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自作の小説とイラストで・・・

記憶

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記憶<9>

そうか・・
彼女は、あの時死んだんだ・・

僕はそのショックで、彼女の記憶を消した・・

ならば、今、僕と暮らしている女性は一体誰なのか・・

広く開かれた窓、
空になった鳥かごが静かに揺れている。
彼女の姿は、もうそこにはない。

テーブルの上に古いアルバム。
その開いたページの一枚の写真。
左端に少し焦げた跡がある。

「私、もっと生きたかった。
 でも、これからも、あなたを見つめていく。
 写真の中からずっと・・」

もう少女ではない彼女が、
こちらを見て微笑んでいる。

僕はその写真を白いフォトケースに入れ、
壁に飾った。


    −完ー

記憶<8>

イメージ 1

「大きくなったら何になりたい ? 」
彼女に聞かれ、少し戸惑ったことがあった。
「美奈子ね、ビアノを弾くお仕事がしたい」
「うんと・・・僕はね・・・」

今ならちゃんと言えるのに。
「僕はお医者さんになる。そんで美奈ちゃんを助けてあげる」って

写真屋の裏手には空き地があった。
何かの角材や、あき缶、パチンコ玉、いろんな物が落ちていた。
その空き地から白い煙が上がっている。

「おじさん、何してるの ?」
「いらない物を燃やしてるのさ。もうこの商売も終わりだ。
おじさんは店を畳んで田舎に帰ることにしたよ」
たき火の中で、くすんだ木の看板が燃えている。

僕はしゃがんで、ただその火を見ていた。
風が吹き、白い煙が顔にかかり、僕はかたく目を閉じた。
細く目を開けると、煙の切れ間から何かが見えた。
燃えている看板の下、折り重なった数枚の写真の中・・

「あっ !」 僕は叫ぶと同時に、火の中に飛び込んでいた。
「危ない !」おじさんが叫ぶ。
僕は看板を払いのけ、その下から一枚の写真を取り出した。
左端はすでに燃えてしまっている。
右腕が熱い・・
僕はその写真を抱えたまま倒れこむ。
いつもガラス越しに見ていた、あの彼女の写真がそこにあった。

彼女が入院してから二週間くらい経った、ある日の夕方。
彼女の家の前で、何人かの男の人が忙しそうに動いていた。
玄関の戸は広く開け放たれ、
家の前の道には、何台かの車が停まっている。
彼女の母親の姿が見える。
車からは、沢山の花篭が下ろされている。

僕は小走りに彼女の母親に駆け寄った。
白いハンカチで目頭を押さえていたその人の手には、
黒いリボンの掛けられた、美奈ちゃんの写真があった。

僕はそれから何も憶えていない・・・
 

記憶<7>

僕たちは、すぐに打ち解けた。
彼女は心臓に病を持っていた為、あまり友達がいなかった。
激しい運動はできない。
でも、彼女とふたりで遊んだ日々は楽しかった。

たまに野原に出かけ、夕焼けを眺めたり、
僕は木にぶら下がり、
彼女は花を摘んだりしていた。
冷たい風は心臓には良くないらしく、
そんな日は彼女の母親が向かえにきた。

「やだー、美奈子まだ遊ぶ。大丈夫だってばあ」
「駄目だよ、美奈ちゃん。帰ろう。
 明日また遊ぼう」
「約束してくれる ?」
「うん」
二人は指きりをして、さよならした。

彼女が手術をすると聞いたのは、
それからひと月くらいしてからだったと思う。
「美奈子ねえ、入院しなきゃいけないんだ」
「入院って、病院に・・?」
「うん。手術するの」
彼女はそう言って、自分の左胸に手を当てた。
「こわい ?」
「うん、ちょっと」
「大丈夫だよ。僕が毎日、神様にお祈りするから」

「元気になって帰ってくるから、また遊んでね」
「うん」

彼女が入院してからも、
僕は毎日、彼女の家の近くに行った。
もうピアノの音は聞こえなかった。
ひとりで野原を駆け回ったり、
大きな木に登り、空を眺めたり、
そして、ふいに思い出したように手を合わせ、
「美奈ちゃんが、元気になりますように・・」
とお祈りをしたりした。

「早く帰ってこないかなあ・・」

空は何も答えてくれなかった。

記憶<6>

古ぼけた商店街のはずれに、
木造立ての小さな写真屋があった。
その入り口の横のガラス戸の中に、
何枚かの写真が飾ってある。
僕はその右端にある写真を見ていた。

「あれ、ぼうず又来てるのか、いつも何を見てるんだ ?」
店主と思われる初老の男が、僕に声をかける。
「別に。何も見てないよ」
「ははあ、この写真か、かわいい子だろう。
たしか美奈ちゃんっていったなあ。ピアノの発表会の時に撮ってあげたやつだ。よく撮れてたんで飾らせてもらったんだよ。
この先の路地を右に曲がってごらん。
白い建物の家の子だよ」

ピアノの音が聞こえた。
二階の窓が少し開いていて、そこから聞こえてくる。
レースのカーテンが揺れている。
僕はなんとなくそれを眺めていた。

しばらくすると、ピアノの音が止んだ。
カーテンのすきまから、何か黒っぽいものが飛び出した。
小鳥だ。 女の子が窓から顔を出す。
あの写真の女の子だ。彼女が何か叫んでいる。
その小鳥は通りを横切ると、大きな木の幹にとまった。

「捕まえて !」
女の子が僕に向かって言った。
僕は咄嗟に、その鳥を追った。
小鳥は無情にも再び空へと舞い上がる。
僕はただひたすらに走った。

振り向くと、遠くに女の子が走ってくる姿が見える。
そのすぐ後ろに、その子の母親らしき人が後を追い、
「美奈子 ! 走っちゃダメ !」と叫んでる。

どれくらい走っただろう。
僕は道の端に倒れていた。
小鳥の姿は、もうどこにも見えない。
ひざをすりむいたみたいだ。赤い血が滲んでいる。

「ごめんね。こんな目に会わせちゃって」
その子の家で、僕は彼女の母親に手当てをしてもらっていた。
カラになった鳥かごが窓辺で揺れている。
「この子ね、心臓が少し弱いの。だから走ったりできないの。
 可愛がってた鳥だけど、仕方ないわね」

さっきまで泣いていたその子は、もう泣きやんでいた。
「痛かったあ ?」
「ううん、大丈夫だよ」
彼女が僕の足に巻かれた白い包帯をそっと撫でた。

記憶<5>

二人は窓辺の手すりに手を架け、
小鳥の行方を追う。
「行って来る !」 僕はマンションの階段を駆け下りた。
空を見上げ、必死で探した。
たぶん、それほど遠くへは飛べないはず。

路地の脇を抜け、広い通りに出る。
あたりを見渡すと、バス停の裏の木の上に、赤いくちばしが見えた。
しかし、通りの反対側だ。
車の切れるのを見計らって、通りを横切る。
しかし、無情にも小鳥はさらに飛び立つ。

公園の方だ。
僕は走った。ただひたすらに。
普段の運動不足がたたり、足が思うように進まない。
サンダルがパタパタと甲高い音を立てる。
もうかれこれ15分は走っているだろう。
息が苦しい。
だけど、あきらめるわけにはいかない。
彼女があんなに可愛がっていた鳥だ。
なんとしても、取り戻したい。

公園の柵を飛び越え、
花壇の横の道を走る。
もう呼吸も限界にきてる。
意識が朦朧とする。

青い空、風、池のほとり・・・
記憶の糸が交差する。

いた ! 池の柵の上だ。
赤いくちばしの小鳥・・・

その時、サンダルの緒が切れ、
僕の体は無残にも地面に叩きつけられた。

小鳥は僕の伸ばした手の先のはるか彼方を、
再び、羽ばたいていった。

僕は子供にもどっていた。
すりむけたヒザを抱え歩きだす。
くやしさが胸にこみあげてくる。

遠くで誰かの声が聞こえる。
「美奈子、走っちゃダメ !」
彼女の母親の声だ。
彼女が泣いている。
まだ、子供の彼女が・・・

その時、僕は全てを思い出した。

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