どうぶつ病院診療日記

動物病院の診察風景や、獣医師が日頃思っていることなど

病気の話

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SFTSの発生について

先日、当院にてSFTSの症例が出ました。
ぐったりしている野良猫を保護したということで来院されたのですが、症状と血液検査の結果からSFTSを疑いました。
発熱、白血球減少、血小板減少、高ビリルビン血症など、典型的な初見でした。
国立感染研究所に検体を送ったところ、SFTSと判明しました。

SFTSは野生動物が保菌しており、マダニによって媒介される病気で、近年野外でマダニに噛まれて発症する人が多い他、感染した犬猫を通じて人が感染する事例も報告されています。
九州・四国・中国地方を中心とした西日本全体に感染が見られています。
2013年に国内初の感染者が出て以来、人で400名以上が感染し、60名以上が死亡しています。

感染するとほぼ発症するとされており、人での死亡率は約20%と高い病気です。
様々な野生動物に感染しますが、犬猫にも感染し、特に猫では重篤な症状を起こすと言われています。
感染動物の唾液、尿、便、血液にウイルスが排出されるため、感染動物との接触は危険を伴います。
動物病院の獣医師・看護師も感染した例が複数出ている他、野良猫を保護した人が猫に噛まれて死亡した事例も報告されています。

・マダニからの刺傷を避ける(猫は極力外に出さない)
・定期的なマダニ駆除を行う(完全な感染予防はできませんが、リスクは下げられます)
・野生動物、野良猫との安易な接触を避ける(ぐったりしている動物は特に要注意)

ということに気をつける必要があると思います。
特に5-8月の、ダニが増える時期は要注意です。

診察する獣医療者側にとっても、診療行為自体が命の危険を伴うものとなりますので、疑わしい症例ではガウン・フェイスマスク・手袋等の防備をしないといけないものとなります(完全な防備をしていても感染する可能性はあります)。

これまでは、動物を診療した時に獣医師にとって危険な病気というのは、レプトスピラやオウム病など限られたものくらいしかありませんでした。
人間の死亡率20%というのは突出した危険性ですので、今後は野外に行っている犬猫、ぐったりしている野良猫の診察などの際は特に細心の注意を払わないといけないものになりそうです。

※記事の転載、リンクはご自由にどうぞ

蚊とマラリア

蚊とマラリアの話を読んでますが、
今よりもマラリアが蔓延していた当時、
地元の人でマラリアを発症する人はほとんどいなかったそうです。
みんながいつも感染していて、免疫力を持っているから、
症状の出ない状態であったそうな。

免疫力のない人間がやって来ては、感染して酷い目にあって退散する、
ということを、アレキサンダー大王の時代からずっと繰り返していたようです。
ある意味、南の国を、北の国の侵略から守ってくれる守護神的な存在だったのかもしれません。

日本兵もアメリカ兵も、
マラリアで大いに苦しめられたそうですが、
戦争中にDDTやキニーネなどが開発されました。

マラリアを絶滅させられるんじゃないかと躍起になって対策をした結果、
DDTの効かない蚊やキニーネに耐性のマラリアが出てきてしまい、
マラリア撲滅の戦争は、人類の手痛い敗北に終わりました。
蚊対策のためにマラリアからの感染がなくなった地域の人たちは、
免疫が低下して、逆に再感染したときに発病するようになってしまった、
ということです(今までは発病しなかったのに)。

蚊とマラリアを全滅させることができれば、それがベストなのですが、
全滅もさせられず、薬もだんだん効かなくなっていき、
免疫の低下から再興感染となったときに重い症状が出るようになる、
となると、なんのための対策なのかよく分からなくなってきます。

マラリアフリーになれば、非感染地域からの観光客が来れるようになるので、
経済的にも潤うようになるのですが、
今まで何もしていなくて誰も発症していなかったのなら、
もういっそそのまま何もせず、
高免疫を維持しておいてもらうという選択肢もあったりするのか??
とよく分からなくなりました(観光客はバタバタ倒れますが)。

薬剤に関しては、利権もあったりするようですが、
蚊は絶滅困難そうなだけに、戦いはまだまだ今後も続いていきそうです。

熱中症と赤い尿

暑い夏が続いていますが、今年も熱中症がちらほらとやって来ています。
軽い脱水の状態の子もいれば、ぐったりして重体でやって来る子までいろいろです。

扇風機かエアコンをかけた室内にいれば、そうそうはならないのですが、
体から熱が放散されない状況に置かれると、
時に、いとも簡単に熱中症になってしまいます。

今年で今のところ一番大変だったのは、
40kgの大型犬が担ぎ込まれて来た症例でした。

エアコンの壊れた車で移動していて、
車内を振り返ると犬がぐったりしていたということで、
来院時には、体温計も振り切っているくらいの高熱になり、
意識はもうろうで、虚脱状態で脱糞しているという状態になっていました。

急いで水をかけて動脈を氷水で冷やし、扇風機でがんがん気化熱を奪い、
と処置していると、なんとか体温も下がって来てくれたので、

そのまま点滴しつつ入院させ、
全身状態をモニターしていくことになりました。

熱中症の場合、高熱で全身の臓器がダメージを受けますが、
一番怖いのは脳がやられてしまうことです。
頭がやられてしまったら、もう治療しても助かりません。

肝臓や腎臓、胃腸などの臓器ものきなみダメージを受けますので、
多臓器不全の状態になってしまうことも要注意です。

その他、熱中症になると必ず起こることは、
筋肉がダメージを受けて「横紋筋融解」という状態になってしまうことです。

そのために、CPKという筋肉の中にある酵素が血液中に出て来て、
血液中の数値が高くなります。

交通事故や打撲などでもCPKは高くなりますが、
熱中症の時には全身の筋肉がダメージを受けますので、必ず高くなります。

また、横紋筋融解が起こると、
筋肉中のミオグロビンが大量に血液中に出て来ますので、
オシッコがオレンジ色になって来ます。

これは赤っぽいですが、
ミオグロビンと言う色素が出て来ることによって起こるミオグロビン尿(筋色素尿)です。
いわゆる、激しい運動をした後に起こると言われる”赤いオシッコ”です。

ミオグロビン尿自体は結果として出て来るものですが、
腎臓に対しても悪影響を及ぼし、腎不全の原因になる可能性がありますので、
点滴をして排泄を促します。

今回の大型犬の子は、最初かなりぐったりしていて危ないなと思っていましたが、
幸い次の日くらいにはだいぶ元気になって来て(尿は赤かったですが)、
食欲も徐々に出て来ました。

何日か後には、死にそうな状態だったのが嘘のように、
元気(すぎるくらい)になって、帰って行ってくれました。

熱中症になって助かるかどうかは、
どれくらいの高温がどれくらい続いたか、
ということに尽きます。

臓器が熱でやられてしまった後では、
どんなに手を尽くしても助からないことも多いので、
熱中症にならないように、気をつけてあげるのが一番です。

もうしばらくは暑い日が続きますが、
みなさん、気を抜かないようにくれぐれもご注意ください。

糖尿病とおばあちゃん

病気と言ってもいろいろですが、
中には、一回治療すればすぱっと治るものもあれば、
完治は難しく、ずっと一生涯のおつき合いになるものもあります。

中でも糖尿病は、一生涯インスリン注射が必要になる事が多く、
飼い主さんにもどっしりと腰を据えて治療に望んでもらう必要のある病気です。

人と違い、犬ではインスリンが体から出ない状態の糖尿病がほとんどですので、
ほとんどの場合、インスリン注射が必要です。

インスリンと言うのは、体の中で糖をエネルギーとして利用するために必要なホルモンですので、
インスリンが出ない状態では、
体の中でエネルギーが枯渇し、体が痩せたり、
ケトアシドーシスというぐったりした状態になってしまいます。

放置しておけば、白内障になったり、死亡してしまう可能性のある病気ですので、
判明したら、しっかりと治療してあげる必要があります。

ところで、インスリンと言うのは、上がりすぎている血糖値を下げるためのホルモンですが
(血糖値を上げるホルモンは複数ありますが、
 血糖値を下げるホルモンと言うのは体の中でインスリンのみです)、
過量投与すると、低血糖になってしまうリスクもあると言う、
投与に気をつけなければいけない薬剤です。

人間でも、インスリン注射をしている人は、
必ず飴なりキャンディーなりを持っていると思いますが、
あれは、うちすぎて低血糖になってしまった時に、
血糖値を上げるために非常用に携帯しているものです。

動物でもインスリンを注射するのは同じですが、
問題は、動物の方が、人間よりも体重も少ないため、
うつ量も少量だという事です。

小さな犬だと、一回にうつ量が0.02mlとか、
100めもりで1mlのポンプの2めもり分だけ、
なんてこともあります。

大きい犬だと計測ももうちょっと楽ですが、
小さな犬だと希釈せざるを得ない場合もあったりして、
調節と投与も大変です
(希釈も賛否があり、薬剤によってできるものと出来ないものがあります)。

その上で、飼い主さんには消毒の方法や注射器の扱い方、
ポンプの吸い方や注射の打ち方を説明して、
技術を習得してもらう事になります。

だいたいの飼い主さんは、大切な家族のためと、
一生懸命勉強して、注射の打ち方もマスターしてくれます。

結構な飼い主さんが、注射を自分でするという話を聞くと怖がるのですが、
だいたいの場合は、何度か注射をしてみると、
すぐになれてくれるようです。

インスリンポンプは針が細いので、
動物もそんなには嫌がらないですし、
自分が治療に大きな力となっていると感じれば、
それだけ張り切ってくれるのだと思います。

ところで、糖尿病と判明して、
インスリンの注射を検討した時に、
はてどうしたものかと思ってしまうケースもあります。

インスリン注射はしっかり理解して、
きっちりと注射を行ってもらう事が大切なのですが、
それがどうにも心もとない場合です。

中でもおじいちゃん、おばあちゃんが一人で飼っているという犬の場合は、
どうも心もとない思いをします。

「この目盛りまで吸ってうって下さい。」
と言ったときに、
「わたしゃ、老眼で眼が見えないんだよ。」
と答えが返って来たら、この先大丈夫かなと心配にもなってしまいます。

ペンタイプの注射を検討するか、
インスリンをうつのを止めておくか、
一回分をこれだけと注射器に吸って渡すか、
ということになってきますが、
先ほどうった事を忘れてもう一度うってしまったりすると、
低血糖でなくなってしまう可能性もありますので、
心もとない場合にインスリンを開始するというのもちょっと心配なものです。

できそうかどうかということは、飼い主さんに判断してもらうしかない部分もありますので、
よく相談して決めるしかないですけれども、
出来なさそうな場合は、無理をしないという事も大切かもしれません。

※動物と飼い主さんの設定と描写には、修正を加えています。
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チェリーアイと言うのは、目の内側のしゅん膜と言う部分が、
脱出してさくらんぼのようにぽっこり膨らんで来る病気の事です。

しゅん膜の中にある、しゅん膜腺という組織が、
内側に脱出して来て発生するのですが、
外から見て、まるでチェリーのように赤く腫れて見えますので、
チェリーアイと言うかわいらしい名前が付けられています。

いろんな犬種で見られますが、子犬などでも多い病気です。
軽い脱出の時には、片手で眼球を押し込みながら、
もう片方の手で、円を描くようにしゅん膜を押し込んで行くと、
すぽっと戻る事もあります。

戻ってそのまま落ち着いてくれればラッキーなのですが、
処置をしても再脱出を繰り返したり、
整復できないほどに重度の脱出である場合は、
手術によって整復する必要があります。

放置しても、命に関わる病気ではないのですが、
ぱっと見て分かるので外見上も良くないですし、
なにより目のところに邪魔なものがずっとあるわけですから、
本人も気持ちが悪いと思います。

脱出した場合、早めに整復しなければ、
放置する事によって、さらに炎症が起きてさらに戻りにくくなりますし、
しゅん膜の中にある軟骨が変形してしまえば、
そのままでは整復する事が困難になってしまいます。

チェリーアイが起こった時にしてはならないことは、
「飛び出したしゅん膜の部分を切除する事」
です。

しゅん膜線は、涙量の約1/3を産生している組織なのですが、
これを取ってしまうと、涙が足りなくなってドライアイになってしまう可能性があります。

そのため、しゅん膜腺と、涙の導管は傷つけないように整復する必要があります。

本によってやり方はいくつかありますが、僕の病院で行っているのは、
「ポケット法」と言われる手術です。

これは、しゅん膜の上と下に切開をして、切開線を縫い合わせて来て、
しゅん膜線を中にしまい込む手術法です。

飛び出たら切ってしまえば良いと思っている人は、
思いのほかいるらしく、この間来たブリーダーさんも、
「出たら、切っちゃえば良いんでしょ」
と言っていました。

ポケット法自体は、それほど難しい手術ではなく、
細かい作業をする視力とある程度の器用さがあれば、
それほど難易度の高い手術でもないのですが、
僕からすれば、しゅん膜線を切って縫合する方が、
よほど大変な手術になるのではないかとも思ってしまいます。

たしかに、戻した後も、しゅん膜線の炎症はすぐにはひきませんので、
縫合後も少しぷっくりしており、それを考えると、
切除した方がスペースが出来るので、
すぐにすっきりするのかもしれませんが、
腫れ自体はじきに引きますし、その後の併発症の事を考えると、
なるべく切らない方が良いのは間違いありません。

チェリーアイは"切る"ではなく、"戻す"ものですので、
なった場合は、その事を知っておくと、ちょっと良いかもしれません。
発生しても、手でぐりっと戻して戻せて、
それで再発がなければ、それに越した事はないかもしれませんけれども。

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