安倍晋三首相は一月三十一日の衆議院本会議で、日本共産党の志位和夫委員長が二十年前に発表された河野洋平官房長官(当時)の談話の扱いについて問うたところ、「首相である私からこれ以上申し上げることは差し控え、官房長官による対応が適当だ」と述べました。
この談話は、皆様もご存知の通りいわゆる「河野談話」と呼ばれ、従軍慰安婦の強制性を認めて謝罪しようとしたものですが、その根拠となる歴史的証拠は何一つ発見されておらず、いわば数人による曖昧な証言だけでわが国の有罪を長官個人で決定づけたようなものです。
河野談話の見直しに言及していた安倍首相が明言を避けたように見えることに対し、お怒りの方もおられるでしょうが、この答弁の中で首相は「これまでの歴史で多くの戦争があり、女性の人権が侵害されてきた。慰安婦問題についても、筆舌に尽くしがたい辛い思いをされた方々のことを思うと非常に心が痛む。この点については歴代総理と変わらない」と述べ、事実確認がされていない「従軍慰安婦」という造語は一切用いていません。
安倍首相は、日韓併合条約下の現韓国に当たるところで生まれ育った先人たちに対しても、私たち日本本土で艱難辛苦を味わった先人たちに対するのと同じ目線でそのご苦労をねぎらい、心を痛めていると述べました。これは、欧米などでは滅多に見られない崇高な発言です。
私はこの態度で「正解」だと思います。外交・安全保障上看過できない問題が日韓間にあり、対立するならまだしも、政治家が口を挟むべきではない歴史問題(史実の解釈が個人的体験と絡んで複数あるのは当然のこと)で対立が繰り広げられるほど不毛なことはありません。
安倍首相はこの答弁をもって河野談話を見直したと申しても過言ではないのです。二十年前に選択された政権に於いて官房長官が発した造語にとらわれず、それを踏襲するかしないかを報道記者たちに問われ続けた負の連鎖からわが国の政治を解放したと言えましょう。
対韓・対中の外交姿勢を使い分けている現状と合わせても安倍首相は実に巧妙になっており、徹底批判で倒閣するにはあまりにも、或いは愉快なほど手ごわい相手となった印象を受けます。
私は、本来国会議員のなすべき職務以外の思想に関する言葉遊びで頭が一杯に見える安倍首相を過去二度にわたって徹底的に批判しましたが、外交・安保の大戦略を構想して予算と法に向き合う現在の安倍首相は実にご立派です。
占領統治体制を保守することから脱却し、私たちもこの好機を逃さず、わが国の存在意義を一層高めていこうではありませんか。
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