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夜は更けていく。
最高のワインの心地よい酔いと、"気が利く奴"
彼はすっかり上機嫌であった。
最愛の妻のいない寂しさなどどこへやら、モニターの男のまさに"気が利く"話し相手に時間を忘れた。
「私の部下がどんなに束になろうと、君ひとりにかなわんな、実に楽しい夜だ」
「それは恐縮です、どうです、こんな夜も悪くないでしょう、私も奥様のいない夜をいかに楽しく過ごしていただくか、それができれば満足です」
「私は遅くに結婚したから子供もいない。わがままな妻だが私にとってはかけがえのない宝だ。
あいつの喜ぶことならなんでもする。
それが私の人生だ」
「よく存じ上げております」
岡部氏はイタリアを満喫しているであろう妻に想いを馳せた。
「おお、そうだ、君は大事なことをひとつ忘れているぞ。
妻へのプレゼントだ。彼女の笑顔が私の最大の喜びだというのを知っているだろう、
何か考えていてくれているかね」
「ハハハ、やはりそうきましたか、もちろんですよ」
「そうか、そうか、さすがだ、それで何を ?」
「正直なところ、私もそれには苦慮しました。だって奥様ときたら、満たされないものはないくらいの暮らしぶりです。ちょっとやそっとのことでは、お喜びいただけないことでしょう。
でも、あるんです、奥様が飛び上がって喜ぶようなことが」
「ほう、ほう、それはなんだね、もったいぶらずに教えてくれ、"気が利く"友よ」
岡部氏の顔が上気する。
「はい、奥様は本当にお友達とイタリアに行かれたとお思いですか ?」
「え・・・?」
「果たして、二十も歳の離れたご主人に満足なさっているでしょうか」
岡部氏の顔が暗転する
「それはどういうことだ」
「奥様はイタリアで今頃、あなたよりはるかに若い殿方と楽しく過ごされております。
その男性とは、もう数年の付き合いがおありになります」
岡部氏の顔がみるみる形を変えていく
「そんなバカな ! !」
「奥様にとっての最高の喜びは、その殿方と一緒になることに他なりません。
それにはあなたは少々邪魔な存在なわけです。
ですから、私のブレゼントとは・・・・・・」
岡部氏は突然、喉をかきむしりだした。
「ご心配いりません、最も苦しみの短い方法を選ばせていただきました。
あと数秒であなたは安らかな眠りにつけることでしょう。
ご帰宅なされた奥様の喜びのお顔をお見せできないのが、私の心残りではありますが、
葬儀の手配も済ませてございます。
あなたはなんの心配もなさらずに、この世を去ることができるのです。
奥様の幸せは約束されました、お喜びください」
岡部氏は既に虫の息であった
かすかに聞こえるその言葉は
「・・・気が利きすぎ・・・だよ・・・」
<完>
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