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先日、「犬用のワクチンにもRD-114ウイルスが混入している事実が発見された」というニュースが報道されていました。 臨床の獣医師としては、ワクチンに予期せぬウイルスが混入している可能性がある、 というのは無視できないことではあるのですが、 この報道をどう考え、対応して行けばいいのか、 論文の責任著者である京都大学ウイルス研究所の宮沢孝幸先生にメールにて問い合わせをしたところ、 正式に返事をいただくことができました。 宮沢先生の許可の元、いただいた返答を原文のまま、以下に転載させていただきます。 質問1.RD114ウイルスは獣医微生物学の教科書にも載っておりませんが、そもそもどのようなウイルスなのでしょうか。 回答1.RD114は猫の感染性の内在性レトロウイルスです。内在性レトロウイルスとは大昔(数万年以上前)に宿主動物に感染して、生殖細胞のゲノムに入り込んだレトロウイルスのことです。ウイルスがゲノムに入り込んだ細胞から個体が発生するために、猫の細胞にはあまねくこのウイルスゲノムは入っています。RD114ウイルスは、猫属の祖先動物に500万年(500年ではありません)ほど前に感染し、ゲノムに入り込んだと考えられています。つまり猫はRD114ウイルスと共存して進化してきたと考えられています。 質問2.RD114ウイルスの犬・猫に対する感染性や病原性は現時点でどの程度分かっているのでしょうか。 回答2. RD114ウイルスは試験管内では猫の細胞に効率良く感染しますが、回答1に述べた理由で、たとえRD114ウイルスが猫に感染したとしても悪さをする可能性はないと思われます。また、ワクチン中に含まれていたRD114ウイルスは極めて微量のため、感染は成立しないと考えられます。 一方、RD114ウイルスが犬に感染するかどうかはまだわかっておりません。ワクチン中に含まれていた量のRD114ウイルスでは、犬が感染することはまずないと考えられます。しかしながら毎年何百万頭の仔犬がワクチンを接種されているので、極めて少数の個体が感染する可能性は否定できません。研究者は集団レベルでの問題を懸念しており、そのためRD114ウイルスが混入していないワクチンを製造する方が良いと考えています。 質問3.混入のあったワクチンのメーカー名・商品名は、公開されないのでしょうか。 回答3. 我々はすべてのワクチンについて「平等かつ広範に」調べてないため、調査したワクチンメーカー名と商品名をお教えすることは出来ません。今回の研究の目的はRD114ウイルスがいくつかのワクチンに存在するかどうかを調べることであり、すべてのワクチンについてRD114ウイルスの存在の有無を調べているわけではありません。論文に書いてあるように、あるワクチンはいくつかのロットの複数のバイアルを調べ、あるワクチンは1つのロットの少数のバイアルしか調べていません。(なお当然のことながら、「感染性の」RD-114ウイルスは不活化ワクチンには入っていないと考えられます。) 質問4.発表論文は入手できますか? 回答4.Journal of VirologyのWeb siteからダウンロードできます。著者がお金を負担してオープンアクセスにしましたので、無料でダウンロードできます。URLは以下の通りです。http://jvi.asm.org/cgi/content/abstract/JVI.02715-09v1 質問5.混入したワクチン名が公表されないとなると、そのワクチンを犬に接種し続けることになりますが、それでも良いのでしょうか? 回答5.RD114ウイルスが混入しているワクチンも長年安全に使用されてきました。従って、たとえRD114ウイルスが混入したワクチンを使用したとしても、少なくとも個体レベルではジステンパーウイルスやパルボウイルスなどの病原性ウイルスへの感染のリスクよりも、ワクチンを接種することによるベネフィットの方がはるかに勝ると考えています。しかし、回答2で述べたように、犬の集団レベルでどのような結果をもたらすかについては予測不能であり、将来的にはRD114ウイルスの混入のないワクチンを用いるべきであると考えています。 質問6.なぜ今になって、RD114ウイルスが問題になってきたのでしょうか? 回答6.ワクチン中の(望まない)ウイルスの検出技術は常に進歩しています。RD114ウイルスは以前のウイルス検出技術では見つけられず問題にされてこなかったのですが、技術の進歩と共にウイルス検出感度も上がったため、その存在が明らかになり問題が顕在化したものです。 臨床家としては、混入していたワクチンがどれなのか、 ということが一番気になりますし知りたいのですが、 販売に関わるためワクチン名は発表不可、 というのが腑に落ちないところです。 もしかすると社会的なパニックや混乱を避けるため、 ぎりぎりの判断があったのかもしれません。 現状では、混入物を考慮にいれても、 うつことによるデメリットよりも、 うつことによるメリット(とうたないことによるリスク) の方がはるかに大きいため、 この情報をもとに「うたないようにする」 という行動をとることはしない方がいい、 というのが結論ではありそうです (うたない人が増えて、ジステンパーが再び大流行、 という事態は、ワクチンによる健康被害よりも、 はるかにあり得る可能性です)。 現状では、個体レベルにおいて、 混入ワクチンをうったときにどうなるかと言えば、 「おそらく健康的に問題とはならないだろう」 ということだそうですが、 よけいなウイルスが混入しているものを多数の犬に接種して行った場合に、 この先どういう影響が出て来るかと考えると、 混入ウイルスがとくに逆転写能力を持っているレトロウイルスであるだけに、 「将来どうなるか予測がつかない」 ということが心配されることであるようです。 現状では個体レベルにおいての健康被害の可能性は低そう、 ということではありますが、とはいっても、 よけいなものが入っているというのは製造過程での問題がある、 ということですので、 消費者の側がより安心して使える製品を供給してもらえるよう、 メーカーの方々にはお願いしたいところです。 ※転載、リンクはご自由にどうぞ。
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こんにちは、町の獣医さんです。
研究者からの直接の情報をありがとうございました。
1つぽこ先生にお伺いしたいのですが…
>臨床家としては、混入していたワクチンがどれなのか、
>ということが一番気になりますし知りたい…
ここなのですが…なぜ知りたいのかナァ?と思いまして…。
よろしければ教えてください。
ぽこ先生も当然ですが、ワクチンが安全とは思っていらっしゃらないだろうし…。
洗浄の問題や株の問題、接種率や価格の問題、接種間隔や多価ワクチンの流行、ロー(ノー)レスポンダー問題、獣医師の無知…など多くの他の問題がある中のどちらかといえば「些細」な問題ですよね?
メーカーが知れたところで…
「うちはA社のワクチンを使用していないので、考えてますよ!」とか「安全ですよ!」という話にはならないので、ちょっと不思議に思ったので…。
マスコミに出たからフォローする…ということではないような気もしまして…。ご気分を害されてしまったらごめんなさい。よろしければ、お考えを聞かせてください。
2010/2/13(土) 午後 6:36 [ 10位 ]
ニュースが出てから とても不安でした。
今月ワクチンを入れる予定でしたので。
ホームドクターさんと相談し 今年は時期をずらす事にしました。
私のブログにも転載させて下さいね。
2010/2/14(日) 午前 7:00 [ ブランバニー ]
ブランバニーさん、おはようございます。
情報を公開しているメーカーもあるようですね。
情報公開が全部されるかどうかもなんともいえないのですが、ワクチンをしないというのはリスクが高いですので、獣医師とよく相談しながら決めてあげてください。
2010/2/15(月) 午前 9:18
メロチェリママさん、転載ありがとうございます。
2010/2/15(月) 午前 9:39
10位さん、こんにちは。
混入していたウイルスがレトロウイルスということは、潜在的なリスクを含んでいる大きな要因だと思います。
生ワクチンということはウイルスが生きているということですが、生きているレトロウイルスを多数の個体に接種するということは、壮大なin vivo実験をしているのと同じことだと思います。
もし何かあってからでは遅いですので、余計なものが入っていない方が良いのは確かだと思います。
2010/2/15(月) 午前 9:42
こんばんは!
ワクチン報道は気になっていたので転載させてください。
この問題は犬を飼ってる人達は心配してると思います。
製薬会社のHPを見て我が家のわんこ達が使ってるワクチンは問題ないことが分かり安心しました。
2010/2/16(火) 午前 2:20
ファミママさん、こんにちは。
今のところ共立とファイザーは声明を出していますね。
それ以外は、何も言っていないですが、本社が海外の場合は、日本支社の人には実際「わからない」としかいえないところもあるのでしょうね。
2010/2/16(火) 午後 5:18
こんばんは^^
私も記事を読んで気になっていたので立ち寄らせて頂きました。
ぼこ先生の所なら情報が入手できると思っていました。
犬猫を飼っている皆さんに知って頂きたいので転載させて頂きます。
2010/2/19(金) 午前 0:13 [ a*s*u*k*u ]
sakurakoさん、おはようございます。
目にして心配になるニュースですからね。
今のところは大丈夫とも危険ともいえないので、情報のそろうのを待つ状態です。
2010/2/19(金) 午前 9:09
初めまして。ブロ友のsakurakoさんのブログからお伺いしました。
動物に関する、薬やワクチンにはいつも問題が付きまとっているように思われます。フェラリア防止薬に関してもそうですし、それに加えてワクチンまで、というと安心して投与したり、接種したりすることができなくなります。
今回のウイルスは、突然変異を起こすようなことはないのでしょうか?心配です。
2010/2/19(金) 午前 11:29
風の花さん、こんばんは。
今回のウイルスに関しては、今後の予想はなんともつかないそうです。
レトロウイルスというのは逆転写酵素を持っていますので、入れないものにしておく必要はあると思います。
2010/2/20(土) 午後 8:25
初めてお邪魔しました。先生はどちらの県で開業されてるんですか?
私は群馬県でトリミングサロンをしています。とても共感でき勉強になります。
2010/2/21(日) 午後 3:51 [ mok*tin* ]
プログにリンクさせていただきました。
ワクチン会社の発表がどの程度信頼できるのかわかりませんが・・
個人的には、ワクチン関連の肉芽腫の2000頭に1頭の割合ということが信用できないので、鵜呑みはできないのではないかと思っています。
2010/2/21(日) 午後 4:16 [ 山本公子 ]
mok*tin*さん、おはようございます。
mok*tin*さんから見ると、西のほうで開業しております。
動物を扱っている人だと、一般の飼い主さんとはまた違った読み方になるかもしれないですね。
トリミングサロンも四方山話はたくさんあるのだと思います。
2010/2/22(月) 午前 9:43
pet_angeleさん、おはようございます。
僕自身はまだワクチンで肉芽腫というものに出会ったことはありません。
予想するのは難しいので、確率論ではあるでしょうけれども。
ワクチンはうつことによるメリットがはるかに大きいのですが、副作用が絶対にないというわけでもないのが困るところではあります。
基本的に、体にとっては異物なので副作用はゼロではないのは致し方ないのでしょうけれども。
2010/2/22(月) 午前 9:45
転載させて頂きます。
貴重な情報をありがとうございます。
2010/2/25(木) 午前 0:29 [ watermoon ]
詳細な記事をありがとうございます。
勝手ながら転載させていただきました。
2010/3/9(火) 午後 9:46 [ なつのき ]
なつのきさん、おはようございます。
転載ありがとうございます。
いつの間にか、あまり話題にならなくなってきた気配ですね。
今後どうなっていくのか、続報待ちです。
2010/3/10(水) 午前 9:24
貴重な情報をありがとうございます。
リンクさせて貰いました。
これからも拝見し、勉強させて頂きます。
2011/2/8(火) 午後 8:23 [ わんにゃん倶楽部 ]
わんにゃん倶楽部さん、おはようございます。
リンクありがとうございます。
今回のことは、獣医師も寝耳に水のことでした。
今後も注意しながら見ていきたいと思います。
2011/2/15(火) 午前 9:38