全体表示

[ リスト ]

「5・3」を語り継ぐ:
朝日新聞阪神支局襲撃20年/1 金成日さん /兵庫
4月30日12時1分配信 毎日新聞


 ◇メディアは憲法発信を−−指紋押捺を拒否強制採取された・金成日さん
 朝日新聞阪神支局で記者2人が殺傷された事件は憲法記念日の5月3日、
発生から20年を迎える。なぜ無言のまま記者が狙われたのか。事件は
未解決のまま底知れぬ不気味さを残し、その後も、民主主義の根幹を揺るがす
テロや暴力が絶えることはない。社会はその間、どう変容したのか。
事件の犠牲になった小尻知博記者(当時29歳)を知る人に思いを語ってもらった。
 ――小尻記者との出会いは。
 85年12月、北朝鮮に帰国する在日朝鮮人を撮影した井上青龍さん(故人)の
写真展を、経営する喫茶店で開いた時、小尻さんが初めて取材に来ました。
それから頻繁に来てくれるようになり、指紋押捺(おうなつ)問題の
ことも在日朝鮮人の立場に立って熱心に考えてくれていたと思います。
 逮捕された私が釈放された86年11月5日の夜、店に来た新聞記者は
小尻さんだけだったと思います。私が強制具で無理やり指紋を
取られたことを話すと、小尻さんは「強制具のイラストを書いて下さい」と
言いました。翌日夕刊にイラストとともに警察の
強制具使用を告発する記事が載りました。
 強制具について、私は「警察はそれぐらいのことをやるやろ」と
いうくらいの意識でした。でも、小尻さんは社会的な問題だという視点で
とらえた。だから、記事にしたのだと思います。
 ――事件当日のことをどう覚えていますか。
 午後11時ごろ、共同通信の記者から「小尻さんが撃たれた」と
電話がありました。当時、小尻さんは指紋押捺問題について多くの
記事を書いてくれ、その度に私の家に「文句があるのなら朝鮮に帰れ」
「火をつけるぞ」という嫌がらせの電話や手紙が相次いでいました。
 そういう中で事件が起こったので、初めは、私のことを書いたせいで
撃たれた可能性もあると思いました。小尻さんの安否を気にしながら
「次は犯人がここに来るかもしれない」という恐怖がわいてきて震えました。
 ――事件はなぜ起こったと思いますか。

 犯人の実体は分かりませんが、昭和天皇が亡くなる2年前という
タイミングが気になります。事件を機に、新聞社のペンが露骨に
鈍ったとは言いませんが、結果的には天皇が亡くなった時、
すべての新聞が1面から社会面まで「天皇崩御」を伝える記事一色に
なりました。事件が新聞社にとって「天皇制に物申すような記事を
掲載するのは、やばい」という圧力になったのではないでしょうか。
そういう意味では、右翼的な立場の人にとって事件は絶大な効果が
あったと思います。
 ――20年たって言論を取り巻く環境はどう変わったでしょうか。
 犯行声明に「反日朝日は 五十年前にかえれ」とありましたが、
その言葉の通り、90年代から今日まで、戦前回帰を思わせる法律が
次々と生まれています。日米防衛指針(ガイドライン)関連法や
国旗・国歌法、国民の管理を強める住基ネットなどができ、
憲法改正が目前にあります。事件後の日本の歩みは、
表現の自由や戦争放棄などを掲げた憲法の精神を否定し、
戦前と同じ状態に戻ることそのものです。
 ――その中でのメディアの役割は。
 日本のメディアは平和ボケしています。アフガニスタンへの
空爆やイラク戦争などに反対する大規模な集会があっても、
ベタ記事にすらしない。憲法改正についても、
きちんと伝えないから、国民が
「憲法が変わっても世の中は悪くならない」と
変に楽観的になっているのではないか。
 憲法9条は「空想主義、理想主義的」ととらえられがちですが
、憲法の精神は、世界の流れを軍拡から軍縮に変え、
飢餓や貧困、環境破壊などを解決するための現実的なよりどころです。
メディアは、憲法の精神を世界に発信する役割を、
もっと積極的に果たしてほしい。【聞き手・樋口岳大】


■ことば
 ◇在日外国人の指紋押捺問題
 襲撃事件の前、外国人登録法が義務付けていた指紋押捺に対し、
「外登法は、私たちを治安管理の対象とするもので人権侵害に当たる」と
拒否する在日韓国・朝鮮人が相次いだ。金さんは85年に拒否し、
86年、尼崎北署に逮捕された。小尻記者は、金さんが強制具を
手につけられ無理やり指紋採取されたことを特報。その後、
指紋押捺制度への批判が強まり、
93年に永住者について廃止、00年には全廃された。






 島根県に生まれ、宝塚市で育った在日朝鮮人2世。
81年から尼崎市東園田町5で喫茶店「どるめん」を経営し、
平和運動を続けている。55歳。
〔神戸版〕

4月30日朝刊


最終更新:4月30日12時1分

開く トラックバック(2)


よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事