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「ねえ!栗っこくん!もうこんな時間だよ!」
携帯を開き驚いている彼女に、僕も時計を見た。
「えっ!もうこんな時間!」
時はもう少しで正午になろうとしていた。
「この時間だと喜多方は混んでいるなー」
「えーっ!混んでいるの?」
「じゃあ、喜多方ラーメンはパスして、足を一気に延ばして米沢ラーメンを食べようか?」
「米沢ラーメン?」
初めて聞く、ご当地ラーメンに彼女の眼は丸くなった。
「喜多方はもっちり麺のちょっとこってりスープだけど、米沢は昔懐かしい、縮れ細麺のあっさりスープ…だけど何杯食べても飽きない味なんだ!」
「うーん、米沢が食べたくなった!じゃあ、米沢目指してゴーだ!!」
そう言うと、彼女は地図を開き、今までにない真剣な表情で地図を見つめ、地図上をなぞっている指がピタリ止まった。
「あっ!近道発見!」
その一言と共に、眼をキラキラと輝かせ、彼女の身体は僕へと摺り寄せながら地図を差し出した。
「ここ!ここからだとこのルートが近道だよ!」
彼女の細い指は地図上のルートを行き来していた。
「檜原峠と綱木峠?」
小さな地図に身を屈め見入っていた。
気が付けば彼女の息遣いが頬に伝わり。ふと顔を上げると、すぐそこに彼女の顔…心臓の鼓動が再び早まっていった。
「この道ダートだけど、栗っこくんは大丈夫?」
「だ、大丈夫…」
「よしっ!ここなら街は通らないし、近道だ!」
元気に立ち上がる彼女。僕は心臓の鼓動を治めようと、大きく深呼吸し、ゆっくりTWを跨ぎ進路を変え走り出した。
何なんだ!?この自分!こんないい歳こいて動揺しているなんて…”
再び走り出したTWとセロー。湖を沿うように曲がりくねる道から反れ山間の道へと入っていった。
ここからは檜原峠から綱木峠…この二つの峠を越え…そして米沢へと抜けるのだった。
まわりはうっそうとした木々が生い茂り、昼なお暗い荒れた砂利道が続くダートへ突入した。
深く刻まれた路面の凹凸に四苦八苦しながら、暴れるTWを抑え、ちらり見るバックミラー。
“大丈夫…彼女はいる…”
アクセルを開けると埃が舞い上がり、後輪に巻き込まれた砂利が飛んでいく…。
右へ左へ複雑に屈折し道は上へ上へとどこまでも続いていた。
不意にアクセルを開けると、後輪が大きく外へと膨らみ、すぐそこには谷底が迫り、全身に張り巡らされた神経が尖る…。
“後ろの荷物がキツイ…でも彼女の方がもっとキツイはずだ…”
バックミラーの目を配り、彼女の安否を確認し、再び前を向いた瞬間。眼の前に続くはずの林道に巨大な物体が横たわり道を塞いでいた。
慌ててブレーキレバーを握った。
しかし、グリップを失った前後両輪は路面を捉える事が出来ない。
埃が激しく舞い上がっていく…、制御不能に陥ったバイクはいまにも転倒しそうになりながら、真横を向き、道に横たわる物体に衝突しようとした。
「栗っこくん!足!足を出してバランスを取って!」
後方から飛んだ彼女の声。
その声に押され、瞬時に足が飛び出し、靴底が激しく路面にこすれていった。
だが転倒しそうなほど暴れていたTWは、真横を向きながらも安定し、衝突の一歩手前で静止した。
“ふー”
思わず身体から大量の息が吐き出された。
緊張から解き放たれた身体。
眼の前には大量の土砂が道を埋め尽くし、見上げると崖一面が真新しい地肌をさらし、物凄い崩落があった事を感じさせていた。
心配そうな表情を浮かべる彼女がすぐ後ろにいた。
「みなみちゃんありがとう…助かったよ」
唖然と道を見る二人。
「戻ろう…」
「うん…」
肩を落とし引き返す峠道。湖沿いの道まで戻ると、バイクを停め、小休止を取った。
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小説(コメント)
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あ〜、桧原湖一周ツーしたくなってきました。
もちろん、みなみちゃんと一緒に♪
このあとどーなっちゃうんでしょ??
2011/5/12(木) 午後 7:37 [ KR-1 ]
KR−1さん このあとはですね…あ〜言えません(><)
最後まで楽しんで読んで下さい〜
2011/5/12(木) 午後 7:45 [ qaq*64 ]