のように弄ばれる
金箔の埃のような風貼られ閉じ込められたクリムトの今日*
定まらぬ吐息の拍子耳にしてメトロノームは測りかねてる
ひっそりと折り畳まれた罪しまう胸のあたりで響く心音
ガラスごし屈折率の人生が指折り指折り手招きをする
街じゅうにあふれる鏡パパラッチ真面目な明日を壊す閃光*
指先のきれいさばかり気になって記憶薄れるデジタルデータ
地下鉄の見えぬ落書きカンバスに写し終えたら都市は崩れる
以上
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