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純米酒を燗で呑む文化(純米燗)の普及に勤しむ酒屋(純米酒のDON・赤松酒店)の記録なのだ!

書庫生酛って何?

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最近お客様との会話の中で

良く受ける質問があります。


「きもとの純米酒」の裏ラベルを見ての質問・・・


6号酵母や7号酵母を添加して造っているけど

これって「きもとのお酒」って呼べないですよね?

酵母無添加の蔵付き酵母でつくったものだけを本物の「きもとのお酒」って呼ぶのでしょ?



最近、このように思っていらっしゃるお客様が凄く多いことに気づきました


皆さんは、どのように思われていたでしょうか??




実は「きもと造り」のお酒は

協会6号酵母や7号酵母を添加して醸すことも多いのです


ご存知のように、「速醸仕込み」は、人工的に添加した「乳酸」の酸で、酵母を他の雑菌から守りながら育む醸造法です。

もちろん酵母も添加します。


これに対して、「乳酸」を添加せずに、自然界の(蔵付の)「乳酸菌」を酒母にとりいれて、

酵母を育むのが「きもと造り」あるいは「山廃もと造り」です。


定義的には、酒母に入る酵母が自然界のもの(蔵付のもの)か、

優良な協会酵母を酒母に人工的に添加したものかは、関係ありません。

自然界の乳酸菌(あるいは硝酸還元菌など)を取り入れる手法であるか否かがポイントとなります。


また、添加する酵母は、「きもと造り」や「山廃づくり」の場合、

糊精の大きい環境下(米のでんぷんが液状化した状態、すなわちデキストリンが多い環境)でも

増殖が阻害されにくい「協会6号酵母」か「協会7号酵母」がほとんどです。

温度が高くなると多酸醪(もろみ)になりやすいですが

深みのある味わいを醸しだせる特性があります。


「協会9号酵母」は、糊精の環境に弱く、「きもと」「山廃」には向きません。

速醸仕込みの低温長期醪(もろみ)の吟醸酒づくりなどでその真価を発揮します。

9号は低温でも発酵力が旺盛で、

カプロン酸エチルなどの吟醸香の成分を多く生酸しやすく、

スッキリとした味わいに仕上がる傾向があります。



蔵元さんや、杜氏さんにうかがうと

初めて蔵付酵母で日本酒を醸す決断は勇気がいると同時に

ワクワクするとのことです。


1.酵母が付かない時に腐造のリスクが常にある。

2.どんな酵母が住み着いていて、その特性がどんなものかを把握できないため酒質設計がしにくい。

などの2点が大きい問題で、酒造りのリスクとなります。


でも酵母添加しなくても、長年酒造りをしている蔵であれば、

結構簡単に酵母が沸いてくれるらしいです。


一度、蔵付酵母で醸せば、その酵母の特性がある程度わかるようになるので、

2回目以降は造りやすいそうで、

山廃づくりよりも余程簡単だと

話す杜氏さんもいらっしゃいます。



酒造りに携わる方々が、異口同音におっしゃるのは・・・


蔵に住み着いている健全な日本酒酵母が酒母に入り

同じく自然界の硝酸還元菌がはいりこみ亜硝酸を生酸し、

亜硝酸が他の雑菌や酵母の繁殖を抑えている間に

乳酸菌がはいりこみ乳酸を生酸し、

硝酸還元菌や他の雑菌、亜硝酸をその乳酸で消失させて

健全な酵母が繁殖しやすい状況を作り出し、

酵母が作り出すアルコールにより、乳酸菌も消失し、

最後に強健な日本酒酵母だけが残る。


こんな複雑で巧妙な微生物たちの働きの仕組みを手助けするのが、蔵人の仕事であり

目に見えない微生物の世界を想像するだけでワクワクする、ということです。



でも、一歩間違えて、酵母が付かない、

あるいは硝酸還元菌が付かない、乳酸菌がつかない

などと言った場合は、もろみが腐造して、腐造菌が蔵に住み着き

お酒造りが数年にわたって、できなくなるという取り返しがつかない事態を招く可能性も排除できません。

それゆえに、そんなリスクを冒さないために、協会酵母を添加するという意味あいもあります。


また協会6号酵母や7号酵母の特性を、

山田錦や五百万石などの酒米の特性とマッチングさせて、

思い描く設計通りの酒質へと導くために、

酵母をセレクトするということのほうが

酵母添加の目的としては大きいです。


蔵付の酵母で醸しているから、それが「本物のきもとのお酒」で

酵母添加したものは、「偽物のきもとのお酒」だ

と吹聴する日本酒ファンのかたもいらっしゃいますが

酒質を一番に考える場合に、どちらが優れているというものでもありません。(笑)


是非、皆さんも「微生物」たちが醸す「芸術品」たる「日本酒」の

ミクロの世界に思いを馳せてみてください。

もっと、純米燗の世界がひろがり

愉しくなると思います。

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酒母は大きく分けて、「生酛系」と「速醸系」に分類されます。

「生酛系」は、「生酛」と「山卸廃止酛」があり、

「速醸系」には「速醸酛」と「高温糖化酛」があります。


まず「生酛系」は、低温下において「天然」の硝酸還元菌による亜硝酸の生成、

次に「天然」の乳酸菌の生成を促して生酸することで

有害な細菌類を淘汰して優良な酵母を育てます。

ただし、暖冬で気温が高かったり、その年の米質が悪いなどの外的要因で

硝酸還元菌や乳酸菌の生成が不良な場合など、

有害な細菌類を淘汰できないので、常に腐造の危険が伴います。


一方「速醸系」は、酛たて当初に「人為的」に乳酸を添加して、

有害な細菌類の活動を抑え込み、酵母を育てるので

多少気温が高い場合などでも腐造の危険性がかなり低くなることが

「生酛系」との大きな違いです。


次に「生酛」と「山廃(山卸廃止)酛」の相違です。

「生酛造り」の流れは・・・

「酛たて」蒸米と麹と水を半切桶数枚に等量に分けて撹拌する。
「手酛」物量が均一になるよう混ぜる
「山卸」蕪櫂で物量を摺る(品温は5〜6度)
「折り込み・酛寄せ」半切り桶2枚分の物量を1枚にする(折り込み)ことを繰り返し最後に物量全部を壺代に一緒にする(酛寄せ)
「打瀬(うたせ)」櫂入れを行い米粒の溶解、糖化を図る
「暖気(だき)操作」暖気樽を操作し品温を上げ、硝酸還元・生酸・酵母の繁殖を促進する
「膨れ」亜硝酸が消失してから酵母を加え、「トロロ泡」が現れる膨れへ導く
「湧きつき」炭酸ガスがブツブツと放散する状態
「湧き付き休み」湧き付き以後、発酵熱により20度内外の品温を維持するので暖気入れを休む
「酛分け」このまま温度を維持すると酒母のボーメ(12〜8)が切れすぎ味が少なくなりすぎ、酸とアルコールによって酵母が衰弱してしまうのを防ぐため、酒母を半切り桶2,3枚に分けて冷やす
「枯らし期間」酛分けから酒母の使用までの期間を枯らし期間といい、この間に香味の調熟作用が進行する


「山卸廃止酛」は・・・
単純にいえば生酛仕込みの「山卸し」という酛を摺る行為を省略しながら、生酛同様の天然の乳酸菌を生成させていく手法です。

「生酛」では品温5,6度の早い時期から櫂入れをたくさん行うので、米のでんぷんがアルファ化(糖化溶解)し、さらにベータ化(分子構造の小さいぶどう糖化)するので、デキストリン(糊精)は少ない。
それゆえ、暖気操作も「温湯浮かせ暖気」を用い、「乳酸菌の生酸(適温30〜40度)」「硝酸還元菌の還元(適温30〜35度)」「酵母の増殖(適温24〜25度)」を促進するよう暖気操作を行う。
一方、櫂入れの少ない「山廃酛」の場合、蒸米のでんぷんを糖化するといっても、分子構造の大きいデキストリン(糊精)のままなので、「酵素糖化作用(適温50〜55度)」を進める為に、最初からがっちりと「熱湯留め暖気」を操作する必要があるのです。

山廃づくりで、生酛づくりと同じように「キレのある味わい」を作り出すには「暖気樽操作」などに根本的な違いがでてきます。

(以上、上原浩先生の「いざ、純米酒」を参考にしました。)


速醸仕込み、生酛仕込み、山廃仕込みの相違は、こんなところにあります。
 

 

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