シカと森toオオカミ

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自然下では形勢逆転?
ちなみに野生下では、不確実ながらハブがマングースを捕食しているという情報がある。腹から呑まれたマングースが出てきたというのだ。文献や記録が見つからなかったため、断定はここでは避ける(おそらく例数そのものは少ないのであろう)。しかし個人的には信憑性は高いと考えている。ハブは暗闇で視覚が機能しなくとも、嗅覚と熱探知器官で獲物を狙うことが出来る、まさに夜の闇に特化したハンターなのだ。対するマングースは、視覚に大きく依存して活動するので、夜間は動きが制限される(11の項で後述)。ハブが夜間休息中の動物(主に鳥類)を捕食している記録は多く、夜間に休息中のマングースも格好の標的となりうる。しかも8の項で前述したイタチのみならず、イエネコ(Felis silvestris catus)やクビワオオコウモリ(Pteropus dasymallus)のような力強い動物をも捕食した記録があるほど強力な捕食者である(ハブの毒に消化液としても働き、注入と同時に獲物の体内で消化が始まる。そのため、ハブは同大のヘビよりもかなり大きな獲物を捕獲・丸呑みにすることが出来る)。また、マングースの持つヘビ類の毒に対する免疫は、ハブの毒に対して完全には機能していないことが判明している。
これらのことからも、自然下ではハブがマングースよりも優位に立っている可能性が考えられる(積極的に捕食している可能性は低いが)。人工的に用意された環境下での対決ショーで勝てるからと言って「天敵」とは呼ばない。様々な環境要素が複合的に混在する野生下で積極的に襲い、捕食出来てこそ「天敵」と呼べる。マングースはハブの天敵として完全に失格である。
 
 
 
10.結局、何が問題となったのか?
■導入における「失敗」とは?
よく「マングースの導入は失敗した」と言うフレーズを耳にするが、これは何をもってして「失敗」と言っているのだろう。「失敗」があるということは「成功」もあるということである。マングースが人への害獣であるハブとクマネズミのみを捕食し、他の動物には影響を与えなかったならば、マングースの導入は評価されていたのであろうか?だとすれば期待していたようにハブを捕食しなかったから「失敗」だと言っていることになる。言い方を変えれば、人間に都合の良い環境に改変出来なかったから「失敗」だと言っていることになる。そこにはハブが古くから存在する在来種であり、生態系の頂点に立っているという観点は一切見られない。見えるのは人間の生活の向上のみを目標とする、人間中心主義の観点のみである。例え希少な在来種達を減少させていたとしても、ハブも減少させていれば、マングース導入は現在でも評価されていた可能性すらある。
導入した人々は、マングースをハブやクマネズミを駆逐してくれる救世主だと信じていたのであろう。そこには自分達の生活の改善や豊かさへの渇望が見える(それ自体が悪いとは言わないが)。当然ながら生態系に対する配慮などは無い。これは沖縄にマングースを導入した当時の研究者達にも同様のことが言える。
 
沖縄は実験場?
近年では渡瀬教授による沖縄へのマングース導入は実験だったという可能性が指摘されている。県文化振興会史料編集室が古い文献などから調べたところ、導入の10年前に別の研究者から生態系への悪影響を指摘されていたにも関わらず、計画は進められていたとされる。そもそも諸外国の例から既にマングースによる生態系撹乱は確実視されていたはずである。また、渡瀬教授は日ごろから予備調査の重要性を説いていたにも関わらず、マングース導入では予備調査や実験をほとんど行わず、教授自身も沖縄における導入がうまくいけば、他地域にも導入することを言及していたとされる。要するに、沖縄におけるマングースの導入自体が、他地域でのマングース導入の有用性を調査するための壮大な実験に過ぎなかったということになる。とすれば、マングース導入計画において在来生態系への配慮は全く無かったと言える(なお、渡瀬教授はその後、本土に人間の食用としてウシガエル(Rana catesbeiana)、その餌としてアメリカザリガニ(Procambarus clarkii)をも導入している)。
もっとも渡瀬教授を批判することは誰にも出来ないのかもしれない。当時の動物学は、国力増強のために(人にとって)有用な動物の使役方法を開発することこそが優先事項であったのだ。生態系の保全が叫ばれるようになったのは、ごく最近の話である。アマミノクロウサギやヤンバルクイナ等の知名度の高い希少種への影響が無ければ、今でも大して注目されていなかったかもしれない。
 
■マングース導入計画の本質
結局のところ、ハブには昔も今も天敵などそもそも存在しなかったのだ(アカマタやサシバ(Butastur indicus)、リュウキュウイノシシ(S.scrofa riukiuanus)等は小型のハブを捕食するとされてはいるが)。その存在しなかったポジションを、人間のために人工的に作り出そうとしたのがマングース導入計画の本質である。要するに在来生態系の破壊、もしくは転覆が目的である。生態系の破壊という目的と結果だけで見れば、マングースの導入は立派な「成功」である。単に人間の、自然に対する意識が若干にしても変わったからこそ、マングースの導入は「失敗」となったのだ。「成功」や「失敗」に関わらず、導入計画そのものが、在来生態系の構成を無視した「愚行」であったと言える。
 
 
 
 
11.オオカミの導入との類似点はあるのか?
オオカミ再導入に対する反対派が、よくマングース導入を引き合いに出して来るというのは、冒頭で述べた通りである。マングース導入の本質は、710の項で述べた通りである。オオカミ導入はマングース導入と並べられるものなのだろうか?
マングースがハブを捕らないように、オオカミはシカを捕らないのか?
よく言われているのは「オオカミはシカなんて捕らずにノウサギ等の楽な獲物ばかり狙う」という主張である。何故ノウサギがシカよりも楽な獲物になるのか、その時点で疑問ではあるが、それはこの際置いておく。オオカミの食性調査・研究は北米大陸やモンゴル、インド、欧州各国等の、オオカミが生息する世界各地で実施されている。どの地域における結果・報告でも、オオカミの獲物としてはシカ類やイノシシ類等の有蹄類(家畜も含む)が高い比率を示しており、その他の動物(ウサギ類、アナグマ、タヌキ等)は補助的に捕食しているに過ぎないと結論付けられている。日本列島に生息していた個体群も、古い文献などからシカやイノシシを獲物としていたのは間違いなさそうである。どの地域に生息していても、オオカミは有蹄類の捕食に特化したスペシャリストなのだ。それに対し、マングースは8の項で述べたように節足動物を中心に様々な小動物を捕食するジェネラリストなのだ。ハブの天敵だという説は、単なる勘違いである。それどころか諸外国ではクマネズミの天敵としてすらほとんど機能していない。
有蹄類の捕食者であるオオカミをシカやイノシシの個体数調整のために導入することと、節足動物中心の小動物捕食者であるマングースをハブ駆除のために導入することは、全く同一視出来ないことだと言える。
 
 
オオカミはマングースのように個体数と生息域を激増させる?
○上位捕食者オオカミの個体数は自然に調整される
他の主張としては「導入されたオオカミはマングースのように個体数を激増させ、手に負えなくなる」というのがある。
確かに現在の日本列島は、オオカミの獲物となるシカやイノシシが豊富に生息する。オオカミはよく食べ、増えて行くことが予想される。しかしイエローストーン国立公園等の報告では、シカ類が豊富に生息するにも関わらず、オオカミの個体数は増加には傾斜せず、一定のラインで増減を繰り返しているという。生態系の頂点種であるオオカミには人間以外に天敵は存在しないはずなのに何故減少するのであろうか(大型ネコ科やクマ類と争って死亡することはあるにせよ)?
イエローストーン国立公園内におけるオオカミの死因としては餓死、病死、同種間の抗争が大きなものとして挙げられている(公園内では人間による狩猟は基本的に行われない)。シカ類が豊富に生息するのに何故餓死?と思うかもしれないが、オオカミが獲物として狙うのはもっぱら幼獣や弱った個体、老いた個体であり、健康的な個体は基本的に捕食出来ないとされる。狙える個体が多いうちは良いが、時間がたてば必然的に捕れる個体は減少し、飢えが始まる。飢えれば体力や抵抗力が低下し、ジステンパーや疥癬等に感染し易くなる。獲物の確保のためにテリトリーの拡大を狙い、隣接する群れとの争いが頻発するようになる。オオカミの多くが死亡すると、捕食圧の減少によりシカ類は再び増える。幼獣や病弱個体の増加により、オオカミの個体数も再び増加に転じるようになる。これが繰り返されることでシカ類もオオカミも個体数が増え過ぎることも減り過ぎることもなく、自然に調整されるのだ。このような現象はオオカミのみならず、他の上位捕食者でも報告されている。

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