MY FIRST・・その後
薄く目を開けると・・見慣れない天井が見えた・・・・。まるで、あの時あなたに初めて出会ったときのように。だけど、あの時と違うことはあなたの瞳がそこにないことだった。
体中が痛む、俺は死んだんじゃなかったのか?俺はまだ息をしているのか?
俺はまだあなたを思い出すことができるのか?
「気がついたの?」声の主はあなたではなかったが、懐かしい思いのする声だった
声の主に目を向けると・・・そこには品のいい年配の女性が立って微笑んでいた。
「うちの人が、あなたを見つけて・・・病院に運んだのよ。でも、死んでしまうかと思った
出血が激しくて。お医者さんももうだめだと言ったのだけど。可能性があるのなら助けて欲しい
とお願いしたの、丁度私と血液型も同じだったし。」
俺は、頭の中が整理できずにいた。ただ、ぼんやりとその人を眺めるように自分に起こったことを
思い出そうとした。
「ありがとうございます・・・助けてくれて、今はそれしか言えないけど」
その人は、首を振りながらそっとタオルで俺の顔を拭きながら
「いいのよ、私たちには子供がいないから・・・・丁度あなたを見たとき、ああこのくらいの息子が
私たちにいてもおかしくないのにって。そう思ったら、助けなきゃいけないって必死だったの
でも良かったわ、目が覚めて。まだ元気になるまでは時間がかかるけど、若いものすぐ元気になるわ」
その人は、優しく笑って。眠りなさい・・・と俺の頬をそっとなでた・・。
目を閉じると、吸い込まれるように眠りの世界に俺は入っていく・・・・。
あなたが見える・・・。あなたは寂しそうに遠くを見つめている・・・・。
何を考えているの?誰のことを思っているの?
あなたは、幸せなの?
俺のことはもう忘れたの・・・それともあなたの記憶の中にまだ、俺のことは残っているの?
子供の頃から気づけば一人だった、それでも生きていくためには何だってした。盗みもした・・・。
誰も、俺を助けてはくれない・・・・
誰も、俺を愛してはくれない。
そう、思い続けてきた。だけど、RYOUは俺を助けてくれた・・・。
俺に生きるための術を教えてくれた・・。
俺は、何も人生に期待をしていなかったから、ただ俺を初めて助けてくれたRYOUのために何でもしようと思ったんだ。
だけど・・・。あなたを初めて見たとき・・。心配そうに俺を覗き込むあなたの瞳を見たとき。
俺は、生まれて初めて人生に期待をした・・・。
あなたに、愛されたい・・・。
あなたを、愛したい・・・。
それが、どんなことなのか自分でもよくわかっていた。RYOUのことは裏切れない、だけどそれよりも
あなたの愛が欲しかったんだ・・・。ただ・・・それだけだった。
寂しそうに、あなたは・・・・ただ遠くを見つめている・・・・
再び、目を覚ますとそこにはあの人のご主人らしい男性が座っていた。
「うちの奴が、あんたが目が覚めたと言ったから来たんだ・・・。良かったな命を失わずに・・
いや、何があったかは知らんが。生きていると言うことは、神様がまだまだあんたにやらなければ
ならないことを、残しているって事だよ。何も心配せんでいい。わしらのおせっかいだと思って
しっかり身体を直すといい。」
どうやらその男性は、あのヘリポートのある建物を管理している会社の人だったらしい。
ヘリポートを使う予定がなかったのにと思い、見に来たら。そこで、倒れている俺を見つけて病院に運んでくれたということをポツリポツリと話してくれた。
「私たち夫婦は、他に誰も家族がいないんだ・・・だから気兼ねすることはない。退院したらしばらく家にいればいい。」
「どうして・・・そんなに、親切にしてくれるんですか・・・俺は、そんなに人に親切にしてもらう
ような生き方をしていないし・・・俺は・・・」
「何も、言わんでいい。あんなに、必死にお前を助けたいと言ったうちの奴のあんな姿を初めて見た。
いつも、おとなしい。。ただ、黙って微笑んでいるだけの奴がな・・・・きっと、あんたの姿を見たとき
何か感じるものがあったんだろう。私は、あいつに今まで何もしてやっとらん、あんたの為というより
あいつの為と思っているんだ」
そして・・・・2ヶ月の入院ののち、その夫婦の家でしばらく暮らすことになった。
生まれてはじめての、穏やかな日々。朝起きて、誰かが作ってくれる食事をして
そして、体が治った頃、ビルの管理の仕事を手伝うことになった。
俺は、時々あなたと会うはずだったあの場所に行くようになった。
あなたは、あの時来てくれていたのだろうか
あなたに渡すはずだった、あの指輪はなくしてしまったけど
あなたは、俺を思い出してくれているだろうか
会社の集まりの帰りに、偶然寄ったバーで。RYOUの部下だった男が話しているのを聞いた
俺のことは、死んだと思っているらしいのでまったく気づいていなかった。
前々から抗争があった組の男との会話で。どうやら、裏切りの話をしているらしい。
RYOUの命を明日の夜狙うというものだった。
「明日、奴の女房の誕生日で二人でコンサートに行くらしいその時が狙い目だ」
奴の女房・・・・あなただ・・・・
RYOUとあなたを奴らは狙おうとしている・・・。
助けなければ・・・・・RYOUを?あなたを?
RYOUは俺の命を奪おうとした・・・・
RYOUはあなたを俺から奪った、いや、あなたを奪おうとしたのは俺だ・・・
だけど、RYOUあなたは俺を助けてくれた、俺に生きる術を教えてくれた。
たとえ、俺の命を奪おうとしたあなたでも・・・俺は、RYOUあなたを助けなければならない。
次の日、俺は地下室の昔のねぐらに向かった。部屋は何も変わっていなかった
あの日、必要ないと思って置いて行ったピストルもそのまま机の上にあった。
そこは、時が止まっていた。
俺は、ピストルの弾を確認していつものようにジーパンと背中の間に差し込んだ。
何のため、わからない・・・・
RYOUを助けるため、あなたを助けるため・・・・・
そして、俺自身のため・・・・・
コンサート会場に向かうと、久しぶりにみる。あなたの姿。
あの頃より、また少し痩せたようだった、消えるような美しさで
RYOUに寄り添っていた。
きっと、RYOUはコンサート会場を早めに後にする。
スタンディングオベーションの中を出てくるだろう。
きっと、その時狙われる。
どこだ・・・俺は、隠れていそうなところを探した。
コンサートが終わる時間になってRYOUとあなたがでてきた。
その時、二人を狙う銃口を見つけた。
「RYOU!!!伏せて!!!」
俺は飛び出して行った・・・RYOUは驚いたようにあたりを見渡し
俺の姿を見ると大きく目を見開き、そして自分に向けられている銃口が
裏切りだと気づくと、とっさにRYOUはあなたをかばった
そして、銃口から飛び出した玉はRYOUの背中を貫いた・・・
俺は、夢中で飛び出し裏切り者を撃った
「RYOU・・・しっかりして!!!」
「お前・・・・生きていたのか」
「RYOU・・・しゃべらないで」
あなたは、RYOUの肩を抱きしめて泣いている。
「HARUKI、HITOMIはなお前のことを忘れちゃいない・・・
俺のそばにいても、考えていることは、お前のことばかりだ
HITOMIの記憶の中で・・・お前は生き続けていた・・・・お前は生きていたんだ。
お前を、殺せば・・・・忘れ去ると思っていた。だけど逆みたいだったな・・・・」
あなたは、首を振りながら、そんなこと・・・と泣き続けた。
「HARUKI・・・・俺はお前を消そうとしたのに。助けに来たのか?・・・・
HITOMIは、お前のものだ・・・・俺は、どうやらダメみたいだ・・・
俺にも・・・HITOMIという弱点があったな・・・・・言っただろ・・・人を愛するということは
弱点を一つ作ることだって・・・・」
RYOUはフッと笑い、苦しそうにあなたを見つめ・・・・・逝ってしまった。
あなたは、悲鳴とも叫びともつかない泣き声をあげて・・・RYOUを抱きしめていた。
「さあ、早く逃げよう・・・・」
俺は、RYOUにすがるあなたの手を握り走り出した。
あなたを、ひどい目にあわせたくない。その一心だった・・・・。
きっと、俺の地下室の部屋は見つけられるだろう・・・。
俺は、あなたを夫婦の家に連れて行った。
チャイムを鳴らすと
「遅かったのね・・・・」とあの人が出てきた・・・
「HITOMI・・・・・」
あの人は、あなたの顔を見ると驚いたように目を大きく開いた。
何故、あの人がどこか懐かしい思いをさせたのか・・・・。
あの人は、あなたの十年以上前に別れた母親だった・・・・・。
何年離れていようと、あなたを忘れたりしないと・・・
何年会えなくても・・・あなただとすぐにわかると・・・・。
あの人は泣き続けた。
そして・・・しばらくの間、夫婦とあなたと俺の生活が続いた・・・・
そして、あなたは一人海外に行くと告げた
「どうして、やっと穏やかな生活を手に入れることができたのに・・・・」
あなたは、優しく微笑むと・・・
「幸せだったわ・・・、あなたと暮らせて・・・だけど、私は行くわ・・・」
「どうして・・・俺のことを愛していないの・・・」
「愛している・・・・愛しているわ・・・・言葉では表現できないくらい、あなたのその目も
口も鼻も全て、この世の中で一番愛している・・・二度とこの世の中で会うことはできないと思っていた二度とあなたをこの手で抱きしめることはできないと思っていた・・・」
「だったら・・何故」
「あなたを、愛すれば愛するだけ・・・RYOUのことが思い出されるの・・・・RYOUのことを
記憶から消すことができない。彼はまだ・・・生きているの・・・あなたに見つめられると
あなたに対する愛しさの分だけ・・・・RYOUが私を離そうとはしない・・・」
あなたは、泣きながら続けた・・・・
「だから、私は二人から離れなければならないHARUKIあなたとも・・・・
でも、あなたのことを愛していると言うことを告げられて良かった・・・・
私が・・・あなたのことだけを思って一番幸せだった瞬間は・・・
あなたを待っていたあのわずかな時間だったわ・・・・」
あなたの、狂おしい決断を俺は黙って受け入れるしかなかった・・・・
俺は、あなたを愛し続けるだろう、このまま会えなかったとしても
たとえ、あなたの記憶から俺のことが消し去られたとしても。。。。
そして、、、俺は伝えたい
『人を愛するということは 人を強くすることだと・・・・』
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