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中学生になる君が、「将来は獣医師になる」と、嬉しいことを言ってくれたので、今伝えておきたいことを書いてみるね。
君は獣医師っていうのは、頭が良くなくちゃいけないと思っているかもしれない。
確かにそうだ。
目の前で何が起こっているのか、何をしなくちゃいけないのかということを考えるには、それだけの知識や考える力がないといけないね。
勉強が大切なのは、もちろんだ。
でも獣医師っていうのは、勉強ができるっていうだけでは、やっていくのが難しい仕事なんだ。
獣医師が相手にしなくちゃいけないのは、命を持った動物だ。
その命は、とても小さくて、だけどそれぞれ精一杯生きていて、そして人の思いが詰まってる。
獣医師には、命を思いやり、人の気持ちを感じ取ることのできる、やさしい心が何よりも大切だ。
やさしいって言っても、押しが弱いとかそういうんじゃないよ。
「相手がどう思っているか、どう感じているか」ということを汲み取って、それに対して自分の心で「こうしてあげたい」「これをしてあげたら喜んでくれるんじゃないだろうか」と感じることができるということなんだ。
強い心も大切だ。
命というものは、必ず終わりを迎える時が来る。
獣医師というのは、生と死に向き会い続けなくちゃいけない職業だ。
獣医師って言ったって、神様じゃない。
どんなに手を尽くして、できることをしたとしても、治療の甲斐虚しく、動物がなくなってしまうことだってある。
そんな時に、打ちひしがれているだけじゃダメだ。
一番悲しいのは飼い主さんなんだ。
飼い主さんの気持ちを考えて、心に寄り添ってあげないといけないし、そんな時でも理性的に、何があって、何をして、結果どうしてそうなったのかということを、分かってもらえるように説明しなくちゃいけない。
考える頭と、感じる心を同時に持ちながら、ちょっとのことではめげず、折れない、タフな心を持たないといけないんだ。
体力だって必要だ。
診察だって忙しい時もあるし、夜に緊急手術が入ることだってある。
夜眠くたって、「明日まで待ってください」とか言ってたら、そのまま動物が死んじゃうような緊急事態だってある。
そんな時には、夜に診察をして、そのまま手術ってことだってある。
自分が倒れてちゃ、相手の動物を元気にすることだってできなくなる。
獣医師にとっては、自分の健康は何より大切だ。
自分自身の健康管理をしながら、体力づくりを心がけることも、とても重要なことなんだよ。
そして、勉強はずっと一生涯だ。
学校でする勉強は、自分の将来を選び取るために必要なものだけれども、勉強は学校を卒業してからもずっと続くんだ。
本当の勉強っていうのは、社会の中で誰かを幸せにするために、自分の知識と技術を高めるためのものなんだ。
人は、勉強をすることで、誰かの役に立つ人間になっていけるんだ。
勉強は、何の仕事に就いたとしても、ずっと続けていかなくちゃいけないんだよ。
その中でも、特に命を扱う仕事っていうのは、勉強を頑張ってしなくちゃいけないんだ。
いろんな病気があるし、いろんな治療法だってある。
今まで常識となっていたことだってどんどん変わっちゃうし、新しい検査や薬が次から次へと出てくる。
命を扱う仕事っていうのは、それを知ってさえいれば相手を助けられたのに、知っていないために助けられなかった、ってことがあり得る仕事なんだ。
後から、「あの時、これを知ってさえいれば、あの子を助けられたのに・・」って悔しい思いをしないようにするために、ずっと勉強は続けていかなくちゃいけないんだ。
獣医師は、心と体と頭と、自分自身を全部高めていかなくちゃならない仕事なんだよ。
えっ、スーパーマンみたいだって?
そう、理想はスーパーマンだね。
なんでも知ってて、なんでもできて、なんでも治せればそれに越したことはない。
でも、それは正直難しいね。
パパだって、もちろんスーパーマンじゃないし、なんでもできるわけじゃない。
時には分かんなかったりして困ることだってある。
そんな時はね。
他の人に頼っちゃえばいいんだ。
自分が知らなくってできないことでも、他の獣医さんならそれを知っててできるって時もある。
そういう時には、そういう人を頼ればいい。
だから、他の獣医さんと繋がりを持つということも、とても大切なことなんだ。
時にはパパだって、他の獣医師さんから頼られることだってあるんだしね。
自分一人で何にでも完璧である必要はないんだよ。
自分には何ができて、何ができないのか、それを理解して、把握しておくことも大切なんだ。
大切なのは、「飼い主さんと動物に、幸せに暮らしてほしい」と願うこと。
そして、「今、自分が何を相手にしてあげられるのか」を考えることなんだ。
今困っている人が目の前にいて、その人に向き合って、自分がどうしてあげたいのか。
しなければいけないからするのではなく、してあげたいと思うからそれをする、そんな心で動ける人間になっていって欲しいんだ。
知識と技術が高まるということは、相手にしてあげられることがそれだけ増えるということなんだ。
心も体も頭も、自分の気持ち次第で、磨こうと思えばいくらでも磨ける。
君の年齢なら、体だって、頭だって、パパなんかよりはるかに伸び盛りだ。
でもね、ぼんやりしているだけでは、勝手に良くなっていったりはしないんだ。
自分が将来、どういう人間になりたいのか、そのためには何が必要で、何をしなくちゃいけないのか、それを少しずつでもいいから考えておいて欲しいんだ。
中学生になるというのは、大人への階段を登り始めるところに来たということなんだ。
これからの頑張りや選択が、この先の人生を左右する、とても大切な時間でもあるんだよ。
とは言ってもね。
今という時間を精一杯楽しむことは、将来のことを考えるのと同じくらい、とても大切なことなんだよ。
今から毎日気を張り詰める必要もないし、それだとしんどくなっちゃうからね。
やりたいことを見つけて、それを精一杯やっていれば、そこから学ぶことは、なんであれ必ずたくさんある。
そういう知識や体験が、必ず将来の人生において、かけがえのない財産になっていく。
友達と楽しく遊ぶことだって、人生においては、とても大切な宝物になっていくんだ。
なんであれ、精一杯やることに、人生で無駄なものなんて一つもない。
これからどう歩いていくか、ということは、今までどう歩いてきたか、ということの続きにあるものだからね。
だから、これから中学生になる君に言いたいことは・・。
「今を精一杯楽しんで!」
ここまで書いてきたことは、パパが今そういう願いを持っているんだ、ということを知っておいてもらえたら、それでいいよ。
今という時間は、今しかない、最高の宝物なんだ。
だから、一度きりの人生、悔いのない時間を過ごしてね。
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子供が小学校を卒業するので書いて渡してみました。
2016/2/27(土) 午前 10:34
わー、スゴイ、スゴイ!
獣医師というより、子どもを思う一人のお父さんの愛情がとても伝わってきて、読んでてなんか涙が出てきました。
どんな職業も大変だしそれなりの覚悟がいるのは当然ですが、獣医の一番特殊でツラいところは自分の好きな動物を殺さないといけない場面がよくあるというところでしょうか。
そういう点で、単に動物が好きだとか、カワイイだとか、変なセンチメンタリズムなんかでは到底やっていけない難しさと、精神的にも自分の意思にも強さが必要な職業だと言えるでしょうね。
息子さんが父の姿に憧れるって、最高の幸せかと。
頑張って欲しいですね♪
2016/2/27(土) 午後 0:52 [ 勝元 由佳子 ]
ポコ先生の記事に感動です。
一番下の孫が今度中学生になります。目標はサッカー選手です。
分野は違っていても先生のお言葉がぴったりとはまります。
コピーさせて頂いて孫にぜひ読んでもらいたいです。
☆彡
2016/2/27(土) 午後 1:09
ぽこさん、感動ありがとうございます。
ツイートさせて下さい
2016/2/27(土) 午後 9:59
> 勝元 由佳子さん
可愛いというだけではできないですからね。
いろんなことを要求される仕事ではあると思います。
> サンマリーさん
途中からは、いろんな職業に共通する言葉になっていると思います。
> たにっちょさん
そう言っていただけますと、僕も嬉しいです。
ツイートぜひどうぞ。
2016/2/28(日) 午後 9:27
素晴らしい先生です。以前おせわになりました、ケアーンテリア、もっぷの飼い主です。とても良く、心を込めて治療していただきましたが、
12/1亡くなりました。儲け主義の病院と違い、心をこめて、ウチの子に合う治療をしてくださいました。感謝しております。これからも、他の先生に頼ったり頼られたりしながら、素晴らしい先生でいてくださいね。
2016/3/3(木) 午前 11:30 [ gog***** ]
> gog*****さん
ほとんどの獣医師が、似た思いを持っていると思います。
儲けを求めて獣医師を目指し始める人も、そんなにはいないと思います。
儲けようとするなら、もっと楽な仕事はたくさんあると思います。
2016/3/4(金) 午後 5:21
ぽこ先生のブログを時々覗いています。
息子さんへの思い、素晴らしいです。
涙がでました。先日、21歳の愛猫を亡くしました。大往生なのに、亡くなる前の手当が適切だったか、悔やむ時があります。
限りある命なのに、もっと一緒に居たかったからです。
そんな飼い主の思いを大切にしてもらえる獣医さんがいてくれたら、私達はこの上なく幸せに思います。
2016/5/18(水) 午後 5:19 [ kazu ]
> kazuさん
21歳なら、大往生だと思います。
長生きできるということは、それだけストレスや怪我もなかったということですので、幸せだったんだと思いますよ。
2016/7/11(月) 午後 6:46