Homage to JAPAN

はじめまして。オマージュ トゥ ジャパン 訳して「日本讃歌」です。リベラル保守の視点で語ります。

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 本稿 Part Ⅱの後半でユニクロの柳井会長がかつて「自由貿易体制が進めば、労働力という商品も全世界共通の価格になって当たり前」と述べたことを紹介しました。ユニクロは2001年のイギリス進出を皮切りに、現在では自らのHPで「成長の軸足は海外ユニクロ事業」と宣言していますから、貿易の自由化で恩恵を受ける企業です。賃金を全世界共通価格にするのですから、常識的に考えれば、開発途上国の労働者の賃金は上がる可能性がありますが、先進国の労働者の賃金は下げられます。労働者から見れば、" 労働力の安売り " を強いられることになるのです。

 根本に戻って考えれば『自由貿易とは各国間の関税などをゼロにし、規制を取り払い、結果として各国間の貿易を促進すること』です。その結果、『貿易をする人が豊かになり、ひいては国全体が豊かになる』という構図が描かれています。だから、1990年3月に大蔵省が土地取引の総量規制を打ち出したためにバブル経済が崩壊して以来、すでに25年以上の長きに渡って低迷する経済状況が続いているわが国では、自由貿易を推し進めることで「もう一度経済を上向かせるぞ!」という雰囲気が政府やマスメディア、多くの学者らの間に広がっているようです。

 それでいいのでしょうか? 本当に貿易の自由化、最終的には自由貿易とすることで経済が上向き、国が豊かになるのでしょうか? また、国が豊かになる土台は国民が豊かになることですが、国民は豊かになるのでしょうか。ズバリ言えば、そんなことは " 幻想 " です。なぜか。先ほどからお話しているユニクロの例を思い出してください。ユニクロの柳井会長は " 世界共通賃金策 " を打ち出していますが、" 世界共通賃金 " とは、先進国では単に " 賃金引下げ " ですからね。この一事だけを見ても「自由貿易は国民の豊かさにつながらないのでは」という疑問が湧きます。

 もう少し考えると、ユニクロの柳井会長のように世界的な企業を経営する人にとっては、自由貿易でユニクロがますます世界で発展すれば、ユニクロと柳井会長は確実に豊かになるでしょう。しかし、柳井会長の頭は " 世界共通賃金策 " ですから、ユニクロで働く人が豊かになるとは限りません。つまり『自由貿易体制になれば、世界で商売する大企業は豊かになるでしょうが、そこで働く人たちまでが豊かになる保証はない』ってこと。まして、バブル経済の崩壊以来下がり続けている賃金もますます下がるでしょうから、日本が豊かになる可能性はゼロです。

 ちょっと整理します。関税や規制のある貿易から自由貿易体制への移行は、世界展開する or これから世界展開を目指す大企業にとっては、関税や規制がなくなるのですから、非常に仕事がしやすくなります。当然、商売の規模が大きくなりますから、儲けも比例して大きくなります。大企業やその経営者にとっては " 自由貿易でウハウハ " です。一方、そんな大企業で働く人たちは、賃金を開発途上国並みに引き下げられる可能性が出てきますから、自由貿易など " 百害あって一利なし " 。しかも、悪影響を受けるのは、賃金だけではありません。

 世界展開する大企業と言いましたが、たとえば自動車会社。1970年代から80年代にかけて、日本の大手自動車会社は、アメリカにバンバン自動車を輸出しました。この当時は石油危機や排気ガス規制などが始まった頃で、値段が安く燃費もよく排気ガス規制にも対応していた日本車はアメリカで爆発的に売れました。当然、アメリカ国内メーカーの自動車は売れ行きが落ちます。結果、アメリカの自動車メーカーは労働者を解雇しました。大量失業の発生です。つまり、国同士の貿易は、企業同士では " 競争 " になります。企業同士の競争は深刻な問題を生みます。

 その深刻な問題とは、第一に " 国内の失業 " です。貿易の自由化で関税ゼロの外国製品が入ってくることになりますから、迎え撃つ国内企業が負けないくらいの価格設定の製品を作れればよいですが、そうでなければ国内企業は衰退し、最悪の場合、潰れます。このような状況になると、その国内企業で働いていた労働者は失業することになります。失業の理由は何であれ、近代的な民主国家は失業者を救済する義務を負っています。まずは雇用保険で対応しますが、それでも失業が解消されないときは更なる社会保障(=生活保護など)が必要になります。

 しかも、失業者は収入がなければ、所得税を納めることができません。当然、社会保障の原資になる徴税額も下がりますから、国家財政上、2重の打撃になります。悪い影響はまだまだ続きます。労働者が大量に失業する or 労働者の賃金レベルが下がると、そうした人たちは必然的に節約倹約せざるを得ませんから、最低限のモノ(=食料品など必需品)を買うだけの状態に追い込まれます。そうなると、他の産業にも影響が出ます。また、若い人たちがこうした状況になると、結婚が難しくなります。これは少子化に拍車をかけます。

 つまり、貿易の自由化や自由貿易で、国内企業ひいては国内産業が国際競争に負けると、国内には大量の失業者 or 低賃金労働者が出ることになり、それは国家財政の負担になり、かつ、少子化や国内需要の減少というかなり深刻な影響が出ます。こうした事態の発生を知ると、「あれ、これって今の日本じゃないの」という疑問が湧いてきます。結論部分である少子化や国内需要の減少、更には非正規雇用の増加で低賃金労働者の発生、これらすべてが日本の現状です。実は、それも当然です。なぜなら、日本は既にかなりの程度で貿易の自由化を進めているのですから。


 掲載した輸出依存度推移のグラフを見てください。バブル経済の崩壊後、8〜9%程度だった輸出依存度は、1997年くらいから数値が10%を越えて上がり始めます。2007年頃には16%を越え、2009年頃にリーマンショックで落ち込みますが、その後は14〜15%くらいで推移しています。わずか10年ほどで輸出依存度が2倍近くになっています。これは、日本という国がこの時期に " 貿易依存の方向へ舵を切り始めた " ということです。ちなみに、自由貿易の象徴と思われているアメリカの貿易依存度は9%強で、自由貿易とはほど遠い現状であることを知っておくべきです。

 輸出依存度(2014年現在)の高い順にG8と呼ばれる先進8ヶ国と中共の計9ヶ国を見てみますと、ドイツ(38.7%)、カナダ(26.8%)、ロシア(26.7%)、イタリア(23.8%)、中共(22.3%)、フランス(20.4%)、イギリス(16.5%)、日本(15.2%)、アメリカ(9.3%)という具合です。ちなみに、貿易依存度とは " 輸出入額をGDPで割った数字 " ですから、25%を切っている国は内需主導型(=非貿易依存国)の国と考えられます。外需依存型(=貿易依存国)はドイツが突出し、続くのはカナダ、ロシアです。飛躍的にGDPを伸ばした中共もこれに続きます。

 一方、自由貿易の国と思われているアメリカは一番内需主導型で、日本とイギリスが続きます。これまで「日本は貿易立国」などと学校で教わってきたと思いますが、データを見る限り、それは間違い。日本はむしろ内需主導型の国です。ただし、日本は1)エネルギー資源を決定的に輸入に頼っていること、2)年々食料自給率が横ばいから低下しつつあること(=食糧輸入国化していること)の2点は押さえておくべきです。これは『日本がエネルギーと食料のために一定の貿易をしなくては国の存立すら危うい " いびつな国家 " であること』を示しており、安全保障を考える上で極めて重要なポイントです。

 こうした事実を見ると、今後の日本の行く末、特に安全保障という国家が存立する必要条件を冷静に考えるならば、『エネルギー資源を確保すること&食料自給率をこれ以上低下させないこと』が最重要課題だとご理解いただけるでしょう。安易に自由貿易協定などを締結して国内農業の保護・育成を怠ったり、国内でのエネルギー資源の確保を考慮に入れない政策はまったく間違っています。財界人などの「日本は工業製品や知的財産の輸出に特化し、エネルギーや食料は外国から買えばよい。そのために貿易の自由化を推進すべき」などの言説はデタラメです。また、原発再稼動によってエネルギー供給の柱にしようとする安倍政権の目論みもデタラメです。

 なぜなら、そもそも原発で用いる濃縮ウラン燃料は全量輸入に頼り、使用済み燃料の再処理も国内では確立したとは言えない状況だから。従って、原発は安定的なエネルギー供給システムとは言えません。経済産業省は原発を " 準国産エネルギー " などと強弁していますが、その根拠を問うと「使用済み核燃料の再処理を行えば、核燃料として再利用できるから(=核燃料サイクル)」と答えています。しかし、現実には核燃料サイクル事業の目玉 " もんじゅ " は破綻していますので、使用済み核燃料の再処理だけでは核燃料サイクルは稼動しません。再処理した核燃料の再利用ができなければ、核燃料サイクルは稼動しないので、経産省の言い分はただの " ウソ " です。一言で言えば、" 原子力は準国産エネルギーではない " ということ。経産省の " 純国産デマゴギー " に過ぎません。

 今後進めるべき純国産エネルギーは、現時点では " 再生可能エネルギー " しかありません。再生可能エネルギーを推進して純国産エネルギー供給システムを少しでも拡大させ、同時に国内の農業・漁業の保護・育成を図って、少しでも食料自給率を上げることの2点は、現時点での安全保障だけでなく、将来の日本のあり方を考えても一番重要な国家目標です。
 その上で、全般的な経済政策として最も重要なことは『日本が内需主導型の国であり、経済を上向かせるのに必要なことはGDPの6割近くを占める内需(=家計消費)を上向かせること』です。そのためには『社会保障の充実を通して再分配政策を推進すること』です。


 まとめます。日本において最重要な国家目標は、1)再生可能エネルギーを推進して純国産エネルギー供給を増やすこと、2)国内の農業・水産業の保護・育成を図って食料自給率を少しでも上げること、の2つ。その上で、政府は内需を上向かせる政策=再分配政策、すなわち社会保障の充実を強力に推進すること、です。
 以上の2つの国家目標と内需主導のための政策実現を行うことこそ、最重要な政策です。『徒らに更なる貿易の自由化を進めることは、労働者の賃金を下げることにつながるので、まったく好ましくない』とお分かりいただけるでしょう。
( 2016/12/06 記述 : Part Ⅳ に続く )
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