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自作の小説とイラストで・・・

夕暮れ

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夕暮れ <6>

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「なんで俺にひとこと・・」

「あの頃のあなたは、仕事、仕事で、とても相談できる雰囲気じゃなかった
 もういいの、むかしの事だから」

野球少年の打った球が、紅い空に吸い込まれていく。

「俺は何をしてきたんだろう・・
 自分の女房のことさえ知らずに・・」

空を二羽の鳥が寄り添い渡っていく

「人って悲しい動物よね、
 鳥も空も、あんなに自由なのに」

夕焼けは夕暮れへと姿を変える

空にひとつ、星が光る

妻が笑う

「明日から大丈夫 ? 会社・・」

「はは、大丈夫さ、俺も生きるのが辛くなったらここに来るかな、
 まあ、ためいきつきながら生きていくか」

「私がいること忘れないでね」

男は妻の手をそっと握った

「俺、死んだら・・」

「死んだらなに・・?」



「夕焼けになる」



・・・おわり・・

夕暮れ <5>

http://tunes2.blog-tunes.com/EasyListenning/ronkon/ronkon.swf?v=30&s=off&t=1




妻が笑う

「それで、どうするの、 会社やめてお坊さんにでもなる ?」

「別にどうもしないさ、今までどおり働くだけさ」

男は小さなため息をついた。

「あなたは仕事ばっかりの人で、何も知らないだろうけど、
私にだって色々あったわ。
子供の悩み、家庭の悩み、学校の悩み、近所の悩み・・・

子供が学校でイジメに会って、学校に文句を言いにいったら、
相手の父兄がこの辺のリーダー的な人で、
私まで仲間はずれ、今まで友達だった人まで口をきいてくれなくなったわ。

悔しくてもどこにもそれをぶつけるところがない。
子供ひとり守ってやれない親だと思ったとき、
自分が情けなくて、一人で泣いた。

子供同士の問題は解決しても、
親同士の仲って、一度そうなるとずっと後をひくの。
私はどうしようもない孤独になってしまった。

そんなときここに来ることを覚えた。
ここに座って、ひとりでずっと夕焼けを眺めてた。
いつまでも・・いつまでも・・

涙がどんどん溢れてきて、
拭っても、拭っても、溢れてきて

でも、夕焼けは何も答えてくれなかった
いつも、ただ紅いだけ

川も、草も木も、犬も子供たちも、
そして私も私の涙も、分け隔てすることなく紅くしてたわ

そしていつも黙ってそっと暗闇の中に消えていく



私、いつか泣かなくなってた
そして気がつくと、全てを許せるようになってた

人を憎む気持ちが消えたとき、
私の涙も消えたわ

私の悔しさなんて、あの夕焼けに比べたら
なんてちっぽけなんだろうって
誰かを憎んでいることが恥ずかしくなったの


私、この景色が大好き
世界中でここが一番好き」

夕焼けはやはりどこまでも続いていた。




・・つづく・・

夕暮れ <4>

イメージ 1

「俺はずっと働いてきた。家族のため、自分のため。
でも、最近ふと思うんだ。このままでいいのかなって・・

会社には沢山の人間がいる、みんな自分のことで精一杯だ。
自分がどれだけ仕事ができるか、そんなことに追われている。
もちろん、俺もその一人さ。
業績を上げ、評価を得る、それが自分の信用となる。

でも、それだけですまないんだよ、
いつしか人脈ができ、派閥が作られ、
憎しみあうようになったりする。

だれがだれの味方だとかね。
俺は別段、それが不思議だとも思わなかった。
勝ち負け、損得、かけひき、それがあって会社なんだと。

でも、ふと気づいた。
自分が自分でないような・・・
何かをするたびに、人に見られている自分を意識する。
いま、自分はどの位置にいるとか、
ここはどう立ち振る舞い、どういった手でいこうかとか・・

優越感と孤独感が入り混じったような、そんな気持ち。

でも、最近、思うようになった。
俺はいつまでこんなことを続けるんだろう・・

飽きもせず、何をやってるんだろう・・
こんなことして一生を終えるんだろうか・・・

そんな風に考えたら、なんだかすべてバカらしくなってきた」

夕焼けが男の顔を紅く染めている。

夕暮れ <3>

「ね、素敵でしょ」
誇らしげにする妻の顔を夕焼けが紅く染める。

「ああ、驚いた」

男はただ目を見張った。

土手に荷物を下ろし、腰掛ける二人。
犬を散歩させる人、野球をする少年たち、
夕焼けは全てを紅く照らしていた。

「私ね、買い物帰りに時々ここにくるの、
ひとりでここに座り、ずっとこの紅い空を眺めてる。
あなたにいつか見せたいと思ってた」

男は黙ってその紅い空を見ていた。
まるで子供のように・・・

「ねえ、何かあったの ? 会社で・・」

「いや、別に何もないよ」

「ならいいけど・・あなたが理由もなく会社を休むなんて初めてだから」

野球少年たちの笑い声がここまで響いてくる。
その姿を男はじっと眺めている。

「最近、あなた少し変わったかなあって思ってた。
前のあなたとは少し違う。なんていったらいいのかよく分からないけど・・」

男は小さく笑った。

「飽きたんだよ、そうだな・・
それが一番当たってるかな・・」

「飽きた、 何に ?」

「なんていうか・・・人の振る舞いにとでもいうのかなあ・・」

「よく分からないわ」

夕焼けはどこまでも続いていた。

夕暮れ <2>

「あら、どんな風のふきまわしかしら、あなたがそんなこと言うなんて」
彼女は小さく笑顔を作った。

秋の空を見上げると、いつのまにか木々の葉は茶色に変わり、
風はかすかな寒さを運んでくる。
街並みの変化に男は少しとまどっていた。

「この辺もずいぶん変わったなあ」

「あら、そう ? あなたが普段歩かないだけよ」

スーパーで買い物をする二人、
男はふたつの袋を持ち、彼女がひとつの袋を持つ。

「今日はふたりだから沢山買っちゃった、がんばって食べなきゃね」

住宅街の坂に差し掛かると、妻は夫の目を見た。

「ねえ、ちょっと寄り道していかない ? 今日はどうせ子供も帰りが遅いと思うし」

子供はひとり、もう大学生である。

夫の返事を待たずに彼女は彼の腕をとり、
帰路とは別の方向に歩き出した。

「どこへ行くんだ ?」

「いいから」

しばらく歩くと、そこは川べりだった。
広い川には土手がどこまでも続き

空には息を飲むほどの美しい夕焼けが広がっていた。

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