どうぶつ病院診療日記

動物病院の診察風景や、獣医師が日頃思っていることなど

妊娠と出産の話

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帝王切開と人手の話

今年の正月は深夜(というより明け方)の帝王切開手術から始まりましたが、
嫁さんも実家に帰っていて、スタッフの人も誰もいなかったので、
手術の準備も蘇生の最中も、人手が足りなくて大変でした。

帝王切開の手術というのは、
手技自体は、子宮さえ外に出してしまえば、
術者は胎児を外に出して蘇生係に渡して行くだけなので、
手術の助手もそんなにいらない手術なのですが、
人手が必要なのはむしろ、蘇生の役割の方です。

通常分娩でも、産まれて来た動物はまだ呼吸をしておらず
(お腹の中では呼吸はしていないからです)、
母親に舐められることによって刺激を受け、呼吸を開始します。

帝王切開で産まれた場合、麻酔の影響もありますので、
通常分娩の時よりも呼吸開始には時間がかかります。

胎児が外に出て来たら、母犬が与えていたはずの「舐められる刺激」を与えるために、
蘇生係の人はひたすらタオルでごしごしこすり、
呼吸が開始されるように促す必要があります。

母犬と胎盤で繋がっているときは、へその緒を通じて酸素を受け取っているのですが、
へその緒を切り離した瞬間から母親からは血流を受け取れなくなりますので、
へその緒を切って出してしまったら、
ひたすらタオルでこすりながら、呼吸開始を促すしかありません。

このとき、こすり始めて数分で呼吸が始まることもあれば、
15分くらいかかることもあります。

お腹の中の赤ちゃんが7頭いたとして、
もしも蘇生係が7人いれば、一気に全部取り出して、
一人一頭ずつ分担してもらえばいいことになりますので、
術者はどんどん取り出して、どんどん渡して行き、
子宮が空っぽになったら、すぐに閉じるだけとなり、
その分手術も早く終わることになります。

それが蘇生係が少ない場合、最初の子が蘇生してくれないと、
次の子を取り出すわけにはいかなくなります。

へその緒を切って子宮から出してしまった時点で、
お母さんの血流をもらえなくなるので、
蘇生係の手が空いていない時に出してしまうことは、
子どもの助かる率が下がることになってしまいます。

かと言って、蘇生係が少なく、子どもの摘出の順番がつまってしまうと、
お母さんに対しての麻酔時間も長くなりますので、母体への負担も増えますし、
麻酔時間が長くなれば、お腹の胎児もその影響を受ける可能性があります。

先日の手術でも、蘇生係としてやって来た人が、
二人しかいなかったため、摘出の順番がつかえてしまい大変でした。

結局蘇生しなかった子もいたため、
あと一人か二人蘇生係が多ければどうだったか・・、
と悔やまれるところです(結果論ですが)。

もしも帝王切開で動物病院で手術をすることになった場合、
動物病院からのお願いとしては、
友達や家族などをできるだけたくさん連れて来て下さい
ということになります。

もっとも、胎児が2頭しかいないのに5人くらい来ていても手持ち無沙汰になりますので、
最初にレントゲンを撮っておいて、頭数を確認しておくのが一番だとは思います。

あとは、予定日の把握をしておいて、
動物病院の先生に、
「このあたりに予定日です」
と伝えておくにこしたことはありません。

予定日を伝えていただいていれば、
そのあたりには獣医師も断酒して心構えをして待っていますので。

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獣医師にとっては当たり前の知識でも、
飼い主さんにとっては当たり前でないということもしばしばです。
中でも時折驚かれるのが逆に意外なことが、
「人間と犬との生理の出血の違い」についてです。

人間の生理出血は、排卵の後しばらくしてから起こります。
排卵の前後は、受精卵が子宮内に降りて来た時に、
着床して妊娠を維持できるよう、子宮内が準備を整えます。

せっかく準備をしていても受精卵がやってこず妊娠が成立しなかった時には、
子宮壁は不要となりますので、壁がごっそりとはがれ落ちます。
人間においては、それが生理の出血となります。

ポイントは、人間の生理出血は排卵からずっと後の話であり、
生理が来た時は妊娠可能期間を終えてしまっているということです。

それに対して犬の場合は、生理出血が見られるのは、
発情前期と言う、排卵前の段階である事が特徴です。

犬では発情期の前に、発情前期と言う段階がありますが、
この時には、膣壁が浮腫状となり充血して、
血液がにじみ出て来ます。

発情前期は犬によって個体差があるのですが、だいたい7~10日ほどです。
発情前期が終わると出血は終わり、
浮腫状になっていた陰部も浮腫がなくなり、外観もすっきりします。

発情前期の間はオス犬が近づいて来てもメスは受け入れないのですが、
発情期に入ると交尾を許すようになります。

おおむね発情期開始の2日目あたりが排卵日なのですが、
その前後に交尾を行えば、高い確率で妊娠します。

犬の場合は、発情出血は排卵の前ですので、
出血が見られた時には、その出血が終わってからが、
一番妊娠に気をつけなければいけない期間です。

出血の見られるタイミングが違う事に加え、
人間の場合は子宮からの出血ですが、
犬の場合は膣壁からの出血であるということも大きな違いです。

獣医師にとってはこのことは当たり前の事なのですが、
飼い主さんに話をすると案外驚かれる事が多いです。

そう言えば、この間も猫で、
「うちの子まだ生理出血がないんですけれども」
と言っていた人がいました。

細かい繁殖のメカニズムや方式も、
動物によって全然違っていたりします。
長い進化の過程で、それぞれの動物にあっているやり方を身につけて来ているのだと思いますけれども。

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犬やネコは、多産型の動物です。
人間であれば、通常子宮内には1子しかできませんが、
犬ネコでは5~6頭できるのはざらです。

卵子と精子が結びつき、子宮内に着床すると、
それで妊娠成立となるのですが、
多産型の動物では、着床し、妊娠成立となったからと言って、
妊娠した胎児が必ず成長するとは限りません。

以前も、妊娠した子の定期検診でエコー検査をしていると、
妊娠40日あたりで心臓の止まっている個体が見つかりました。
どうなるか心配で、見つけてから定期的に診せてもらっていたのですが、
その胎児はどんどん小さくなって行ってしまって、
やがてエコーでは確認できなくなってしまいました。

そして、60日目前頃にレントゲンを撮っても、
まるきり姿も分からなくなってしまっていました。

成書的にも、
「妊娠早期になくなった胎児が吸収される事はよくある」
と書いてありましたので、
成長過程でなくなった胎児は、母体に吸収されて、
何事もなかったようになってしまうようです。

結局その母犬は、残った胎児を、無事成長させ、
通常通り分娩して出産する事ができました。

とは言っても、胎児が死んで、それが腐敗すると、
他の胎児や母体に対して深刻な影響を及ぼす可能性もありますので
(まだ経験はありませんが)、
いろんな可能性を考えながら見て行く必要はあります。

それにしても、心臓が止まっている胎児を見つけた後、
それがどんどん小さくなって行く過程を見たときは、
「生命の神秘」を強く感じました。

生きているときはいろんな事態が起こりえるわけで、
だいたいの事態には、体が対処できるようになっているのでしょうね。

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予定日は禁酒

動物病院でする手術のうち、突然入ることが多いのが「帝王切開」です。
なぜか難産の時には、夜になる事が多いです。

出産を計画的にする時には、
あらかじめ予定日を調べて、レントゲンを事前に撮り、
状態をしっかり把握しておいて臨む方がいいです。

予定日が分かれば、その予定日の前後には、
獣医師も診察が終わった後の晩酌を控え、
いつ電話がかかって来ても対応できるように待機しておく事にしています。

もしお酒を飲んで酔っぱらってしまっていると、
電話がかかって来て「難産なので、手術して下さい」
となっても、酔っていて手術できないという事になってしまう可能性があります。

予定日を聞いてさえいれば、生まれるまでは夜の晩酌も我慢して、
待機しておく事ができます。

そして予定日になり、「先生、無事産まれました!」
と電話がかかってくれば、晴れて僕もお酒が解禁となります。

禁酒終了となったときは、僕も、
「〜ちゃんにカンパーイ!」
と、お風呂後にお酒を飲んで祝う事にしています。

一方、帝王切開になったらなったで、
「無事手術が無事終わってカンパーイ!」
とお祝いすることにしています。

たいがいは禁酒もそれほど長い期間にはならないのですが、
以前一度だけ、待てど暮らせど「産まれたよ」という連絡がなく、
おかしいなと思って電話をしたら、
「二日前に産まれました。」
と言われた事がありました。

出産予定日の前は獣医師も禁酒にして待機しますので、
出産予定日の前は、ご相談いただいた方が良いと思います。

そして・・、産まれたらきちんと報告して下さいね。

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28日後...

特に怖い話ではなく、おめでたい話の事についてです。

犬を交配させて、妊娠がきちんと成立したかどうか、
ということの判定を依頼される事がたまにあります
(もしくは、望まない交配をしてしまい、
 妊娠していない事を望まれている場合もありますが)。

交配した後、妊娠判定をいつできるかとよく聞かれますが、
ベストは28日後です。

この時期であれば、お腹を触ってみれば、
球状の子宮が手にぽこぽこっと触れます。

あまり時期が早いと、腸の糞塊や膀胱と見間違える可能性がありますし、
28日後よりも遅くなると、子宮の中の胎児が腹腔内に移動してしまいますので、
また分かりにくくなります。

交配後28日の時点であれば、
子宮に小さな塊が数珠状にぽこぽこと並んでいますので、
触ってみて一番分かりやすいです。

もちろん、触診だけではなく、超音波をお腹に当ててみて、
それで胎児かどうかを確認します。

28日の時点では、まだ犬の形はしておらず、
まるっこい球状の組織の中に、液体がたまっていて、
その中に組織がある、という感じです。

これを確認すれば、おめでた確定です。
人間と違って、胎位の確認や胎盤の位置の確認は必要ではありませんので
(逆子は40%の割合で産まれますので犬では正常です、
 また、犬は帯状胎盤で周囲を取り囲むようにつきますので人間よりも安定しています)、
その後は妊娠55~60日後に頭数と産道の確認をするまで、
特に定期検診は必要ではないのですが、
ちょこちょこ成長して行く超音波を見たいという場合は、
来てもらったりしています。

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