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高杉と水地を乗せた車は大峯山の山道を登ってゆく。
「よし、ここからは歩きだ」
高杉は車を降りた。
「え〜、どこに行こうっていうの ?」
「墓参り」
「誰の ?」
「沢木の両親のさ」
「こんな山奥にあるの ?」
「ああ、この林の向こうのはずだよ。グーグルで調べておいた」
山道はかなり険しかった。
「高杉さん、まだぁ ? 私もうヘトヘトなんですけどぉ」
「もうすぐだよ。ふだん運動してないからだ」
「だってぇ〜 聞いてないしぃ」
林を抜けた丘の傾斜に、その墓地は広がっていた。
百ばかりの墓石が並ぶ、それほど大きくもない墓地であった。
「まったく、こんな辺ぴなところのお墓、お参りに来るだけでも大変じゃない」
水地は額の汗を拭った。
「赤城という名の墓を捜すんだ」
「赤城ね。沢木さんの生まれた時の名前ね」
朝の天気とは裏腹に、暗い雲が陽を遮る。
あたりは薄暗く、竹林が怪しく揺れていた。
「あったわ、赤城家の墓。お花が添えてあるわ。
つい2、3日前に誰かが来た様子ね」
黒い御影石のその墓には、まだ枯れていない菊の花があった。
昭和五十一年建立、赤城豊、幸恵
墓石にはそう記されていた。
「間違いない、これだ。
おそらく、あの坊さんが建てたものだろう」
「ということは、このお花も、あのお坊さんが ?」
「たぶんな。子供を引き取るぐらいだ、
生前はかなり親しかったにちがいない」
「高杉さん、見て、これ」
水地はその横にある、小さな石碑を指差した。
「何か書いてあるわ」
そこには、こう記されてあった。
魂よ、やすらかに眠れ
我々はここに誓う
死の光を下しき者に
その報いを与えんことを
シュミットの翼が
モハーベの砂漠を越える
その時に
卍
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