〜春の日の夕暮〜
トタンがセンベイ食べて
春の日の夕暮は穏やかです
アンダースローされた灰が蒼ざめて
春の日の夕暮は静かです
吁(ああ)!案山子(かかし)はないか――あるまい
馬嘶く(いななく)か――嘶きもしまい
ただただ月の光のヌメランとするまゝに
従順なのは 春の日の夕暮か
ポトポトと野の中に伽藍(がらん)は紅く
荷馬車の車輪 油を失ひ
私が歴史的現在に物を云へば
嘲る嘲る 空と山とが
瓦が一枚 はぐれました
これから春の日の夕暮は
無言ながら 前進します
自らの 静脈管の中へです
トタンがセンベイ食べてって?
アンダースローされた灰が蒼ざめてって?
この表現こそ多分ダダイズムの典型なんだろうと思います。
意味合いよりも語呂合わせの面白さ、この不思議でリズミカルな言葉たちは最高の形容詞となって詩を締めくくっています。この詩は、不思議と覚え易くスラスラと頭に入ります。計算し尽くされた表現力豊かな一作。
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