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自作の小説とイラストで・・・

Whole Lotta Love

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Whole Lotta Love<12>

なんで・・なんで・・
どうして・・
・・結婚 ?・・・そんなバカな・・

真っ暗な闇が、僕に襲いかかる。
・・もう逢えない・・
地の底へと引きずりこまれるような気持ち・・

部屋に戻ると、僕は描きかけの絵を破いた。
何もかもが信じられない。
なんで、一言もなく・・・

さよならさえもないなんて・・

壁にもたれると、僕は膝から崩れ落ちた。
涙が止まらない。
目に見えるものの全てが、深い海へと沈んでゆく。
もう明日なんて、来なくていい。

ただ泣いた・・

僕の体の全てが涙に変わるまで・・

どれくらい時間が経っただろう・・

僕は真夜中の高速を走っていた。
どこをどう走ったか、憶えていない。
ただ、あの日の海へと向かっていた。
二人が愛を交わした、あの時の海へ・・

夜の闇が薄れてゆく。
波が砂を洗ってゆく。

僕はただ、それを見つめていた。

僕は自分の破ってしまった絵を
その砂浜に埋めた。

・・ごめん、先生・・最後まで描けなかったよ・・

・・でも、先生が描いてくれた、
  二人の絵は、ずっと大切にする・・・

・・俺、先生のこと、決して忘れない・・
  二人の愛は永遠だって、先生は教えてくれた。
  たとえ、離れ離れになっても・・


   さよなら 先生



         完

Whole Lotta Love<11>

夏の終わり・・・
僕はバイクを走らせる。
今日は彼女のデッサン教室の日だ。
もうすぐ彼女に会える。
その気持ちがスロットルを開けさせる。
ガンマが車をすり抜ける。
走り去る街並み、カストロールの焼ける匂い。
僕の鼓動に愛車が呼応する。

しかし、なぜか教室は閉まっていた。
ドアには鍵が掛かっている。
・・日にちを間違えたか・・
まさか・・彼女に会える日を間違えるはずがない。
彼女とは連絡の取りようがない。
家の方には、変に思われるといやだから、電話しないように言われていた。
二人が唯一連絡をし合える場所がここだった。
・・具合でも悪いのかな・・あきらめるしかない。
次の教室までは、あと四日もある。
長い四日になりそうだ。

四日後、僕は再び、教室の前にいた。
小さく二回、ドアをノックする。それが二人の合図だった。
返事がない・・心がざわつく・・
ドアノブを回すと、あっさり戸は開いた。
中にいた女性がこちらを振り返る。・・彼女ではない。

「あ、あのう・・相田先生は・・」
「ああ、彼女は先週いっぱいで辞めたけど・・
 彼女の教室の生徒さん ? 」
「えっ ! 本当ですか ?」
「あら、聞いてなかったの。 ああ、あなたね。
 彼女から頼まれてた物があるの。
 ヘルメットを持った男の子が来たら、渡してくれって」
そう云うと、その女性は僕にA4サイズぐらいの箱に入った包みを手渡した。

僕はバイクの上で、その箱を開けた。
中身は彼女が描いた絵だった。
朝陽に包まれた浜辺で、僕と彼女が口づけている。

背中に冷たいものが走った。
・・どう意味なんだ・・
・・まさか・・
僕の脳裏に、あの雨の日の彼女の涙が浮かぶ・・
まさか・・そんなバカな・・

不安が僕を呑み込んでいく。
彼女が丘の上で話した、おとぎ話・・
たしか、あの二人は離ればなれになってしまう・・

学校で会える可能性はない。
彼女は元々、臨時の講師。新学期には新任が来ると言っていた。

家に着くと、僕は彼女の家のダイヤルを押した。
約束など守っている場合ではない。
母親らしき人が出る。

「あの子は、もうここには居ません。
 秋に結婚するので、仙台の方に行きましたけど」

僕は受話器を置いた・・・

Whole Lotta Love<10>

8月、夏の日射しが照りつける。
僕は、あの雨の日、車の中で見た彼女の涙が気になっていた。
彼女は何も話さない。
彼女に何があったんだろう。

ふたりは、その後も逢い続けた。
高原に泊まりで旅行にも出かけた。
ただ、時折みせる、彼女の悲しげな顔が、
僕の心に影を落した。

許された恋ではなかった。
いつも人目を避けていた。
でも、僕にとっては、そんな事は小さな事だった。
彼女といるだけで、全ては満たされた。

逢えない時間が僕を苦しめる。
いつも一緒にいたい。毎日でも逢いたい。
人を好きになることが、こんなに苦しいものだと初めて知った。
目をつぶれば、彼女がそこにいる。
明日会える、そんな夜は果てしなく長く感じた。

僕にとって幸いだったのは、
彼女が隣町でデッサン教室の講師のアルバイトをしていたことだった。
週2回だけだったが、教室が終わる頃を見計らい、バイクで出かけた。
生徒は5〜6人足らずだったが、
誰もいなくなると、彼女は僕をこっそり教室に入れてくれた。

「ちゃんと勉強してるの ?」
「うん」  
「嘘、その顔はしてないな。来年は受験でしょ。
 今、大切な時じゃない」
本当を言えば、勉強どころじゃなかった。
彼女の事で頭がいっぱいだった。
していたとすれば、彼女の絵を描くことで、気持ちを安らげていた。

夏休みも終わりかけた頃、
教室が終わり、彼女の車で郊外にある丘の上の公園に行った。
そこは、街が見渡せる、ふたりの秘密の場所でもあった。
星のきれいな夜だった。

「ねえ、こんな話、知ってる ?」
彼女が僕の手を握り、はなし始めた。
「むかしね、国境の村に男の子と女の子が住んでたの。
ふたりは別々の国だったけど、いつしか恋に堕ちたの。
ふたりは愛し合っていたけれど、お互いの国が戦争を始めてしまったわけ。
ふたりは逢えなくなり、悲しみに暮れたわ。
女の子は淋しさを紛らわすため、ふたりの絵を描いたの、毎日、毎日。
ある朝、彼女はその絵を見てびっくり。
その絵のふたりがキスをしていたの。
そう、ふたりは逢えなくなっても、絵の中のふたりは愛し合っていたのね。
そして、そのキスで、ふたりの愛は永遠に約束されたの。おしまい・・  」

「それって、ハッピーエンドなの ?」
「そうよ。だって、ふたりは永遠に結ばれたんですもの」
「でも、実際には、会えなくなったんでしょ」

彼女は何も言わず、僕を抱きしめた。
「好きよ、君が。世界じゅうの誰よりも・・」
「俺も、先生を絶対離さない」
二人は固く抱き合った。
しばらくして、彼女が消え入るような声で囁いた。
「・・ごめんね・・」

僕はその時、その言葉の意味が分からなかった。

Whole Lotta Love<7>

夏休み・・
僕は彼女の車の中にいた。
車は海岸線を走る。
空は蒼く、海は輝いている。
白いガードレールが光の中を滑っていく。
カーオーディオから流れる曲にあわせ、
彼女が歌を口づさむ。

♪Love you forever and forever, Love you wuth all my heart」
「先生、この曲好きなの ?」
「うん、好きよ。知ってる ?」
「ビートルズの・・・」
「 I  WILL 」
「ああ、循環コードのきれいな曲だね」
「"僕は君を愛する、ずっと、ずっと。僕のハートの全てで" 素敵でしょ」
「はは」 
「それともこの方がいいから、"僕は君を愛する、ずっと、胸いっぱいの愛で" どう ?」
「はは、からかわないでよ先生」

ダッシュボードにタバコがある。
「先生タバコ吸うの ?」   「うん、時々ね。意外 ?」
「うん、あんまりそんな感じに見えないから」
「女はいくつかの顔を持ってるの、怖いぞお」
「そういえば君、彼女いたよね。画材屋さんの裏の、君のバイクのそばにいる女の子を見かけたことがあるわ」
「ああ、あれ彼女じゃないよ。昔からの幼馴染。家が近いから、時々乗っけてやってるだけさ」
「そう、かわいい子よね」  
「でも、あいつ胸がないんだ。後ろに乗せるとよく分かる。先生くらいあるといいんだけど」
「こら、それ以上云ったら、車から降ろすぞ」

車は海を見渡せる小高い丘の上の公園に停まった。
風が緑の中を吹きぬける。
地球が丸いっていうのは本当だな。水平線が丸みを帯びてる。
彼女は手すりにもたれ、じっと海を眺めてる。
僕はその姿に見とれていた。
「あー、気持ちいいわ。こんな気分、本当に久しぶり」
彼女の髪を潮風が揺らす。

「冬に展覧会があるの。私、絵を出品するんだけど、何を描いていいのかずっと悩んでた。でも、この間、やっと描きたいものが見つかったの」
「何を描くの ?」
「海、夏の海」  
「ふぅん、わりと普通だね」
「それだけだと思う ?」
彼女は首をかしげ、僕の顔を覗き込みむと、いたずらっぽく笑った。
この人、先生のくせに、時々子供みたいな表情をする。
「他に何かあるの ?」
「フフフ・・・」
彼女は小さく笑った。

「そういえば、まだちゃんと聞いてなかったわ」
「何を ?」
「君が私を好きだっていう・・言葉」
「もう知ってるからいいじゃん」
「よくないわ。ここは学校じゃないし、
 女はちゃんと聞きたいものよ」
「なんで」

風がやんだ・・


「君が好きだから」

Whole Lotta Love<8>

「君が好きだから」
彼女のこの言葉に、僕は思わず目を伏せた。
嬉しかった。これ以上ないくらい。

「だから、ちゃんと言って、私に」

「好きだよ、先生」

突然、彼女が周りを見回す。
「どうしたの ?」僕もつられて、辺りを見渡した。
別に何もない・・誰もいない・・
彼女は僕の方に向き直ると、
僕の肩に手をかけ、僕に口づけた。ほんの一瞬だった。

「ありがとう。つづきは、また後で・・」
そう言うと、僕の唇に指をあてた。
彼女が口ずさむ。
「♪ Love you forever and forever・・
 ずっと私を好きでいてくれる ?」
「うん」

「I ・・will」

・・・生きてるって悪くないかも・・・

太陽が降り注ぐ・・

人気のまばらな砂浜を、二人で手をつないで歩いた。
このあたりは、遊泳禁止区域らしい。
「ここの海は深いのかしら ?」
「さあ、先生は泳げるの ?」
「うん、まあ人並には」
「見たかったなあ」   「何を ?」
「先生の水着姿」   「バカ、エッチ」
彼女が僕の腕にしがみついた。
あの日の胸の感触がよみがえる。

「さっき言ってた、他に描きたいものって何 ?」
「それは秘密」
「なんだよ、教えてよ」
「もう、鈍いなあ、鈍感」
・・他に描きたいもの ? 何だろう ? クジラでも描く気かな・・

二人は岩陰に腰を下ろした。
波の音が少しこだまする。

「私ね、いままで沢山の絵を見てきたわ。
でも、絵の中に自分の姿を見たのははじめてだった。
君が私を描いてくれたとき、始めは少しとまどったけど、
本当はすごく嬉しかった。胸が熱くなったわ。
だから、その絵を捨ててって言われたとき、とっても悲しかった」
「ごめん・・」
「ううん、もういいの。そのかわり綺麗に描いてね。
私も君を素敵に描くから」

「え、じゃあ他に描きたいものって・・」
「そう、でも君だけじゃない。私たち二人を・・
夏の夕暮れの海のシルエットとして」

彼女が沖を眺めている。
波間に光の粒が走る。
「陽が傾いたら、海のスケッチをするわ」
「この辺で ?」
「もっと素敵なところがあるの。息をのむ位、海がきれいに見える場所」
「どこ ?」
「私の知り合いが、この近くに今は空部屋になってるリゾートマンションを持ってるの。
私が絵を描きたいって言ったら、勝手に使っていいって、ほら・・」
彼女がバッグから鍵を取り出して見せた。

「俺も行っていいの ?」
彼女は僕の手を握ると、やさしく微笑んだ。
「さっきの歌の続き知ってる ?
 ♪Love you whenever we`together・・
 二人はいつも一緒よ」

・・え、ということは・・

・・生きてるって、最高かも・・

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