どうぶつ病院診療日記

動物病院の診察風景や、獣医師が日頃思っていることなど

診療日記〜その他

[ リスト | 詳細 ]

動物病院の診療風景を分かりやすく、楽しく、お伝えしていきます。
事実を元にしていますが、動物や飼い主さんの設定・描写などには修正を加えています。
記事検索
検索

全3ページ

[1] [2] [3]

[ 次のページ ]

昼に急患。

テフロン加工のフライパンを加熱したまま、空焚きの状態にしてしまったということで、ぐったりしたインコが連れてこられました。
3羽飼っているうち、家で2羽亡くなってしまっていて、残る1羽も息絶え絶えという状態だったのですが、酸素をかがせるも、あえなく逝ってしまいました。

テフロンの加熱ガスは人間にも有毒ということですが、鳥を飼っているところでは、特に要注意のようです。

発生する煙自体が高熱でしょうし、ガスによって肺の出血、肺水腫が生じて、それが命取りになってしまうということです。
解毒剤もないですが、呼吸困難などの症状が出始めた時には、かなり状態が悪くなっていることが予想されます。

鳥を含め、動物を飼っているオーナーの方は、テフロン加工のフライパンの空焚きには、くれぐれもご注意ください。

※転載、リンクはご自由にどうぞ

とげとげ君の皮膚病

ある日、動物病院に一本の電話がかかって来ました。

「すみません、エキゾチックの動物は診察してもらえますでしょうか。」

ほう、エキゾチックですか。
僕の動物病院では、犬猫が中心ですが、
ハムスターやウサギ、鳥なんかは僕もよく診ています。

「何の動物ですか。」

エキゾチックと言ってもいろいろですので、
とりあえずは動物の種類を尋ねます。

「ハリネズミです・・。」

うーむ、ハリネズミですか。
ハリネズミは、正直、今まで診たことがありません。
あまり珍しい動物は、診察の機会も少なく、得意ではないのですが、
診察させてもらうとすれば、その旨を伝え、了承をいただいてからです。

「専門ではないのですが、お連れいただけましたら、
 診させていただきますよ。」

そう言うと、とりあえず一度診て欲しいとのことでした。
さらに話を聞いてみると、隣町にお住まいの方のようです。

その町の動物病院に連れて行ったところ、
「うちでは診てないので、隣町の動物病院なら診てくれますよ。」
と言われ、うちの病院に電話をして来たようです。

以前、カメの話とハムスターの話をして以来、
その病院の院長は、エキゾチックの動物をしばしばうちに回して来ます。
もっとも、紹介で多いのは、ハムスターやウサギ、鳥などです。

エキゾチックは何でも回せば良いと思っているのかもしれませんが、
僕自身、正直、ハリネズミの診察はそれまで経験がありません・・。
とりあえず、治療できるものかどうかは診てみて、
それから考える、ということになりそうです。

どうも手に負えなさそうであれば、
もう少しエキゾチックを専門に診ている病院に
紹介する形になるかもしれません。
まずはお連れいただいて診させてもらうことにしました。

そして、その日の午後、飼い主さんがハリネズミ君を連れて来ました。

「すみません、よろしくお願いします。」

住所と氏名を書いてもらう間、受付の台に置かれたケージの中では、
もぞもぞと、何やらとげとげした生き物が動いています。

・・うーむ、たしかにハリネズミだ。

電話では、皮膚病だということでしたが、
見る限り、針もたわわにそろっていて、
傍目にはどこが病気なのかはよく分かりません。

遠くから見ていても分かりませんので、
まずは診察室に入ってもらって、じっくりと診せてもらうことにしました。

診察室に入ってもらうと、まずは問診です。

「え〜と、どこらへんが皮膚病ですか。」

「首の周りが、白っぽい粉の様なものがついています。」

ハリネズミ君は、ケージの中でもぞもぞと動いていますが、
よく見てみるために、持ち上げてみて見ることにしました。

「この子は、触られなれていますか。」

「あまり家では触っていないですね。
 怒ったりはしないですが、触ると丸くなります。」

・・やっぱり丸まりますか。

できるだけ驚かせないように気をつけながら、
下からすくいあげるように、体を持ち上げようとしました。

と、僕の手が視界に入った時点で、
身の危険を感じたのか、ハリネズミ君の体がみるみる丸くなり、
ボールのようになってしまいました。

動かなくなってしまったので、そのまますくいあげてみると、
僕の手の上で、とげとげを突き出したまま、
まん丸になってしまいました。
見るも見事に、まん丸に固まってしまっています。

・・う〜む、これをどうしろと・・。

首を見たいところですが、
すでに防御姿勢で固められてしまっていて、
首は、ちらりとも見えません。

・・うーん、どうやって診察しようか・・。

いろんな角度から首を覗こうとしますが、
とげとげ以外の体の場所はさっぱり見えません。
手の角度を変え、見る位置を変えと四苦八苦していると、
飼い主さんが追加情報を教えてくれました。

「首の後ろの方にもいましたよ。」

・・いました?

「虫っぽかったですか?」

「よく分からないですけど、白っぽいなにかが、
 いっぱい付いているようです。」

よーく首の後ろの辺りを見てみると、
たしかに、ごまよりも小さな白いなにかが、
けっこうたくさんくっ付いています。

さらによーく見てみると、ゆっくりですが、
わら・・わら・・わら・・と、ゆっくりその白い物体が動いています。

・・見ているだけで、なんだか体が痒くなって来そうな感じです。

「どうも、何かの虫のようですね。」

とげとげの隙間に爪楊枝を差し込み、白い虫を引っ掻くと、
1匹2匹、診察台の上に落っこちて来ました。
それをそのままセロファンテープで捕獲すると、
スライドガラスの上に貼付け、観察開始です。

・・むむっ、やはり虫のようだな。

どうやら、シラミの仲間のようですが、
猫で時折見るのとは、なんだか形が違います。

シラミであればノミ取りの薬で落とすことが出来ますので、
ノミの薬をつけておいて、様子を見てもらうことにしました。

猫であれば、スポットタイプの薬を一本、
毛をかき分けて地肌につくように、と付けるところですが、
ハリネズミでは、この上ない剛毛ですので、
毛のすきまから、垂らすことにしました。

猫用の量では多すぎますので、
体重分に量を計算して、
それをインスリンポンプで吸って垂らすことにしました。

薬を吸って診察室に戻ると、敵がいなくなったと思ったのか、
普通の状態になっていましたが、
僕がもう一度手を伸ばそうとすると、
まただんごのようになってしまいました。

そのまま飼い主さんに持っておいてもらうと、
首の後ろのあたりに、薬を垂らしました。

診察をするにはなかなかに難のある格好ですが、
薬を垂らす分には、処置がしやすい姿勢でした。
持っている間中、身じろぎひとつせず、
ずっと固まったまま石のようになっています。

大した診察も治療もしてはいないのですが、
飼い主さんは、どうやら原因が分かり、治療をすることが出来て、
納得してもらえた様子です。
処置も無事終わり、
ハリネズミ君と飼い主さんはそのまま帰って行きました。

それから1週間ほど経ってから、
その後どうなったのか気になったので、
様子を聞くために電話してみたところ、
虫も消え、今のところ、落ち着いているようだとのことでした。

今回は、幸いに、大きな病気でなかったので、
すんなりと治療することが出来ましたが、
もしこれで、もっと大きな病気だったりしたら、
どうやって診察しようかと考え込んでしまいました。

何しろ、とげとげで防御されたまま、丸まられてしまうと、
体はおろか、手を触ることも出来ません。
触診も、体温を測ることも難しそうです。

丸まった状態で診察しろと言われても、
診察のしようもないかもしれないなと感じました。
いざとなったら、
麻酔をかけないと体をしっかり診ることは難しいかもしれません。

エキゾチックの動物では、犬や猫とはずいぶん勝手が違いますが、
中でもハリネズミの診察は大変そうです。
何はともあれ、今回はお役に立ててよかったと、
胸をなで下ろしたところです。

※動物と飼い主さんの設定と描写には、修正を加えています。
 傑作、ランキングをクリックしていただけますと、うれしい限りです。
 転載、リンクはフリーとさせていただきます。

ゴールデンの足骨折

動物病院に、一本の電話が鳴り響きました。
取ると、うちの病院は初めてという飼い主さんからでした。

「どうされましたか?」
尋ねてみると、
「ゴールデンなんですが、足をどうやら骨折してしまったみたいで、
 今からおうかがいさせていただいてもよろしいですか?」

ゴールデンですか・・。
なかなか大変そうです。
ぼっきり折れていれば手術が必要ですが、
まずは程度を尋ねてみる必要がありそうです。

「足は痛がっていますか。」
「はい・・。
 足首のところでぶらぶらしてしまっているようで、
 引きずりながら歩いています。」

・・これは重症のようです。
完全骨折なら、プレートか、創外固定が必要そうですが、
血行が悪くなってしまっているのなら、
最悪断脚という可能性もあります。

ともかく、見てみないと何とも言えませんので、
そのまま、急いで連れて来てもらう事にしました。

「すぐお連れいただけますか。
 くれぐれも、足を無理して使わせないようにしてあげて下さい。」
「それは難しそうですが・・。」

飼い主さんがなんだか引っかかる事を言っていましたが、
すぐに病院に連れて来てもらう事にしました。

骨折の時は、早期の安定化が何より大切です。
一刻も急いで処置をしてあげる必要がありそうです。

飼い主さんがやって来て、すぐに検査が出来るように、
レントゲンの機械のスイッチを入れ、
機械を暖めておきました。

ゴールデンであれば、かなり体が大きいので、
手術もそうですが、レントゲンを撮るのも一苦労しそうです。
まして、痛がっている場合、
体を触ろうとすると噛み付いて来る事もあります。

足首が折れているという事なので、
折れている部分によって、手術の方法も変わって来ます。
手術の本を読み返していると、飼い主さんがやって来ました。

駐車場についた車から、飼い主さんが降りると、
そのまま受付にやって来ました。
患者さんを捜してみるも、犬の姿が見当たりません。

「すみません、先ほど電話していたものですけれども。」
「はい、え〜と、ワンちゃんはお車ですか?」

「はい?ワンちゃん?
 ゴールデンはこの子ですが・・。」
ふと飼い主さんの鞄の中を見ると、
ティッシュの箱らしきものの中に、もぞもぞと動いている生き物がいます。

ありゃ、ゴールデンってハムスターの方ですか。


そのまま診察室に入ってもらい、様子を診せてもらうと、
確かに、足首が完全に折れた様子で、
ぶらぶらした足を引きずったまま歩いていました。
足首は、少し内出血しているらしく、腫れています。

足先は、血行は悪くないらしく、ピンク色をしています。
決行が遮断されていると足先が紫色になって来ますので、
腐って落ちる可能性は低そうです。

ぽっきり折れている事は触診で確認できましたので、
特にレントゲンは撮りませんでした。
ハムスターの足首の骨折は、ハムスターの診察の中でもよくある症例です。

「普段は、どんな容器で飼っていますか。」

「金網のケージで飼っています。
 よく登ろうとしているのですが、しょっちゅうこけています。」

「ハムスターでは、金網ケージでこけた時に、
 足首を骨折してしまう事故がよく起きるんですよ。
 もともと平原と地面の中で生活している動物なので、
 リスみたいに立体的な生活はしていません。
 ケージに登ろうとして、その時に金網に足をつっこんだままこけると、
 そのまま"てこの原理"で、ぽっきりと足首が折れる事があります。」

「手術とか必要ですか?」

「このまま、きれいにくっついてくれるのを待つしかないです。
 ハムスターではピンとかプレートとかで手術するのは無理ですし、
 テーピングなんかをしても、それによって、
 テープごと自分の足を噛みちぎってしまう可能性もあります。

 まずは、回し車や食器、巣材などを除けて、
 足が引っかかるものをなくしてあげて下さい。
 引っかかるものがあると、足首に力が加わって、
 変な形に歪んでしまう事があります。
 そのまま後ろにまっすぐになった状態で固まってくれると、
 一番きれいになってくれます。

 化膿しないかどうかだけ心配なので、抗生物質はお出しします。
 くっついたら、水槽タイプのケージにするか、
 金網の下の部分をアクリルかなんかでカバーするかですね。」

指示を一通りすると、飼い主さんはそのまま帰って行きました。

ハムスターの骨折事故は、ハムスターの診察の中でも多い症例です。
そして、その原因は、ほぼ全て、
「金網タイプのケージ」を使っている事から来るものです。

金網で、登れそうな感じだと、ハムスターは、
金網に足をかけ手をかけ、上に登ろうとします。
でも、ハムスターは登るのが不得意ですので、
かなりの確率で途中でこけ、後ろ向きにひっくり返る事になります。
そのとき、金網の間に足が挟まっていると、
足首に力が集中し、ぽっきりと折れてしまいます。

最近は、骨折に気を使って、
水槽タイプになっている容器もたくさん販売されています。
でも、金網タイプの容れ物も、いまだに多く販売されているようです。

もしこれが、人間の子どもが使用するもので、
子どもに足首の骨折が頻発していれば、
間違いなく大きな社会問題にもなるかと思うのですが、
相手がハムスターだからなのか、大きな問題にはならず、
いまだに多くのショップで、どうどうと販売されているようです。

水槽タイプの容器の欠点は、中の通気性が悪いという事ですが、
下の方が水槽タイプで、上の方が通気性が良くなっている、
という折衷タイプもあるようです。

金網タイプで事故が起きても、
クレームや損害賠償などがおきないのか不思議ではあるのですが、
あまりに事故が頻発していますので、
メーカーさんも、飼い主さんも気をつけて欲しいと思います。

ハムスターの骨折が来るたび、獣医師としては、
「またか」という気持ちになってしまいますから。

※動物と飼い主さんの設定と描写には、修正を加えています。
 傑作、ランキングをクリックしていただけますと、うれしい限りです。
 転載、リンクはフリーとさせていただきます。

ハムスターの頬脱

小さなケージを抱えた飼い主さんが、家族で病院にやって来ました。
ケージの中を見てみると、ハムスターが一匹、中に入っているようです。

「今日はどうされましたか?」
尋ねてみると、
「ほっぺたの部分が急に腫れて来たんです。」
とのことでした。

診察室に入ってもらい、ほっぺたを見てみると、
たしかにぽっこりと腫れています。
どうやら、頬袋の中が飛び出して来てしまったようです。

ハムスターのほっぺたには、頬袋という袋があります。
食べたものを一時的に溜め込んでおき、
安全な場所で、落ち着いてご飯を食べるためのものです。

頬袋の中身が飛び出て来てしまうことはたまにあるのですが、
今回は、脱出の度合いがかなり強く、
かなり大きく飛び出して来てしまっています。

飛び出した部分は炎症を起こし、さらに腫れています。
そのまま元に戻るかどうか、鉗子で押し込んでみたところ、
あまりに腫れが強く、脱出部位が大きくなっているために、
中に戻す事ができませんでした。

「どうやら、頬袋の中が反転して飛び出して来ているようです。
 このまま放置しておくと、先の炎症を起こしている部分が、
 血行不良になって壊死する可能性があります。」

ハムスターは家族に大切にされているようで、
飼い主さんは、しっかりと治療することをお望みでした。

しばらく戻せるかどうか試してみたのですが、
やはり戻りそうにありません。
となると、麻酔をかけて、先の炎症が強い部分をある程度切除して、
反転を整復してあげないといけなさそうです。

そのままでは嫌がって、処置はできません。
麻酔をかける必要がありますので、
処置をさせてもらって良いかどうかを尋ねました。

ただ、現在の状況では、麻酔をかけて整復するか、
それとも麻酔を避けて抗生剤だけで内服治療するかですが、
治療するには、麻酔をかけて手術するしかなさそうです。
リスクはありますが、麻酔をかけないと、治療はできそうにありません。

その点を告げると、家族でしばし相談したいという事で、
待合室でしばし相談してもらう事にしました。
お母さんが、お兄ちゃんと妹さんに説明しています。

危険は伴うけど、治療してあげないと治らない、
ということをお母さんに説明してもらうと、
兄妹は理解してくれたようで、お母さんに向かって、
こくんとうなずいていました。

しばらくして、もう一度治療の承諾を伺ったところ、
「最善の治療をしてあげてください。」
とおっしゃいました。

そうと決まれば、お預かりさせてもらい、
お昼に手術をする事にします。
承諾書をお母さんが書く間も、兄妹は少し不安そうでした。

「この子もがんばるから、お兄ちゃんたちも、
 無事に手術が終わるように、お祈りしておいてあげてね。」
そう言うと、二人が、そろってこくんとうなずいていました。

お昼になり、手術開始です。
ハムスターを手術台の上におき、体に犬用の麻酔マスクをかぶせると、
麻酔チューブを接続し、麻酔を上から流していきます。

しばらくすると、ハムスターがふらふらし始めました。
くたんと寝てしまうと、鎮痛剤を注射し、
お手製のハムスター用麻酔マスクを鼻に当てます。

イメージ 1


この時点で、ハムスターを仰向けにして、
もう一度脱出した部分を観察してみます。
・・うーん、でかい・・。

脱出自体は急に起こるものですが、
炎症や感染が二次的に起こる事が多いので、
患部は腫れ上がり、元に戻らなくなってしまう事がしばしばです。

もう一度、頬袋の反転が押して戻らないものか試してみましたが、
やはり炎症を起こして腫れた部分がつかえているようで、
戻りそうな気配はありませんでした。

仕方ないので、最初のシミュレーション通り、
先の腫れている部分を切除し、それで入るかどうか試してみます。

脱出部を観察してみると、脱出部の先っぽの根元に、
くぼんでいる部分があります。
ここを縛って切除する事にします。

吸収糸を凹みのところの下に通すと、
把針器でくるくるっと結び目を作り、結紮をします。
ぎゅぎゅっ・・。
ちょうど、凹んでいる部分で結ぶ事ができました。

一重だけの結び目ではほどけて来てしまいます。
そのまま、くるくる、ぎゅぎゅっ、くるくる、ぎゅぎゅっと、
合計4回結び目を作ると、結紮手技は終了です。

そして、結び目から少し離れたところを鉗子で挟むと、
その根元をメスですぱっと切断しました。
あっけないくらい簡単に、先の腫れていた部分がなくなってしまいました。

鉗子を放し、出血がないのを確認すると、
そのまま、脱出した部分が元通り、
頬袋の中に整復されるかどうか試してみます。

すぽん!
音こそしませんでしたが、そのままするすると、
頬袋の中に戻す事ができました。

そのままにしておくと、
また残りの部分が反転して来てしまう可能性がありますので、
頬袋の外側の部分を2糸ほど縫合しておき、
再脱出が起こらないよう、外からふたをしておきます。

これで、処置は全て完了です。
今回は、一滴も出血しませんでした。
麻酔を切ると、そのまま麻酔が覚めていくのを待ちます。

しばらくすると、ふらふらしつつも、
ハムスターが首をもたげ始めました。
何とか無事に麻酔も覚めて来たようです。

飼い主さんに電話をすると、無事手術が終わった事に、
ほっとしたようです。
また夕方に迎えにくると言う事になりました。

夕方、家族の人が迎えに来た頃には、
ハムスターも麻酔がすっかり覚め、
預かる時と同じようにちろちろとケージの中を歩き回っていました。
ただ、ほっぺたの出っ張りがなくなり、
見た目はずいぶんすっきりとしています。

兄妹も、元気そうなハムスターを見て、ずいぶん喜んでくれたようでした。
僕がお祈りしてあげてと言ったもんだから、
家で、ふたりそろって一生懸命お祈りしていたと言う事でした。

「ふたりがお祈りしてくれたおかげで、
 この子もがんばってくれたんだね。」
そう言うと、ふたりはケージを大切そうに抱え、
中で動くハムスターを大事そうに見ていました。

そのままハムスターは、無事退院していってくれました。
その後、しばらくしてから電話をしてみましたが、
再脱出などはせず、元気にしているという事でした。
あれだけのものが外に出て引きずっていると、
ハムスター君もさぞ気持ち悪かった事だろうと思います。
今回は、すっきり治り、良かった良かったというところです。

※動物と飼い主さんの設定と描写には、修正を加えています。
 傑作、ランキングをクリックしていただけますと、うれしい限りです。
 転載、リンクはフリーとさせていただきます。

ウサギの前足の骨折

小さなウサギをだっこした飼い主さんが病院にやって来ました。
まだ1kgあるかないかくらいで、
手のひらに乗りそうなほどに小さなウサギさんです。

最初は、あまりに小さいので、飼ったばかりの健康診断かな?
と思いましたが、飼い主さんの表情を見てみると、
どうやらそうではなさそうです。

「今日はどうされましたか?」
尋ねてみると、
「ウサギの足をドアに挟んじゃいました・・。」
ということでした。

挟んだ直後から足をぶらぶらし始めたという事で、
痛めたか、骨折している可能性が高そうです。
とりあえず、患部を見てみる事にします。

足は、足の先が垂れ下がり、角度がおかしくなっています。
うーむ、これは・・。

続いて、慎重に患部を触ってみます。
こき、こきっ・・。
お腹の中がむずむずする様な嫌な感触が、指を伝って感じられます。

「どうやら、折れちゃってるようです。
 どんな折れ方をしているか確認するために、
 レントゲン撮ってみましょう。」
飼い主さんに手伝ってもらって、怖がらせないよう、
痛がらせないよう注意しながらレントゲンを撮ってみる事にしました。

現像が終わり、レントゲンを見てみると、
どうやら手首の近くのところでぽっきりと折れてしまっているようです。
前腕部の骨は、橈骨と尺骨の2本の本があるのですが、
どちらも同じように折れてしまっています。

飼い主さんに骨折の部位を説明すると、
いかにも申し訳ない思いでいっぱい、という表情です。
「後ろをぴょこぴょこ付いて歩いて来てたんですが、
 気づかずにドアを閉めちゃったんです・・。」
ということでした。
ウサギの頭をなでながら、ごめんね、ごめんねと謝っています。

飼い主さんのためにも、ウサギさんのためにも、
きっちりと骨折は治してあげたいところです。
まだ若いですので、先はまだまだ長いです。
前足とはいえ足が使えないと、
これから生きて行くのに不便になってしまいます。

ただ、1kgに満たない子ウサギですので、
骨があまりに細すぎて、どうやって治療するか、悩んでしまうところです。
犬猫であれば、ピンを入れたり、プレートを当てたり、
創外固定をしたりといろいろな選択肢があります。

でも、あまりに骨が細いので、ピンもプレートも、創外固定も適応は無理そうです。
無理にピンを入れたりすると、残っている骨がくだけて、
よけい目も当てられない事になってしまう可能性が高そうです。

残る選択肢は、ギプス固定か、そのまま放置か、というあたりです。
放置して、安静にしておいてそのまま自然にくっつくのを待つという選択肢もなくは無いですが、今の状態ですでに、かなり足が曲がっていますので、
そのままくっつくと、癒合しても、曲がってくっついてしまう可能性があります。

どうやら今回は、ギプス固定が最善のようです。
完全骨折の場合は、ギプスはあまり適応ではないのですが、
消去法で処置を考えて行くと、ギプスしかなさそうな感じです。
できるだけまっすぐな形で固定しておいて、
あとはきれいにくっついてくれるのを期待するしかありません。

飼い主さんにその事を告げると、
飼い主さんは目を潤ませながら、
「お願いします。」
とおっしゃいました。

ウサギさんは、そのままお預かりして処置する事になりました。
手術するわけではありませんが、
無麻酔でギプスをつけるのは不可能です。
麻酔をかけた状態で、ギプスをつける必要があります。

夜になり、処置開始です。
ウサギさんを麻酔箱に入れると、麻酔ガスを入れていきます。
とろんとなったら、箱から出し、マスクを当てて維持しながら、
ギプス固定をしていきます。

ギプスと言っても、人間でしている様な石膏なんかをつける訳にはいきません。
あまり重いものはウサギさんの負担になりますし、
何と言ってもまだ子ウサギです。
体が大きくなり、骨がどんどん伸びて行きますので、
軽くて簡単に取り外し可能なものにしておかなければいけません。

イメージ 1


診察時間の合間を使って作っておいた、「ウサギ用添え木」を用います。
アクリルを切って熱で成形し、
さらに蒸れ防止と軽量化のためにドリルで穴をあけておきました。

犬用の外固定器具はあるのですが、
子ウサギの腕にあう様な大きさのものはさすがにありません。
したがって、大きさに合わせて自分で自作するしかありません。

合わせてみるとどんぴしゃの大きさでした。
なるべく邪魔にならないよう、綿花をそこそこに当て、
添え木を当てるとテープで固定します。

固定ができたら、さらに外側にテープを巻き、
なるべくずれが生じないようにしておきます。
ずれ落ちる力がどうしてもかかりそうな感じですので、
体にたすきがけをするようにして補強しておきます。

どうテープを貼るかでしばらく悩みましたが、
処置自体は30分くらいで終えられました。

処置が終わると、麻酔が覚めるまでの間にレントゲンを撮って、
あたり具合を確認しておきます。
・・少し曲がっていますが、どうもこれがギプスの限界のようです・・。
・・かなり前肢を伸ばして固定したつもりなのですが。

イメージ 2


処置が終わり飼い主さんに電話すると、安堵に満ちたような声で、
「良かった・・。」
と声が漏れるのが聞こえました。
やっぱり、麻酔をかけるにあたってずいぶん心配なさっていたようです。

今から行っていいですか、とのことでしたので、
病院までお見舞いに来てもらう事にしました。
麻酔の覚めたウサギさんと面会してもらうと、
飼い主さんはぽろぽろと涙を流し始めました。

「ごめんね、こんな思いさせて・・。
 早く良くなってね・・。」
飼い主さんはそう言いながら、無事処置が終わった事にほっとした様子でした。

処置がひとまず終わったと言え、骨折の治療はこれからが一番大切なところです。
治りかけで無茶をしたり、ギプスをかじって取ってしまったりすれば、
目も当てられない事になってしまいかねません。

まずはしっかり安静にしておいて、骨がくっついてくれるまで
おとなしくしておいてもらわなければいけません。
飼い主さんにそう告げたところ、
「しばらく病院で診てあげて欲しい。」
とのことでした。

ウサギさんは入院中も、足が少し使いづらい以外は変わった様子はありませんでした。
毎日、すこぶる元気で食欲もあります。
野菜やワラをあげると、それはすごい勢いで、もぐもぐと食べてくれます。
あげたらあげただけ食べるようで、食欲は無尽蔵な感じです。
スタッフを見ると、喜んでケージの前側に駆け寄って来ます。

どうやらとても人なつこい性格のウサギのようです。
たしかに、人に寄り添ってくるウサギさんのようで、
骨折に至った理由も何となく納得です。

定期的にレントゲンを撮って行くと、2週間目あたりで「化骨」という、
治りかけの骨が活発にできて来ました。
3週間目ともなると、化骨が骨折した骨の両端を覆うまでになりました。

少し、曲がっているのが何とも言えないところですが、
もうくっついて来ているので、いかんともしようがありません。
そのまま、なるべくきれいにくっついてくれるよう期待するしかありません。

この辺りで、約1週間ぶりに飼い主さんが来ましたが、
ウサギを見て、ずいぶん大きくなったのに驚いているようでした。
そう言えば、もりもり食べるだけあって、預かったときよりも、
ずいぶん体が大きくなって来た様な気がします。
もしかしたら、一番かわいい時期をうちで入院して過ごしてしまったのかもしれませんが・・。

そろそろ退院できますよと告げると、
「まだ完全に骨がくっついていないんだったら、
 家に連れて帰るのはまだ怖いので、
 もうしばらく入院させておいてください。」
ということでした。

さらに1週間ほど経つと、ずいぶん骨が一体化して、
骨と骨の間の隙間が見えなくなりました。
ようやく、骨と骨がくっついて一体化して来たようです。

骨と骨の形も、最初に比べると、
自然に少しまっすぐな形に修復されて来たようです。
これには僕も驚きました。
いや〜、生命ってすごい!

もうさすがに退院しても良さそうです。

家に帰れるという事で、飼い主さんはうれしいやら不安やら、といった様子です。
おっかなびっくり家に連れて帰って行きました。
あとは、また定期的にレントゲンを撮りながら、
大丈夫そうなところでギプスを外す事にしました。
長かった入院生活もこれで終わりです。

僕たちスタッフも、ウサギさんと遊んだりゴハンをあげたりするのが楽しかったので、いざ退院していなくなってしまうと、
なんだか寂しい気分でした。

それからまたしばらくして、飼い主さんがやって来て、
レントゲンを撮ってみると、ずいぶん骨の一体化も進んでいるようです。
骨もさらにまっすぐに近い形になっています(5週間目)。
もう大丈夫だろうという事で、そのままギプスを外す事にしました。
ただ、しばらくは安静にしておいて、急に走り回ったりはさせないようにしてもらいました。

骨は、骨折部位がくっついてからも修復過程がしばらく続きます。
とりあえずくっついた後、骨の内部の「再構築」という過程によって、
骨はより丈夫になって行きます。

その過程も見てみたかったので、
また1ヶ月ほどしたらレントゲンを撮らせてもらう事にしました。

そして、再度ウサギと飼い主さんがやってくると、
ウサギはずいぶん大きくなり、もう若ウサギと言えるほどの大きさになっていました。

「その後の生活はどうですか。」
と聞くと、
「何事もなかったかのように走り回っています。
 右前足も、普通に使えているようです。」
ということでした。

触ってみると、多少曲がっているのは分かりますが、
ぱっと見はほぼ普通の感じです。
多分、言われなければ昔骨折したという事は分からないでしょう。

レントゲンを撮ってみると、骨の内部は完全に一体化され、
きれいな骨の形になっていました。
形も、多少歪んではいますが、最初に比べると格段にまっすぐになっています。

飼い主さんは、ウサギがまた歩けるようになってくれてうれしそうです。
ウサギも、また走れるようになってうれしそうです(想像ですが)。
最初はあまりに小さな体で、どうしようかと思いましたが、
元気になって、喜んでもらえて、良かった良かったというところです。

足の骨折は後遺症状が残る事も多いのですが、
若かったので、きれいに治ってくれたのだと思います。
僕自身はたいした治療はしていないのですが、
生命のすごさに、あらためて感心してしまった症例でした。

※動物と飼い主さんの設定と描写には、修正を加えています。
 傑作、ランキングをクリックしていただけますと、うれしい限りです。
 転載、リンクはフリーとさせていただきます。

全3ページ

[1] [2] [3]

[ 次のページ ]


.
ぽこ
ぽこ
男性 / B型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

ブログバナー

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

過去の記事一覧

標準グループ

検索 検索
友だち(28)
  • Bell&Cocoママ
  • 万博に向け不法投棄撲滅
  • アルペンかず
  • tar*y*2222
  • ゆきふみ
  • 鳴海大和
友だち一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事