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若い猫を連れた飼い主さんが、病院にやって来ました。 見れば、何ヶ月か前にワクチンの注射をしにやって来た子ですが、 今日はどうしたのでしょうか。 「今日はどうされましたか?」 そう訪ねると、皮膚病になった様なので診て欲しい、とのこと。 さっそく診察室に入ってもらい、猫をケージから出してもらいます。 猫は、診察台の上で怖がる様子もなく、 ゴロゴロと言いながら、あやしている僕の手に、 すりすりと顔をこすりつけて来ます。 あやしながら、どこが異常なのか、全身をさりげなくチェックです。 ・・・毛並み良好です。 毛の抜けているところや、赤くなっているところもありません。 「どこがおかしいところですか?」 と訪ねると、 「顔がおかしいんです。」 との返事。 ・・若々しい、けっこうなべっぴんさんです。 「え?どこですか?」 と聞き直すと、 なんで獣医さんなのに分からないんだ、と思ったのか、 少し憤慨した様な、ムキになった様子で、 「ここですよ、ここ!」 と、耳の前のあたりを指差しました。 「ほら、耳の前のところが、両方ともハゲになってるじゃないですか! おかしくないですか、これ?」 指差す先を見てみると、たしかに、毛が薄くなっています。 思わずにやっとしてしまいそうなところですが、 いたって冷静につとめながら、なるべく自然に答えます。 「あぁ、これですね。 ここは、猫は、どの子も毛が薄いですよ。」 飼い主さんは、きょとんとした顔で、 「えっ、そうなんですか。」 とびっくり顔です。 獣医師をしていると、時々、こういう相談というか、 疑問をぶつけられる事があります。 だいたいは、飼い主さんからの「素朴な疑問」として尋ねてこられるのですが、 時には、病気だと思い悩んで相談してこられる事もあります。 耳の前の毛の薄い部分と、前足の肉球の上の小さなふくらみ(地面に付いていない方の肉球の、さらに上側にある、触らないと気づかないしこり)、 耳の後ろの2つに分かれている部分(副耳)は、 よく訪ねられる三大「これ何?」です (手元に猫がいるなら、のぞいてみてください)。 耳の前の毛の薄い部分に付いては、どの子も、 程度の差はありますがそうなっています。 「なんで毛が薄いの?」 と訪ねられても、神様じゃあるまいし、 なんでかは知らない、というところです。 多分、耳の前なので、音を聞くために、 毛が密よりも、ある程度薄くなっている方が、 何かしら有利だったのだろう、と思います。 多分、猫自身に聞いても答えは知らないでしょう。 ・・というか、耳の前の毛が薄い事自体、本人も気づいてはいないでしょう。 しばらく話をしていると、ようやく飼い主さんも気が晴れてくれたのか、 納得してくれたようでした。 成長して大きくなって来ると同時に、耳の前の毛が薄いことに気づいてきて、 ずっと不安に思っていたようです。 毎日のように、耳の前をしげしげと眺めていたという事で、 その光景を想像するだけで、腹の中がむずむずとして、 思わず笑ってしまいそうでした。 多分、猫も、毎日顔をのぞかれて、何事かと不思議に思っていたのではないかと思います。 治療するでもなく、薬を出すでもなく、飼い主さんはそのまま帰って行きましたが、 僕も人の事を笑っていられるほどでもありません。 なぜなら、恥ずかしながら、大学を卒業してすぐの頃、 前足の肉球の上のしこりを腫瘍でないかと心配して連れてこられた猫を診察して、 そこを針で刺して、細胞診をした事があるからです。 そのときは、院長に相談したら、 院長がいきなり自宅に戻って行き、自分ちの猫を連れて来て、 「これは、こういうものなの!」 と、僕と飼い主さんに説明してくれました。 犬も猫も、しげしげと眺めていると、不思議な構造をしている部分、 というのはたくさんあります。 動物の体に無駄な部分はありませんので、 変な形に見えても、たぶん、どれも何かしらの役に立っているのだと思います。 明らかに役に立っていないのは、犬の前足の親指くらいですね。 ※動物と飼い主さんの設定と描写には、修正を加えています。 傑作、ランキングをクリックしていただけますと、うれしい限りです。 転載、リンクはフリーとさせていただきます。 |
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ウチは複数匹飼いだから、ハゲもしこりも、他のネコと比べて同じだったから、こういうもんなんだと納得してました。でも、こうして心配になる飼い主さんの気持ちもなんとなく分かります。( ̄▽ ̄;
2007/4/11(水) 午後 10:16
耳の後ろの、2つに分かれている部分(「副耳」といいます)も、よく尋ねられるところですね。そこを入れて、「三大なにこれ?」と書き直しておきます。
2007/4/11(水) 午後 11:47
黒猫の方が、毛が黒くて肌の色が薄いと、毛が薄いのが分かりやすいですね。
2007/4/11(水) 午後 11:48
犬は、鼻の上の毛が薄い、と言われるくらいでしょうか。猫には、神秘的な部分が多いという事かもしれませんね。
2007/4/11(水) 午後 11:51
私も昔ワンコの目に膜が貼っていたので、雪の中を慌てていったら「目やにだよ」とバカにされてしまいました。そこの獣医さんは他の病院の悪口ばかりいつもいうので、いつも嫌だったんだけど、これを気に病院を変えたのですが、でも、恥ずかしかった(><)恥ずかしくて変えたのも50%あります。
2007/4/12(木) 午前 0:03
でも心配なら→病院の方がいいです。ついでに健康診断もして。なんもないこと先生にちゃんと診てもらったら安心♪後悔後に立たずですもん。
2007/4/12(木) 午前 7:29
うちも息子が心配して、きっと耳の病気だから、耳が腐って死んじゃったらどうすんの!病院に連れってってよ!!って言ってました。行きませんでしたけど。。。
2007/4/12(木) 午前 8:44
犬猫以外の小動物(我が家はねずみ)を飼育していると、変だなと思った時にはもう重篤という事もあります。私は「早期発見・早期治療・なんでもなくても安心料」をモットーに観察し、獣医さんへ行く事にしています。
2007/4/12(木) 午前 8:53 [ chi*aya*5 ]
ネコちゃんのことはよく分かりませんがワンチャンのおへそのことが気なります。一匹の子はなんともないのですがもう一匹のワンチャンは最初よりやや大きく1cm大くらいなんですがでべそ(?)なんですか?
2007/4/12(木) 午後 1:58
この記事、見てよかった。実は私も「三大『これ何?』」は不思議に思ってたんです。病気なのか?という心配よりも何のためのものなのかという好奇心の気持ちです。いったい何なんでしょうね〜。
2007/4/13(金) 午前 0:00
病気なのに様子を見ていて、悪化してしまう事もありますので、おかしそうだったら病院で早めに診てもらう事が、一番であると思います。ひょろついたくらいで病院に来る人、というのも、いらっしゃいますが、何にせよ、頼って来ていただけるというのは、獣医師としてはうれしいことです。
2007/4/13(金) 午前 0:17
ハムスターの臭腺も、よく相談してこられる事ですね。分泌物がたまって炎症が起きる事もありますので、診てみてですね。
2007/4/13(金) 午前 0:19
サンマリーさん、文章からは、「臍ヘルニア」の可能性が高そうではあります。症状がないことも多いのですが、将来避妊手術などをするのであれば、そのときに、一緒に手術しておいた方が良いでしょう。
2007/4/13(金) 午前 0:21
ぽこ先生、手根球のことでしょうか?
2007/4/16(月) 午後 8:51 [ - ]
手根球ではありません。その上の、ぷちっとしている、触らないと分からないぷっちりです。見ても分かりません。たぶん、名前もついていない突起(?)だと思います。たぶん、そんなものがあるのを知らない人も多いでしょう。
2007/4/17(火) 午後 11:51
おかしい。ちょうど、ウチの息子が言っていたところです。「みー、はげてるよ」真剣に何回も言うので「どこの猫も薄いよ、そこ」と教えてあげたところです。見られている猫は「何よ!」とすごんでいましたが・・・
2007/4/18(水) 午後 6:53
先生!うちのジョアンナも薄くてハゲてます!昔の猫に比べて今の猫は耳の前の毛が薄く感じます。最近の子が足長な様に、猫も変わっていくんですかね〜?
2007/4/18(水) 午後 10:10
私も毛が薄いなぁ〜と思ったことがあります^^でも全員薄かったので、こういうものなのかなぁ〜と思ってました☆もし比べる対象がいなかったら、病気だと思ってしまったかも知れません☆
2007/4/24(火) 午前 0:26
ぼち
2010/2/26(金) 午前 0:54 [ Hi*yori*tu ]
禿げてますね、しかも決闘をして帰ってきて血が出てることも・・
で 別のをお聞きしたいんですが、脇の下の少し尾っぽより、アーモンドくらいの膨らみがあり、シリコンでも入れてるのかと思うくらい、グニュグニュしています。
左右とも有るので問題はなかろうと思うのですが、ウチは1頭しかいませんので比較がしにくい、他所の子はなかなか触らせてくれません。
おそらくリンパ節ではなかろうかと思っております。
2019/7/7(日) 午前 3:27 [ 有亜土根 ]