シカと森toオオカミ

日本の森が危ない!情報求む!

全体表示

[ リスト ]

2.どこに生息する?
フイリマングースはインドやネパール等に自然分布している。また西インド諸島やハワイ諸島、フィジー諸島、沖縄本島、奄美大島等の島嶼を中心に人為的な導入由来の個体群が定着している。
 
3.諸外国で実施された人為的導入とその結果
クマネズミの天敵として
ハワイやフィジー、西インド諸島等は、かつて西洋列強の国々によって征服・支配されていた地域である。征服者達は原生林を開発しながらプランテーション(単一農作物を大量生産するための農園)を建設すると、サトウキビを島外から持ち込み、現地人達を酷使して生産・収奪を行った(その影響からこれらの地域は、現在でもサトウキビ生産が盛んである)。
支配者達は農作物だけではなく、非意図的にイエネズミ類を持ち込んだ。中でも元々温暖な気候に生息し、植物質を好むクマネズミ(Rattus rattus)は島の環境にあっという間に適応し、サトウキビ生産業へ大きな被害を与えるようになった。同時に在来自然植生への脅威ともなった。これらの地域にはクマネズミを捕食出来るような在来動物がほとんど存在しなかったことも一因となり、クマネズミは激増した。頭を悩ませた経営者達は、1872〜1900年頃にクマネズミの捕食者として各地にフイリマングース(以下、マングース)を導入する。
マングースの導入によりクマネズミの被害は一時的には減少したとされる。しかし、樹上に逃避出来るクマネズミからとって、地上性のマングースはそれほど大きな脅威とはならなかったようである。むしろ、マングースによる果樹や養鶏等への被害がネズミ害に重なるようになり、農園経営者はいっそう悩まされるようになったという。また、在来の昆虫類、両生類、爬虫類、クイナ類等の地上性鳥類等がマングースの捕食対象となり、種によっては激減、もしくは絶滅が報告されるようになった。諸外国では移入マングースは問題視されるようになり、導入の20年後には駆除や輸入の禁止が開始されるようになった。移入されたマングースの子孫達は、現在でもなお在来種の大きな脅威となっている。
4.南西諸島におけるハブの存在
■生態系の頂点、ハブ
日本の南西諸島・沖縄(かつての琉球王国)では、前述の地域と同様にサトウキビ生産業が盛んである。クマネズミも人為的に持ち込まれており(移入時期は不明、船舶による交易と同時と推測されることから、かなり古来に人間とともに上陸した可能性が高い)、農業に対し被害を与えている。しかし、沖縄が諸外国とは決定的に異なっていたのは、毒蛇ハブ(Protobothrops flavoviridis)の存在である。
ハブは全長がときに2mに達することもある大型のクサリヘビ科(Viperidae)の1種である。在来種でありながら、世界的に見ても高い攻撃性を持つ。ハブ等のクサリヘビ科の毒は出血毒であり、コブラ科の神経毒と比較すると致死性は低いとされるが、出血毒は酵素により血液凝固を阻害し、血管系の細胞を破壊するため死に至らずとも重い後遺症を残す。そのことからも古くから島民達に畏れられていた存在であった。また哺乳類、鳥類、爬虫類(同種や他種のヘビ類を含む)、両生類、魚類(ウナギ類等)等を幅広く捕食する、島の生態系の頂点的存在でもあった。
人間がクマネズミを持ち込む前、沖縄には在来のげっ歯類であるトゲネズミ(Tokudaia muenninki)やケナガネズミ(Diplothrix legata)が生息していたが、これらはいずれもハブに対する対抗手段を身に付けており(トゲネズミはハブの一撃をかわす跳躍能力、ケナガネズミはリス類に匹敵するとされる樹上生活能力)、ハブにも容易に捕食出来る相手ではなかったことが予想される。対し、旺盛な繁殖力以外に有効な対抗手段を持たないクマネズミは、格好の餌動物となった。ハブの餌の8割以上がクマネズミであるという報告すらある。
イメージ 1
ハブの存在により、クマネズミは諸外国のように大発生することは出来ず、在来種や自然植生、農業への被害は比較的軽微だったことが考えられる(人口が多くハブの少ない南部を除く)。しかしながら、クマネズミの存在によってハブは農場や人家の付近まで進出するようになり、人間との軋轢は増加したものと考えられる。
 
5.沖縄の近代化とハブに対する駆除策
■人間とハブの衝突
樹上や足元に潜むハブへの恐怖からか、古くからの沖縄の人々は原生林に立ち入り、大規模に開拓することはしなかったものと考えられる(そのため、現在でも北部には大規模な原生林が残存し、多くの動植物が息づいている)。また、ハブが農作物の害獣であるクマネズミの増加を抑えてくれる役割を果たしていることも理解していたので、必要悪として受け入れていたのかもしれない(単純に対抗のしようが無かっただけかもしれないが)。
時代が移り、近代化を目指す明治政府が日本の舵を取るようになると、かつての琉球王国は沖縄として日本国の一部に編入される。明治政府は国力増強と近代化への障害を徹底的に排除する方針だったようで、同時期に日本国の一部となった北海道では、古くからアイヌとともに共存していたオオカミ(Canis lupus)が、開拓者達の畜産業に対する障害として徹底的に排除され、ご存知のように根絶させられている。沖縄でも同様に近代化の思想と政策が浸透し、生活や開拓への障害とされるハブに対する大掛かりな駆除策が検討されていくことになる。
様々な環境に生息し、様々な動物を餌として利用出来る上に隠遁性の強いハブは、オオカミの場合とは異なり、直接的な捕殺や毒物散布による駆除はほとんど効果が無く(直接的な対峙は反撃される恐怖もあったのだろうが)、被害が減ることは無かったようである。
 
6.沖縄へのマングース導入とその経緯
■故・渡瀬教授が主導
東京帝国大学・動物学教室の故・渡瀬 庄三郎教授は当時の応用動物学研究の第一人者であったが、ハブ、及びクマネズミの駆除策としてマングースの導入を提唱する。当時は農薬などの薬剤を使わずに天敵となる動物を導入するという、いわゆる生物学的防除がもてはやされていたとされ、マングースが原産地のインド等で、毒蛇のコブラ類を勇猛果敢に攻撃して捕食する事例を知ったことから、南西諸島における毒蛇ハブへの天敵としての活用を考え付いたのだと言われている。実験としてマングースとハブを囲いの中で直接的に戦わせてみたところ、マングースはハブを見事捕殺したとされている。
1910(明治43年)413、インド・ガンジス川河口の三角州付近で捕獲した29頭が国内に持ち込まれ、その大半が沖縄の南部を中心に放獣された。1910年以降に国外から沖縄へマングースが移入された記録は無いようだが、1945年頃までには既に中部の名護市の南部まで分布が拡大していたとされる。それ以後、マングースは中部で捕獲された後、北部地域や離島へ人為的に導入されていった(1950〜1956年に国頭村奥、大宜味村、名護市等にそれぞれ50150頭程)。北部に放獣後のマングースの生息については、大宜味村や名護では確認されたが、国頭村奥では大量に導入されたにも関わらずマングースの生息は確認されなかったとされる。
 
7.沖縄におけるマングース導入の結果
■希少種をも捕食
マングースは急速に島内で分布を広げていったが、かなり早期から養鶏業や農作物に対する被害が報告されるようになった。当時は人間の活動に直接関連しない生態系に対する配慮等は全く検証・議論されることは無かったが、平成になって生態学が普及してくると、ようやくマングースによる生態系への影響が調査されていくことになった。
採集した糞内容物の分析の結果、マングースは節足動物を中心に哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、植物質等を幅広く採食していることが判明したが、その中でハブのものと考えられる内容物は皆無であった。それどころか、ワタセジネズミ(Crocidura watasei)、ホントウアカヒゲ(Erithacus komadori namiyei)、オキナワキノボリトカゲ(Japalura polygonata polygonata)、ハイ(Sinomicrurus japonicus boettgeri)等の貴重種が捕食されていることが判明し、これらへの影響が懸念されるようになった。近年ではヤンバルクイナ(Gallirallus okinawae)、ノグチゲラ(Sapheopipo noguchii)、イボイモリ(Echinotriton andersoni)、イシカワガエル(Rana ishikawae)等の、より知名度の高い希少種もマングースに捕食され、個体数と生息域を減少させていることが判明し、2000年から沖縄県により、2001年から環境省によりマングースに対する駆除策が実施されていくことになる。

この記事に

閉じる コメント(3)

顔アイコン

初めまして・・・外来種の導入によって、新しい生態系ができますが、自然への影響は功罪があると思っています。

2011/12/23(金) 午前 7:01 [ 一期一会日記 ] 返信する

顔アイコン

マングースはだめ。でもマングース導入は専門の先生が確か提案したはず?ましてやオオカミ導入なんて話もあるがダメよ。また最近は花粉症対策で花粉のでないスギときた。これも副作用が強くでるよ。トキの保護はどうだろうか?トキは既に飼育動物だよね。トキ自然公園か?まあ,自然は複雑な存在であることを,ついつい専門家は忘れてしまうようだ。

2013/5/22(水) 午後 10:01 [ komasinka ] 返信する

顔アイコン

この記事のあと、日本にいたオオカミは世界の他のもの同様ハイイロオオカミの亜種であることがDNA解析により分かったから、今は、用語としてはオオカミ「再」導入が適当かな。あと、保全生態学上、絶滅種の再導入と外来種の新規導入は根本的に異なりますね。 削除

2016/7/17(日) 午前 6:29 [ こうちゃん ] 返信する

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

.


みんなの更新記事