教育学者がやってみた、PTA会長日記

教育学者ですが、子育ては素人同然。そんな私がどうしてPTA会長に?!

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 タイトルは刺激的ですが、若者の素晴らしいところも併せて書いています。一応、作者の主張に対するフェアな印象は持ちました。

 けれど、問題は方法論です。何人かの若者にインタビューを試み、その結果をもって今の若者はこういう考え方だ、というアプローチにどれだけ統計的有意性と信頼性があるのでしょうか。

 つまり、「近頃の若者」の母数は厖大なはずです。その彼らの生態を知るために、おそらくはたかだか百人位の若者を選んでインタビューしただけの話です。しかも、被験者の選び方も多分無作為ではないでしょう。

 「近頃の若者」について論じたいのなら、その母数に見合った、もっと大規模で真っ当な調査をしなければ。インタビューはそれに付加する、「肉付け」的な利用法が適当かと。

 この種の本は、結局は学術ではなくマーケティングかエッセイの部類です。その意味では、本書がなかなか興味深い読み物であることを否定はしません。

 同年代の学者として敬愛する、東大の本田由紀氏。同氏による話題の本が出ました。副題は「若者、学校、社会をつなぐ」です。期待通り多くの示唆に富む、非常におもしろい1冊でした。何よりも、このタイトルにあるような問題意識、目の付けどころが素晴らしい。脱帽です。

 著者は「若者と仕事」(2005年)のような本も書いていますから、そこから発展した問題意識がこのような形へと昇華したわけですね。ひとつのテーマを追いかけ、深化させるというのは大事なこと。彼女だからできた仕事だと思います。

 最初に、「あらかじめの反論」というところから始めているのもいいと思います。こういう、ありきたりなことを言って難癖つける人って本当に多いんですよね。それらを最初に撥ねつけ、「この本はそんなステレオタイプの議論はしないよ」と宣言したのは、全く著者らしいやり方です。私は好感が持てました。

 さらに本書が素晴らしい点は、「問題だ、問題だ」と騒ぎ立てるだけでなく、しっかりと解決策まで提示していることです。学者ですから、何かと問題かを指摘するのは得意なのですが、高見からの言いっ放しで終わっている本のどれだけ多いことか。職業高校の復権というアイデアは私も以前から考えていたこと。全く同感ですね。

 ただ、理想的な教育を実践しているという高専の説明のところは、正直よくわからなかったです。素晴らしい生徒が出ているのは、確かに好ましい傾向かもしれませんが、こうした若者が育っているのは、果たして著者の薦める教育方法のおかげなのか否か。万歳と叫ぶ前に、もう少し冷静な分析が必要だと思いました。

 この著者、ノーマークだったのですが、ちょっと感激し、そして驚きました。ここまで考え方の似ている人がいるのかと。岡本薫さん。元文部科学省のキャリア官僚で、現在は政策研究大学院大学の先生です。

 特に、教育の目標はその達成度が計測可能なものでなければならないというところには、「そう、その通り」と思わず膝を打ちました。つまり、多くの学校が打ち出している「知徳体にすぐれた子どもを育てる」なんてのは、教育目標ではなく単なるスローガンです。

 もちろん、ところどころ???と思う箇所もありましたよ。それに、官僚時代に何故それ(岡本さんの思うこと)ができなかったんだろうとの突っ込みも可能ですし。だけど、教育について枝葉末節の議論をするなという基本的な方向性は私と全く同じ。本当に驚きです。

 加えて、文章がお上手です。???な表現や語彙がなく、読んでいて全くストレスを感じませんでした。この一事だけをもってしても、著者の知的レベルが高いことがうかがえます。是非一度お会いして、お互いじっくりお話したいものです。

 著者はジャーナリストで、中学受験をずっと追いかけている清水克彦さんです。ラジオ番組まで持っていらっしゃるとか。興味津々で読んでみました。

 同様の類書を読んだ身としては、本書の中に情報として特に目新しいものはありません。その点がちょっと残念でした。まあ、子どもの成績が悪かった時ほど、豪勢な場所に出かけるというのは参考になりましたが。

 父親は子どもの精神的サポートに徹する、ということなら良かったのですが、間違い箇所のプリントを独自に作るなど、結構父親が前面に出て積極的に関わっているケースも紹介されてます。仮に息子が受験するとしても、私はここまで・・・・・できないな。

つながり格差

 11月30日(月)の日本経済新聞に、大阪大学の志水先生が書いた「学力格差は『きずな』の差」という興味深い記事が出ていました。志水先生は、数多の教育学者の中でも、私の知る限りかなり良心的な方で、以前からその仕事ぶりには心からの敬意を払っています。

 記事の冒頭で、先生は昨今の学力格差論争に疑義を提起します。すなわち、学力の格差は経済格差から来るものが果たして全てなのかというのです。その例として、全国学力テストで秋田県が全国1位になったこと、その反対に大阪府が凋落したことを挙げます。

 先生の結論を先に言ってしまいます。志水先生によれば、学力格差が生じる要因を詳細に分析したところ、次の3つの指標が大きく影響しているということです。その3つとは、1)持ち家率、2)離婚率、3)不登校率です。この中で、持ち家率はやはり経済格差とも関係あるような気がしますが。

 先生の推論では、持ち家のある人は地域とのつながりがあり、離婚をしていない両親のもとでは家庭とのつながりがあり、不登校になっていない人は学校とのつながりがある。だから、つながり或いはきずなという言葉がキーワードだとのことです。なるほど。じゃ、どうすればいいんでしょう?

 先生によると、「答えはいたってシンプル」だそうです。要するに、「『つながり』を・・・中略・・・再構築していけばよいのである」「近隣社会における顔の見える関係をつくり上げていくこと、家族のだんらんを取り戻すこと、教師と子供たちの信頼関係をよりよいものにしていくこと」。うーん・・・。簡単に言ってくれますねえ(笑)。

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