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自作の小説とイラストで・・・

神になる日

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神になる日 <8>

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割れたカップを拾うカオリの指先をヒカルは見ている
床に赤い滴が落ちる

「母さん・・指が・・」

「え・・ ?」

カオリの指が切れている、カップの割れ口で切ったようだ
カオリはその指からしたたる血をただ眺めていた

「母さん、なにしてんの ? 早く手当した方がいいよ」

「・・・痛くないのよ・・」

「えっ ?・・・痛くないって ?」

「最近、なんか触感が薄れてるの、手だけじゃないわ、
体全体の感覚がなくなっていくみたい・・」

「どういうこと ?」

「物に触ってる気がしないし、誰かに触れられても気づかない・・」

カオリは血に染まった指で、気にすることなくエミの割ったカップを拾おうとする。

「よしなよ、俺がやるから」ヒカルがそれを制した

「・・・なんか・・夢の中にいるみたい・・
ねえ・・ これって夢なの ?」

トントントン

カオリは血に染まった手でスプーンを叩く

トントントン

「母さん、それやめてくれよ」

トントントン

「まだ分かるのよ、このスプーンの冷たさや、手に伝わる振動が・・
でも、日に日に薄れていくの・・その感覚が・・」

ヒカルは母親がスプーンを叩く理由を理解した

「医者に行ったほうがいい」

「行ったわ、大きな大学病院で検査も受けた、でもわからないのよ、その原因が・・・・ねえ、これってきっと夢よね・・・」

「ああ、生きてるなんて夢の中にいるみたいなもんかもね」

ヒカルは小さく笑いながらテーブルに倒された花を掴んだ
冷たい滴がヒカルの指先を伝う

「ねえ、母さん、この花、何色 ?」

「赤よ」

「そうなのか・・・俺はここにある全ての色が分からない・・・」

神になる日 <7>

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水浸しのカーネーションの花びらがエミの瞳の中で揺れる

「味がしない !・・・なんで ?・・・」

トントントン

「あら、おいしそうなシチュー、カオリさんが作ったの ?」
ドクターは赤いカーネーションをそっと花瓶に戻した

「ひと口ちょうだい ?」
ドクターはいたずらっぽく笑った

カオリが微笑む
「エミさんの口に合うかしら ?」

「おいしーい ! 今度作り方教えて、ヒカルくんも順調そうね」

「ああ、ジョージが横須賀を陥とした、いつまでも寝てられない」

「あら、せっかく来たんだから、ゆっくり静養すれば ?」

「うん、ドクターには感謝してるよ、でも、俺にはやることがある」

「わかってる、私たちの仲間は無駄に血を流したわけじゃない、
この国は変わる、あなたの手でね」

「シチューのアフターにミルクティーもなんですけど・・」
カオリが差し出す紅茶にドクターは目を細めた

「いい香り、カオリさんはいつもロイヤルね、宝塚のスターらしいわ」

「先生、シャガーは ?」

「いらない、こんなにおいしい紅茶、もったいないわ」

ドクターは目を細め、そっとカーネーションに手を触れた
エミの指先に冷たい感覚がある、花びらが少し濡れている

「この色、素敵ね」

「そう、血の色さ」

「あら怖い」ドクターが花から指を引いた

「ガキの頃、小遣いをはたいて母親にその花を贈ったことがある、
でも、あいつは喜ばなかったよ、
彼女はもっと華やかな花が好きなんだ、真っ赤な薔薇とかね」

トントントン

カオリの眉が少し動いた

トントントン

「あなたから、お母さんの話を聞くなんて初めてだわ」

「そうかい ? 俺にもう母親はいないよ、少なくとも心の中にはね」

トントントン

「スプーンを置けよ、カオリ」

トントントン

「スプーンを鳴らすのはやめてくれ」

トントントン、トントントン

「やめろっいってるんだ ! 」

ヒカルは彼女からスプーンを取り上げると、壁に向かって投げつけた
壁小さなに亀裂が入る
やがて亀裂は大きく広がり、薄茶色の壁は音を立てて崩れていく
土煙が舞う、
議事堂の出口は、火に炙られた虫のように人が飛び出してくる
かつて閣僚と呼ばれたその者たち・・・
足はもつれ、頭を抱え、砲弾から必死に逃げ惑う

ヒカルの右手が動く度に議事堂は瓦礫へと変わっていく
民衆はそれに呼応し歓声を上げる

英雄は今ここにいる

神になる日 <6>

イメージ 1
 

ヒカルは陽の光の眩しさに目を閉じた
目の中に残る赤い光は、やがて一点に絞られ、そして柔らかく広がっていく。
ヒカルが見たものは真っ白に輝く光
しかし、それは病室で見たそれとは違っていた

窓の外には東京湾の夜景が広がる
窓をかすめるようにいくつものヘリが飛ぶ
マスコミだろうか

ヒカルは白い光を避けるように視線を落とした

「総督、政府からのテレックスです」

「読め」 ヒカルはテーブルに投げ出した足を組み替えた

「<日本国政府は交渉に応じる用意がある>・・・以上です」

ヒカルの口から笑みがこぼれ、やがて高らかな笑い声へと変わっていく。

「聞いたかい ? ジョージ、用意があるだとよ」
ヒカルは手を叩いて笑った。

「ああ、じじい共にしちゃあ面白いジョークだな」

ヒカルは壁に広がるスクリーンを指さし、
幹部に「繋げ、それからテレカメも回せ」と指示した

画面に一人の男が映し出される
ヒカルが言う 「誰だ ?」
男が答える 「官房長官の鳩村だ」

「鳩やニワトリに用はない、えーと、なんだっけ・・総理の・・」
「野館です」側近が耳打ちする

「おお、その野ダヌキを呼べや」

鳩村は一瞬ムッとした顔をしたが、了解したように引き下がった
画面に一国の総理が映し出される

「野館だ」

「ああ、今テレックスをもらったよ」

「そちらの意向を伺いたい」

「えっと・・どんな内容だっけ ?」

短い沈黙の後、総理が口を開く
「政府は君らとの交渉に応じる用意があるということだ」

「応じる ? 用意がある ? 」
ヒカルは再び声を上げて笑った

「おい、タヌキ、おまえ言葉の使い方も知らねえのか、
俺が教えてやる、よく聞けよ
我々は議事堂を戦車で取り囲む用意がある
どうだい ? <用意>ってのはこう使うんじゃないのかい ?」

「君たちはなにをしてるのか分かっているのか !」

「クーデターだろ、他にいいようがあるか ?」

「国家に武器を向けることが、どういうことか分かっているのかと聞いているんだ !」

「その国家を食い物にしたのは、どこのどいつだ 」

「ここは落ち着いて話し合おうじゃないか」

「おまえの背中にあるテレビを見るんだな、貴様のブサイクな顔が見えるだろ、天下の国民放送のカメラを我々は回してるんだぜ、
さて、おまえはそれでも自分達が国家だなんて言うつもりか ?」

「国民の代表は私だ」

「笑わせてくれるねえ、おまえは新聞すら読めないのか ?、
国民は英雄を待ってるんだよ
貴様はその英雄の顔をいま拝んでるわけさ」

「誰が英雄だ ! 反逆者め !」

「おいおい、いいのかい、そんなこと言って、
貴様を民衆の前に晒してもいいんだぜ」

カシャ カシャ カシャ

カメラのフラッシュにヒカルの顔が瞬く

カチャ カチャ 

フラッシュの音は金属音に変わっていく
銀のスプーンがきらめく

景色がゆれていく

トントントン

テーブルを叩く音がする

水に濡れた赤いカーネーションが見える


ヒカルは壊れた花瓶と砕け散ったカップを見つめていた

神になる日 <5>

イメージ 1
 
「お兄ちゃん、また学校サボったんだって」

「そうなのよ、どこが悪いともはっきり言わないし、担任の先生が心配して電話してきたのに起きてもこないのよ」

「まだ寝てるの ?」

「夕べからずっとよ」

「よくそんなに眠れるなあ、現実逃避なんじゃない」

つけっぱなしのテレビは政情不安を流す
リーダーシップの欠如を語る

「チャンネル変えていい ?」 
エミは画面を番組表に変えた
BSの欄に「宝塚」の文字が見える

「ねえ、この人、ちょっとママに似てない ?」

「消して」

「なんで ?」

「いいから消して」

トントントン、母親は素早くリモコンを獲ると画面を切った

「どうしたの ?」

トントントン

「もう、勝手なんだから、テーブルをトントン叩くのやめてよ」

エミはふてくされた様にシュガーポットに手をのばす

「ちょっと、あんたなにしてるの・・」

エミの持つカップからミルクティーが溢れている
エミはかまわずシュガーを入れ続ける

「溢れてるじゃない、なんでそんなに入れるの !」

「だって味がしないんだもん」

ミルクティーはテーブルの伝い、床にこぼれ出す
それでもエミは砂糖を入れ続ける

「ちょっとやめなさい !」

母親がエミの手を押さえた
エミはその手を激しく振り払うと、カップを壁に投げつけた
壁にクリーム色の波紋が飛び散り、床に向かっていくすじのラインを引いていく
テーブルの花瓶は倒れ、赤いカーネーションの花びらは無残にも水浸しになる。

「味がしない ! 味がしないのよ !」

エミは泣きながら叫んだ



どこかでエミを呼ぶ声がする
どこだろう・・・赤いカーネーションの向こうがわ


「ドクター、往診の時間です」

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神になる日 <4>

イメージ 1
 
 
エミはポプラの葉を一枚拾うと読んでいた本に挟んだ。
友人のマミが駆け寄ってくる

「ごめん、遅くなっちゃった」

「うん、いいよ」

「なんの本 ?」
 

「生物工学・・・って知ってる ?」

「ばかね、あたしに難しいこと言って分かるはずないじゃない、
エミは医大志望だったよね」

「とりあえずね」

「他も受けるの ? でもまだあたし達ってまだ一年じゃん、今は遊ぶ時よ」

「そうだね、でもこれが私にとっては最高の遊びなのよ」

「医学なんて面白い ?」

「医学とは違うわ」

「じゃあ、何 ?」

「うーん、そうだなあ・・・人体改造・・・ってか ?」

エミは冬枯れた空を見上げて笑った
「ヴィックス」というカフェの看板が見える

「今日はやめとく」

「え、なんで ? 金欠なの ?」

「そういうわけじゃない」

「かぼちゃのブッシェ、食べようよ」

「最近さあ・・・なんかなに食べても味がしないんだよね」

「うそ・・・マジで ?」


店の前には宝塚の公演のポスターが貼ってある

「あ、この人・・・ウチのママに似てる」

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