どうぶつ病院診療日記

動物病院の診察風景や、獣医師が日頃思っていることなど

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インフルエンザと言うのは、ただの風邪と違い、
大きな症状を起こして、死亡につながることもある怖い病気です。

中でもA型のインフルエンザは、時折新しいタイプのウイルスが出現して、
人間社会に大きなダメージを与えています。

今インフルエンザというと、Aソ連型とA香港型、B型の三種類ですが、
A型のふたつは、実は過去のパンデミックで出て来たウイルスの子孫です。

パンデミックと言うのは、感染が爆発的に、
国境を越えて全世界に広がり、人類に大きな影響を及ぼす事を意味していますが、
中でも怖いのは、今まで人類が経験した事のない、
新しいウイルスが突然出現して、
免疫力を持たない人類に襲いかかって来る事です。

1880年頃にもインフルエンザによるパンデミックが起こったと言われていますが、
一番有名で、大きな影響をもたらしたのは、
1918~1920年のスペイン風邪です。

これはアメリカのシカゴ近郊で出現した
(当時は第一次世界大戦中で、各国が情報統制をしている中、
 中立国であったスペインが発表したため、
 スペインで流行っているのだと勘違いされて
 「スペイン風邪」という名称がついてしまったそうです)
H1N1型のインフルエンザウイルスです。

これは、鳥が持っていたウイルスが、そのまま変異を起こし、
人間に感染性を持つようになったそうです。

シカゴで発生したウイルスは、第一次世界大戦のために、
戦線に向かった兵士によってヨーロッパ大陸にわたり、
両軍の兵士に大きな損害をもたらし、そこから世界中に拡散して、
全人類に大きな死者を出す結果となりました。

当時の総人口、10~15億人のうち、約5億人が感染し、
死者は4000~1億人にもなったそうです。

第一次世界大戦の死者(約1000万人)よりもはるかに多くの人が亡くなり、
第一次世界大戦の集結を早めたともされています。

たしかに、前線で戦っている兵士がばたばたと病気で倒れ、
自分の国の中でも病気が蔓延しているとなれば、
戦争どころではないというところだと思います。

スペイン風邪は、数年にわたって猛威をふるい、
人類が免疫力を持つようになって下火になって行きましたが、
その末裔はAソ連型(N1H1型)として残っています。

その後は、1958~1959年にアジア風邪(N2H2型)、
1968~1969年に香港風邪(N3H2型)が起こっています。

いずれも、鳥が持っていたウイルス(鳥はN1~16型までのウイルスを持っています)が、
突然変異を起こし、人間への感染性を持つようになったものです。

最初のスペイン風邪は、鳥が持っていたウイルスが鳥の中で変異を起こし、
直接人間への感染性を持つようになってしまったとされています。

一方、アジア風邪と香港風邪は、
ブタが鳥インフルエンザと人インフルエンザに同時感染を起こし、
ウイルス同士が遺伝子組み換えを起こして、
人間への感染性を持つようになってしまったと言われています。

問題は、次のウイルスがどうやって発生するか、
ということですが、それは誰にも分かりません。

前二回と同じように、ブタの腸内で遺伝子組み換えを起こして発生するかもしれませんし、
スペイン風邪と同じように、鳥からいきなり入って来るかもしれません。
もしくは、人が従来のインフルエンザと鳥インフルエンザに同時感染を起こし、
人の体内で遺伝子組み換えを起こして新型インフルエンザウイルスが誕生するかもしれません。

それ以外にも、まるきり人類が予想もしない方法で変異を起こし、
人間の世界に侵入して来るという可能性もあります。

ただ分かっているのは、ウイルスは世界中で鳥の間に広まってしまっており、
莫大な数のウイルスが増殖しながら、日々変異を起こしているということです。

その変異の中から人間への感染性を獲得したものが出てくれば、
それは人間にとって恐ろしい結果につながる、
ということです。
今新型インフルエンザウイルスが誕生していないという事は、
ただ単に、「運が良い」ということでしかないのです。

パンデミックが起こるかどうかは、確率の問題なので、
いつ起こるかは誰にも分からないのですが、
確実な事は、「いずれ必ず起こる」ということです。
それは10年後かもしれませんし、今年かもしれません。

鳥はずっと昔から、N1~16までのすべての型のインフルエンザウイルスを持っていて、
人の世界への潜在的な感染源となっています。

鳥が持っている型の中のどれかが変異を起こすと、
人間に襲いかかって来るウイルスになってしまう可能性がある、
ということは、あまり意識されてはいないですが忘れてはいけない事です。

歴史を見ても、戦争で死ぬ人の数よりも、
病気で亡くなる人間の数の方がはるかに多いです。

ペストは、当時のヨーロッパの人口を1/3に減少させてしまった、
と言われていますが、人間がどれだけ普通に戦争をしても、
一度にそれだけの人口減少につながる事はありません(核戦争は別です)。

戦争は努力で回避できる部分もありますが、
病気は避けられない部分が大きいというのも事実です。
起こるのは避けられないとしても、発生した場合に、
少しでも死ぬ人を減らす事ができるように、
人類の英知を結集しなければいけないと思います。

※傑作、ランキングをクリックしていただけますと、うれしい限りです。
 転載、リンクはフリーとさせていただきます。

「鳥インフルエンザについて」書庫の記事一覧

閉じる コメント(15)

怖いですねぇ><
うちの家族はおかげさまでここ数年インフルエンザにかかってないけどいつどこでウィルスをもらうかしれません。
気をつけたいものです。
インフルエンザのワクチンをしても型が違うならかかってしまう。
ですので私の地元ではワクチン打つ人は少ないです。
ウィルスのない世界なんて夢なんでしょうね。。。ポチン☆

2009/2/9(月) 午前 0:13 るか

るかさん、実は僕は生まれてこのかたインフルエンザにはかかった事がありません。
ということは、もしかしたら、普通のインフルエンザにかかっても、僕にとってはどれも"新型"となるかもしれません。
実際には、ちょっと入って知らないうちに悪化に至らず撃退しているんでしょうけれども。

2009/2/9(月) 午前 0:19 ぽこ

家族の誰かが風邪を引くと順番に移っていきます。
インフルエンザの予防も今年はまだしていないので早く打ったほうがよさそうです。
怖いですね。

2009/2/9(月) 午前 0:26 サンマリー

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日本の防疫システムは、省庁の縦割り構造で、不完全ですね。私は、豚に係わってますから、高病原性鳥インフルエンザで、鶏を大量処分したとき、我々、豚関係者も、インフルエンザのモニターとして、何かデーターを取らなくて良いのか?との質問に、ズーノーシスのインフルエンザは、感染症で、厚生労働省の責任です。豚は、農林水産省なので、関係ありません!って、はっきり断られました。これが、国立感染症予防センターと獣医さんの管轄の農林水産省のお考えです。行政のいい加減さには、腹が立ちます。ノロウイルスのときも、一時、ノロウイルスは、小型球形ウイルスで、細菌だから、ウイルスではないとか、説明されたり。。結構いい加減な世界です。大体、インフルエンザの抗体検査が迅速になって、自然治癒前に、普通の風邪かインフルエンザか、解るようになったのも、最近のことですから、ポコ先生も、知らぬ間に、お子さんのときに、罹患して、現行の型の抗体があるのかも知れませんよ。

2009/2/9(月) 午前 1:09 [ りぼん。パパ ]

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インフルエンザ、怖いから、毎年予防接種してます。
ところで、わんこたちは、インフルエンザはかかるのかしら?

2009/2/9(月) 午前 4:52 [ - ]

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レオとショーンです。

「ハンデミック」勉強になりました。

2009/2/9(月) 午前 9:09 [ レオとショーン ]

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こういうウィルスというものも、自然災害という部類に入るんですかね?
なんだか、“地球・自然”が人間に対する“警告・罰”として起こしてるのかな・・・なんてこと、考えちゃいました。
ウィルスの特効薬の製造にも時間がかかるでしょうから、やはりある程度の犠牲は仕方がないのですかね・・・。
医療・科学(?)の世界も進歩してるハズなので、昔のパンデミックの時よりは少ない犠牲で抑えられると思いたいです・・・。

2009/2/9(月) 午後 11:36 とうしろう

サンマリーさん、冬ももうすぐ終わりそうですが、まだインフルエンザははやっているらしいですね。
人ごみに出る時は要注意ですね。

2009/2/10(火) 午前 10:05 ぽこ

ribonbooさん、インフルエンザウイルスは種の間を飛び越えることがある、というのが特徴のひとつですが、縦割り行政だと、その弊害が見事に出て来ますね。
どの国も、国の一大事として取り組んでいますので、日本もプロジェクトチームを組んで、専門に当たってほしいです。

2009/2/10(火) 午前 10:08 ぽこ

のんちゃんのママさん、犬のワクチンにはパラインフルエンザというのが入っていますが、それとは別に、一応「犬のインフルエンザウイルス」というのもいるそうです。
臨床的にはほとんど問題にはなってはいませんけれども。

2009/2/10(火) 午前 10:10 ぽこ

レオとショーンさん、最近は毎日のようにマスコミに登場して来ている言葉ですね。
いつ来るかは誰にも分かりませんが、いつ来てもおかしくないだけに大問題だと思います。

2009/2/10(火) 午前 10:12 ぽこ

とうしろうさん、昔は病気というのは天罰だと考えられていた時代もありました。
でも、病気というのは人間の行いとかとは全く別にやって来ます。
全ての生物(ウイルスも含めて)の基本は、「増えられるものが増える」「変化に応じて形を変える」という原則で続いて来ています。
ウイルスは増えられたから増えた、増えるときに、運悪く宿主の生物が死ぬことになっている、というだけだと思います。
増えても宿主に害を及ぼさないウイルスであれば、増えても特に問題ないのですけどね。

2009/2/10(火) 午前 10:17 ぽこ

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今日、TVのニュースでほんの少しだけ、チラッと見ただけなのですが、花粉症に対するワクチンが開発されたそうですね。
でも、花粉症って、だいぶ昔からある症状ですよね・・・。
で、今になってようやくワクチン開発に成功・・・。
もし、新型インフルエンザウィルスが発生してしまったとしても、やはりそのワクチン開発成功までには、数年かかるのでしょうかね・・・。
となると、やはり犠牲者の数は、数十・数百人なんて数じゃ収まらないのでしょうね・・・。

2009/2/12(木) 午後 11:44 とうしろう

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ウィルス怖いですねえ!! 第六天の魔王ですね!!
ちょっと違うかw

2009/2/23(月) 午前 11:59 [ - ]

こうちゃんさん、ウイルス自体は生物が、大昔から戦い続けて来たものでしょうけれども。
滅びることはないだろうけれど、大きなダメージを与えられますね。

2009/2/23(月) 午後 6:24 ぽこ


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