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100回目のヴィシソワーズ

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それから三ヵ月後、
僕らに別れがやってきた。

「九州の実家の両親が帰ってきて、
お見合いしろって」

僕はただ黙った・・・

彼女を愛していた。
一緒になりたいとも思っていた。
でも、それがいつとは、どうしても言えなかった。


空港のロビーを歩く二人、
交わす言葉も少ない、

デッキを見渡せるレストランでの最後の食事。

「100回目のヴィシソワーズの意味、やっと分かったよ、ごめん」

「ううん、もういいの」

彼女は笑った。

「向こうに行っても体、気をつけてな」

「あなたには、たくさん感謝してる。
おいしいものたくさん食べさせてもらったし」

「・・・・」

空港のフライトボードが別れをせかす。

「ねえ、最後にひとつだけ言っていい ?」

「うん、何 ?」













「あなたって・・煮え切らないじゃがいもね」

茹でたじゃがいもを裏ごしし、
スープストックで伸ばしてゆく。
静かに牛乳を加え、生クリームで仕上げ、
味付けする。

作ったらすぐ食べたいのが人情。
ステンレスのボールに氷を張り、
その上で少しづつ冷ましていく。
粗熱がとれたら、冷蔵庫で2時間冷まし、味を落ち着かせる。

冷たく冷やしたガラスの器に注ぎ、
アサツキを飾る。

彼女の笑顔が輝く。

「おいしいね」

「うん」

「これで七回目」

「何が ?」  

「二人でこれを作った回数」

「そんなことまで、数えてんだ」

「そうよ、私、100回目のヴィシソワーズを飲めるかしら ? 」

「100回 ? そんなに頑張れないよ」

彼女の笑顔が一瞬曇った。

僕はその言葉に、それほど意味があるとは思わなかった。

窓の外の日射しが翳る。

その夏、彼女は28回目の誕生日を迎えようとしていた

イメージ 1

「ヴィシソワーズ作ろう」

夏の初め、ベランダ越しに彼女が言う。
明るい日射しに負けない笑顔で。

ヴィシソワーズ・・じゃがいもの冷たいスープ
この季節には、定番の一品。

僕はリビングでサッカーを見ていた。

「えー、めんどくさいよ」

「休みだからってダラダラしないで、
ほら、一緒に作ろう」

彼女は四つ年上、一緒に暮らしはじめて、もう三年になる。
二人で初めてデートした時、レストランでこのスープを飲んだ。

「これは、違うな」
「何が ?」
「ヴィシスはこんな味じゃない」

フランチのレストランで働いたことがある僕は、その本当の味を知っていた。

「じゃあ、今度作ってみてよ」
「いいよ」

それからというもの、家で時々作らされるハメになった。

渋々、キッチンに立った僕だが、
いざやるとなると、料理に妥協はしなかった。
僕はネギを炒め、彼女がじゃがいもを茹でる。

「だめだよ、火が強すぎる、
それだと煮えきる前に煮崩れする」

「ミキサーは使わないよ、裏ごしするんだ。
ヴィシスは舌ざわりが命だ」

「もう・・キッチンに立つと人が変わるんだからあ・・」
彼女は笑った。

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