平成22年8月23日 社会保障審議会介護保険部会(第29回)
委員の井部俊子(日本看護協会副会長)から、
「医療依存度の高い在宅療養者を支援する小規模多機能型居宅介護の提案」
というものが出た。
医療依存度の高い在宅療養者の生活を支えるためには、従来の訪問・通いの在宅サービスに加え、病態の変動時や家族のレスパイトに対応できる、宿泊機能を持ち合わせたサービスの充実を図ることが不可欠である。
というのが主旨だ。
このことから医療依存度の高い人々が最期まで在宅療養生活を継続できるよう多面的に支援する、24時間体制の「看護サービス」(介護サービスではなく看護サービス)を加えた、小規模多機能型居宅介護を提案している。
概ね、「我が意を得たり」の内容であるし、そのことは既に実践してきている。
ただ、24時間の看護体制(訪問看護を含む)ということになれば、夜勤看護職員が必要になる。
いったい、何人の看護職員が必要になるのだろう。週1回の夜勤としても、7人の看護師が必要になる。
井部女史は、管理者を看護師にするべきだと言っている。(ウチも管理者は看護師だが・・)
管理者である看護師に毎日夜勤をしろと言っているようにさえ聞こえる。
少なくとも、管理者がオンコール体制でその義務を負うべきだと聞こえてくる。
ただ、この提案には問題がある。
管理者が看護職員との兼務ということであれば、問題ないだろうが、看護職員としての事例ではなく、管理者専従であったり、介護支援専門員との兼務であった場合、その管理者が積極的に看護業務を行うのはいささか問題がある。
実はこの考え方は、ばかばかしいとは思っているのだが・・
実際には、指定だったり指導だったりの場面では、かなり問題になるだろう。
本題はここからだ。
いったい何人の看護職員を配置すれば基準をクリアできるかである。
現在の小規模多機能型居宅介護では、看護職員は非常勤で常勤換算に関する規定もない。
したがって、週に1日でも勤務していればいいし、極端な話、週1回1時間でも良いと言うことになっている。
むろん、業務に支障がなければの話だが・・・。
今現在、ウチの小規模では、2名の常勤看護職員と基礎資格が看護師のケアマネ兼管理者、非常勤の看護職員がいる。
こんな、小規模多機能型居宅介護は、稀であると言っても過言ではない。
そこを評価してくれるのはうれしいのだが、これ以上はとても無理である。
まず、看護職員の採用については、ものすごく厳しい状態になっている。
ほとんど採用できないのが、現実だろう。ウチはそう言った意味では恵まれているほうだろう。
聞くところによると、東京では、人材派遣会社を通じて採用するに当たり、
「個室の寮を用意して欲しい。」とか、時給は2千○百円だとか言うことである。
つい最近、ウチでも人材派遣会社を通じて、看護師を採用しようとしたところ、派遣で時給2600円(正看護師パート)、准看護師でも時給2500円だった。
紹介派遣でも、年収の30%が派遣会社の手数料である。
本人への総支給額が月額30万円だとしよう。賞与は年、3.5ヶ月とする。
そうすると、その本人の年収は、4,650,000円になる。
それに紹介手数料が、1,395,000円かかる。
合わせて、600万円を超える。
以前にも書いたが、当社の小規模多機能型居宅介護の月の総売上は、ほぼ600万円を超えたくらいである。
そうした場合、この看護職員一人が、一ヶ月分の総売上を持って行ってしまう。
これを、3人雇うとしたら、その年の総売上の4分の1が、看護職員の給与になってしまう。
小規模多機能型居宅介護の介護報酬単価を、いくら上げても追いつけないだろう。
結局は、絵に描いた餅にしかならない。
24時間体制の看護サービスというのなら、オンコール体制の方法で、
現在の訪問看護の24時間連絡体制加算を・・
ということになるのだろう。
それなら、既に、やっている。それが現実的な範囲だろう。
もう一つこの提案で気になる点は、
訪問看護を小規模多機能型居宅介護に取り入れようとしているところである。
確かに、小規模多機能型居宅介護を運営していて、訪問している職員が看護職員であるにもかかわらず、訪問先で「医療行為」を行うことができないのは、不便だとは感じる。
だが、それを制度的に認めてしまうと、際限なく、訪問看護を求められる事になり、訪問担当者は、看護職員にしなければならなくなってくるだろう。
ケアマネジメントの中で必要性を検討した上でのプランであることは、承知しているが、全ての利用者が重度の医療依存度であった場合、自ずと訪問看護が求められる。その数は、訪問看護ステーション一つを作るに匹敵するほどの看護職員の配置が必要となってくる。
これは、現実的ではない。
上にも書いたとおり小規模多機能型居宅介護を含めた「介護分野」の「看護職員」になろうとする看護資格者は本当に一握りなのだ。
机上の空論としか言い様のないものだろう。
「小規模多機能型居宅介護」というサービスをどう捉え、どのような方々を対象として、その運営を行っていくかを経済的な面からも、雇用の面からも捉え、多角的に分析する必要があるだろう。
現に、医療依存度の高い利用者さんもお断りしない姿勢で臨んでいるウチの小規模多機能型居宅介護でも、全ての利用者さんが、重度の医療依存度であっては、成り立たない。
軽い人もいれば、重い人もいる。通いたい人もいれば、通いたくない人もいる。
そう言った、種々の利用者のニーズのバランスの中でしか、小規模多機能型居宅介護の定員基準や法令遵守は、なしえないだろうとおもう。