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次に、出場各国のスタッツを分析してみます(インドは実力が劣るため対象外)。アジアでは「パス数は強さの目安となりうる」との考えに基づき、日本以外のチームは1試合平均のパス数の順に並べました。
 
イメージ 1
 
*すべて1試合平均のデータ。延長戦は1/3試合として計算。
*「距離○」、「スプリント○」は、走行距離、スプリント数が対戦相手より上回った試合数を意味します(例えば、日本の場合、6試合中5試合で走行距離が上回り、4試合でスプリント数が上回ったことを意味します)。「支+距○」は、支配率も走行距離も対戦相手より上回った試合数を意味します。
*「東アジア平均」は、日本・韓国・中国・北朝鮮の平均。「中東平均」は、サウジアラビア・クウェート・バーレーン・イラン・イラク・シリア・カタール・ヨルダンの平均。
*オーストラリアと韓国の「枠内S」と「クロス」は、格下のインド戦の数値が含まれるため、割引が必要です。
日本
 意外にもパス数はウズベキスタンに次いで2位でしたが、2試合で退場者を出したことを考えれば仕方ないかもしれません。枠内S・クロス・走行距離・スプリントは特筆すべき数値ではないですが、6試合中5試合で相手より走行距離が上回っていて(唯一下回ったのは韓国戦)、この相手より多い運動量が日本の強みの1でしょう(オーストラリア戦分析で示したように、大事なのは走行距離そのものではなく、対戦相手より走れるかどうかです)。
 また、全試合で支配率が上回っていることから、日本のポゼッション・運動量はアジアではダントツと言えます(支配率・走行距離がともに上回った試合「支+距○」を見ると、日本以外で2試合以上該当しているチームは、韓国・北朝鮮・ウズベキスタンの3チームしかありません)。
 今大会、支配率も走行距離も上回ったチームの成績は1132敗。南アW杯では16103。このデータを踏まえれば、アジアにおいては、ポゼッションが高く運動量の多い日本の地位は当分不動ではないかと思います。少なくとも、韓国・オーストラリア以外に負ける可能性はかなり低いはずです。
ウズベキスタン
 パス数の多いウズベキスタンはアジアではモダンなサッカーをやっていると言えます。準決勝・3位決定戦で大量失点しましたが、クロス・スプリントが多く、攻撃力はアジアトップレベルと言えます。守備力が上がれば、厄介な相手になるでしょう。
サウジアラビア・UAE
 今大会ではまったく良いところのなかった両チームですが、パス数はオーストラリア・韓国よりも多く、決してレベルの低いチームではないはずです。特にサウジアラビアのパス数は日本と大差ないため、やはり実力のあるチームと言えます。
 この2チームの問題点は運動量が少ないこと。ともに走行距離で上回った試合はなく、スプリントはワースト1位・2位です。パスは回せるだけに、運動量を増やせば復活してもおかしくありません
オーストラリア
 パス数は少なくないですが、支配率は低く、また、インターセプトやタックルが少ないのが特徴です。ロングボールと高さを生かしたセットプレーが攻撃の中心で、あまり攻撃に人数をかけないため、失点が少なくなっています。アジアではそう簡単に2失点以上しないでしょうが、若手が少ないため、今より強くなる可能性は高くないと思います。
韓国
 1試合平均の走行距離は2位、かつ全6試合で走行距離が相手より上回っていて運動量が非常に多いチームです。支配率も高く、有能な若手も多いため、日本にとって、やはり最大のライバルと言えるでしょう。
クウェート
 支配率は高めですが、走行距離がダントツで少ないのが問題です。サウジアラビアやクウェートと同じで、運動量を増やせば手強い相手になる可能性はあります。
中国
 支配率は低く、クロスも少なく、運動量も特別多くなく、攻撃力は低いと言えます(今大会の全得点はセットプレーによるもの)。今大会は若手中心だったようなので、W杯予選に向けて伸びしろはあるとしても、現状では取るに足りない相手と言えるでしょう。
北朝鮮
 北朝鮮の特徴は何と言っても運動量が多いこと。1試合平均の走行距離はトップで、全3試合で走行距離・スプリントで相手を上回っています。タックル数も多く、今大会では2失点しかしなかったように、守備は非常に堅いチームです(イラン戦では01と負けたものの、被シュート数はわずかに3本)。
 3試合とも支配率も上回っていたため、本来なら決勝トーナメント進出を果たしていてもおかしくなかったわけですが、それができなかったのは、1点も取れなかった攻撃にあります。枠内S・クロスは非常に少なく、支配率の割に攻撃の手数が少ないです。体力はあっても技術はないと言えます。
 アジア屈指の運動量を誇るため、日本や韓国といえども苦戦するのは仕方ありません(過去の対戦でも北朝鮮からはそれほど点を取れていません)。
 面白いのは、同じ民族である韓国も運動量が多いことです。走行距離の平均では1位・2位を占めるだけでなく、全試合で対戦相手を上回っています。
バーレーン
 支配率は高めで、スプリントが多くなっています。1次リーグではオーストラリアに善戦し、一定の力を持っているとは思いますが、試合を見る限りは、パスやシュートなどの基本的な技術に難があるようです。
イラン・イラク・シリア
 3チームとも似たようなデータです。運動量がそこそこあるのが、善戦した理由のように思えます。この3チームの中ではパス数の多いイランが一番強いでしょう。
カタール
 カタール戦分析 で示したように、カタールは運動量が非常に少ないチームです。1試合平均の走行距離・スプリント・支配率はともにワースト3位以内結局、帰化選手に頼っているだけのチームです。
日本戦は相手より1人多いにもかかわらず、走行距離で日本に劣りました。22と追いつかれたときも、ピッチ上で味方を鼓舞する・まとめるような選手は見当たりませんでした。
結局、カタールはお金を持っているというだけで、2022年の地元開催までに自力でW杯出場を達成する可能性は、まずないでしょう。
ヨルダン
 1次リーグは21分け。日本から勝ち点3を取る寸前まで行きましたが、パス数・支配率はワーストで、枠内S・クロスも少なく、スタッツは貧弱です。そのヨルダンがベスト8に進出できたのは、運動量の多さにあります。中東8カ国の中で、走行距離は1位、スプリントは2。さらに、4試合中3試合で走行距離もスプリントも相手を上回っています
支配率が低いので、この運動量の大半は守備時のものですが、これは南アW杯の日本の戦い方とよく似ていますW4試合での日本の平均支配率は42%。うち3試合で相手より走行距離が上回っています。日本もヨルダンも、守備時(相手がボールを持っている時)に必死に走っていたわけです。この戦い方は、各上相手に善戦することを可能にしますが、勝つためには数少ない得点チャンスを生かす必要があります。また、メンバーを固定した場合に疲労しやすいため、W杯やアジア杯のような短期決戦では、タイトルを取るのは難しく、せいぜいベスト816止まりです。 
中東勢低迷の理由
 上の表では、「東アジア平均」と「中東平均」を出していますが、走行距離スプリントに注目して下さい。
 1試合平均の走行距離・スプリントはいずれも、東アジアが上です。また、東アジア4カ国は、18試合中16試合で相手より走っている一方で、中東8カ国は、31試合中10試合しか相手より走っていません。スプリントも中東は大きく劣っています。支配率と走行距離がともに上回った試合については、東アジアの18試合中11試合に対して、中東は31試合中わずか3試合だけです。
 つまり、体格では東アジアに劣らないはずの中東が勝てない理由は、運動量が少ないことにあると言えるのではないでしょうか。
 中東勢は支配率でも劣る以上、アジアでは東高西低が続くはずで、日本・韓国・オーストラリアのW杯予選突破はほぼ確実でしょう。北朝鮮は、その運動量を武器に、前回大会に続いて滑り込む可能性は十分あるはずです。
 
 中東勢の序列については、ヨルダンやシリアというどちらかと言えば弱小と思われていたチームが健闘し、サウジアラビアやガルフカップ優勝のクウェートが惨敗したことで、勢力図が変わったのではという味方あるようですが、私はそうは思いません。結局は運動量の差です。1次リーグで敗退した中東の5チーム−サウジアラビア、UAE、クウェート、バーレーン、シリア−は、シリアを除けばいずれもパス数は中東上位ですが、走行距離が相手より上回ったのは、全15試合中1試合だけです。
上で分析したように、ヨルダンの戦い方はしょせんは弱者の戦術です。シリアやカタールを含め、将来性のある戦い方ではなく、相手を苦しめることはあっても、とてもW杯予選を勝ち抜く力はありません。
 パスをつなげる、サウジアラビア、UAE、クウェート、そして韓国やオーストラリアに善戦したイラン・イラクの方が、やはり実力は上ではないかと思います。

閉じる コメント(6)

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勉強になりました。詳しい調査ありがとうございました。

2011/2/8(火) 午前 4:06 [ Ichiro ]

ご覧頂きありがとうございました。

2011/2/8(火) 午後 11:21 PRO-3

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中東勢が走れないのって気候が関係してるんでしょうかね。それとも単なる実力なのか。
あと協会も機能してなさそうだし恐れる存在ではなさそうですね(それでもいつもドラマティックなのがアジア杯w)
今回ウズベクのみでしたが西アジアのほうが不気味ですね。近隣のロシアW杯に向け強化してくるだろうし。
ただこっちには金がないのか?w

2011/2/9(水) 午後 10:54 ビースト

南アW杯の走行距離を調べてみると、アフリカの運動量が少ないことがわかったので、多分気候のせいだと思います(これについてはまた記事を書きます)。中東の場合は、結果が出ないとすぐに監督を替えてしまうので、「走る」文化を根づかせることはできないでしょうし、恐れることはないと思います。ウズベクはW杯予選突破の可能性がありそうな気がします。

2011/2/10(木) 午後 9:25 PRO-3

走れない、監督がすぐに替わるというのはアフリカだけでなく中東にも共通するんですね。
アフリカは枠が与えられていますが西アジアでは枠が与えられていないですし厳しいのは当然でしょうね。
個人でそこそこの選手が仮に出てきても勝てないんでしょうね。アフリカを見る限り。

2011/2/10(木) 午後 11:17 貴公子

現状では中東はプレーオフにまわるのが精一杯ではないでしょうかね。サッカーはやっぱりチームスポーツであることを痛感します。

2011/2/11(金) 午後 6:30 PRO-3


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