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コーヒーを片手にカレンダーを見てる。
そうね、きょうで5月も終わりね カレンダーをめくろうとする彼女の手が止まった。 やわらかな風がレースのカーテンを揺らした。 その風に彼女は目を細めた。 外では幼稚園帰りの子供たちの声が聞こえる。 日射しがその黄色い帽子に輝く。 なによりも猫の引き取り手が見つかったのがよかった。 可愛がってもらえるといいなあ、彼女は愛猫の額を撫でた。 行けるかなあ・・・きっと行けるわ そうよね、記憶があるってことは、そこはあるってこと、 ジャスミンの森、光の束に包まれた、 ずっとずっと子供の頃・・・ 二杯目のコーヒーを入れた時、 玄関のチャイムが鳴った。 「すみません、自治会の集金なんだけど、いいかしら ?」 「ええ、おいくらかしら ?」 「350円、50円おつりあるわ」 「あのう・・」 「はい、なにかしら ?」 「一年分払うことってできるかしら ?」 「あらあ、気前のいいこと、もちろんいいわよ」 静かな瞳でコーヒーカップを見つめる。 彼女の頬を風がやさしく触れた。 やさしい風・・そうね・・今度生まれ変わったら・・ こんな風になりたい・・ 深い、深い眠りの森、 静かに目を閉じると、光が揺れる、 ジャスミンの香りに包まれる、 生まれたてのヒナを包むような風・・ ジャスミンの白い花が見える・・まぶたいっぱいに・・ 体はその白い風に溶けてゆく。 コーヒーカップに入れた睡眠薬は致死量を超えていた。 彼女の白い指先が、静かにテーブルから滑り落ちた。 |

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