詩歌句な日々

詩、短歌、俳句の書庫にします。気が向いたら、ぱらぱらとエッセイなども。なお、著作権は作者が保有しています。

「終わりの季節」全30首風澄人

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*想い出をとむらう象の葬列が夕陽のなかで行き来している

甘やかな時から遠く マカロンの無邪気な色をかじることわり

プリズムで愁いを虹のひとすじに 水の星ではとりどりに泣く

ひっそりとキリンの睫毛の上に乗る ふるまいなどを懺悔している

いつかあの停留所から片道の果てへぽつんと路面電車で

死にいたる最短距離のみちすじを計算し終えレクイエム聴く

うたかたの影の話を折り曲げてバランスをとる鬱のモビール

傷ついたレコードの過去 とめどなく分水嶺が訪れている

アンニュイが横切る通り 車など気にも留めないかげろうふらり

道化師になりませんかと街かどでチラシを配るコンサルタント

勝手だな スカーフ揺らす風向きがヌーベルバーグのように冷たい

ためいきをためらいがちに 意気地なき兎は息を止めてまた吐く

うつむいたコスモスの群れ さみどりの少年少女の頃へふたたび

ひらがなの哀しみばかりうけとめて時雨をすきになりすぎている

幾層もかさなる日々を紐解いて苦いスープのレシピのなかに

眠れない永久時計の子守歌 記憶の切れ目あいまいになる

ゆっくりと今日が琥珀になっていく 閉じ込められる科白のすべて

いにしえのアンモナイトのマーブルに刻み込むため少しだけ死ぬ

いっせいにくすみはじめた天体の言葉の在り処 あなたが見えない

五線譜にブルーインクで春楡の影なぞっては滲ませている

星のたね育ててみます 読みかけの栞に残す裏書ひとつ

とりかえしのつかない人と一室で液体になる あやとりの末

透明なままのわたしを東京に明け渡そうと空へ降りゆく

やや遅れ快速電車が滑りこむ やっぱり人はどこかさみしい

黙々と走る地下鉄それぞれの孤独とおなじ方を目指して

人混みのなかへと時をはめていく自分も世界も薄めるように

揺れ動くエリック・サティの不安げな音の午後から脱けだせないで

*ひとりだけはぐれたままのペンギンに訳をたずねる鏡の自画像

そのままで見事に淋しくなれますよ あしかが背中を何度もたたく

果てしなく還るべき場所みつからず果てしなくまだ終わりの季節

黙々と走る地下鉄それぞれの孤独とおなじ方を目指して

人混みのなかへと時をはめていく自分も世界も薄めるように

揺れ動くエリック・サティの不安げな音の午後から脱けだせないで

ひとりだけはぐれたままのペンギンに訳をたずねる鏡の自画像

そのままで見事に淋しくなれますよ あしかが背中を何度もたたく

果てしなく還るべき場所みつからず果てしなくまだ終わりの季節

以上(*は短歌研究9月号掲載)


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