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第一戒 あんまりしつこく触ったりしないでね。 こう見えて、わたしは繊細なんだから。 第二戒 でも、あんまりほったらかしにしないでね。 相手してもらえなかったら、そのうちお家を出ちゃうわよ。 第三戒 わたしが頭をなでてと差し出したら、やさしくなで回してね。 大好きなあなたにやさしくされると、幸せな気分になれるのよ。 第四戒 いつも、わたしだけを見ていてね。 あんまりじろじろ見られるのは苦手だけど、いつも注目されていたいの。 新聞紙の上を占領しちゃうのも、時には大目に見ていてね。 第五戒 わたしを叱って、言うこと聞かせようなんて思わないでね。 強く出れば、おとなしくなると思ったら大間違い。 やなことしようとしたら、ひっかいちゃうわよ。 第六戒 時には、とびきりのごちそうを食べさせてね。 いつも同じのなんて、嫌になっちゃう。 第七戒 猫じゃらしとまたたびは、いつも用意しておいてね。 たまにはうんと暴れて、すっきりしたいときもあるの。 第八戒 わたしが年を取って、あまり遊ばなくなったって、 すぐに新しい子を連れてなんてこないでね。 あなたが目移りするところなんて、見たくはないんだから。 第九戒 いつも振り回してばかりのわたしだったけど、 今までつきあってくれてありがとう。 あなたの困った顔、ちょっとかわいかったよ。 第十戒 わたしが天国に旅立っても、 一緒に過ごした日のことを、ずっと大切にしていてね。 思い出の中で、あなたとずっと一緒にいられる。 それだけで、わたしは幸せだから・・。 作 ぽこ ※「犬の十戒」の、猫版に相当するものを自作したものです。
この文章については、転載・リンクはフリーとさせていただきます。 これが、ネットの世界に広まって、 多くの人に読んでもらえると、うれしいですね。 |
猫の十戒など、オリジナルのお話
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オリジナルの読み物です
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三日目になり、あらためて会議が開かれましたが、意見がまとまる気配はなく、昨日までと同じようにみんなが言い争いをしています。 まとまりそうもない言い争いに、みんな疲れてきました。 とそこで、ライオンの代表がしびれを切らしたのか、ガオーと吠えて言いました。 「こんな回りくどいのは、オイラもうゴメンだ。こうなったら、腕っぷしで決めようぜ」 周りの動物はビックリしてぶるぶると震えましたが、鳥の代表団からはけらけらと笑い声が聞こえてきました。 トウゾクカモメが机の上に飛び乗り、笑いながら言いました。 「地べたしか歩けない奴が何言ってやがる。やれるもんならやってみろ。」 そう言うと、ひらりと舞い上がり、他の代表の前にあったマイクやらふでばこやらを足ですくっては、ひょいひょいとライオンに投げつけます。 いろんなものをぶつけられて、ライオンはあっという間にたんこぶだらけになりました。 怒ったライオンは、ガオーと吠えながらトウゾクカモメに飛びかかろうとしますが、そのたびにくるりくるりとよけられてしまいます。 ライオンは、水辺の生物用にこしらえてあったシャワー台を見つけると、根本からバキバキッと引っこ抜き、トウゾクカモメに向けて投げつけました。 トウゾクカモメは、アッカンベーをしながらひらりとよけます。 壊されたシャワー台の根本からは、バシャバシャと大量の水が噴き出し、周りはみるみる間に水浸しになりました。 それまでおとなしく寝そべっていたワニの代表は、シャワーを壊されたことに怒り、ライオンのお尻にがぶりとかぶりつきました。 「うぎゃー!!」 ライオンは振り返り、前足でワニをはたきますが、堅い皮を持ったワニにはまるでこたえていないようです。 議場の中は、それをさかいにすったもんだの大騒ぎになりました。 サルの代表は天井にぶら下がって鉛筆やら消しゴムを投げ、ダチョウの代表は猛スピードで会場を走り回りながら手当たりしだいに他の生物をつついています。 大騒ぎの中、ゾウの代表がどしんどしんと会場を走り回ると、ついに会議場の天井がめりめりっと大きな音をあげました。 ものすごい音に、みんなははっと我に返り、一目散に会場から飛び出します。 ズズズーン! 天井の中央部分が落っこちてしまい、会議場はめちゃくちゃです。 モクモクとわき上がるほこりが落ち着くと、ケガをしたものがいないか確認し合いました。 とそこで、貝の代表がいないのに気づいて、海の仲間達が血相を変えます。 「貝の代表が中にとり残されちゃったよ!」 遠い海の向こうから一緒にやってきたカニやエビたちは、泣きべそをかきながら、大あわてで貝の代表を捜しに戻ります。 みんなで貝の代表を探し出すと、貝の代表は固い殻に守られて、運良く無事でした。 ずっと殻に閉じこもって考え事をしていた様子で、天井が落ちてきたことにすら気づいていませんでした。 「貝の代表、大丈夫?」 みんなが心配そうに貝の代表にたずねると、なんだかうれしそうな顔をしています。 ひとりで考え込んでいた間に、どうやら良い考えを思いついた様子です。 貝の代表はみんなの心配をよそに、周りを見回した後、口をぱくぱくさせながら言いました。 「僕思ったんだ。代表っていうのは、みんなにとって一番大切な存在でしょ?だったら、この中で、今地球上からいなくなってしまったら誰もが困ってしまうのって、いったい誰なんだろう?って。」 思ってもみなかった問いかけに、みんなはしばらくキョトンとした後、うーんと考え込んでしまいました。 今まで暴れていたライオンも、その場に座り込み、首をひねって言いました。 「うむむ、シマウマくんや、ウシさんたちがいなくなると、オイラ困っちゃうな」 シマウマやウシたちも口々に言います。 「僕たちだって、植物さんがいなくなったら、生きてなんていけないぞ」 植物たちも答えます。 「わしらだって、昆虫やリスやウサギやら、いろんな生き物がいてくれて、はじめて森や草原が成り立っているんじゃ」 すると、他の生物もみんな、口々に、誰々がいないと・・と言い始めました。 ヒトの代表は、自分自身を振り返ってみて、少し恥ずかしい思いがしました。 今までは、自分達が地球上で一番えらいと信じて疑っていませんでした。 しかも、集まっているみんなの中で、他の命を自分達のために一番好き放題に使っていたのは、自分達ヒトでした。 そして、そのことも、「自分達はえらいのだから当たり前だ」と考えていました。 でも、自分たちが今いなくなったとして、はたして困ると言ってくれるのは・・? それから会議場をみんなで一通り片付けると、会議の結論を出すための話し合いを始めました。 会議を始めるまでは、会議に集まっている誰もが、自分たちこそが一番だと思い、自分たちのことだけを考えていました。 でも、貝の代表のひと言で、いざ相手のことを考えてみはじめると、それまでの考え方を改めなければならなくなりました。 そして、話し合ううちに、みんなが同じことを考え始めたようです。 「動物がいて、植物がいて、みんながそれぞれ与えあい、補い合っている。もしかして、みんながそろって、はじめて地球の命がそれぞれ成り立っているのかもしれないな。」 そう考えはじめると、会議の結論が出るのには、時間がかかりませんでした。 地球生物代表会議で出たみんなの結論は、 「それぞれが、地球の大切な一員である」 ということになりました。 結局、「生物の代表」を決めることはできませんでした。 でも、ヒトも他の全ての生物も、会議を通して、とてもシンプルだけど、とても大切なことに気づくことができました。 |
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ある時、世界中のすべての生物に、ひとつの会議の開催を知らせるビラが配られました。 *** 地球生物代表会議 開催のお知らせ *** 今度の満月の夜が明けた朝、 大陸の南はし、森と草原と海と川が交わる岬のふもとで、 「生物の代表」を決める会議を開きます。 それぞれの生物は、代表者を決めて、会議に参加してください。 ―――地球生物代表会議・実行委員会――― それからというもの、地球に住む生物たちは、自分達の代表を決めるために、大忙しで話し合いをはじめました。 それと同時に、岬のふもとには、今まで誰も見たことのないような大きな会議場が急ピッチでつくられていきます。 会議場の工事にはいろんな生物が参加していますが、一番中心になっているのはヒトのようです。 もともと、地球生物代表会議の開催を最初に考え、他の生物に話を持ちかけたのはヒトでした。 このところ、ヒトが木を切りすぎたり、海を汚したりしていたため、そのことを快く思っていない生物たちが、ヒトの行いに不満を漏らしていました。 そこでヒトは、他の生物に文句を言わせないようにするため、この際ヒトを一番えらいとみんなに認めさせてしまおうと考えました。 そして、他の生物にも納得してもらった上で「生物の代表」になろうと考え、そのための会議を開こうと思いついたのです。 ビラが配られてから、いくつもの昼と夜が入れ替わり、やがて立派な会議場が完成しました。 ぴかぴかに光るきれいな石で外側が飾られ、天井は開閉式のドーム会場になっています。 ヒトの技術力のすべてを集めた、最新型の建物です。 それぞれの生物の代表も決まったようです。 代表たちはぞくぞくと会議場に集まり、会議が始まるのを今か今かと心待ちにしています。 そして、満月になった夜の次の朝、盛大な花火が打ち上げられた後、会議が始まりました。 会議場には、世界中からいろんな生物が集まってきています。 少なく見積もっても、ざっと500種類くらいは集まってきているようです。 自分達の種の代表としてやってきた生物もいれば、似た仲間のグループで代表団をつくってやってきているものまでそれぞれのようです。 普段はいがみ合ったり、食べたり食べられたりしている生物が、仲良く、ずらっと並んで席に着いています。 「代表を決めるとして、何を基準に決めましょう?」 議事進行役のコウモリがみんなに問いかけると、ヒトの代表が待ってましたとばかりに言いました。 「そりゃあ、最も知力に優れているものが代表になるのが当たり前でしょう。最も知力が優れるのは私たちヒトなのだから、私たちこそ代表となるのにふさわしいでしょう。」 コウモリがなるほどとうなずきかけたその時、昆虫の代表がすかさず手を挙げて反論しました。 「少しくらい頭がいいっていったって、ヒトはたかだか1種類しかいないじゃないか。オレたち昆虫は200万種をゆうに超え、世界の隅々に行き渡り、地球上で最も繁栄している動物なんだ。オレたちをおいて代表となるものは他にはいない。」 魚の代表が続いて手を挙げました。 「昆虫たちがいくら世界に増えていたって、しょせん陸の上にしかいないじゃないか。地球の7割は海なんだ。世界の海を制覇している、我々魚こそが代表にふさわしい。」 植物の代表がのそのそと手を挙げます。 「動物たちがいくら増えようとしたところで、わしら植物が光合成をして酸素を作りだし、栄養分を生み出さなければ生きていけはしないじゃろう。生物の代表にふさわしいのは、わしら植物じゃ。」 バクテリアの代表も負けじと手を挙げます。 「代表というなら数が最も多いものが代表だろう。ボクらバクテリアは、陸や海や土の中にさえ生きることができ、数ではキミらと比較にならないくらいたくさん存在するんだ。キミらの体の中にさえ、無数の仲間が生きている。ボクらがいなければ、キミらは生きていくこともできないだろう。」 すんなり代表が決まると思っていたヒトは驚きました。 進行役のコウモリは、はじめはそれぞれの発言ごとになるほどとうなずいていましたが、あまりにみんながばらばらのことを言うので、しだいに目を白黒させ、疲れきって寝込んでしまいました。 それからというもの、会議場ではみんなが好き勝手に、自分達を主張し合っています。 「一番空をうまく飛べるのはオレたち鳥なんだから、鳥が代表だ!」 「一番からだが大きいのは我々クジラなんだから、クジラが代表だ!」 「一番水中を優雅に漂うことができるのだから、クラゲが代表だ!」 代表たちの発言はいつまでも続き、収まる気配はありません。 結局、会議に集まっていた参加者それぞれが、自分たちこそが生物の代表だと思っていたのです。 結局、その日は代表を決めることはできませんでした。 次の日になって、ヒトは自分達を代表と認めさせるために、他の生物よりも自分達の方が優れていることを説得しようと考えました。 「昆虫なんて、私たちヒトと比べると、あまりに単純な作りしかしていない。私たちヒトの方が、ずっと複雑で高等な生物だ。やはりヒトが代表にふさわしいでしょう。」 昆虫の代表がすかさず反論します。 「複雑だから高等で、単純だから下等だなんて、勝手に決めないでくれ。オレたち昆虫は、自分の住む環境に一番合った、シンプルかつスマートなかたちと生き方をしているんだ。環境に合わせて自分達のかたちを変えていけたからこそ、今みたいにたくさんの種類になれたんだ。キミたちヒトは、自分達に合わせて環境の方を変えようとしているけど、キミたちが好き放題したおかげで、今度はキミたち自身が困ったことになってしまっているじゃないか。他の生物だって、キミたちのせいでたくさん迷惑をかけられているんだぞ。」 ヒトは返事に困ってしまいました。あわてて今度は魚に言いかけます。 「魚たちなんて、ヒトに食べられているだけの存在だ。私たちの方がえらいんだ。君たちより、私たちヒトの方が代表にふさわしいでしょう?」 魚の代表も言い返します。 「我々を食べているからえらいだなんて、とんだ思い違いだ。我々もプランクトンや藻を食べているけれど、だからって自分達がえらいなんて思ったことなんかないぞ。それに、魚はヒトに食べられて当然だなんてよしてくれ。我々は魚として生まれ、魚として、自分達のために生きているだけなんだ。ヒトのために生きているわけじゃあないんだよ。」 今度は植物の代表に話しかけます。 「植物はずっと同じところにいるだけで、動くこともできやしない。それに比べ、私たちは自由に動き回ることができる。君たちよりも、ヒトの方が代表にふさわしいでしょう?」 植物の代表も負けません。 「わしらは動けないのではなく、動く必要がないから動かないんじゃよ。喉が渇けば根っこを通して水や栄養分をもらい、腹が減ったら枝葉を広げてお日様の光をたっぷりいただくんじゃ。わしらは、動かなくても必要なものは全部、手に入れることができる。それに引き替え、君らは動かないと、食べるものも飲むものも手に入れられないんじゃろう?君らはわしらを見て、動けなくて気の毒と思っているのかも知れないが、わしらから見たら、動かなければ生きていけない君らの方が、よほど気の毒じゃよ。」 また、ヒトは言い返せませんでした。今度こそはと思い、バクテリアの代表に尋ねます。 「君らは、丸っこかったり、長細かったり、へんてこりんなかたちでしかない。それに引き替え、私たちヒトは、美しさやかっこよさを兼ね備えている。どう見ても、ヒトの方が代表にふさわしいでしょう?」 バクテリアの代表は、ヘンと笑って答えます。 「キミらから見たら、ボクらは変わったかたちに見えるのかも知れないね。だけど、ボクらはヒトから見て美しいかかっこいいかなんてこととは関係なく、ボクらに与えられた命の中で、一生懸命生きているんだよ。キミらが何をスバラシイと思うかは自由だけれど、それを自分達以外のものに押しつけようとするのは止めておくれ。」 ヒトの代表は、相手を言い負かそうとするのをあきらめました。
そして、二日目も代表は決められず、言い争いが続いたままで終わってしまいました。 |
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シクシク、シクシク・・ ちいちゃんは、今日も泣いています。 ちいちゃんとコロは、小さな頃からずっと一緒でした。 ちいちゃんが赤ちゃんの頃からずっとそばにいたコロは、 ずっと面倒見のいいお兄ちゃんであり、一番の友達でした。 それが、7日前、突然の交通事故でなくなってしまいました。 ちいちゃんは今日も学校から帰ってくると、 庭の片隅に作ったコロのお墓の前に行き、 写真を見つめながらシクシクと泣いています。 コロの写真を見るたびに、一緒にボールで遊んだことや、 追いかけっこをした思い出が胸の中に浮かび、 思い出すたびに、ぽろぽろと涙が出てきてしまいます。 お父さんとお母さんは、 そんなちいちゃんを見ていると、毎日心配でしょうがありません。 ちいちゃんは今日もお墓の前でシクシクと泣いています。 やがて、泣いているうちに、なんだか疲れてしまい、 そのままうとうとと寝入ってしまいました。 泣き疲れて眠っていると、 ちいちゃんの頬を、誰かがペロペロとなめています。 懐かしい匂いに気づき、ちいちゃんが顔を持ち上げると、 お墓の上に、ぼんやりと光を放ちながら座っているコロがいました。 コロは心配そうに首をかしげ、ちいちゃんの顔をのぞき込んでいました。 コロはなくなる直前の姿そのままですが、首輪の部分だけが、周りよりも明るくきらきらと輝いています。 「コロちゃん、帰ってきてくれたの?」 ちいちゃんがビックリした様子で尋ねると、 コロがにっこり笑って答えます。 「あんまりちいちゃんが泣いているもんだから、 少しの間だけ帰ってくることを許してもらったんだ」 「少しだけ?すぐに帰っちゃうの?」 「うん、また向こうに帰らなきゃいけないんだ」 「そんなのやだ!コロちゃん、ずっと私のそばにいて!」 「泣かないで、ちいちゃん。ボクは死んじゃったけど、ボクのたましいはこれで終わりじゃないんだよ。ボクはそのことをちいちゃんに伝えるために帰ってきたんだ。」 コロがすっと目をつぶると、首輪がそれまでよりも少し、明るく輝きました。 すると、ふたりはふわりと浮き上がり、家の屋根まで登ったところで、ふわりと腰を下ろすように着地しました。 「見て、ちいちゃん」 「あっ、あれ何・・?」 ちいちゃんが屋根の上から町を眺めると、ところどころの家に、雲の上から粒状の光がすじになって、さらさらと吸い込まれるように降りてきています。 「あれはね、新しく生まれる子犬のところに、天国からたましいが注ぎ込まれているんだよ。 ボクたちのたましいはね、死んだ後、光の粒になって、みんなのたましいとひとつになっちゃうんだ。 でもね、それで終わりになっちゃうわけじゃないんだよ。 ボクたちのたましいは、天国で少し休んだ後、また、この世に生まれてくるたくさんの新しい命のもとになるんだ。 その時、ボクたちを大切に思ってくれている人の気持ちが強いほど、 ボクたちのたましいは、よりその近くで生まれるコ達へと、たくさん、受け継がれるんだ。 そして、ボクたちが大切な人のことを強く思っているほど、 ボクたちの気持ちも、新しく生まれてくるコ達に、強く、強く、受け継がれるんだ。 だから、泣かないで。 ボクの命は終わりじゃない。 キミがボクを思うほど、ボクがキミを思うほど、 よりキミの近くへと、たくさんの気持ちが受け継がれるんだ。 だから、ボクがいなくなったことを悲しむんじゃなく、 一緒に、かけがえのない時間をたくさんすごせたことを喜んで欲しいんだ。 ちいちゃん、キミとボクが、一緒に走った草はらを、一緒に遊んだ川べりを、 心の中でずっと大切にしておいて。 ボクは、その気持ちのおかげで、また、キミに会うことができるから・・。」 そう言うと、コロの姿はきらきらと光を放った後、だんだん淡くなっていきました。 「分かった。約束するね。わたし、もう泣かない。 またコロに会えるように、コロのことを、 ずっとずっと、心の中で大切にし続けるから・・。」 コロの姿はそのまま、すうっと消えていきました。 ちいちゃんは、コロの名前を呼び続けたまま、 コロの写真をぎゅっと握りしめていました。 それからしばらくして、 なかなか戻ってこないちいちゃんを探しにきたお母さんが、 コロのお墓の前で寝入っているちいちゃんを見つけました。 「ちいちゃん、そんなところで寝ていると風邪引くよ。 大変!少し熱があるじゃない。」 お母さんは、あわててちいちゃんを部屋に連れて行くと、 服を着替えさせ、ベッドに寝かせました。 お母さんに看病してもらい、少し熱が下がり楽になると、 ベッドの横のお母さんに言いました。 「お母さん、わたしね。もう泣かないよ。 だって、コロと約束したの。 わたし、もう泣かないって。 わたしが、コロのことをずっと心の中で大切にしていれば、 またコロに会えるって、コロが教えてくれたの」 お母さんは、久しぶりにちいちゃんが笑顔を見せてくれたのを見て、 少し安心しました。 「そうね、ちいちゃんがコロのことを忘れなければ、 きっとまた、会うことができるわ。」 ちいちゃんは、それから元気になってからも、 ずっとコロとの思い出を、心の中で大切にし続けていました。 そして、それからしばらくの時が過ぎ、 春になり、桜の舞い始めた頃、 ちいちゃんの耳元に、春の暖かい風がふわりと舞い上がり、 やさしく頬をなでました。 「ちいちゃん、ボクのたましいと、 ボクの思いをたくさん受け継いだ子が生まれたよ。」 はっきりとは聞きとれませんでしたが、 風はたしかにそう言った、そんな気がしました。 お母さんにその話をすると、 お母さんも、ちょうど近所で茶色の柴犬が生まれたという話を聞いたところでした。 お母さんに頼んで、そこのお家のおばさんにかけ合ってもらうと、 そこの子犬を一頭譲ってくれると約束をしてもらえました。 そして、譲り受ける日になり、ちいちゃんがそこのお家の前にやってくると、 胸の奥にとくんと小さな高鳴りがするのを感じました。 ドアを開け、お母さん犬と子犬たちを見つけると、 お母さん犬のところに寝ていた5匹の犬の中から、 1頭の子犬が、とことことちいちゃんの足下に近づいてきて、 首をかしげてちいちゃんをみつめました。 顔も、性格も、コロとは少し違う感じですが、 首をかしげる仕草は、なんだかコロとよく似ています。 そのお家のおばさんが言います。 「変ね、その子ったら、今日の朝からやけにそわそわしていたのよ」 ちいちゃんはその子をお家で飼うことにしました。
帰りの道で、子犬はちいちゃんにだっこされて、うれしそうです。 ちいちゃんも、幸せそうに子犬を見つめています。 仲良く歩くふたりを、春の風がやさしく包み込みました。 |
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ランちゃんとリンちゃんはアライグマのきょうだいです。 生まれたときからペットショップにやってくるまで、 一時も離れることなく、ずっと一緒に暮らしていました。 アライグマを買いに来た家族がペットショップに来たときも、 ぴったりくっついて離れませんでした。 離すとキューキュー泣いて仕方がないので、 2頭とも一緒に飼われることになりました。 ランちゃんとリンちゃんはずっと一緒です。 優しい飼い主さんと大好きなきょうだいといられて、 とても幸せに暮らしていました。 でも、最初はおとなしかったアライグマも、 成長すれば、しだいにやんちゃになります。 飼い始めて1年ほどたった頃、 家族は咬み傷に耐えかねて、 とうとう話し合いをすることになりました。 お母さんが言います。 「もうアライグマなんか飼うの大変だから、 2匹とも誰かにあげてしまいましょう。」 お兄ちゃんと妹がそろって、泣きながらお願いします。 「2匹ともなんて嫌だ。せめて1匹は置いておいて。」 困った両親は、ランちゃんを 動物園に連れて行くことにしました。 ランちゃんは女の子でしたが、弟のリンちゃんよりも ずいぶんからだが大きく、咬む力も強かったからです。 動物園に連れて行く日、ランちゃんとリンちゃんは 車に乗せられ、ガタゴトと揺れる車の中で、 何かいつもと違う雰囲気に気づいていました。 飼われ始めた頃、何度かピクニックに行くために 車に乗ったことはありますが、 それとは少し違う感じです。 でも、それが何なのかは分かりません。 動物園に着くと、飼育員さんが出迎えてくれました。 「ああ、連絡のあった方ですね。 2匹とも引き取りですか?」 お母さんが答えます。 「いえ、1匹だけです。」 ケージからだそうとすると、ランちゃんとリンちゃんは、 離ればなれになるのを察したかのようにギャーギャーと鳴きました。 しばらくの格闘の後、なんとかランちゃんをケージから引きはがすと、 鉄製のがんじょうそうなケージに移し替えました。 「ごめんね、ランちゃん・・。」 お母さんはそう言うと、リンちゃんを連れて車に乗り込みます。 ランちゃんは、車と、その中にいるリンちゃんを見つめています。 “なんで置いて行かれるの?” そう言いたげなランちゃんを残して、 車は静かに動物園の門をくぐって出て行き、 もう戻ってくることはありませんでした。 * それからリンちゃんは、ひとりで家族のもとで暮らすことになりました。 でも、生まれてからずっと一緒に暮らしていたランちゃんがいなくなって、 リンちゃんはさびしくてさびしくてしょうがありませんでした。 やんちゃだったランちゃんに比べると、 リンちゃんは少しからだが小さく、おとなしい子でしたが、 ひとりになってからは少し臆病になり、 家族の人に触られたときに、噛みつく回数が増えました。 家族の人は困りました。 ランちゃんを動物園に預けてから半年たちますが、 その間に法律が変わり、 動物園では預かってもらえなくなってしまいました。 かといって、引き取ってくれる人もなさそうです。 困った家族は、リンちゃんを山に捨てることにしました。 そしてその夜、両親はリンちゃんを車に乗せると、 隣町の山に捨ててきてしまいました。 * ランちゃんは、動物園に来てだいぶ生活に慣れた頃、 動物園の中央広場の、以前ニホンザルを飼っていた所に 場所を移動されました。 ずっと人間に飼われていたランちゃんは、 他のアライグマとは少し折り合いが悪かったのですが、 やんちゃながらも愛嬌があったので、 お客さんからは人気があったのです。 でもずっと、リンちゃんや家族のことを忘れたことはありませんでした。 “早く迎えに来てくれないかな” “あの門をくぐって、リンちゃんが来ないかな” ランちゃんは毎日そう思いながら、門の向こう側を眺めていました。 新しく移動した広場には、ニホンザルが登れるように、 立派なポールが設置されていました。 高さは3メートルくらいで、 てっぺんには、サルが上で腰かけられるように、 かわいらしい台がこしらえられています。 ランちゃんはしばらくポールの周りを ぐるぐるしながら暮らしていましたが、 ふと、ポールに登れば門の向こう側を もっと遠くまで見られるんじゃないかと思いました。 もっと向こうを見られれば、 リンちゃんを見つけることができるんじゃないかと思ったのです。 ランちゃんはもともと体の大きい方でしたが、 動物園に来てからお客さんにいっぱいリンゴやパンをもらって、 少し太っちょになっていました。それでも “上に登って、門の向こう側を見たい” という気持ちは抑えられません。 最初は登る途中で何度もずり落ちてしまいましたが、 あきらめずに挑戦を繰り返すうち、 大きな体を揺すりながらも、なんとか上に登ることができました。 “リンちゃん、いるかな” 門の向こうを見てみますが、リンちゃんの姿は見えません。 ただ、動物園のある丘の向こう側に、以前暮らしていた町が、 あの頃と変わらないままに見えていました。 “早く迎えに来てくれないかな” そう思いながら、ランちゃんは毎日ポールに登り、 町を眺めるようになりました。 えっちらおっちらポールを登る姿は、 はためには、とてもひょうきんでかわいらしく見えました。 やがて、訪れる人の間で話題になり、 テレビ局がひっきりなしに取材に訪れるようになりました。 「ランちゃん、かわいい!」 「すごいぞ、ランちゃん!」 いろんな人が褒めてくれ、喜んでくれます。 でも、ランちゃんはそんなことを言われても、 ちっともうれしくありません。 ランちゃんは毎日リンちゃんのことを考えながら暮らしています。 “リンちゃん、今どうしているのかな・・。” * リンちゃんはその頃、 山から山へと歩きつたいながら、 あてどもない放浪の旅の中にいました。 山はどこもスギしか生えておらず、 エサになるようなものはほとんどありません。 かといって、人の家に近づけば、 どこの人も目くじらを立てて追い払おうとします。 石を投げられ、棒を持った人に追い回されたことも 二度三度ではありません。 もともと小さな体のリンちゃんは、放浪の中で、 ずいぶん痩せてしまいました。 空腹の中で見る夢は、ランちゃんと暮らしていた 楽しかった昔のことばかりです。 “ランちゃん、会いたいよう・・。” ランちゃんもリンちゃんも、お互いの暮らしを もちろん知ってはいません。 動物園の人気者になっているランちゃんと、 人間に追い回されているリンちゃん。 今の境遇はずいぶん違いますが、 昔は一緒に、幸せに暮らしていたのです。 リンちゃんは、隣町に捨てられてから、 山づたいに移動するうち、 いつの間にか最初の町に戻ってきていました。 “ランちゃん、ランちゃん・・、” 薄れゆく意識の中でそう繰り返しながら、 体力がつき、倒れたところは、 1年前に1度だけ来たことのある、 動物園の門の前でした。 ランちゃんはポールの上で寝ていましたが、 リンちゃんの懐かしい匂いを感じて、 毛がぶるぶるっと逆立ち、飛び起きました。 ギャンギャンギャン、めったに鳴かないランちゃんが、 大きな声で二度三度、鳴きました。 その声を聞いた飼育員さんが、 門の前に倒れているリンちゃんに気づいてくれました。 飼育員さんは、首輪についているプレートの 「リン」という文字に気づきます。 「まちがいない、1年前にランちゃんと一緒に来たリンちゃんだ」 ランちゃんの所に連れて行くと、ランちゃんはうれしそうに、 そして心配そうに、リンちゃんに寄り添います。 動物園の獣医さんに手当をしてもらい、 リンちゃんは少し元気になりました。 元気になったリンちゃんは、 ランちゃんと一緒に寝そべることができて幸せそうです。 その後、ランちゃんとリンちゃんは、 広場で一緒に暮らせることになりました。 ランちゃんは前と変わらず、愛嬌のあるしぐさで お客さんにゴハンをおねだりしています。 まるでリンちゃんにもおねだりの仕方を教えているみたいです。 ひとつだけ、前と変わったことと言えば、 ポールには登らなくなったことくらいです。 「なんだ、つまらない」 ランちゃんとリンちゃんのことを知らないお客さんはそう言います。 ポールに登らなくなってからというもの、 テレビ局もめっきり取材には来なくなりました。 でも、ランちゃんは、リンちゃんと一緒にいられて幸せです。 それから、ふたりが離ればなれになることはありませんでした。 ランちゃんとリンちゃんはずっと一緒に、 動物園で幸せに暮らすことができました。 |
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