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夏休み・・
僕は彼女の車の中にいた。
車は海岸線を走る。
空は蒼く、海は輝いている。
白いガードレールが光の中を滑っていく。
カーオーディオから流れる曲にあわせ、
彼女が歌を口づさむ。
♪Love you forever and forever, Love you wuth all my heart」
「先生、この曲好きなの ?」
「うん、好きよ。知ってる ?」
「ビートルズの・・・」
「 I WILL 」
「ああ、循環コードのきれいな曲だね」
「"僕は君を愛する、ずっと、ずっと。僕のハートの全てで" 素敵でしょ」
「はは」
「それともこの方がいいから、"僕は君を愛する、ずっと、胸いっぱいの愛で" どう ?」
「はは、からかわないでよ先生」
ダッシュボードにタバコがある。
「先生タバコ吸うの ?」 「うん、時々ね。意外 ?」
「うん、あんまりそんな感じに見えないから」
「女はいくつかの顔を持ってるの、怖いぞお」
「そういえば君、彼女いたよね。画材屋さんの裏の、君のバイクのそばにいる女の子を見かけたことがあるわ」
「ああ、あれ彼女じゃないよ。昔からの幼馴染。家が近いから、時々乗っけてやってるだけさ」
「そう、かわいい子よね」
「でも、あいつ胸がないんだ。後ろに乗せるとよく分かる。先生くらいあるといいんだけど」
「こら、それ以上云ったら、車から降ろすぞ」
車は海を見渡せる小高い丘の上の公園に停まった。
風が緑の中を吹きぬける。
地球が丸いっていうのは本当だな。水平線が丸みを帯びてる。
彼女は手すりにもたれ、じっと海を眺めてる。
僕はその姿に見とれていた。
「あー、気持ちいいわ。こんな気分、本当に久しぶり」
彼女の髪を潮風が揺らす。
「冬に展覧会があるの。私、絵を出品するんだけど、何を描いていいのかずっと悩んでた。でも、この間、やっと描きたいものが見つかったの」
「何を描くの ?」
「海、夏の海」
「ふぅん、わりと普通だね」
「それだけだと思う ?」
彼女は首をかしげ、僕の顔を覗き込みむと、いたずらっぽく笑った。
この人、先生のくせに、時々子供みたいな表情をする。
「他に何かあるの ?」
「フフフ・・・」
彼女は小さく笑った。
「そういえば、まだちゃんと聞いてなかったわ」
「何を ?」
「君が私を好きだっていう・・言葉」
「もう知ってるからいいじゃん」
「よくないわ。ここは学校じゃないし、
女はちゃんと聞きたいものよ」
「なんで」
風がやんだ・・
「君が好きだから」
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