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“女の子!?”
その声色と風貌のギャップに一瞬耳を疑った。すると、ライダーは曇ったシールドをゆっくりと上げた。
「あのう…ヘイリョウヤマキャンプ場を探しているのだけど…」
その瞬間、僕の時間は止まった。
そこからは長くきゅっとカーブした睫毛、そして生き生きとした大きな瞳が覗き、そのあまりの綺麗さに僕の目はそこに釘打たれた。
「女の子!旅しているの?」
「うん、日本一周の旅しているの!」
何と言葉にしたら良いのか?表現なんてとても出来ない程の新鮮な感動が、僕の中を突き抜けた。その感動に照れながら答えるライダーから出た“日本一周”という言葉に条件反射するかのように、TWから飛び降り、ライダーのナンバープレートを覗いた。
「えっ!!鹿児島!!鹿児島から来たんだ!凄い!!」
ここ宮城県は東北の南部に位置するとはいえ、鹿児島までは遥かに遠い。ましてやバイクだ。さらに女の子の一人旅だ。
一つ一つ噛み締め、考えれば考える程、僕の中で感動は更に高まっていった。
「あれっ?そーいえば道を探しているのだよね」
ふと我に返り、彼女のバイクのタンクに広げられた地図に近付いて、探している場所を確認した。
「ヘイリョウヤマキャンプなんだ…」
そう言いながら彼女が指でなぞった場所は兵糧山と書いてヒョウリョウヤマと地元では呼ばれている場所だった。
そこはかなり前に行った事がある場所だが、うっそうとした樹林が生い茂った所にキャンプ場があり、昼間でも余り人が寄り付かないような場所のはず。ましてやそこには灯りも無く夜になると幽霊が出てきそうな不気味な場所のはずだ…。
「このキャンプ場はなーんにも無いよ。それよりも、近くに設備が整ったオートキャンプ場があるよ!」
「うん!でもヘイリョウヤマにするよ!」
「えっ!そこに?」
「そこは何もないから良いのだよ!」
心配する僕に、何の澱みも無い返事を返った。
ヘルメットの隙間から僅かに見える澄んだ笑顔を見た瞬間、僕は素直に案内する気持ちになってしまった。
「じゃあ、道案内するから後を付いてきて」
TWを再び跨ぎ、彼女の方を見て頷くと、彼女も頷き、二台のバイクは走り出した。
バックミラーに映る彼女の瞳は吸い込まれるよう大きく、キラキラと輝き、バイクに乗る姿も背筋がピンと伸び、とてもりりしく、僕の目は奪われっぱなしばった。
“遅すぎないように…早過ぎないように…”
妙な緊張感と共に僕は走っていた。
そして、これが僕という地上にワイルドな天使が舞い降りた瞬間だった。
僕の人生は新たな展開へと動き出すのだった。
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小説 第一章・二章
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