JOKER

自作の小説とイラストで・・・

【小さなお話】

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全9ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9]

[ 次のページ ]

風になりたい

イメージ 1
 
コーヒーを片手にカレンダーを見てる。

そうね、きょうで5月も終わりね

カレンダーをめくろうとする彼女の手が止まった。
やわらかな風がレースのカーテンを揺らした。
その風に彼女は目を細めた。

外では幼稚園帰りの子供たちの声が聞こえる。
日射しがその黄色い帽子に輝く。

なによりも猫の引き取り手が見つかったのがよかった。
可愛がってもらえるといいなあ、彼女は愛猫の額を撫でた。

行けるかなあ・・・きっと行けるわ

そうよね、記憶があるってことは、そこはあるってこと、
ジャスミンの森、光の束に包まれた、
ずっとずっと子供の頃・・・

二杯目のコーヒーを入れた時、
玄関のチャイムが鳴った。
「すみません、自治会の集金なんだけど、いいかしら ?」
「ええ、おいくらかしら ?」
「350円、50円おつりあるわ」
「あのう・・」  「はい、なにかしら ?」
「一年分払うことってできるかしら ?」
「あらあ、気前のいいこと、もちろんいいわよ」

静かな瞳でコーヒーカップを見つめる。
彼女の頬を風がやさしく触れた。

やさしい風・・そうね・・今度生まれ変わったら・・
こんな風になりたい・・

深い、深い眠りの森、
静かに目を閉じると、光が揺れる、
ジャスミンの香りに包まれる、

生まれたてのヒナを包むような風・・
ジャスミンの白い花が見える・・まぶたいっぱいに・・
体はその白い風に溶けてゆく。


コーヒーカップに入れた睡眠薬は致死量を超えていた。
彼女の白い指先が、静かにテーブルから滑り落ちた。

イメージ 1
 
山道を抜けると、ひんやりとした風が首筋を撫でた。
気の早い蝉の声が滝の音に紛れて聴こえてくる。

男は滝壺をじっと見ていた。
今頃、東京の本社では大騒ぎになっているだろう。
思えば「功をあせった」としかいいようがない。
どうしても奴を出し抜きたかった。
同期で入社したKに昇進で先を越され、課長のポストを持っていかれた。

都市開発の裏話に乗った、上司の承諾もなしに。
この話がうまくいけば、俺は奴と肩を並べられる。
2億の手形を切った。
しかし、まさかその仲介企業が幽霊会社だったとは・・・

死を決し靴を脱ぐと、一匹の狐がじっとこちらを見ている。
左の前足を少しあげている。どうやら怪我をしてるらしい。
俺は今から死ぬんだ。狐の心配などしていられるか。

山小屋の中はひっそりとしていた。
狐の足は折れていた。男は自分シャツを切り裂くと、
その足に添え木をあて縛った。

狐はほどなく回復した。
男は毎日、狐を連れ山野を駆け回り食料を捜した。
山小屋を修復し、いろりを作った。
寒い夜は狐を抱いて寝た。

ただ生きるための日々
朝露の中の水の音
夕暮れに二つの長い影
それはいつも寄り添っていた

いくつもの季節がふたりの前を通りすぎた。
雪解けの春を迎える頃、
残雪の上に二匹の狐の足跡をみつけた。
狐が伴侶を連れて来たのだ。
狐は男に静かに一礼すると、伴侶を連れ山の奥深くへと消えた

男は必死に後を追った。
いやだ、ひとりはいやだ、俺を置いていかないでくれ。
男は叫んだ・・・俺にはお前が必要なんだ・・
俺はまだ生きたいんだ・・・
男の泣き叫ぶ声が山合いにこだました。

気がつくと、男は滝壺の上に立っていた。
男は脱いだ靴をもう一度履き直した。

「もう少し生きてみようか・・」

開く トラックバック(2)

ローレライ <7>

長い沈黙
店は静寂に包まれた
ただ青い光だけが、そこにある
アロワナさえも動かない

「アメリカは・・・」

「アメリカはこんなものを作って、何をするつもりなんですかね ?」
おいらが切り出した

「時代が変わろうとしてるんだよ」
初老が答える

「軍事の時代は、もうすぐ終わる。
アメリカは繰り返す戦闘に、少しは学んだようだ。
軍事は割りに合わないことを」

「中東の話ですか ?」

「冷戦後、アメリカは文字どおり世界の覇権を握るはずだった。
しかし、思惑は外れた。
世界とは経済だ、そのために戦争がある。
戦争に勝利しても、経済が潤わなければ意味がないのだ。
いくら核を多く保有したところで、そこに希少価値がなければ、ただの危険物だ。
それを落すということは、それを落されると同じ意味だ」

「軍事に見切りをつけようとしている、そういうことですか」

「核が真に脅威となるのは、その科学知識と技術だ。
それが安易に、その気になれば、どこでも作れるような物になっては、
もはや脅威ではない」

おいらの手の中のカプセルが鈍く光る

初老は深くため息をついた

「アメリカは、再び戦争を始める。いや、もうすでに始めている。
いまだかつてない安上がりな戦争を、
そして、いまだかつてない恐ろしい戦争を」

「どこで ?」

「アジアだ。ほら、君の手の中にあるじゃないか」

ローレライ <6>

「まさか・・あのインフルエンザはダミーだというのか」

「そのとおり、あれはただの弱い人工ウイルスだよ」

「人工 ? あれも作られたものだというのか」

「そう、ローレライを隠すためにね」

「あれだけの騒ぎをしたものが芝居だと ? 事実死者まで出てるじゃないか !」
おいらの顔がミラーに青く映る

初老は顔色ひとつ変えない。
「そう、騒ぐ必要があったら、敢えて騒ぎにした」

「そんなはずはない、弱いウイルスなら、あれだけの死者は出ないはずだ」

「その死者がローレライによるものだとしたら ?」

「あ・・・・」

いや、信じない・・・おいらは信じない・・
国家が殺人ウイルスの臨床を世界を舞台にするなんて・・・

「それだけじゃない、その前にアメリカはワクチンによる試験も行っている、この日本で」

「ワクチンにも混成させたというのか・・」

「ご存知のタミフルだ。そのいくつかにローレライを忍ばせる。
ローレライはアドレナリンの分泌を遮断する。
それがどういうことか分かるかね。
人間はアドレナリンによって危険に対応する。
心拍を上げたり、筋肉を収縮させたり、

身体反応と感情は同時だ。
身体が危険に反応しなければ、感情はそれに同調しない。
つまり、恐怖という感情が起こらないということだ。
それは高い場所さえも怖くなくなることを意味する。

タミフルによる異常行動は、君も周知のことだろう」

「しかし、タミフルはシロだった。国はその因果関係を認めていない」

「あたりまえだ。事実、タミフルはシロだ。
アメリカが示唆したかったのは、ワクチンでさえローレライを忍ばせることができるということだ」

この店は地下だ
秋風が入り込む場所などない

おいらの背中をすり抜ける、この冷たい風はなんだ・・・

全9ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9]

[ 次のページ ]


.
アバター
ぷり
男性 / AB型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
友だち(13)
  • あすかママ
  • まりん☆
  • HINA
  • evilcutter
  • rar*rar*do
  • パルム
友だち一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

Yahoo!からのお知らせ

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!
話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事