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Absence ' 君が僕を見失ったとき 僕は君のことを見ていた 僕はちょうど影になって 君からは見えなかったけれど ' 君は驚き立ち止まり 泣き出しそうな顔になって どこかへ走っていこうとした あのとき君は どこへ走っていこうとしたのか ' 僕達の映画館では いろんなことがあったね 一緒に観た物語のこと すべては思いだせないけれど ' 君の顔を見ている方が 僕にはずっと楽しかった 特別な日 特別な時間 隣には特別な僕がいるようで ' あのとき 怖くなったのは君だけじゃない ' まだ間に合うのかどうか たどり着くまでわからないけれど , あのとき 僕は影から飛びだして そこにいるべき僕のところへ 全力で走ることに決めたんだ |
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これから隠れ家で暮らすことを考えると およそばかげたものばかりですけど でも 後悔はしていません 思い出はわたしにとって 服なんかよりずっと大切なものですから 1942年7月8日 水曜日 『アンネの日記』 アンネ・フランク ' あらゆるものは すべて繋がっている 過去と未来 ヒトとモノ その間にあるような ないような 時間と空間 光と影 電話が鳴り 録音した僕の声が聞こえて 切れた 幼いあの娘が していたように 外した受話器の穴の 向こうを覗いてみた 想い出すこと この本が君のために在ったということ 『POETOGRAPHY』 螢 映池 (2006年)
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' 自分がどこにいたのか知らなければ 今の居場所など知りようがない 私は静かに座っていた 風が変わった 私は顔を上げた 『無の近傍』 ポール・ボウルズ |
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タンポポと耳かき 意味のない雑音に 心地よく窒息する鼓膜 |
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眠る前に歯を磨く それは歯のためとか そんなことではなく ずっと遠くへ行くための 準備なのだ 僕は自分の悲しみが あの娘の瞳に映るのを見る 日常に開いた虚しい穴 狭い部屋の中は がらんと 時間に取り残され 空気は どんな微かな音をも伝える 胸の鳴る音 息をする音 視線がわずかに動く音 ’ 「テレビつけてもいい?」 あの娘の声が 熱を確かめるように額に触れた 「ああ、そうしよう」と 僕は言った |


