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面会の連絡を受けて・・・看守を見ると、看守は早くこっちへ来いというように手招きをした。
カンベはゆっくりと立ち上がると看守の後に続き、そしてその扉が開かれた・・・・・
扉が空くと、ガラスの前に座っている奴よりさきに・・・・その向こうの小さな窓から差し込む光が目に入り
カンベは懐かしさを感じ・・・・そして、ガラスの前に座っている男に目をやると椅子に座った。
「どうした・・・今度は囚人の役でもやるのか?」
相変わらず・・・すかした男だ・・・・
刑務所に面会に来るっていうのに・・・どこか撮影のセットにでも行くようだ・・・
「それは・・・ごめんだな・・・」
スタがそういって苦笑いするのを見てカンベは
「だろうな・・・・ヤクザでいることよりも・・・決して楽しくはない・・・」
そりゃそうさ・・・酒もない・・・女もない・・・・仲間も・・・・
スタは呆れたように
「わかっていて・・・やったんだろ?」
カンベは、スタの目の中に切なそうな光をみておかしくなった・・・
お前・・・
「お前だって・・・わかっていてやることもあるだろう・・・・」
カンベはスタの顔をまじまじと見ながら言った。
「でも・・・俺は本当に人は殺さない・・・・」
カンベは、スタの言葉に・・・だから言っているじゃないか・・・・
スタがはじめてカンベに映画に出ないか?といって誘ってきた日のことを思い出しながら。。。
「そこが・・・お前ら、真似をしているだけの奴・・・ヤクザの違いだよ・・」
そう・・・それでも、俺はその世界に憧れていた・・・わかるか?
目が覚めても・・・いつ殺されるのか・・・・
目が覚めても・・・・・明日は仲間がやられるんじゃないか・・・・そんな日々を・・・
いいかげん・・・嫌気もさしていたからな・・・・
スタの目を見ながら・・・カンベはそう心の中でつぶやいた。。。。
「だけど・・・失ったもののほうが大きいじゃないか・・・出られるのか?」
カンベは椅子の背もたれに体を預けると、スタをジッとみて
「失ったわけではないさ・・・俺は俺が行くべき道を進んだだけだからな・・・」
ガンペは少しからかうような目になり
「それにこの先どうなるかなんて、お前にもわからないだろう・・・そんなものだ、ただ今の俺の場合選択肢は限られているからな・・・死刑かもしれない・・・無期かもしれない・・・それとも・・・何十年・・いや、早いかもしれない、今までだってそうだったんだ・・・どうなるかなんてわからない・・・」
そう・・・どうなるかなんてわかっていて生きていたわけじゃない・・・・
スタはジッと見つめると・・・顔を伏せてそして・・・
「聞いているか?映画のこと・・・・・」
「ああ・・結局俺がこうなってしまったから、公開はできなかったんだろ・・・悪かったな・・・」
「いや、実は、外国から映画を買いたいって話があって・・・」
「物好きな奴もいるもんだ・・・金になるのか?」
「ああ・・・」
そうか、それならいい決してお前らにとってもタダ働きって訳じゃなかったんだろう・・・・
それに、俺は俺で夢を見させてもらった・・・
「・・・じゃあ、俺にもギャラが出るってわけか」
カンベはスタがどんな反応を示すかと面白そうにジロリと見ながら言った。
「出たってしょうがないじゃないか・・・使いようがないだろう?」
カンベはそんなスタを見て面白くてしょうがなかった・・・
スタ・・・・・お前って奴は・・・やっぱり、俳優の世界で頑張るしかないやつだな・・・
ヤクザにはなれない・・
すると、スタは
「一つだけ・・・わかっていることがあるんだ」
「何だ?」
「お前・・・親父になるらしい・・・」
「・・・・・」
親父?親父・・・俺にはそんな奴はいなかったが・・・・俺が・・親父になるのか?
「それだけは、わかっているんだ・・・・・」
そうか・・・それだけはわかっているのか・・・俺が親父か・・・・
「産むって言っているのか?」
「ああ・・・それで大騒ぎだ・・・」
そりゃそうだろう・・・人気女優が・・・人殺しで刑務所に入ったヤクザの子供を産むなんてな・・・
でも・・・
「あの女らしい・・・俺が・・・最後に抱いた女になるかもしれないものな・・・」
「それも・・・わからないだろう?」
「ああ・・・」
ただ・・・もし・・・・俺が出られたとしても・・・このままここで一生を送ることになったとしても・・・
あの女が最後のような期がする。。。。
看守の時間後言う声にうなずき
「スタ・・・一つだけ頼みを言ってもいいか?」
「なんだ・・・」
「伝えてくれ・・・・俺のことを全てその子に話すつもりなら・・・産んだらいい・・・と」
「逆じゃないのか?」
カンベは立ち上がりながら・・・・
「それを知った子供は・・・きっと俺を恨むだろう・・・・」
そう・・・親父がどんな奴かも知らずにうらむよりは・・・・・・
知っていて恨むほうが・・・いい・・・
「そんなこと、わからないじゃないか・・・」
看守に促されながら扉に向かって歩いていたカンベは立ち止まり、振り返った
「そう・・・わからない・・・・・って言葉には・・・希望があるからな・・・息子か・・いやそれとも娘か・・・顔向けできる人生だったかどうか、その時決まるんだよ・・」
カンベは、スタがじっと自分の背中を見つめる視線を感じながら扉の奥に入っていった・・・・
スタ・・・・・
お前が教えてくれたんだ・・・わからないものだと・・・
一度はあきらめた映画の世界を体験させてくれたのはお前だからな・・・・・
人生なんてわからないものだ、わかってしまったら・・・それで終わりなのかもしれない
だったら・・・俺は・・・・
わからないままが・・・いいような気がする・・・・・・。
カンベはニヤリと笑いながら・・・こんな、刑務所にいてもな・・・とつぶやいた。
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