どうぶつ病院診療日記

動物病院の診察風景や、獣医師が日頃思っていることなど

避妊・去勢のちょっとした話

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避妊手術や去勢手術についてのちょっとした話です。
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ウサギの避妊手術の話

最近、なぜかウサギの避妊手術をたびたびしています。
春と秋は猫の避妊手術が多い時期ですが、
先週はウサギの避妊手術が二件入っていました。

手術の手技の基本自体は犬猫と変わらないのですが、
ウサギの場合、気をつけないといけないことがたくさんあります。

気管チューブの挿入が困難、アトロピン(心拍を上げる薬)が効きにくい、
などの麻酔の話はもちろんですが、
いざ手術となってからも気を使うのが、
「組織がものすごく繊細」
ということです。

犬猫であれば、卵巣と子宮の間の靭帯を鉗子で持てば、
そうそう切れたりしないのですが、
ウサギではいとも簡単に切れてしまいます
(そのため、靭帯だけに力がかからないよう、卵巣自体を包んで引っ張る必要があります)。

その他の組織もとてももろいので、
ちょっと雑な手技でもしようものなら、
簡単に裂けたりしてしまいます。

ウサギの手術は、麻酔においても手術においてもとても気を使い、
難易度も一クラス高いものです。
そのため、獣医師でもウサギの手術は敬遠するという人も多いようです。

ただ、ウサギに避妊手術をしておいた方が良いかという話になれば、
僕としてはなるべくしておいた方が良いと思っています。

その理由は、ウサギが高齢になってから、
「子宮腺癌」という病気にかかりやすいからです。

犬猫では、繁殖の防止や性行動の抑制に避妊手術が行われることも多いのですが、
ウサギでは一頭飼育されているときには、
繁殖する訳でもありませんし、性行動も傍目にはよく分かりません
(オスウサギではオスとしての行動もしばしば見られます)。

乳腺腫瘍も犬ほど多い訳でもないのですが、
その代わりに多いのが子宮が腫瘍になってしまう病気です。

成書によると、発生率は4才以上で50-80%とも言われています。
実際僕の病院でも時折ウサギの子宮腺癌は目にしますが、
見つかったときにはかなり進行して弱ってから診察となることも多いため、
手術をしても予後が悪かったり、手術まで進むこともできないまま、
そのまま死亡してしまう、ということもたびたびです。

半分以上の確率で子宮腺癌になると言われるものであれば、
僕としては若くて健康なうちに避妊手術をしておいた方がよほど良いと思います。

高齢になって、病気になってから手術をするとなれば、
そちらの方がリスクが高くなるのは言うまでもありません。

気になるのはウサギの麻酔の問題だと思いますが、
うちの病院では、今のところ幸い、若いウサギの避妊・去勢において、
深刻な麻酔の問題が起こったことはありません(確率の問題でもありますが)。

精神的には、普通の犬の手術の二倍は疲れるのですが、
子宮腺癌で弱ってなくなる子を見ると、
その度に「やっぱりウサギも避妊手術しておいた方が良いんだろうな」
と感じてしまいます。

ウサギは繁殖力が最大の武器となっている種ですので、
それだけ繁殖期に負担がかかっている体の作りになっているのだと思います。

手術はたしかに一時的にリスクはありますが、
避妊手術のリスクと子宮腺癌で死ぬリスクを考えれば、
子宮腺癌のリスクの方がはるかに高いと思います。

手術のリスクも、それを乗り越えてしまえば、
子宮腺癌の心配をすることなく一生を過ごさせてあげることができますので、
ウサギを飼ってらっしゃる方は、ひとつの参考意見としていただければと思います。
避妊手術のときは、卵巣を外に引き出して来て、
根元を縛って切るという手技を行います。

卵巣は左右に二つありますので、
当然卵巣の根元を縛って切る動作は、二回繰り返さないといけません。

その左右にあるうち、どちらを最初にするか、
ということにおいては、だいたいの獣医師は左の方からするのではないかと思います。

なぜなら、
「左の卵巣の方が出しやすい」
からです。

人間も含めて、犬や猫の腎臓と言うのは、
右の腎臓が前にあって、左の腎臓が後ろにあります。

なぜ腎臓が互い違いにあるかと言えば、
大動脈から血管が分岐する時に、
同時に枝分かれしているのではなく、
先に右の血管が流れ込み、それから続いて左の血管が分岐してと、
分岐部にずれがあるからです。

国家試験の時には、
「右前の、左遊走腎」
と覚えたものですが、左の方が、
後ろにあり、しかも腎臓の固定がややルーズとなっています。

卵巣と腎臓は、靭帯で繋がって固定されているのですが、
卵巣を引っ張って来る時には、その靭帯によって引っ張られていますので、
左の腎臓の方が後ろにあり、体への固定もルーズですので、
引っ張って来やすいです。

その一方、右の腎臓の後ろから卵巣を出して来るときは、
場所自体が少し前にあり、しかもしっかり固定されていますので、
なかなか引っ張りだして来づらいです。

大型犬の避妊手術と言うのは、しばしば苦労する事の多い手術ではあるのですが、
左がすんなり出て来たので楽勝かなと思っていたら、
右の卵巣がなかなか出てこなくて、
結局四苦八苦、ということもしばしばあったりします。

僕は右利きなので、仰向けになっている動物の右側に立つと、
左の卵巣からアプローチする方がやりやすいのですが、
左利きの獣医師だと、僕とは逆の位置に立って、
左の腎臓から取る人も多いでしょうから、
手術のしやすさと言うのは僕とはちょっと違う部分もあるのだと思います
(もしくは、右の卵巣からするよという人も案外多いかもしれません)。

あえて逆の位置に立ってやってみようとは思わないのですが、
慣れたやり方で安全に行うのが一番ですね。

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そけい部ならラッキー

動物病院で一番多い手術は、
去勢手術と避妊手術です。

去勢手術は、お腹を開けるわけではなく、
そこに見えている精巣を切って取り出すものですので、
手技的には避妊手術よりもずいぶん簡単です
(もちろん、だからといって気は抜けません!)。

ところで、去勢手術を行う前に、
一番気をつけておかないといけない事は、
「タマタマが二個きちんとあるか」
ということです。

もしも二個とも降りて来ていない「陰睾」の状態だと、
お腹を開けて取り出すのが一苦労で、
下手をすると避妊手術よりも大変な事もしばしばだからです
(精神的プレッシャーは避妊手術の方が軽いです)。

とは言っても、精巣が陰嚢の中に降りていない陰睾でも、
全部が全部お腹を開けないといけないとは限りません。

結構な確率であるのは、精巣が鼠径部まで降りて来ていて、
そこで止まっていると言う、鼠径部陰睾です。

鼠径部陰睾であれば、そこに見えている精巣の上を切って、
鉗子で丁寧に引っ張ってくれば、
ほぼ通常の去勢と近い形で、去勢手術を行う事が可能です。

鼠径部に見えていれば、お腹を開ける事もなく、
そのまま手術を行う事が出来ます。

そのため、陰睾の場合でも、精巣が鼠径部のところまで降りて来ていないかどうか、
術前によく見て触って、確認しておかなければいけません。

鼠径部に精巣が見えていれば、開腹セットを用意しておく必要はありません。
逆に、鼠径部に精巣があるのを見落として、
そのまま手術をしてしまうと、
お腹を開けたものの、精巣を発見できずに「ない、ない、・・」
と、途方に暮れて冷や汗を流す事にもなりかねません
(触ればすぐに分かりますが)。

陰睾の場合でも、鼠径部にあるかないかで、
手術の難易度ががらりと変わって来ますので、
見落としのないように毎回しっかり見ておかないといけません。

あればラッキーなので、
飼い主さんや本人にとっても、獣医師にとっても心が楽になる朗報ではありますね。

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4月になり、猫の発情の時期も少し落ち着いて来ましたが、
今度はまた、子ネコが生まれたという相談が増えてこないか、
心配な季節にもなって来ます。

猫は犬よりも自由に外を歩き回り(野外に出る場合)、
交尾をすると高い確率で妊娠し、一度に5〜6頭の子ネコが生まれますので、
避妊手術をしていなければ、時にあれよあれよと言う間に、
頭数が増えてしまう事があります。

今年に入って相談を受けた飼い主さんは、
去年お子さんが猫を2頭拾って来て、家で何気なく飼っていたら、
しばらくして子どもが生まれ、半年経ってまた出産して、
あっという間に13頭に増えてしまった、
ということでした。

最初の出産の後で相談を受けて、
その時点で避妊手術をしておけば、
そこまで増える事はなかったのですが、
今から過去の話をしても仕方ないですので、
今後どうするかを考えなければいけません。

そのまま放置しておけば、また子ども同士、
もしくは親と子が交尾をして(猫ではあり得るんです!)、
13頭の猫が数十頭になってしまう可能性があります。

今は一番下の子ネコはまだ子ネコだという事なので、
まずは最初の親猫を避妊手術しておいて、
続けて大きくなりつつある猫を避妊手術しておこうという話になりました。

オスもまた去勢手術をしておいた方が良いですが、
メスを全頭避妊手術しておけば、
たとえメス猫がふらりと外に出かけたとしても、
子ネコが生まれる事はなくなります(オスは生みませんので)。

手術をしつつ、猫を飼いたいと病院に相談してくる人をその人に紹介し、
ようやく3頭ほどもらい手がついたところです。

最初は2頭だけだったのが、一年経って13頭になったという話でしたが、
今のうちになんとかしておかないと、
2年ほど経ったら眼も当てられない事になる可能性もあります。

猫の繁殖力というのも、侮れないものですので、
繁殖を望まない場合は、早いうちに避妊手術しておくことをお勧めします。

増えてしまった後で、
「何とかなりませんか」
と言われても何ともなりませんので。

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最近は「猫がなき出した」ということで、
猫の避妊手術が増えてきていますが、
その中で時折あるのが、すでに妊娠しているケースです。

触って術前に分かる場合もありますが、
開けてみると思いがけず妊娠していた、という場合もあったりします。

中には開けてみるまで分からない場合もありますが、
ある程度胎児が大きくなっていれば、
だいたいの場合、麻酔をかけて横にした段階でよく触ってみればわかります。

そのため、避妊手術のときは、
妊娠していても大丈夫なように、
ドレープの大きさを二種類入れておくようにしています。

ところで、妊娠していた場合、
ひとつの問題は、妊娠していた子宮をどうするか、
ということです。

以前からうちの病院では、妊娠していた場合は、
胎児ごと、子宮を同じ町の霊園にお願いしていました。

ひと子宮当たり、数千円で引き受けてくれていましたので、
妊娠していた場合は、診察室で胎児に向かって、
僕と一緒に手を合わせてもらい、
胎児の霊園依頼分をいただくということにしていました。

もちろん、その霊園分は病院に入る分ではなく、
そのまま霊園に渡す分です。

以前からたびたびお世話になっていたのですが、
この間電話して来てもらったところ、
「実は料金改定をしまして」
と切り出されました。

それまでは胎児料金が数千円だったのが、
なんといきなり、二万円になってしまったという事です。

他の成体料金は値下がりしたようですが、
なぜか胎児の料金だけ値下がりしてしまったようです。

さて、これは動物病院としては困った事ではあります。

数千円であれば、飼い主さんから供養の意味を込めて、
強制徴収という事もしやすいのですが、
二万円となると、額が額ですので、
強制徴収というのも心苦しくなって来ます。

となるとどうするかですが、
・二万円ですと言って強制徴収する
・市のクリーンセンターに持って行く
という選択肢のどちらをとるか、
という事になって来ます。

強制徴収というのも心苦しいですし、
かと言って、クリーンセンターに持って行くという事は、
他のゴミと一緒に燃やすという事ですので、
それもあまりしたくはないことです。

飼い主さんに説明して選んで行くと言っても、
クリーンセンターに持って行ってくれと言われて、
それで持って行くというのも抵抗があります。

まさか飼い主さんにそのまま胎児を渡して自分で処理してくれ、
というわけにもいきませんし、渡されても困るかとは思います。

もうひとつの選択肢としては、
霊園と相談して、胎児をまとめておいておいて、
まとまったところで、「総額二万円」としてもらえるように交渉するかです。

とは言っても、そんなに大きな冷凍庫が病院にあるわけでもありませんので、
それもまた困った事ではあります。

妊娠していなければ悩む必要もないのですが、
開けたら思いがけず妊娠していた、
ということもどうしてもあり得る事態ですので、
どうしたものか、頭を悩ませられるところではあります。

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