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8.奄美大島へのマングース導入
イタチの壊滅後にマングース導入
鹿児島県に属する南西諸島・奄美大島も、沖縄と同様にハブが生息しており、それを頂点とする独自の生態系が根付いていた。当然のことながらハブによる人身被害は発生しており、19421957年には3,000頭近い本土産イタチ(Mustela itatsi)が、ハブとクマネズミに対する天敵になることを期待されて島内に移入される。
イタチは八丈島や三宅島等の伊豆諸島等にもネズミ駆除を目的に移入され、小動物を中心とした在来種達に猛威を振っている存在であるが、奄美大島では定着することなく、短期間で絶滅した。喜界島等のハブが生息しない島では定着していることから、奄美大島ではハブの攻撃・捕食によってイタチは壊滅したものと推測された。これは島嶼の在来種によって移入種が駆逐されたという、世界的に見ても珍しい事例である。
1979年頃に沖縄で捕獲されたマングースが奄美大島に導入される。これはいつ、何処で、誰が主導で行ったのか、詳細ははっきりしていないが名瀬付近から広がったことから、ここが移入地点であるとされる(1949年に駐留米軍によって少数が導入されたという情報もある)。導入されたマングースは定着し、名瀬を中心に分布を広げて行った。
平成になって生態学が広がり、沖縄と同様にマングースの食性調査が実施された結果、アマミノクロウサギ(Pentalagus furnessi)、トゲネズミ、ケナガネズミ、ルリカケス(Garrulus lidthi)、アマミヤマシギ(Scolopax mira)等の希少種を含む様々な生物が捕食され、これらの個体数が激減していることが判明した。ここでもやはりハブは捕食されていなかった。沖縄と同様、近年から環境省によるマングース駆除が開始された。
 
 
9.ハブとマングースの関係
■何故ハブは捕食されないのか?
マングースはハブの天敵であるとされている。実際に沖縄や奄美大島で観光目的に行われていた対決ショーではマングースがハブを捕殺しており、動物に対する知識がまるでない一般人であってもマングースはハブの天敵であると今なお信じている。しかし実際には、沖縄や奄美大島の自然下ではマングースはハブを捕殺することなく、他の動物を捕食していた。
よく「ハブとマングースは活動時間が異なっているから、野生下では出会うことが無い→出会わないからマングースはハブを捕食しない」と言われており、それが一般論として出回っている。多くの研究者達もそう思っている。実際にマングースは昼行性(正確には薄明性)、ハブは夜行性なので、活動時間が被ることはほとんど無いとされる。しかし本当にそれが、マングースがハブを捕殺しない原因なのであろうか?
マングースに捕食され、問題となっているアマミノクロウサギやトゲネズミ、ケナガネズミ等はほぼ夜行性である。アカマタ(Dinodon semicarinatum)やヒメハブ(Ovophis okinavensis)等のヘビ類や両生類に対する捕食も確認されているが、これらも皆夜行性である。マングースとは活動時間は被っていない、にも関わらず捕食されているということは、昼の時間帯に休息場を探知されて襲われているということになる。活動時間が異なっていても、休息中の状態を狙えば良いのだからハブも同様の手で捕食すれば良いだけである。それにも関わらずハブは捕食していない。つまりマングースはハブを意図的に避けていることになる。「マングースはハブと出会わないから捕食しない」という説は虚構であることになる。
大型で高い攻撃性を持っているからマングースはハブを避けているのであろうか?しかし、ハブと並んで大型で高い攻撃性を持ち、島の生態系の頂点に位置するアカマタは捕食されている。では有毒だから捕食されないのか?同じく有毒のヒメハブは捕食されている。しかし、ヒメハブは小型で性質も穏やかであり、ハブと比較すると毒性もはるかに弱い。ハブが樹上に逃避出来るから捕食出来ないのか?同じく樹上に逃避出来るケナガネズミやクマネズミはマングースに捕食されている。
消去法から考えると、「ハブは大型で攻撃性が高く、かつ強い毒を持っているからマングースは捕食しない」という推測が成り立つ。要するにハブは危険な相手だから避けていることになる。これではマングースのどこに天敵と呼べる要素があるのか疑問である。オオカミや大型ネコ科動物が、シカ類が恐ろしいから捕食出来ないと言っているようなものだ。
 
 
■「毒蛇の天敵」マングース?
そもそもマングースは昆虫類やカニ、ムカデ等の無脊椎動物を中心に爬虫類、両生類、鳥類とその卵、小型哺乳類等を幅広く捕食し、ときに果実等の植物質も採食する動物であり、中でも昆虫類等の無脊椎動物を主要な餌資源としている。もちろんコブラ科(Elapidae)を含めるヘビ類も捕食しているが、特に好んで捕食しているという報告は無い。コブラ科のヘビ類は昼行性で、致死性の高い神経毒を持ち、人間が咬まれたらクサリヘビ科以上に危険な場合も多い。しかし、一部の種を除いてはその大部分は小型で穏やかな性質を持ち、外敵に対しては逃走するか、首のフードを広げて威嚇する等の専守防衛的な行動が多い。ハブのように威嚇も無しにいきなり長い射程距離を、驚異的な瞬発力で攻撃するようなコブラ科は少ない(逆にハブほど攻撃的なヘビは世界的に見ても稀である)。またマングースはコブラ科の神経毒に対して免疫機能を持っているとされる。インドの物語「ジャングル・ブック」ではリキ・ティキ・タビという名のマングースがコブラを倒す場面もある。マングースはコブラ科の小型ヘビ類に対しては一応の天敵だと言える(それでも無脊椎動物と比較するとヘビ類が餌として占める割合はずっと低い。)。
しかしながらかつての研究者達はコブラ科とクサリヘビ科を、「毒蛇」として同一視してしまったのだ。要するにコブラという「毒蛇」を退治してくれるマングースは、沖縄に来てもハブという「毒蛇」を退治してくれると信じてしまったのだ。マングースがハブの天敵だという説は、先の研究者達のハブ、マングース双方の生態に対する情報不足から来る無知、視野の狭さ等による完全な「勘違い」だといえる。
 
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左:コブラ科のヘビを襲うフイリマングース
右:カニを狙うフイリマングース
 
 
不公平な対決ショー
「対決ショーではマングースはハブを殺しているじゃないか!」という反論が聞こえてきそうではある。しかし、ショーは明るく人工的で限られた環境内で行われるものである。ショーで使われるハブのほとんどは野外で捕獲された神経質な個体であり、本来夜行性のハブが実力を発揮できるわけもない。ハブのみならず、多くのヘビ類というのは、その隠密性が最大の武器であり、そこから繰り出される「奇襲」こそが、戦法なのだ。ヘビ類よりもずっと運動性に優れている哺乳類や鳥類を相手にする場合、明るい環境下で相手に知覚されてしまった時点で既にヘビ類は不利な状況になっている。飼育下においては、ヘビ類に餌として生きたネズミを与えたところ、逆にヘビを噛み殺してしまった事例等は特に珍しくない。これはヘビ類のみならず、ヒョウ(Panthera pardus)やフクロウ類等の夜行性の肉食動物にも言えたことで、明るい時間帯では獲物であるはずのヒヒ類やカラス類などの群れに追い回され、殺されてしまう場合すらある(当然ながら夜間は形勢逆転する)。
ショーで使われるマングースは、観衆の中でハブを殺すことに特化した「ハブ殺しのプロ」の個体である。そして対決ショーはエンターテイメントの1種であり、客達は皆、勇敢なマングースが悪者ハブを倒すところが観たいのだ。マングースが負けるような事態はあってはならない。そのために当然、御膳立てもしておく。あらかじめハブを弱らせたり、毒牙を抜いておいたりする場合も多かったようだ。ハブが手に入らなかった場合は、より小型で大人しいサキシマハブやタイワンハブが使われることもあった(観客から見ればそれも立派なハブである)。ちなみにショーはマングースがハブを殺すまで続けられるが、逆にハブの攻撃をマングースが受けてしまった場合、すぐに仕切りが下されてショーは中止となる。随分と公平な勝負があったものである。人間の格闘技であれば罵声と怒号が飛び交っているだろう。
ハブとマングースの対決ショーというのは、例えるなら真っ向勝負が得意な武士と、奇襲や暗殺が得意な忍者が、身を隠す場所も無い明るい闘技場内で闘わされているような状態なのだ。真っ向勝負が得意な武士の方が有利であって当然である。対決ショーの結果だけを観てマングースがハブの天敵だと思っている人は、「武士は忍者よりも強い」と言っているようなものだ。いざ実際の戦になればそうとは言い切れないのは、誰にでも分かるはずである。
 
 
 
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